ちょっとした手助け
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ミシェルにとってこんなに楽しいデートは大学以来だった。ジェシカは友人の友人で、ミシェルが聞いたこともないバイオテクノロジー企業のセキュリティコンサルタントだった。そしてとんでもなくセクシーで、身長は6フィート1インチもあり、フェティッシュクラブの外では見かけたこともないほどタイトなレザーパンツを履いていた。しかもミシェルとの相性はピッタリだった! セブンダイヤルズのフレンチ・ビストロで夜を始めた2人は、やがてストランド街沿いの小ぢんまりしたカクテルバーに辿り着き、そこで何時間もお喋りしていた。午前零時を回り、私のアパートでもうちょっと話し合わないか、とジェスに切り出しかけたその時、ミシェルの電話が鳴った。仕事用の電話だった。緊急時専用の。

「ああもう。すまない」 彼女はその忌々しい機器を睨みつけた。「仕事だ。対応しないとマズい。すぐ戻るよ、約束する」

ジェスは軽く親指を立てた。「ご心配なく! 何処にも行きませんから」

ミシェルは彼女に笑いかけてから洗面所に駆け込み、ドアに施錠するとすぐさま電話のプライバシー結界を作動させた。

「こちら、ダール」

「こん畜生、やっと出やがったな」 相手はアパラチア訛りのある神経過敏なアメリカ人、副将のネルソンだった。「緊急事態だ。大至急ウェッジに来てくれ。デート中なのは分かってる、だが事は深刻なんだ、スキッパーが関わってるし、事務次長はあんたを名指しで要請したらしい、少なくともこのメールにはそう書いてある、なんでもジャカルタの—」

ミシェルは彼を遮った。「ああ、OK、電話でこれ以上詳しい話は無しだ。私は今安全な場所にいない。10分でそっちに着く」

彼女は電話を切り、暫しの自己憐憫に耽った。今夜の流れはとても順調だった。そうとも、仕事がそれをぶち壊しにするのは当然の展開だった。

「ふざけやがって」

現実と向き合う時が来た。彼女は洗面所を出て、ジェスに悪い知らせを伝えるべくテーブルに戻った。

ジェスは居なかった。勘定書の半分とチップを払うのに十分なお金を置いていったようだが、それだけだ — メモも、メッセージも、全く何も無かった。

「クソだ。マジでクソだ。こんなクソみたいな話がまかり通っていいのか」

ミシェルは罵詈雑言を吐き散らしながら荷物をまとめて店を出た。街路に出るや否やタバコに火を点けた。もう何ヶ月も禁煙しようと頑張っていたが、果たしてこんな状況で吸わずにいられようか。地獄に落ちよアルフィーネ。地獄に落ちよ財団。そしてまたなんと完璧なタイミングでやらかしてくれたことだろう。彼女はもう一服してから、東のスクエア・マイルへ向かった。

彼女の通り道には、ロンドンの中心部に佇むかの忌まわしき原始メーソン主義の膿疱、テンプル教会がある。ミシェルは敷地内に入れなかったが — ゴルゴモン教団の神聖なる誓約で、解体の意図無くそのような建造物に足を踏み入れることは禁じられている — フェンス越しに吸い差しを指で弾き飛ばし、敷石にタバコの染みが残るように願うことはできた。更にそこから数ブロック下ると、書籍出版業組合オフィスとオーガニックビーガン向けのケバブ風料理専門店 (明白な理由で現在休業中) に挟まれた脇道の奥に、グランド・オクシデント・ウェッジが身を潜めている。ゴルゴモン教団の立場が良好である時はいつもそうだが、ドアは施錠されていなかった。ネルソンは入口のすぐ内側でミシェルを待ち構えており、オフィスへ向かう彼女のすぐ後ろを歩きながら延々と話し続けた。

「なぁミシェル、いやその、エクメニクス・メーソンベーン、マム、あの、デートを邪魔したのは悪かったと思うよ、でもこれは本当に深刻なんだ、つまりこう、デフコン3ぐらいの深刻さじゃないかな、あんたに直接伝える必要があるらしくて、俺には何も教えてくれな—」

