SCP-6369
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SCP-6369-B

アイテム番号: SCP-6369

オブジェクトクラス: Safe

特別収容プロトコル: SCP-6369は標準的な収容ロッカーに保管されています。SCP-6369の利用申請は、申請者が意図する利用地点に最も近い財団施設のサイト管理官に提出することができます。職員はSCP-6369の利用に通常2~30米ドル相当の支払いが伴うことに留意すべきです。このため、職員はSCP-6369を利用する前に通貨、もしくは同額の食品を用意する必要があります。

説明: SCP-6369は電話帳に1件のみ番号が登録されたNokia 3310携帯電話です。他の電話番号にも発呼可能ですが、それらが繋がることはありません。

SCP-6369に登録された連絡先の名称は“ネズミ失せ物探し隊”Rat lost and foundです (この組織の“従業員”を以下でSCP-6369-Aとする) 。この連絡先に発呼すると、発呼者は自動応答システムに接続され、紛失した私物に関する一連の質問を受けることになります。発呼者は見つけたい物品の詳細、紛失した可能性がある場所、回収にあたってどのような形式の支払いを希望するかといった情報の提供を求められます。特筆すべき点として、SCP-6369-Aのサービスを利用するには一定の条件があります。条件が満たされない場合、SCP-6369は質問をせず、代わりに不便を謝罪する内容の事前録音メッセージを流してから通話を終えます。

SCP-6369-Aのサービスを利用する条件は以下の通りです。

  1. 発呼者は対象物を実際に紛失しており、意図的に隠してはいない。発呼者は対象物を故意に“紛失”することはできない。これには別な人物に依頼して対象物を隠蔽させる行為も含まれる。
  2. 対象物は過去24ヶ月以内に紛失した物である。
  3. 対象物は重量5kg以上ではない。
  4. 紛失物が存在するエリアにネズミ用の罠が仕掛けられていない。
  5. 紛失物が存在するエリアに捕食動物がいない (ヘビ、ネコ、猛禽類など) 。
  6. 発呼者が電話を掛ける前に支払いの準備をしている。
  7. その時、SCP-6369-A従業員が別な場所で活動していない。
  8. 平日に発呼する。

これらの条件が満たされると、SCP-6369への発呼から30分以内に、SCP-6369-A個体が発呼が行われた建造物の外部に出現します。SCP-6369-Aは様々なファンシーラット (Rattus norvegicus domestica) として現れますが、どの個体も自律型ロボット掃除機1 (典型的にルンバシリーズ) を操作 (もしくは操縦) しているように振る舞います。SCP-6369-Aはこの掃除機を建造物のドアに衝突させて“ノック”します。SCP-6369-Aが持参するロボット掃除機のブランド、SCP-6369-Aの品種や毛色などは幅広く異なります。出現するSCP-6369-A個体の数は、発呼が行われた建造物の大きさに左右されます。狭いアパートメントで紛失した物品の捜索を依頼すると、通常は1匹だけネズミが出現します。記録上最大規模の対応では、学校の校舎を捜索するために、60匹のネズミが10台の掃除機と共に動員されました。

現地に到着したSCP-6369-Aは、掃除機を降りて指定された紛失物を探し始めます。対象物が発見されると、ネズミ (たち) はSCP-6369に電話で連絡した後、その物品を口に咥えるか、重量がある場合は前脚で抱えて所有者の下へと運びます。対象物が返却されると、SCP-6369に再び着信があり、自動音声メッセージが2~30米ドルの範囲でサービス料を請求します。留意点として、発呼者が料金を支払わなくともSCP-6369-Aは問題なく退去しますが、SCP-6369はそれ以降、その人物が再度発呼を試みても機能しなくなります。

SCP-6369-Aが受容する支払いを記録した実験の結果は以下の通りです。

形式を問わず支払いとして受容される物: 法定通貨 (紙幣・硬貨) 、ニンジン (冷凍・生・加熱) 、レタス、トマト、ブルーベリー、“Yogies!”ブランドの齧歯類用おやつ

事前に調理の必要がある物: 鶏卵 (最低8分茹でる) 、鶏肉 (調理済かつ味付け無し) 、魚肉 (調理済かつ味付け無し) 、クルミ (割ったもの) 、牛肉 (味付け無しで茹でたもの) 、メロン (切り分けたもの)

