牢屋はキライだ。俺がこの旅を始めてから何べん牢屋に入ったと思う?12回だ。もちろん結局は証拠が無いってんで出られるんだが、クソ嫌な気分になるぞ。マジでよ、オカマをホラれる恐ろしさは別にしても1、食事は少ないし看守連中はいつも俺をぶっ叩きやがる。あいつらいっつも、俺があいつらを見て笑ったって言いやがるんだ。
今日は街を歩いていたら2人の警官に止められたんだ。そんで事件の目撃者に首実検させてる列に俺を加えやがった。容疑者は6フィート2インチのアジア人の男だったって言ってたよ。俺は5フィート4インチの白人だ。もちろん、俺が怪しい人物だってんで、俺が選ばれた。俺は銃のセフティの外し方なんか知らねえし、言うまでもなく誰かを撃ったことなんか無え。
ずっと昔にも、ミスターども全員が俺を疑いやがったことがある。ある時、台所で皮むき器を取ろうとしたら、ミスター・たまねぎが逃げ出して隅で泣きだしたことがあるんだ。あいつを宥めようとしたら、めちゃくちゃ怖がって殴ってきやがった。俺が噛み付こうとしてきたって言ってたな。俺は単にあいつに大丈夫かどうか尋ねただけだってのに。
レッドだけは俺を信用してくれたな。『うそっぱち、お前の作ったリブ付きチョップ好きだぞ』って1度言ってくれたっけ。またレッドの奴に会えたらいいんだが。俺達が行こうとしてる先にレッドのやつがいるかもしれないって聞いたんだ。もちろん、それ以上のことは分からなかった。なにせみんな機会が来た途端に俺から出来る限り早く逃げやがったからな。
俺を街で見た子供も同じことをした。俺が彼に手を振ったら、彼はそれを潜伏している狙撃隊への合図だと受け取った。言うまでもなく、そのあと俺を子供狙いの変質者だと思った父親から体当たりをもらった。いったい親どもはどんなものを子供に見せてそんな思いつきをするように育てているんだ?
ベストバイ2で狙撃手を撃ってる男の出てくる映画を観たことを覚えている。もちろん、俺を見た店員が警察を呼びやがった。しかも俺をテコンドーの黒帯の力をもって倒すべきだとみなしやがった。俺は袋入りのレンガのように床にぶつかった。
ちくしょう、足が痛い。ホームレスの住処が一晩俺を受け入れてくれるか見てみなきゃ。でも前はヤクの売人だと思われたことがあったな。何べんもはたかれた。ボディチェックまでする奴も居た。
多分今夜は外で寝ることになるだろうな。
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