ミシェルはネルソンの目の前でオフィスのドアを力一杯閉めた。彼女はラテン語でゆっくり10まで数え、改めてドアを開けた。

「—15分以内に、旧MI666ビルのロンドン中央本部。スキッパーがそこで待ってる」 ネルソンはようやく息継ぎのために言葉を切り、ミシェルは彼がまた話し始める前に遮った。

「了解、ネルソン。今から向かうと伝えてくれ。まず頭をサッパリさせる必要がある」 彼女は再びドアを勢いよく閉め、視線を室内に向けた。ほろ酔いで特殊作戦に臨むわけにはいかない。素面になる頃合いだ。

血液の浄化は慎重を要するプロセスだ — 医療奇跡術師の中には、人間が体内にねじ込みがちな各種薬物・毒物の除去に必要とされる繊細な呪文や正確な術式、汚染物質を完全に取り除くべき状況、身体が独自に対処できる形態へと分解すべき状況、バックラッシュを軽減して患者から遠ざける手段などを学ぶのに何年も費やす者たちがいる。幸いにして、エタノールは簡単な部類に入る。人間は人間である限りアルコールで我が身を蝕み続けるので、酔い覚まし呪文の標準式はマーリン、モーゼ、ヘルメス・トリスメギストスを作者とする各バージョンがあるほど古来から伝わっている。

ミシェルのお好みはもっとずっと新しくて派手なものだ。彼女は息を整え、クリンゴン語で短いフレーズを唱え — 大学院生時代にこのバージョンの呪文を発明したICSUTの某教授お気に入りの神秘的な言語 — ゲップと共にエタノール蒸気の雲を吐き出した。雲は呪文のバックラッシュで発火し、印象的だが無害な火球に変わった。素晴らしいパーティーの余興になるし、他の呪文と違ってウォッカの汗を1時間かき続ける必要も無い。彼女は緊急用ブレザーを羽織り、ハイヒールをローファーに履き替え、出立する途中でネルソンのコーヒーを失敬した。


財団の連絡員は地下の会議室でミシェルを待っていた。とんでもなくセクシーで、身長は6フィート1インチもあり、流石にもうレザーパンツを履いてはいなかったが、完璧な仕立てのパンツスーツに着替えたことで、より一層魅力が引き立っていた。どちらも沈黙を破らぬまま、たっぷり5秒のアイコンタクトが続いた。

「どうも。エクメニクス・ヴォルジ、イフェゲニア・メーソンベーンだ」 ミシェルは手を差し出した。

ジェシカは目をしばたかせ、差し出された手をおずおずと握った。「お会いできて光栄です。財団特別連絡員のスーザン・ノークロスです」

また長い沈黙があった。2人はどうにか気まずいアイコンタクトを崩さずに会議テーブルに座った。ミシェルが先に折れた。

「良し、もうどうにでもなれ。どうせもう君にはみっともない運転免許の写真を見られてる。ミシェルと呼んでくれ」

「ああ、良かった。私も実はジェスですよ」 彼女は溜め息を吐き、無闇に座り心地の悪い椅子の中でぐったりした。「ごめんなさい、なんか妙な気分です」

「ああ。書き置き1枚残さずにデートをバックレるのと同じぐらい妙だね」 みみっちい嫌味だったが、ミシェルの知った事ではなかった。

「はい?」 ジェスの声は本心から驚いているようだった。しまった。「メールしましたよ。ええと、あなたに着信があった2分後ぐらいに」

「全然そんなの来なかった」 ミシェルは私用携帯を引っ張り出した。完全に電池切れしていた。「クソ。いや… 今のはただの嫌な奴になってしまった。すまない」

ジェスは肩をすくめた。「お気になさらず、いいんです、私もあなたがトイレから出て来るのを待つべきだったかもしれません。それで、受けてくれますか?」

「まずどういう事案に関わることになるか教えてもらえると助かる」

「着くまで言えません、ごめんなさい」 ジェスはテーブルの向こうから契約書とペンを滑らせた。標準的な秘密保持契約書式のギアスで、ミシェルが今までに署名してきた数十枚との決定的な違いは上部のロゴだけだった。「でもすぐに返事が欲しいんです。予定通りに動かなければいけないんです」

