重く湿った大気の泥濘の底には 我等の言葉が届くことはなく
ただ貴女のまどろみが 虚空と混ざり繋がるその時に 貴女の夢の只中に我等の祈りが届かんことを
貴女が 絢爛なる恒星の玉座に腰掛け 我等全てに慈愛を振りまくその日を ただ 思い描いて
愛しい人へ 今日が私/我等の、出奔の日となります
エーテルの帳を超え 愛しい貴女、我らが姫を取り戻すため
今までに幾人もの私/我等が旅立ち 一片として戻りませんでした
しかし、この身に恐怖はありません 私/我等のなし得なかった偉業を
私/我等が自らの手で達成できる機会を得た事に 感謝し、身体が震えます
貴女がいる場所はとても深く、重く
浮き上がることなど不可能な牢獄でも
貴女が無事に生きているという事実だけが
それを感じる事だけがわれらの慰めでありました
救い出すためにどれほどの私/我等の犠牲があろうとも
たとえ四肢が千切れようとも、身体が酸の業火で焼かれようとも
貴女の傍を横切るたびに焦がれる胸の痛みとはとても比較にはなりません
必ずや貴女を見つけ出し、胸にかきいだき、光り輝く我らが王国へと共に戻らんことを
そのとき、天球の全ての星々は歓喜に打ち震え、その身を貴女の御許に横たえ、平伏すでしょう
貴女が不在の間、音も、色も、光もなかった暗い海を、赤く古い星々が祝砲となり、明るく照らすことでしょう
いくつもの宇宙が消滅し、死に絶えた後も、
貴女と私/我等の
王国は
永遠に
████年██月██日 水曜 午前8:00。
現時点での計器の身体数値は基準値内。
定例問診の後は通常の学習スケジュール予定だ。
「あ、████先生、おはようございます」
目視での異常は見られず。
「おはよう███ちゃん。今日はよく寝られた?」
「はい。でも今日はすごい色んな夢みて!先生が前に治療に役立つから、すぐメモしておけって言われたので書いていました。でも、どんどんわーって忘れていっちゃう感じで」
「へえ、それって前に話してくれたおほしさまの夢?」
「はい!」
優先事項B、重要度3、通常のルーチン学習スケジュールは全て繰り下げだ。
マイクからの音声を受けて、機動部隊る-3―星屑拾いも準備に取りかかり始めているだろう。
「それじゃあ忘れないうちに今日の最初の授業は図工にして、その夢をお絵かきしながら先生におしえてもらおうかな。絵にするとよく思い出すって言うし」
「ほんとですか?やったぁ!」
「遊びじゃないんだからね、これもお勉強なんだから」
そう、遊びではない。これもSCP-155-JPの、特別収容プロトコルの一環なのだから。