高品質であるほど価値が増す物: チーズ (通常は高価なチーズほど少量の支払いとなるが、発呼に複数のネズミが対応した場合、均等に分配できる食品のみが支払いとして受容される) 、ペット齧歯類用のドライフード、ハム、サラミ、七面鳥肉

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拒否される物: 柑橘類 (雄ネズミに健康被害が及ぶ可能性があるためと思われる) 、事務用品 (ペン・鉛筆・デスク用装飾品など) 、カフェイン入り飲料 (コーヒー・茶・ソーダなど) 、高価値品 (金時計・携帯電話など) 、動物実験関連製品

特に注目すべきSCP-6369の事例は以下の通りです。

発呼者: ラングフォード博士
紛失物: ラングフォード博士の鍵、彼女のオフィス内で紛失。
SCP-6369の対応: ネズミ1匹 (灰色のダンボラット) 、15分間捜索。
提供された支払い: イチゴ丸ごと1個

発呼者: マリサ・ノーウッド博士
紛失物: ノーウッド博士のノート、サイト19-23で紛失。
SCP-6369の対応: 様々な品種のネズミ20匹が掃除機4台に乗って出現。建造物の中心に到達すると分散し、1時間38分捜索。
提供された支払い: 紙幣で30ドル

発呼者: アーサー・ハケット博士
紛失物: ハケット博士の眼鏡、サイト19-23で紛失。
SCP-6369の対応: ネズミ17匹が掃除機3台に乗って出現し、38分間捜索。
提供された支払い: ブルーベリー34個、1匹あたり2個

発呼者: ヴェリタス博士
紛失物: ヴェリタス博士のコーヒーカップ、サイト19-23で紛失。
SCP-6369の対応: ネズミ30匹が掃除機4台に乗って出現し、1時間40分捜索。特記事項として、コーヒーカップは4つに割れており、何者かが接着剤で雑に復元しようとした形跡があった。このため、ヴェリタス博士は何者かがカップを破損し、隠蔽を試みたものと推測した。
提供された支払い: スイカ1個。切り分けられたものがネズミたちの間で分配された。

発呼者: ローラ・ミシャルソン上席研究員
紛失物: ローラ・ミシャルソン上席研究員の昼食 (リンゴ、ナシ、ピーナッツバターサンドイッチ) 。休憩室の冷蔵庫から紛失。
SCP-6369の対応: 様々な品種のネズミ10匹が掃除機2台に乗って出現し、5分間捜索。昼食はアーサー・ハケット博士のオフィスにある個人用冷蔵庫から発見された。
提供された支払い: ローラ・ミシャルソン上席研究員の昼食のリンゴとナシ。皮を剝かれ、切り分けられたものがネズミたちの間で分配された。

発呼者: ジョンソン技術士
紛失物: ジョンソン技術士の15mmコンビネーションレンチ、最近見かけた場所は不明。
SCP-6369の対応: ネズミ1匹。即座にジョンソン技術士の左脚を這い上り、ポケットの1つからレンチを引き出した。
提供された支払い: エンドウ豆5粒

補遺 SCP-6369-1: 最近の観察で、発呼者が以前に特定のネズミと友好的に交流している場合、SCP-6369はそのネズミを複数回派遣する場合があることが注目されました。SCP-6369-Bに関しては、更なる特異行動が観察されました。

SCP-6369-Bは、SCP-6369が初期収容後に20回使用された時点で、SCP-6369収容ロッカーの前に出現した黒い滑らかな毛並みのダンボラットです (腹部の白い斑点が特徴) 。標準スクリーニング検査で異常性は確認されず、同種のネズミの扱いに慣れたペリー次席研究員のオフィスに割り当てられました。

特筆すべき事に、SCP-6369-Bはミニサイズのヘッドセットを着用して出現しました。SCP-6369-Bはヘッドセットを脱がせる試みに抵抗しませんが、ヘッドセット自体には機能性が無いようです。しかしながら、SCP-6369-Bはヘッドセットが返却されると改めてそれを装着します。このヘッドセットは権威者及び/または古参従業員であることを示すものと考えられます。その後にSCP-6369を広いエリアの捜索に使用したところ、SCP-6369-Aが近隣で活動している間、SCP-6369-Bはケージ内から消失していると確認されました。さらにその後、SCP-6369-Bは捜索エリアに出現し、鳴き声と四肢を用いた身振りで他のネズミたちの作業を指示する素振りを見せました。SCP-6369-Bはまた、出動した全てのSCP-6369-A個体たちへの食品分配を担当することも注目されました。SCP-6369-Aの作業が完了すると、SCP-6369-Bは常に財団の収容ケージに再出現します。