ミシェルは溜め息を吐いた。このまま帰宅し、テレビを見て、厳重に結界で護られた居心地の良いアパートにある寝心地の良いベッドで寝ることもできる。或いは、怪物の頭を撃ち抜くよりも、箱に閉じ込めて魂を餌として与える方が倫理的だと考えるような連中が作った魔法の契約書にサインすることもできる。どちらを選ぶべきかは明白なはずだ。しかし、ジェスは… 何というか、本当にセクシーだったし、ミシェルはミシェルで何週間も物を爆破していなかった。

「ああ、分かったよ、乗ってやるさ」 彼女は書類に仰々しく署名した。

「最高です」 ジェスは立ち上がり、契約書をテーブルから片付け、ドアへ向かった。「付いて来てください」

彼女はミシェルを地下2階への階段に案内した。降りていくと、ミシェルの第三の耳に何か響くものがあった。彼女が奇跡術感覚を完全に開放すると、エバーハート共鳴器の隠しきれないエーテル的な唸りが聞き取れた。

「おいおい、勘弁してくれ…」

「え?」 ジェスは片方の眉を上げてミシェルを振り返った。

「アポ―テーションは嫌いなんだよ」


5分後、閃光と吐き気の波に続いて、ミシェルはひび割れたアスファルトの上でゼイゼイ喘いでいた。「畜生、だからアポ―テーションは嫌なんだ。ここは何処?」

ジェスは笑顔を見せた。「後ろを見てください」

「おい、嘘だろ」

砂漠を睥睨する巨大な石灰岩のモニュメント、三大ピラミッドがミシェルの背後に聳え立ち、その向こうにはカイロの街灯りが見えた。2人はギザに居た。古代メーソン主義者の拠点だ — かつてエジプト全土がそうであったように。

「こっ… あの… もしかして今から…」 言葉が出てこなくなり、ミシェルはただピラミッドを指して大雑把な身振りをした。

「ええ。機動部隊が入口で待機してます、歩きながら説明しますよ」

「クールだね。クール、クール、クール」 ミシェルは幾度か深呼吸をし、ジェスを追って大ピラミッドの基部へと向かった。「あー、ええと。これは解体任務じゃないのかな?」

「今のプランは… うーん。多分プランQぐらいだったと思います。できれば古代世界の最後の驚異を破壊するのは避けたいからこそ、あなたに来てもらいました」

「私としては是非とも古代世界の最後の驚異を破壊したいところだけど、きっと誰もがキレ散らかすだろうし、通例としてまずい考えなのは分かるよ」

「どうしてあなたってそう - いえ、何でもないです」 ジェスは首を横に振った。「とにかく。カルト信者たちが世界を終わらせる儀式のためにピラミッドに立て籠もり、ピラミッドに元々備わっていた神秘的な防衛機構が再活性化され、その耐久性が死ぬほど高いんですよ。何層も重ね掛けされた物理的、精神的、奇跡術的、概念的な結界がある種の正のフィードバックになってるんです。最初に挑んだ奇跡術師は両足と前頭葉の半分を失いました。昨年あなたがインドネシアで打倒したカオス・インサージェンシーの手口とかなり似ているので、あなたなら何か見抜けるかと思いまして」

「どういうカルト信者だ?」

「実は、あなたを特に指名したもう1つの理由がそれです」 ジェスはポケットに手を入れ、1枚の写真を取り出した。「見てください」

写真はピンボケで、被写体の顔はカメラから逸れていたが、そいつが身に着けている紫と金の装飾が施された式服は一目で見分けが付いた — マスターメーソンの手袋、メダリオン、エプロンだ。


財団の機動部隊は大ピラミッドの基部、入口の真正面に指揮所を構えていた。エジプト軍の制服を着た長身の指揮官が2人を出迎えに出てきた。

エクメニクス・メーソンベーン。ノークロスさん。エータ-9のシャルーブ指揮官です」

ミシェルは差し出された手を取った。「エータ-9? “モグラネズミ”だね? '80年代にサン・パウロでエッシャー病が流行した時、私の前任者が君たちと協力していたよ。内部に非ユークリッド空間が広がっていると予想しているのか?」

