SCP-2912-JP
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アイテム番号: SCP-2912-JP Level 3/2912-JP
オブジェクトクラス: Safe Classified

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セントラル・パーク 2001/09/11、異常次元に落下したマンハッタン市街より。

特別収容プロトコル

SCP-2912-JPはハドソン川協定第1条、第7条及び第53条に基づき、現在財団の収容下にありません。財団がSCP-2912-JPに関して認められる行為はSCP-2912-JPの報告書作成及び調査のみです。

SCP-2912-JPの実質的な管理はセントラル・パーク管理委員会1及び国立セプテンバー11遺構管理センター2によって行われます。これは景観保全、老朽化防止を目的としたものであり、財団は上記の組織からの要請があればフロント企業「Special Creative Park Organization」を通して活動の支援を行うことが許可されています。

説明

SCP-2912-JPはニューヨーク市マンハッタン区セントラル・パークに位置する巨大な機械構造体です。現在はひどく損壊した状態ですが、かつてSCP-2912-JPは大まかに人型を模した形状であったと判明しており、各部位ごとに異なる出自を持つと想定されています。このため、財団はそれぞれのSCP-2912-JP部位にSCP-2912-JP-1~-5までの個別のナンバーを割り当てています。


補遺.2912-JP.1 > 発端

SCP-2912-JP-1のベースとなった"ヘパイストスモデルRX-78-2"は、プロメテウス・メカニクス社が開発した大型ヒューマノイドロボットです。試作機のためか設計上は明確な武装を備えてはいませんが、プロメテウスの内部文書によれば兵器利用を主目的として開発されたとされています。

当時、超常社会では冷戦を背景としたパラテック業界の急速な成長に伴い、軍事・製造・サービスなど様々な場面で労働力としてオートマトンなどが注目されていました。汎用人型オートマトンの開発は激化し、その潮流は後年アンダーソン・ロボティクスの高性能な小型ヒューマノイドである"ペレグリンシリーズ・ドロイド"及び"セイカーシリーズ・アンドロイド"が普及したことからも分かるように、小型化が主流となっていきます。

そのなかでプロメテウス・メカニクスは業界のニッチとして巨大機体の路線をとっていました。この過程で開発を進められていたのがヘパイストスモデルシリーズです。中でも最新作であったRX-78は、設計当初量産化を前提としていたにも関わらず当時のあらゆる同サイズのアンドロイドを性能面で遥かに凌駕する機体でした。

しかしながら、1991年のソビエト連邦の崩壊と冷戦の終結に伴うパラテック・バブル崩壊によってプロメテウスラボグループ全体が経営難に陥り、プロメテウス・メカニクス上層部はプロジェクトの中止を宣言しました。それに従い、RX-78-1、-2、-3の3機の試作機はプロメテウスラボ保有の倉庫に収蔵されていました。その後の記録は、1996年のプロメテウス・メカニクス社倒産時に一部文書が逸失したために不明瞭です。

次にRX-78が記録に登場するのは1999年のことです。イベント・ペルセポネ発生によるヴェール崩壊と、それに伴う第2次パラテックバブルにより、プロメテウスラボグループは大きく業績を回復しました。その際行われた財務整理の過程で、3機の試作機が倉庫内から盗難されていることが判明しました。

財団による後年の調査によって、プロメテウス・メカニクス社倒産後、同社に潜入していたGoI-012("マーシャル・カーター&ダーク株式会社")の構成員によって3機の試作機はブラックマーケットに流出していたことが判明しています。この3機のうち2号機に当たるRX-78-2を購入したのがPoI-2912-JP-Aです。残り2機の内、RX-78-1は東弊重工が保有していることが明らかになっており、東弊重工がRX-78-1をリバースエンジニアリングして"TH-G Mk-II"を作成したことがSCP-2912-JP-1とSCP-2912-JP-2の主要パーツが完全な互換性を持つ理由になっていると推測されています。残るRX-78-3の行方については購入記録などに不自然な改竄が施された形跡があり、現在も調査中です。

財団によるSCP-1518-JP発見以後、マンハッタン-スタテン合同教区は財団の完全な監視下に置かれていました。しかし、マンハッタン-スタテン合同教区の構成員は財団に発見されることなく、秘密裏にRX-78-2を入手し、マンハッタン島に存在する教会保有施設地下の格納庫に保管し改造を施していたとされています。またPoI-2912-JP-Aは購入・改造の目的として、「来たる"肉の禍"に対する備え」を挙げています。


補遺.2912-JP.2 > 事件 - 9月11日

SCP-2912-JPは2001年9月11日、GoI-003("カオス・インサージェンシー")の中核となる部隊が主導して発生させたマンハッタン次元崩落テロ事件に関連する一連の事件6の最中成立したと考えられています。

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これらの推測は要注意団体・要注意人物・財団所有でない観測機器が提供した複数の記録によって導き出されたものです。

当報告書の作成においてもこの記録群が大きな割合を占めているため、閲覧する職員は以下の報告書に十分な信憑性が担保されておらず、脚色・誤謬・矛盾が含まれている可能性に留意して下さい。

