Info
翻訳責任者: hitsujikaip
翻訳年: 2024
著作権者: SunnyClockwork
原題: About the Serpent
作成年: 2017
初訳時参照リビジョン: rev. 25.
元記事リンク: https://scp-wiki.wikidot.com/about-the-serpent
秦末、高祖劉邦が亭長であった時、豊西の沢に大蛇がいるという噂があった。劉邦がこの噂の出所を探しに行ったところ、一人の怪しい者に遭遇した。その男は蛇の顔と人の体を持っていたため、劉邦はこれを化け物か何かであると考え、剣を抜いて斬り伏せようとした。その男は、大変驚いて、「私は、伏羲、女媧の末裔であって、夏の遺民である。怪しいものではない。」と言った。
これを聞いて、その男の姿を改めてよく見てみると、男は、公卿が着るような装束を着て、宝石で飾られた帯を締めていた。これによって劉邦は確かにこの男が博識な者であるとわかった。このようなわけで、劉邦はその男に、神々、国々、諸々の王、獣たち、そして人々についての質問をすることにした。男は古いたとえ話を用いて説明し、一つ一つ答えていった。
神々について
天地は鶏卵の如き様相で始まった。盤古という神がこれを割り開いて、大淵が生じた。この大淵は帰墟と呼ばれる所である。神々は、蛍が灯りに吸い寄せられるように、帰墟へといざなわれた。神々はそこで互いに争い、互いの体を食らっていた。そのため帰墟は神々の墓でもあった。また、伏羲と女媧という名の陰陽二龍がそこに蟄伏し、神々を食らっていた。この二龍は交わって九人の子を産み、その子らはまた人々を生した。このような出自故に、人々は万物の霊長であった。
遥かな時が過ぎた頃、ある時二龍は互いに仇なして争った。伏羲の体は粉々になり、女媧は太歳に囚われた。人による支配は瓦解し、神々は歓喜に沸いた。
麒麟という名の、人の顔、鹿の体、そして白黒の文様が入った角を持つ一柱の神がいた。事の成り行きを聞いて、麒麟はその姿形を捨て、鎮星に逃れた。
顔のない神はこれを見て「もはやどうしてこれ程に二龍を恐れるのか。」と嘲笑った。
麒麟は「神々は貪欲な存在であるから、二龍が去った今、かれらは龍の末裔である九人の子供と人々を食べてしまうだろう。そしてもし二龍が帰ってきたら、かれらは二龍に食いつくされてしまうだろう。私はただこれを避けることのみを願っている。」と答えた。
顔のない神は「二龍は神々が争っているのと同様に互いに仇なしているのだから、心配することはないだろう。」と言って取り合わなかった。
麒麟は「もし二龍が争ったとしても、どちらか一方は生き残る。その時、神々は残った方にことごとく食べられて、胃袋の中に行くことになるだろう。」と答えた。そして、もはやそれ以上何も言うことはなく、鎮星に逃げ隠れた。
衆神如何
天地鶏子の如く始まり、盤古之を破り、遂に大淵有り。大淵は、帰墟なり。諸神の此に趨はしること蛍の火に趨る如し。又た相ひ争ひ相ひ食らふ。故に帰墟又た神墓と為なる。陰陽二龍、蟄伏し、一名は伏羲、一名は女媧、以て諸神を食と為す有り。二龍相ひ交り、九子を産有し、九子又た人を生なし、故に人万物の靈長と為る。
万八千歳を踰こし、二龍相ひ闘ひ、便ち有り伏羲の身は砕け、女媧は太歳に囚とらはる。人治毀やぶり壊れ、諸神相ひ慶よろこぶ。
諸神の中に麒麟なる者有り、人面鹿形なり。角に黒白紋有り。之を聞き、其の形体を棄て、鎮星に逃のがる。
無面の神有り、見て之を笑ひ、曰く、「竟つひに二龍を惧おそるること斯かくの如きか。」と。
麒麟対こたへて曰く、「神は、貪愚の至り。人は、龍の裔すゑなり。如今いま二龍尽ことごとく去り、諸神必ずや九子以て人に及びて食と為さん。二龍帰り来たらば、必ずや尽く諸神を噬くはん。惟だ願ねがはくは禍を避くるのみ。」と。
無面の神曰く、「二龍、諸神と一の如く、相ひ闘ひ相ひ食へば、慮おもんぱかるに足らず。」と。
麒麟曰く、「二龍相ひ闘はば、必ずや其の一ひとりは余らん。彼の時、諸神尽く腹中に入らん。」と。遂に再び答へず、鎮星に遁れ入る。
国々について
昔、猿の国と夏の間で戦いがあった。猿の主は獣王を使役し、樹母を召喚して、数多くの獣、鳥、草木を駆り立てた。夏の君は兵、銅製や鉄製の戦車を差し向け、城郭を消し去ることのできる兵器を配備した。