シャルーブは溜め息を吐いた。「それはゼータ-9です。我々は“トゥームレイダーズ”ですよ。古代の仕掛け罠、怨霊、ミイラの呪いなどが専門です。見ての通り…」 彼はピラミッドに向かって雑に手を振った。「我々の本拠地みたいなもんです」

ミシェルは頷いた。「で、何をふっ飛ばせばいいんだ?」

「早速本題に入りましょう!」 シャルーブ指揮官はコンピュータ機器だらけのテントへ向かい、ジェスとミシェルは後に続いた。「敵は正面入口をデカい石板で塞いでいます。成形爆薬を試しても効き目が無く、部下の1人が突破しようとして… まぁ、悲惨な目に遭いました。どうも奴らはピラミッド本来の防衛機構を再活性化したようです。もし必要なら、エーテル撮像機を用意してあります」

ミシェルは首を横に振った。「いや、私は奇跡術師だ。ドアを指差してくれればいい」

実は指差される必要すら無かった。入り口を塞ぐ新たな扉が、周囲と不調和なこと甚だしかったからだ。黒玄武岩の一枚板は、淡色の砂岩に対して際立っていた。第三の目を閉じていても、ミシェルには石板の表面に彫られた印章の仄かな輝きが見て取れた。身体の目を閉じて魂の目を開くと、眩しくてほとんど何も見えない。ヒエログリフが隅々まで石板を覆い、ありとあらゆる色彩を網羅して輝いている。扉はフラクタル構造の光の網の中心にあり、ピラミッドの周りと上と内部に張り巡らされた魔法の糸が、頂上に再び結集してもつれた力の結び目を形作っている。古代の結界は確かに有効だが、更にその上に数千年かけて新たな結界が張られている。幾重にも重ね掛けされた神秘的な保護は全て、紛れもなくメーソンの手で更新・結合されていた。全く途方もない呪文だ — そしてミシェルはその砕き方をよく知っていた。

彼女は普通の目を開き、瞬きして精神的な残像を消し去った。「良し。必要なのは… ふむ」

ミシェルはあり得ないほど深くポケットに手を突っ込み、一塊のプラスチック爆薬、数本の線香、5ccのネズミの血液を取り出した。彼女の緊急用ブレザーは、大小問わずあらゆる緊急事態に対応するためにあるのだ。

「起爆装置と、チョークを何本か、それから…」 彼女は第三の目をもう一度軽く開いた。「卵1ダース。ああ、それともし買える店があれば、ファラフェルのラップサンドイッチ1個。夕食から少し経ってるんだ」


概念上、結界を破る作業は複雑ではなかった。重なり合った魔術の殻の奥底にも1つの弱点が存在した。内部に籠もっている魔術師たちが自ら要塞を崩し、脱出するためのパニックボタンである。ミシェルはそれを外部から押そうとしていた。

しかし、それを実際にやってのけるには、非常に複雑な呪文を山ほど行使しなければならない。ミシェルが15分ほどかけて、うんざりするほど込み入った曼荼羅を扉の正面の地面に描いていると、ジェスが沈黙を破った。

「ところで、どうしてゴルゴモンとフリーメーソンは犬猿の仲なんですか?」

ミシェルは印章から顔を上げて背伸びをした。休憩を取る絶好の口実だった。「私はこれから、高貴なる古代ゴルモゴン教団の最も深遠な秘密の1つを明かす。これを誰かに — 誰であろうとも — 広めたならば、その復讐は迅速かつ無慈悲なものとなる。条件を飲むか?」

ジェスが頷いたので、ミシェルは先を続けた。

「私が、そして全ての忠実なゴルゴモンたちがフリーメーソンを憎悪する理由は単純だ。フリーメーソンの教義は、精神感応力を帯びた地球外ケイ素生命体の一種族、カヴイアによる侵略の隠れ蓑でしかない。メーソンの建築家が手掛けたあらゆる建造物は、テンプル教会から、そう…」