インタビューログ SCP-6369-B-1

回答者: SCP-6369-B

質問者: エヴァンジェリン・ペリー次席研究員 (SCP-6369-Bを担当する世話係)

序: SCP-6369収容ロッカーの正面に出現した当初、SCP-6369-Bは近くにいた職員の注意を引こうと試みた。人間の言葉に対する理解を示した後、SCP-6369-Bは標準的なコミュニケーション支援用具 (キーボードを含む) が設置されたインタビュー室へ移送された。SCP-6369-Bはキーボードに興味を示したため、その傍に配置された。SCP-6369-Bが返答する際に押したキーは以下に書き起こされている。

ペリー: お名前を教えてもらえますか?

SCP-6369-B: アイロー (IROH)

ペリー: ありがとう。では、アイロー、あなたは“ネズミ失せ物探し隊”プログラムの一員ですか?

SCP-6369-B: [頷く]

ペリー: 何故そんな活動をしているのですか?

SCP-6369-B: ヨイ セイケツ ネズミ モノ ミツケル ネズミ ヨイ セイケツ

ペリー: ネズミは清潔だと人々に知ってもらいたいから?

SCP-6369-B: [頷く]

ペリー: だから、ネズミは善良だと分かってもらうために、人々が紛失物を探すのを助けるんですね?

SCP-6369-B: [頷く]

ペリー: 成程! ええ、あなた方は頑張っていますよ、ここの職員は皆さんのお仕事にとても感謝しています。

SCP-6369-B: ネズミ ヨイ =]

ペリー: あなたには昔、人間のお友達がいましたか?

SCP-6369-B: [頷く]

ペリー: 今その人が何処にいるか知っていますか?

SCP-6369-B: [首を横に振る]

ペリー: その人に紛失物の見つけ方を教わったのですか?

SCP-6369-B: [頷く]

ペリー: 他にも教わった事はありますか?

SCP-6369-B: [頷く]

ペリー: 私にも見せてもらえますか?

[SCP-6369-Bは転がって仰向けになり、後ろ脚立ちして30cm歩き、跳び上がり、身体の軸を中心に一回転してからペリー次席研究員を見つめる。インタビュー前におやつを支給されていたペリーは、SCP-6369-Bに一欠片のリンゴを提供する。SCP-6369-Bはおやつを受け取り、消費し始める。インタビューはSCP-6369-Bがリンゴを食べ終えてから続けられた。]

ペリー: ところで、何故ここへ?

SCP-6369-B: ヨイ ヨイ

ペリー: ここが良い所だから? あなたはここに留まりたいんですか?

SCP-6369-B: [頷く] モット ネズミ モノ ミツケル ヨイ

ペリー: 是非お願いします! まず上に相談しなければいけませんが、快適で広いケージと、幾つかのおもちゃを手配できます。お友達も欲しいですか?

SCP-6369-B: オネガイ

ペリー: リンゴを全部食べていませんね。 …リンゴの皮は残すんですか?

SCP-6369-B: ハイ

補遺: SCP-6369-Bはペリー次席研究員のオフィスで、1m x 60cm x 70cmの齧歯類用ケージに永住することになった。SCP-6369-Bには共に生活する非異常なファンシーラット1匹が提供された。特筆すべき事に、飼育下と野生環境のどちらにおいても通常短命とされるにも拘らず、SCP-6369-Bやケージ内で同居するネズミは加齢の兆候を示さない。

補遺 SCP-6369-2: SCP-6369は当初、中古電子機器販売店から回収されました。売買記録は、本来の持ち主が2019年に死去した高齢の退職者、“エイドリアン・シルバートン氏”だったことを示します。質問を受けた家族は、シルバートン氏がペットネズミ関連の否定的な固定観念に異を唱える擁護者であり、アマチュアのソフトウェアアプリ開発者でもあったと語りました。その後、シルバートン家を捜索したところ、小型哺乳類用の空きケージが多数存在する小部屋が発見されました。家族は、エイドリアン・シルバートンが死去するまで飼育放棄されたペットネズミの保護施設を運営していたことを認めました。家族はまた、全てのネズミは“シルバートンおじいちゃんが死んだ時にいなくなった”と主張しました。

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