SCP-6574

アイテム番号: SCP-6574 Level 2/6574
オブジェクトクラス: Euclid 機密
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儀式中のSCP-6574実践個体。

特別収容プロトコル: 現在のSCP-6574実践個体は全てニュージーランドのタオンガ・トゥクTaonga Tuku1にある施設-07NZに収容されています。この施設は個人所有の“オードリー・タウマタ記念自然保護区”であるというカバーストーリーを維持します。


説明: SCP-6574はタオンガ・トゥクの自然な地理的奇跡Geo-Thaumicエネルギーを導き、クラスIV精神霊的Psychospiritual実体を創造する儀式です。この儀式の既知の実践者は、既に壊滅したGOI-7114から儀式を学んだと考えられるケア2の群れのみです。

ケアの群れはそれ自体異常ではありませんが、種族として自然な高い知性を示し3、強い社会的結束を形成することが知られています。SCP-6574の有用性と見かけ上の単純さは、GOI-7114の解散後も、ケアが群れの中でその実践を世代間継承するのに十分なものでした。

SCP-6574の目的と機能は未だ完全には理解されていません。しかしながら、ケアがこの儀式を行うのは群れの個体が死亡した時だけだと確認されています。儀式は、群れの個体群が死骸に対して特定の位置に付き、独特な翼の動きと鳴き声のイントネーションを示すことから成ります。この儀式を人間が再現する試みは、これまでのところ、1983/11/23の例外を除いて成功していません。

SCP-6574-1は、SCP-6574によって創造されるクラスIV精神霊的実体です。SCP-6574-1は通常の条件下では、直接観察とほとんどの記録装置で不可視であり、音も検出できません。奇跡論的な感知機能を有する記録システムは若干の有効性を示し、身長1~3mの不鮮明な暗色の塊を映し出します。これらの塊は非常に活発に動き回り、低い唸り声や大きく響き渡る鳴き声を発するのが録音に検出されています。SCP-6574-1実体群は非常に縄張り意識が強く、ケアの群れに対する脅威と認識した存在には暴力的に反応します。また、有能な待ち伏せ型の捕食者であり、摂食する能力や欲求を示さないにも拘らず、大型哺乳類を狩る様子が観察されています。


起源と歴史: GOI-7114はヨーロッパ人による植民地化以前のタオンガ・トゥク原住島民で構成されていました。この集団は島に存在する地理的奇跡エネルギーを認識し、それを導くための儀式を数多く発展させていたようです。これらの儀式のうち、現存するのはSCP-6574のみです。財団はGOI-7114と直接交流する機会が無く、またGOI-7114は筆録を全く残さなかったため、この集団についてはほとんど知られていません。GOI-7114に関する全ての知識は、バチカン文書館と世界オカルト連合の内部にいる財団の連絡先から得られたものです。

タオンガ・トゥクに初めて人間が住み付いたのは、アオテアロア4から渡って来たマオリ族の一団が入植した1300年代後半のことです。マオリ族がいつ島の地理的奇跡エネルギーを利用する技術を開発したかは不明ですが、彼らがヨーロッパ人と初めて接触した頃には、これらの儀式はGOI-7114の文化の中核要素になっていました。

接触当初は友好的な交流が行われると共に、若干の貿易が確立され、タオンガ・トゥクのマオリ族はアオテアロアをはじめとする多数の島で発生した、抗争や伝統的なライフスタイルの変化とほぼ無縁のままでした。これは天然の泊地を欠き、山がちな地形が大半の農業に適さないタオンガ・トゥクの地理が主な要因でした。この状況は1865年、GOI-11125がタオンガ・トゥクの容易にアクセス可能な地理的奇跡エネルギーを発見するまで続きました。

GOI-1112はイギリス当局内の連絡役を利用して、GOI-7114を反逆者と認定し、植民地政府によって合法的に彼らの土地を没収させました6。GOI-7114はその後の侵略に抵抗しようとしましたが、イギリス軍とGOI-1112の連合部隊に持ち堪えることができませんでした。抗争を生き延びた島民はニュージーランドの他の地域に移され、大都市や町の生活に同化するか、他の部族に統合されました。GOI-7114の文化の多くはこの時点で断絶しており、子孫に伝わる口述史から有用な情報はほとんど得られていません。

GOI-1112はタオンガ・トゥクの地理的奇跡エネルギーを利用して、様々な歴史・神話上の人物を復活させようと試みました7。これらの試みはいずれも成功せず、タオンガ・トゥクにおけるGOI-1112の活動は1954年にGOCによって根絶されました。その後、島はほぼ無人になりましたが、1970年代後半に南部の低地に広がる森林が伐採され、ヒツジの放牧地となりました。GOI-7114が解散に追い込まれて以来、SCP-6574を実践するケアの群れは島の北部の山岳地帯で孤立していたため、その異常性は1982年まで発見されませんでした。