彼女は横の壁を軽く叩いた。

「ギザの大ピラミッドに至るまで、そのエイリアンどもを建材に使用している。そうすれば、何も知らない地球人を洗脳し、奴隷労働者として使役できるからだ」

ジェスは不安げな表情だった。「えっ… 本当に? 真面目に言ってます?」

「まさか」 ミシェルはニヤリと笑って言った。「デタラメさ、今ここででっち上げたんだ。本当の理由は、君がゴルゴモンの一員となるまで明かせないが、まぁ間違いなく君の上司は反対するだろう。二股に割れた忠誠心がどうのこうのってね。ああ、丁度いい、物資が届いたようだ。ファラフェルは買ってきてくれたかい?」

しっかり買ってあった。彼女は夕食というか、朝食というか、夜食というか、ともかくそれをひとまず脇に置き、注意を卵に向けた。

「低温殺菌してない? 素晴らしい。自力で低温殺菌を打ち消すのは手間だからね」

図にはそれぞれの卵を置く場所が定められている。ミシェルは慎重に卵を並べた。例え1個でもひびが入れば、一連の仕掛けが早々と始まってしまう。卵を所定の場所に置くと、彼女はプラスチック爆薬をドアに貼りつけ、拳を鳴らした。

「みんな準備は良いかな? 私が大失敗しない限り、後ろに下がる必要は無いけれど、目を逸らした方が賢明かもしれない」

誰もがとりあえず後ろに下がった。ただし、ジェスだけは逆に前に出ていた。ミシェルは彼女に笑いかけた。

「そう来なくちゃ。スリー、トゥー、ワン…」

彼女は起爆装置を押した。爆発は無かった — と言うより、半メートルの半球の中に収まった爆発があった。衝撃波は呪文のエネルギーから力を得て、檻の中をあちらこちらへ跳ね回った。1個の卵からトカゲが、2個目からはやや小さな卵が、3個目からはレモンキャンディーの山が孵化した。残りの9個は僅かに浮かび上がってから、次々に破裂した。そして、ピラミッドの何処か、何層もの石と魔術の下で、結界ネットワークの要石 — 333等級マスターメーソンの認印付き指輪 — が真っ二つに割れ、地面に落ちた。その瞬間、結界は解け、巨大な玄武岩の板は砂と化して崩れ去り、財団機動部隊はフリーメーソンどもをぶちのめすために墓所へと雪崩れ込んでいった。

「いやぁ、良い仕事したなぁ」

ミシェルはファラフェルの包み紙を剥がして一口かじった。少し冷めていたが、魔法は電子レンジよりも更に上を行く。ほんの幾つか単語を唱えて火花が飛び散ると、ファラフェルはまた出来立てホヤホヤに戻った。彼女は指揮所から折り畳み椅子を拝借し、カイロの向こうから最初の朝日が差し込んでくる東方に向けた。ジェスが自分の朝食を持って加わってきた。

疲れ果てて寝不足のまま、2人はしばらく無言で座っていた。数分後、ジェスが口を開いた。「ねぇ、ところで… 今度の金曜日は暇ですか?」

ミシェルは危うくファラフェルを喉に詰まらせかけた。「2回目のデートに誘ってるのかい? もしその気なら、予定は空けられる」

「ええ、まぁその、もうこうなったら最初のデートは台無しですから、もう1回トライしてみましょう」

ミシェルは肩をすくめた。「どうかな、これまでのところは結構良かったよ。君は私を観光に連れて行ってくれたし、私は物をふっ飛ばせたし、今は2人でピクニックをしながら朝日を見てるじゃないか…」

「でもやっぱり、ちょっと妙です。仕事と遊びを兼ねるのはどうかと」

「ヴィニーは — いや、先々代のエクメニクス・ディオメデス・メーソンベーンのことだけど — もっと奇妙な初デートをした。南極での6日間、火山の噴火、何百人もの死んだナチス」

「う、うわぁ。結果はどうでした?」

「2人は結婚して、あー、もう70年になるかな」

「うぅーん。後任としては責任重大ですね」

「ああ、やっぱり結婚云々を思い悩む前に2回目のデートをすべきかもね」 ミシェルは少し思いを巡らせた。「スペイン料理をどう思う? 私が作るパエリアは絶品だぞ」

ジェスは笑顔になった。「あなたの指輪のサイズは?」

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