闘いの荒野で
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砂嵐吹き荒れる荒野を夕陽に染まった馬に乗る一人の男がいた。A.海野である。
彼の体から血が滴り落ち、その一滴、一滴が地に落ちるたびについ先ほどまでの激闘の記憶が奮い起こされる。
   
全ての始まりは蒐集院であった。インタビュー記録-710-JP-Jの途中で襲撃してきた戦闘員の中に蒐集院のメンバーで、財団神拳に酷似した拳法「蒐集拳」を使う者が居たからである。
 
時は昔、財団の拳は極められた故に新たに出現し続けるオブジェクトなどに対し、一切の効力を得られなくなってしまった。その為、蒐集院が独自に培ってきた拳法「蒐集拳」を取り入れる事で常に奥義を見出し続ける財団神拳を創造する必要があった。財団神拳が完成するにつれ蒐集院の規模は縮小し、一部の過激な構成員を残し蒐集拳は絶え、伝える者はいなくなった。というのが財団の闇の歴史であった。
 
しかし、攻めてきた蒐集院構成員は確かに蒐集拳を使い、その伝承者を名乗っていた。
そして彼は死に際に我々に忠告をした。
「蒐集拳は私でもう絶えてしまったが…他の要注意団体達の拳はまだ絶えていない。財団神拳もこれで終わりだ」
 
その忠告通り、財団は次々と襲撃された。影に潜んでいた要注意団体達が一斉に活性化し始めたのだ。オブジェクトは移動できるものは全て移動し、レベル2以下の職員を全員避難させ、財団敷地内は拳法家達の戦場となった。
 
まず、最初に攻めてきたのは日本生類生研であった。傷一つで全身を一瞬で変異させ死に至らしめる毒手「生滅毒手拳」や高く跳躍し頭上から凄まじい突きを浴びせる「翼人丹頂拳」などで海野を苦しめたが、共振遠当てにより毒手を破壊、海野が勝利した。
 
休む暇なく東弊重工が来襲し、機械と同化する「東弊鋼鎧術」と合金を容易く破壊する剛拳「鉄鳥掌底波」により海野に傷を負わせたが、拳の速度が一定であることを海野は見切り、共振パンチで体を割った。敵は金属を食べる事で回復をする奥義「鋼喰虎法」で回復を図るが、財団施設の70%を消費する長期戦の末、海野の勝利に終わった。
 
満身創痍の海野の眼前に犀賀六巳が現れたのは激闘から12時間後の事であった。犀賀六巳は「犀賀流」の構えをとり、
財団神拳はあまりに強くなりすぎた、とだけ告げ海野に襲いかかり、多次元理論による空間干渉により、任意の場所に真空を発生させる奥義「犀賀宙空凄舞」で海野を追い詰めた。しかし海野の、両掌から凄まじいタキオンを放つ財団神拳究極奥義「宇宙活殺」により犀賀六巳は撃破され、海野は激闘を制した。
 
犀賀との戦いにより財団施設は完全に更地へと化した。海野は沈む夕陽の方角から伝書鳩が飛んで来た事に気付いた。
鳩の足から筒を取り、中に入っていた紙を広げる。

A.海野 本部から招集がかかった。どうやら向こうの要注意団体も動き出したようだ。 -波戸崎研究員

どうやらまだ闘いは続くようだ。海野は馬を走らせた。
「行こう。強敵ともの元へ!」

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