SCP-6574 事後報告書: 1982/06/15

日付: 1982/06/15

場所: ニュージーランド、タオンガ・トゥク

回収チーム: 回収チーム アルファ-38

異常活動: 複数のヒツジの死がタオンガ・トゥク北部で報告された。負傷は大型の鳥類に攻撃されたことを示しており、鉤爪や嘴の跡はあらゆる既知の非異常種よりも顕著に大きい。ヒツジの死骸は放置されて腐食動物の餌となっており、鳥類実体が死骸を摂取した、またはそのように試みた形跡はなかった。

結果: SCP-6574-1個体群は当初、在来生物のサンプル採取の一環としてケアの個体を捕獲している最中のチームと遭遇した。科学チームの隊員2名が最初の攻撃で負傷し、G47バイザー9を着用したエージェントがSCP-6574-1個体群の識別に成功した。通常兵器や一般的な対宗教祈願には効果が無く、結果として生じた戦闘でエージェント数名が負傷した。

エージェント タウマタは、SCP-6574-1個体群がケアを守るために行動していると特定し、ケアの群れに発砲しながら調査チーム アルファ-3を離脱した。全てのSCP-6574-1個体は彼女を追跡し、最終的に殺害したが、その間に調査チーム アルファ-3の他隊員は負傷者を連れて撤退することができた。

その後、奇跡論的エネルギーの追跡によって、SCP-6574を実践するケアの群れが発見、収容された。





実験ログ: 1983/11/23

序: これはSCP-6574の効果を特定し、再現するために実施された一連の実験の一部である。マテオ・タウマタ主任研究員がケアを模して設計されたドローン (数週間前に群れに同化している) を操作した。また、マチルダ・ダンフォード次席研究員が補佐のために同席した。両名は共にサイト観測室におり、そこから施設-07NZ周辺の奇跡論的感知機能付きカメラの映像を確認できた。


<記録開始>

ダンフォード研究員: ええと、時刻は2:45pm、タウマタ博士はSCP-6574儀式への参加を試みようとしています。

録音を開始しました、博士。

タウマタ博士: オーケイ、今のところ問題はない。たった今ドローンを所定の位置に向かわせている。記録のために状況を説明してもらえるかな?

ダンフォード研究員: はい。今朝早く、ケアの囲いを監視していた私は、ドッティが-

タウマタ博士: 個体-237。

ダンフォード研究員: あ、すみません、はい。個体-237が地面に横たわり、身動きしていないのに気付きました。近付いて死亡を確認した時点で、タウマタ博士がドローンを使ってSCP-6574儀式に参加できるように、この件を報告しました。

タウマタ博士: オーケイ、良くやってくれた、マチルダ。モニターに目を光らせて、何か現れたら教えてくれ。

ダンフォード研究員: 了解しました。

あっ、どうやら個体-237の両親があそこにいるようです。お父さんの翼が灰色がかっているのに見覚えがあります。残念ですよね。ドッティは昨日の餌やりの時には元気そうだったし、まだ3歳だったのに。何があったんでしょう。

タウマタ博士: (溜め息)

財団で上手くやっていきたいなら、被検体に情を寄せるのは止した方がいいぞ、マチルダ。君は賢くてまだ若い、先へ進むポテンシャルがあるのも分かっている。しかし、あれらはペットではないのだと頭に入れておきなさい。公平な視点を欠くと、自分も他人も危険に晒すことになる。

ダンフォード研究員: はい、博士、その通りです。すみません。

タウマタ博士の指示で、他のケアが集まるまでドローンが個体-237の傍に待機している間、2人は静かに座っている。群れの大半が揃うと、ドローンを含む4羽が個体-237の死骸の周りで定位置に付き、SCP-6574儀式が始める。

タウマタはドローンに指示を送り、儀式の各時点で適切な発声10と身振りを実行させる。

ダンフォード研究員: タウマタ博士、モニターに何かが見えます、複数の形状が237の周囲に形成されています。

タウマタ博士: 北東に2体、死骸の真南に1体だな?

ダンフォード研究員: そうです、博士、あなたにも見えますか?11

タウマタ博士: ああ、儀式が成功したようだ…

おお、凄いぞ、はっきりと見える。

ダンフォード研究員: 何が起きていますか? モニターの映像はどれもまだぼやけて見えます。

タウマタ博士: 奇妙だな、部分的に透明に見える。恐らく完全な有形体ではないのだろうが、細部ははっきりしている。マシソン博士の仮説の通り、あれはフォルスラコス科だ。

ダンフォード研究員: すみません、何ですって?

