「あー………ついてねえ………」
空白
ぼやきつつ、この事態の原因になっている存在を睨みつける。
奴のおかげでクリスマスは家族と一緒に過ごせなかったし、新年を家族と迎える事もできない。
空白
「ったく、せめて活性化はしないでくれよ…?」
空白
俺が新年を太平洋某所で迎えるはめになっている原因たる存在は、今はおとなしく白旗を掲げて波間を漂っている。
頼むから交代になる1月某日まではあのままでいて欲しい。そうすれば予定通り帰れる。
そうすれば予定通り家族であの有名な遊園地へ行くことができる…
空白
「しっかしまあ、お前もいったい何をしたいんだ?ええ?」
空白
どこの国にも属しているわけでもないのに、気まぐれに商船や客船に襲いかかる船。
普段は三島型貨物船なのに、その気になれば豆粒ほどに小さい漁船にもクソでかいタンカーにも化けられる船。
人か、あるいは知性がある何かが乗り込んで動かしているのか、それとも遠隔操縦なのかそれすらもわからない船。
どうもバックには艦隊とか名乗る連中がいるようだが、やっぱり詳細はわからない船。
空白
「お前、今何を考えてたり何をしてたりするんだ?」
空白
あの船の内部はどうなっているのだろうか。
乗組員共が今年もお疲れ様、などと言いながら宴会でも開いているのだろうか。
それともただただ無人の船内で沈黙のみが支配しているのだろうか。
一切の照明が消されている船からは何も読み取れなかった。
空白
「…ま、どうでもいいか。」
空白
乗組員共が宴会を開いていようが中では何も起きてなかろうが、こっちには関係ない。そんなのは研究者達に任せておこう。
今監視を続けなくてはならないのには変わりはないし、俺が正月を家族と過ごせないのも変わらない。
ついでに当直だから酒も飲めないのにも変わりはない。
空白
と、腕時計の電子音が鳴る。
空白
20██年1月1日0時0分。新年。
空白
「…ハッピーニューイヤー、クソ野郎が。」
空白
船には何の動きもなかった。