— 記録・情報保安管理局(RAISA)管理官、マリア・ジョーンズ

マンハッタン・カオスの発端となる大陸横断路線の旅客機5機のハイジャックが発生した9月11日午前8時20分頃、マンハッタン-スタテン合同教区は、セントラル・パーク北東の新設された教会("ジェファーソン・ミラー教会")にてオープニングセレモニーを行っていました。このセレモニーでは壊れた神の教会の主要3宗派7による合同式典、PoI-2912-JP-Aを筆頭とした神父による説諭、地域の安寧祈願が予定されており、地元住民も多く参加していました。この中に後述するPoI-2912-JP-Bが参加していたと考えられています。

発生直後から拡大を続ける異常次元への対応として、9月11日の夕方からマンハッタン島中部における一般市民の避難が開始されました。当時現場で提案された避難経路はマンハッタン島南東部から国際連合本部ビル11付近を経由しクイーンズ区へ向かうものであり、ルートの安全性については概ね合意が得られました。この退避案に従った財団による避難誘導は鎮静目的の広域記憶処理展開と併せて一定の効果を上げました。しかしながら局地的な渋滞、暴動の発生は抑制できず、マンハッタン中部からの大規模な一般人避難は12日未明まで継続することになります。

中部からの避難民は北部に流入し、北部各地の公園や大学などの公共施設は簡易的な避難所として解放されました。この事態の中で、ジェファーソン・ミラー教会も壊れた神の教会の構成員を中心とした避難民の受け入れを開始しました。


補遺.2912-JP.3 > 襲撃 - 9月12日

9月12日の午前3時ごろ、マンハッタン一帯は大規模な停電に見舞われます。これはカオス・インサージェンシーがハーレムリバーヤード発電所などのマンハッタン島の各地周辺発電施設を攻撃したことが原因でした。財団は攻撃を予測し重要な電力関連施設に防御態勢を敷いていましたが、カオス・インサージェンシー構成員による散発的な自爆テロ、及び最終的に用いられたSCP-1068の連続爆撃によって、多くの発電施設がダウンしました。また、一部地域では同様の襲撃によって水道・ガスなどのライフラインの喪失が記録されています。

9月12日正午頃、複数の敵性実体による最初の大規模攻勢が展開されました。これら敵性実体の中には悪魔実体、カオス・インサージェンシー戦闘員、パラテクノロジー兵器、既知/未知のオブジェクトが含まれ、一部はジェファーソン・ミラー教会を襲撃しました。PoI-2912-JP-Aを含む壊れた神の教会構成員は、交戦のため一時的にSCP-2912-JP-1から離れ地上に向かったと証言しています。以下はマクスウェリズム教会構成員による記録です。


補遺.2912-JP.4 > 孤立 - 9月13日

SCP-3216を通じた有線通信によって財団組織内でマンハッタン島外との連絡方法が確立されたのは、9月13日の午前8時頃でした。その際もたらされた戦況報告によれば、午前8時時点では敵性実体との戦線は一時的な膠着状態にあり、戦闘は続行されていたものの結果として限定的な平穏がもたらされていました。

午前9時20分頃、2度目の大規模攻勢が展開されました。初回の大規模攻勢と異なる点として、SCP-2911-JP指定領域の拡大加速に伴う悪魔実体の大幅な増加、及びUE16-1109に指定される複数の巨大エネルギー実体による破壊活動が確認され、状況は財団勢力に対して不利へと傾きました。

9月13日の午後になると、財団・GOCの防衛部隊は明確な劣勢に立たされました。増援としてマンハッタン島外部からの突入作戦の準備が進行していたものの、物資、人員不足などを理由にSCP-2911-JPに指定された異常領域の拡大を効果的に抑制することに失敗し、悪魔実体の爆発的な増加とともにハドソン川沿岸地域に加えマンハッタン島の75%が異常領域に侵食。また神学的防護の要を担っていた境界線イニシアチブから、展開されていた大規模結界がUE-1110の出現によって崩壊した旨の通達がなされました。

こうした事態を受けて、防衛部隊はそれまで前線基地として機能していたセントラル・パークを放棄し、コロンビア大学やハーレム区といった地域まで後退することを決定しました。これは、それまで前線の後方にあったジェファーソン・ミラー教会が、敵対勢力の中で完全に孤立することを意味していました。


補遺.2912-JP.5 > 団結 - 9月14日

注記


正直に言って、ここから情報の矛盾がひどくなってくる。時系列通りに整理すると、4.5tある鉄くずが10km以上の距離を2分で移動している計算になったり、一人の人物がある視点からは描写されているのに、ある視点からはそもそも存在するはずがないことになる。問題は当時のマンハッタンではその矛盾が成立しうることだ。異次元と接続してるわ、願いを叶える悪魔はうようよ居るわ、次元工学者と妖術師が多方面からポータルを開けまくって現実構造がガタガタだわ……。要は何が起きてもおかしくなかった。全てが不安定で、揺らいでいた。

