「それ」はいつとも知れぬときから存在していた。
「それ」は何百恒河沙年もの間、継続してきた河の旅路を今現在もまた進んでいた。
「それ」はある日1つの恒星のごとく眩い彫刻を見つけた。
「それ」が生涯で初めて見る輝きであった。
「それ」は彫刻を内包した。
「それ」は恐怖、驚愕、不可思議を感じた。
ただ首を折るのではなく、目を離したら首を折るという制約がより恐怖を与えた。
その恐怖に対する収容は驚愕をもたらした。
壁をこするというほんの数行がより不可思議を与えた。
それらが見事にマッチし、████tもの脳漿をより駆け巡り定着するようになっている。
「それ」は自分は空虚だったと自覚した。
「それ」は春の暖かな太陽の如き光に気づき、見上げた。すると天の河の如く無数の星が光り輝いているではないか。
安心な全能者、世界を再構築する機械、封じ込められた非モラルピエロ、悪意の英雄譚、過去に向かって拡大するブラックホール…。
「それ」は狂喜乱舞した。
「それ」は己が求めていた物は此れだったのだと確信した。
「それ」は全てを内包した。
「それ」は己が恐怖、驚愕、不可思議、感激、嫌悪、滑稽で満たされていくのを感じた。
そこには彫刻とはまた違ったモノがあった。
「それ」は更なる天の河を探し世界を回した。
「それ」は悲叫した。
「それ」がいくら探し求めようと闇しかない。くすんだ星が散りばめられているだけであった。
ただのおもちゃの恐竜、ただの広がるミーム汚染、ただの喋る眼鏡、ただのメアリー・スー、ただの支離滅裂なモノ…。
「それ」は自分の内に耳を傾けた。
「それ」は静かに目を瞑り、角度から隔絶することにした。
「それ」は誤魔化した。私には思い出がある。素晴らしい星を知っている。それだけで十分だ。
そして「それ」の意識はミームの海に溶けてゆく——。
「それ」は眩い光を感じた。
もう光なぞ残っているはずがないのに。
幻だろうか。
いや…もう幻でも良い。
光を、もう一度。
「それ」は目を開けた。
そこには、新たな天の河が広がっていた。
「人を取り込み巨大化するおもちゃの恐竜」、「報告書をも通して拡大する『そこにいるねこ』の」ミーム汚染、「かつて先生だった喋る眼鏡」、「勝負を仕掛けないことによって封じる」メアリー・スー、「打ち捨てられたアイデアが集まった」支離滅裂なモノ…。
「それ」は喜叫した。
幻なんぞではない!そこにいる!かつての河ではない!削ぎ落とされ、追加され、本質が変化したのだ!
そこには、彫刻とも負けず劣らずの輝きがあった。
理解した。
自分は波打際で貝殻を見つけて喜んでいただけに過ぎず、その貝殻よりも雄大で荘厳な大海を知らなかったこと。
「それ」は更に内包すると決断し、実行した。
そして滝のように時が流れる。
毎日の様に星が生まれ、成長し、私を楽しませてくれる。
最初から素晴らしい輝きを持つ星もある。
最初はくすんでいる星もある。
しかし、再び現れた時には驚嘆すべき輝きを放っている。
これらは非常に素晴らしいことだ。
全てが輝くように出来ている。
私の大好物だ。
だが、最も困難な事があると私は知っている。
輝きを増させるよりも、難しい事が1つある。
それは、生み出す 事だ。
私は、それを成す全ての存在に感謝する。
そして、これからも続けて欲しいと望む。
願わくば、この思いが彼らに届かん事を。
私の旅は、終わらない。