とある料理番組

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以下はヴァージニア州█████のテレビ局で放送された番組の書き起こしです。

記録開始

画面が黒一色から整頓されたキッチンにゆっくり移り変わる。カメラ視点から見えるキッチンには、左端にシンク、中央付近に冷蔵庫があり、画面の下半分をカウンターが占めている。ピンク色のブラウスを着用した中年女性がキッチン右側の廊下から入室する。この人物をスーザン・ウォーターソンとする。彼女はカウンターに歩み寄り、寄りかかってその下側を掴む。彼女はカメラに向かってアメリカ南部訛りで話しかける。

スーザン・ウォーターソン: どうも、視聴者の皆さん! あたしはスーザン・ウォーターソン。あたしの料理番組のパイロット版へようこそ! 今夜は皆さんに美味しい晩御飯を食べてもらいましょう。この可愛いお嬢さんが-

スーザンは自分を指す。

スーザン・ウォーターソン: -伝統的なアメリカ感謝祭の七面鳥の作り方を教えてあげるわ!まだ目を離さないでちょうだい、皆さん、この料理番組はここから面白くなるんだから! まずは冷蔵庫を開けて食材を揃えます。いっぱいあるから、メモのご用意を!

スーザンは冷蔵庫を開き、調味料や頭部の無い惣菜用の七面鳥肉など、様々な食材を取り出す。それぞれの食材が取り出されるに従って、名称が画面に表示される。

スーザン・ウォーターソン: 皆さん、付いてこれたかしら。うふふ!

スーザンは画面外に何かを取りに行く。

スーザン・ウォーターソン: さぁて、ここで一番大切な材料を出さないとね!

スーザンは包丁を持って戻ってくる。彼女は微笑みながらカメラを直視する。その後、彼女は包丁を七面鳥肉の中心にゆっくりと刺し込み始める。

スーザン・ウォーターソン: この国にも、こういう単純な物が強い武器だった時代があったのよ。それから、ここの国民たちはもっと強力な武器に出会ったの。もっと重大な物にね。

七面鳥肉が赤い鮮血を流し始める。

スーザン・ウォーターソン: 1813年のクリーク戦争をご存知かしら? 186人のクリーク族がアメリカ兵に殺されたわ。デイヴィー・クロケットが誰なのかを知ってる? その俗に言う民衆の英雄は“俺たちは奴らを犬のように撃ち殺した!”と言ったの。犬よ。

七面鳥肉は痙攣し、吠え始める。スーザンは空いた手で七面鳥肉を動かないように押さえつける。その後、彼女は包丁を七面鳥肉により深く押し込み、大量の血液がカウンターに零れ落ちる。

スーザン・ウォーターソン: ねぇ皆さん、あなたたちは今居る場所が安全だと感じるかしら? かつて精霊が棲んでいた土地で安全だと感じるかしら? その精霊たちは、かつて護っていた人々にあなたたちがやった事に満足していると思うかしら?

スーザンは七面鳥肉を完全に二分する。七面鳥肉は金切り声を上げた後、ぐったりと動かなくなる。右側の廊下の端にあるドアが開く。大柄な長髪の男性のシルエットが戸口に見える。

スーザン・ウォーターソン: 視聴者の皆さんにも、分かってもらえたら嬉しいわ。あたしたちの手は血塗れよ。

男性のシルエットが接近する。彼はライフルを取り出してスーザンに狙いを合わせる。画面が暗転する。銃声が聞こえる。銃声に続いて、“ヴィキャンデル=ニードの料理プログラムがお送りいたしました”というメッセージが画面に表示される。

番組終了後、当該番組を映していたテレビ画面は機能しなくなる。

記録終了

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