大きな争いは五十を数え、小競り合いは数え切れないほどであった。戦火の及ぶところでは、水場が干上がり、岩盤は砕かれ砂となった。蛮族はこれを見て大変驚き神の怒りであると恐れおののき、皆散り散りになって逃げた。
このようにして、戦火が止むことなく百年の時が過ぎた。ある時、夏の君姒芒は蛟に乗って大塩沢に行き、猿の主と会談を行った。
夏の君は言った。「獣を操るのは、龍の道である。機械を作り上げるのは、蛇の道である。龍は蛇を妻となし、故に獣種と機械とは源を同じくする。争いを続けたとしても得るものはない。互いに矛を収めようではないか。」
猿の主は問うた。「もし争いを止めたとして、我々は戦後どのようにして事に当たればよいだろうか。」
夏の君は答えた。「我々は各々の領地を支配するべきである。」
猿の主は再び問うた。「土地には広さというものがあり、限りがある。もしこれを取り尽くしてしまった時はどのようにすれば良いだろうか。」
夏の君は天を指して答えた。「銀河は無限である。そのような時は星々を治めれば良いだろう。」
猿の主はこれに宜った。猿の国は、西の土地と辰星、長庚、熒惑を支配し、夏は東の土地と太陰、歳星、鎮星を支配することとなった。このようにして戦いは終わったのである。
百年と少しの時を経たある日、太陽の精霊である金鳥の企みによって十の太陽が一斉に登った。猿たちは昼に休み、夜に働いており、夏の民は水の近くに住み、農業を行っていた。そのため、猿夏両国はこの災禍によって大きな被害を被り、混乱に見舞われた。その上、太陽の民は羲和、帝俊を旗印として祭り上げ、自らを太陽の子孫であると訴えて、それぞれ猿夏両国において反乱を起こした。
猿の国は、十の太陽の干渉を受けたため、反乱を鎮圧することができなかった。太陽の民は猿の国の財宝を盗ませ、また反乱させたため、結局、猿の国は崩壊してしまった。後には、わずかな生き残りのみが残った。
夏の君は、これを聞いて非常に驚き、軒轅剣を用いて太陽を撃ち落とせ、と太夫羿に命じた。羿は九つの太陽を撃ち落としたものの、残りの一つは逃げ果せた。しかしながら金鳥が墜落したところは皆火の海となってしまい、これによって夏の国土はみな荒廃してしまった。
このようなわけで、人々は「ああ、昔、猿夏両国はなんと栄えていたことだろうか。人々はこれを見て仙人か聖者かと思ったものである。また彼らは自らを天人であると考えていた。彼らが土地だけでなく、星々さえも分割して支配していた。しかしながら、今ではともに灰燼に帰している。」と嘆いたのである。今に至って人々が見る星の中におかしな輝きをしているものがあるが、それは猿夏両国の残滓である。
列国如何
古時いにしへ、猿の国と夏との戦いくさ有り。猿の主は獣王を馭有あやつり、又た樹母を喚よび、百獣、百禽、及び草木無数を駆かる。夏の君は兵俑、銅鉄の鋳する所の戦車を使ひ、又た利器を備ふ。城郭を夷たひらぐべし。
大戦は半百、小戦は数ふべからず。戦火の至る所、沢を凅こほらせ土と作なし、土を化かへ沙すなと為す。蛮夷之を見て大に駭おどろき、以て神怒と為し、一一遠遁す。
此の如く干戈休まず、百年を踰こす。夏の君芒有り、蛟みづちに駕のり大塩沢に至り、猿の主と会ふ。
夏の君曰く、「獣を馭るは、龍の道なり。機からくりの巧たくみなるは、蛇の道なり。龍、蛇を侶伴と為し、馭る所の獣、操る所の械からくりは、同源より出づ。再び戦ふは益無きなり、当まさに戈いくさ止むべし。」と。
猿の主曰く、「若もし戈止まば、当に如何すべき。」と。
夏の君曰く、「各おのおの一方を執とるべし。」と。
猿の主曰く、「地に大小有り、若し之を窮尽せば、則ち何如。」と。
夏の君天を指して答へて曰く、「天河無辺なり、諸星を取るべし。」と。
猿の主之に応ふ。遂に猿の国をして西地を守らしめ、兼せて辰星、長庚、熒惑を理をさめしむ。夏は東土を執り、並びに太陰、歳星、鎮星を掌つかさどる。此に至り、干戈止む。
又た百余年、十日斉出す。是れ金烏の致す所なり。金烏は、日の精魄なり。猿は、昼に伏し夜に出づ。夏民、水を逐ひて居し、農桑を事とす。故に猿の国と夏とは皆其の擾さわぎを受け、困苦に堪たへず。又た太陽の民有り両地に作乱し、各おのおの羲和、帝俊を以て首おびとと為す。曰く、「吾等は日の子裔なり。」と。