ただ、結果としてSCP-2912-JPは再び立ち上がった。それだけは確かだ。


— 未詳資料/目録編纂室 編纂官、アンドリュー・スティングス

SCP-2912-JP-2(左腕部)の出自に関係すると考えられている実体が初めて目撃されたのは、9月13日午前6時頃のマンハッタン島西部沖合です。当時その地点ではマンハッタン島外への別次元浸食に歯止めをかけるため、一定間隔で停泊した財団艦船が艦載スクラントン-アンカーを同調稼働させることで不安定現実の中和作業に従事していました。また、同じく島外へ侵攻を試みる魚型悪魔実体の対処もこれら財団艦船の任務でした。

SCP-2912-JP-3(右脚部)は世界オカルト連合の排撃班9999 "Max Damage"部隊員、Howが着用していた超重交戦殻8号機"ハーディング"の残骸から形成されました。Howが9月14日正午過ぎ頃の敵性実体の掃討を目的とした戦闘27で行方不明となったにもかかわらず、以下の記録はSCP-2912-JP-3の形成が戦闘開始の約2時間前に行われたことを示唆しています。

SCP-2912-JP-4(左脚部)はブライアント公園にてその作成過程の一部を撮影されています。この映像記録は現場に残されていた型番不明のTV用撮影カメラ内の記録を財団が回収したものであり、撮影者は判明していません。ある証言では同様のカメラを所持している青いジャケットを着た男性と緑のスーツを着た女性が目撃されていますが、詳細は不明です。

SCP-2912-JP-5(頭部)の出自は未だ明らかになっていません。後の記録ではSCP-2912-JPが頭部を備えた状態で観測されているため、いずれかの時点でSCP-2912-JP-5が修復もしくは置換されたことは確実視されています。しかし目撃情報や観測記録は発見されておらず、追跡調査は大きな成果を上げていません。

SCP-2912-JP全体の構築が完了されたのは、9月14日の午後10時頃だと考えられています。PoI-2912-JP-Aと複数の目撃者の証言によれば、それまでにUE-1110との戦闘準備、及びSCP-2912-JPの最終調整が行われました。


補遺.2912-JP.6 > 決戦 - 9月14日

9月15日の午前10時頃、サイト-28前線指揮所は不審な通信記録を傍受しました。この通信は後の調査により、GoI-0853("恋昏崎新聞社")の構成員、ジョージR43と広末 孝行44によるものだと判明しています。広末 孝行は9月13日に、財団の制止を振り切り手漕ぎボートでマンハッタン島へ接近。近距離での異常空間撮影を試みたものと思われますが、そのまま行方不明となっていました。同様の行動が財団エージェントの喪失を招いたにも関わらず、広末 孝行が生存していた理由は不明です。

この記録を受けた財団による広末 孝行を確保する試みは失敗に終わりました。また通信内で示唆される同行者についても詳細は判明していません。以下は後日恋昏崎新聞社が公開した映像記録です。

9月15日の0時15分頃、セントラル・パークにおける高次アキヴァ放射、異常ヒューム値、高レベルEVE反応は消失し、当時の財団は「UE-1110は何らかの理由により自然消滅した」と結論づけました。

この通信を最後にPoI-2912-JP-B及び制御AI-Birdeveの明確な足跡情報は発見されておらず、実行された確保作戦は失敗に終わっています。そのためPoI-2912-JP-Bは重要参考人としてPoI-6870に再指定され、現在まで財団諜報機関AIAD52による合同捜索が続行されています。


補遺.2912-JP.7 > 評価

9月15日をもってマンハッタン周辺地域は基底次元へと復帰し、財団は9月19日までにマンハッタン・カオス被害状況の全貌を把握しました。その結果SCP-2912-JP及び関連記録群の存在が明らかになり、財団内ではSCP-2912-JPを移転後、適切なサイトに収容する案が提出されました。しかし、メディアによるSCP-2912-JP関連報道とそれに伴う強い一般社会の反発、加えてSCP-2912-JP自体の脅威度の低さから、収容案は撤回され最終的に現在の収容プロトコルが制定されました。

世論の潮流がSCP-2912-JP収容に反発することとなった背景として、以下の理由により財団の一般社会に対する求心力が低下したことが指摘されています。

  • ヴェール崩壊を切っ掛けとして、ウィルソンズ・ワイルドライフ・ソリューションズを筆頭とする小規模な超常組織が大衆に支持され、従来の超常組織間パワーバランスが変動しつつあったこと
  • テロの主犯であるCIが財団の分派を由来とする組織であったこと
  • 財団及びGOCの対応について、合衆国政府が不信感を表明したこと
  • 報道の中でPoI-2912-JP-Aを始めとする財団外の人物の活躍がクローズアップされたこと
  • SCP-2912-JPに関連する一連の記録が、"公的機関に頼らず自力で事態を解決する"市民像を提供し、広く受け入れられたこと

SCP-2912-JPは9.11復興モニュメントの1つとして保存されることが決定され、現在は"マンハッタンズ・メカニクス"という名称で知られるニューヨーク有数の観光名所となっています。以下の記録は、SCP-2912-JPに対する調査が終了し、初めてマンハッタンズ・メカニクスが一般公開された際のセレモニーにおけるPoI-2912-JP-Aのスピーチ記録です。



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