タウマタ博士: 恐鳥類。ライオンや狼と同じ生態学的ニッチを占めていた、絶滅種の捕食性鳥類だ。しかし、こいつらはデカいぞ、向こうにいる個体は3m近くある。そしてあの嘴!

ダンフォード研究員: ああ、それでヒツジの傷痕にも説明が付きますね! 現場報告書によると、傷は巨大な鳥がヒツジを引き裂いたように見えたそうです… 人間の犠牲者も同じく。すみません、博士。

タウマタ博士: 構わない。

これが最初の観察になるが、実体群は類似する姿の生物よりも賢いようには思えないな、まぁ良い事だ。願わくば、現在の収容プロトコルを続けるだけで十分に-

おいおい。

ダンフォード研究員: どうしました?

タウマタ博士: マチルダ、C5312の1つを観測室の内部に向けてから、できるだけ早く退室してほしい。1体の実体が我々と一緒に室内にいる。

ダンフォード研究員: それも恐鳥ですか?

タウマタ博士: いや。違う、人間のように見える。年取ったマオリ族の女性だ、顔には刺青、伝統的な衣服を着ていて… 私に話しかけている。

わ… 私には君が何者なのか分からない。我々は科学者だ、研究と観察だけが目的で、君に危害を及ぼすつもりは無い。13

この時点で、マチルダはC53記録装置を起動し、観測室から退出した。C53の記録には、大きさと形状が概ねヒト型である不鮮明な姿が、タウマタ博士と隣接する観測室内の無人の場所に立っている様子が映っていた。以下、この実体をSCP-6574-B1とする。

SCP-6574-B1: しかし、あなたはただの科学者ではありません、子よ。あなたは1人の人間であり、喪に服している。

タウマタ博士: 喪に服しているのはケアたちだ。私はただ観察しているに過ぎない。君は何者だ、何処からやって来た? 君はこの儀式を創作したマオリ族の一員なのか?

SCP-6574-B1: いいえ、私はこの魔法を作り上げた者ではありませんが、彼らを知っています。死を迎えると、全ては一つになります。私はあなたの家族であり先祖たちです、子よ、あの力強い猛禽たちがケアの先祖であるようにね。この儀式は私たちが出会えるように、生と死の境界を破ることによって、先に旅立った者たちが子孫の求める助けの手を差し伸べられるように作られました。

タウマタ博士: 先祖たち、複数形か。つまり、君は個人ではなく、単に残留する精神エネルギーの寄せ集めであって、賢く見せかけるために謎めいた事を言っているに過ぎない。君の言葉が真実だとどうして分かる?

SCP-6574-B1: あなたは真実を感じているからです、マテオ。この儀式が与えるものを、あなたが必要としているからです。

タウマタ博士: SCP-6574に求めるものは何も無い。私はもう十分に妻を悼んだ。この儀式は平穏をもたらさない、だからこそ彼女は死んだ。

SCP-6574-B1: ケアたちは誰を傷付けるつもりもありませんでした。彼らは死んだ仲間を偲び、必要な時に狩りを手伝ってもらえるように先祖を召喚しました。あなたと同僚たちが縄張りに入った時、ケアたちは恐れ、先祖たちに助けを求めたのです。彼らはあなたたちに危害を加えるつもりがないとは知らなかった。あれは事故です。

タウマタ博士: せめてもの慰めだ。彼女はもう逝ってしまった、死んで永遠に消え去った。この世のどんな幽霊や幻影も、それを変えることはできない。

SCP-6574-B1: 死者は二度と生者の世界に戻れない、それは事実です。それでもケアたちは儀式を続けました。彼らにとってそれは意味のある行為であり、失われた者たちを思い出すのを望んでいたからです。だからこそ、あなたも私や、私の民のような、記憶としてしか残っていない者たちを思い出すことができるのです、マテオ。そして、思い出されるものは、決して真に失われはしないのです。

記録のこの時点で、SCP-6574-B1の不鮮明な映像は大きさと形状を変化させ、やや大柄になると、タウマタ博士に近寄って、部分的に彼を包み込んだ。タウマタ博士の説明によると、彼の視点では、実体は財団エージェントの故 オードリー・タウマタに似た姿に変化していた。タウマタ博士は、実体から部分的に包まれた時、温かい抱擁の感覚があったと述べた。この後、全ての奇跡論的実体は消散した。

<記録終了>


結: この実験の終了後、SCP-6574の使用を介したGOI-7114の更なる研究が、タウマタ博士の指揮の下で進められている。また、タウマタ博士はGOI-7114の歴史や文化的慣習に関わる非異常な発見を一般社会に公表することを申請し、許可を得ている。

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