猿の国其と闘ひ、十日の故に因り、勝つことを得ず。太陽の民又た瑰宝を窃ぬすみ、獣王、樹母、及び百獣百禽をして休まず作乱せしむ。猿の国此に至りて亡ほろび、其の民十に一も存らず。
夏の君桀、之を聞きて大に駭き、大夫羿をして軒轅剣を以て十日を撃たしむ。九日は地に墜ち、一烏は脱逃す。然るに金烏の墜つる所、尽く火の海と為り、夏の地尽く毀やぶる。
故に人有り嘆きて曰く、「嗟乎。昔時むかし猿、夏両国、何ぞ其れ興隆するや。庶民之を見て、仙聖と以為おもふ、亦た以て天人と自居す。后土を分治し、兼せて諸星を有す。如今いま俱ともに塵土と為る。」と。而今、人の見る所の諸星の、閃爍非常なるは、是れ猿、夏の孑遺なり。
諸々の王について
昔、阿伽の王が大淵に祈り、三閻羅を召喚して不死を願った。閻羅はこの願いに対して、「願いを叶えるか否か、賭けをしよう。」と答えた。阿伽の王は彼の国の王族、臣民及び鳥獣を賭け金として、鬱塁と葉子戯を行い、閻摩と投壺し、地蔵と碁を打って、賭け事をした。
王は賭けに勝つことができなかった。遂に閻羅が貴族、庶民、家畜の魂を求めて間もなく、国に厄災が降り注いだ。疫病が大流行し、休むことなく戦争が勃発して、庶民は十に一人も生き残らなかった。生き残りは反旗を翻し貴族たちを殺戮し王を宮廷に閉じ込めた。
王は大いに恐れて、再び大淵に祈った。すると、王の呼びかけに顔のない神が「お前は一度死ぬ必要がある。そしてその三日後にお前は戻って来るだろう。しかる後に全ての血を飲めば、お前は再び生を得るだろう。」と応えた。これを聞いて王は自ら首を吊り、人々は挙国一致して王の自殺を喜んだ。王の死体は野にさらされ、鴉の群れはこれを啄んだ。
三日経ち、王城の生命は尽く死に絶え、屍はみな血を失っていた。神は従者を使いに送り、盃に民の血を注いで王に捧げた。王はこれを飲もうとしたが、その体は鴉に啄まれて毀損しており、誤って盃の血を零してしまった。血は流れて川となった。神は、「お前は生きることも、死ぬこともできない。」と嘆いた。
王は愕然として、再び血を求めたが、もはや得ることはできなかった。三閻羅は嘲笑し、鴉に化けて飛び去った。
諸王如何
昔阿伽アガの王大淵に祈る有り、三閻羅を喚び、曰く、「不死を願ふ。」と。閻羅曰く、「以て一博すべし。」と。鬱塁と葉子戯を為し、閻摩と投壺し、地蔵と奕し、並びに宗族、臣民及び鳥獣を以て賭く。
王勝つことを得ず、閻羅遂に顕貴、庶民、牲畜に魂を索もとむ。便ち災禍有り、疫病大に行めぐり、征戦休み無く、黎民は十に一も在らず。余は竿を掲げ起し、公卿は尽く戮し、王を庭に困す。
王大に懼おそれ、又た大淵に祈る。無面の神之に応ずる有り、曰く、「之を死して、三日にて返す。再び諸血を飲み、生を得るべし。」中庭に縊し、挙国之を慶す。屍かばねを野に曝さらし、群鴉之に飼やしなふ。
及ち三日、闔城尽く死し、俱に乾屍と為る。神従者をして至らしめ、玉盞たまうきを以て諸民の血を盛り王に献ぐ。飲まんと欲し、然るに屍身残破し、抓つかみ握にぎることを得ず、失手し之を翻す。諸血流れ河と為る。神嘆きて曰く、「生を得ず、亦た死も得ず。」と。
王大に駭き、再び諸血を求めんと欲するも、得べからず。三閻羅之を笑ひ、鴉と化り走る。
獣たちについて
殃君なる男が西のかたに住んでいた。ここはかつて猿国であったが、今は、狄瓦の治める地である。狄瓦は鬼道の巫女に仕え、邪神を崇拝している。その服飾は華夏の風俗に適うものであるが、人を食らい、奴隷と為し、または弄んでおり、恰も獣の如き本性を持っていた。そのため、支配下の人々は大いに苦しんだ。
殃君はこの暴政に耐えることができなかったため、夜闇に紛れて国を脱出した。殃君はそこで不末という名の伏羲に仕える僧侶に遭遇した。
不末は言った。「伏羲は蛇の父祖、金属の神、そして全知の存在である。お前の肌を銅に張り替え、骨を鉄に置き換え、臓器を機械に詰め替え、血を水銀に入れ替えることで、お前を苦しみから解放しよう。」
殃君はこれを受け入れず、「この体の血肉や皮膚や髪すら全て捨ててしまったら、それを人と呼べるだろうか。これは愚かな行いである。」と答えた。
不末は嘆いて、「神々に助けを求めるべきである。龍母に求めてはならない。」と言った。
かくして、殃君は不末と別れた。間もなく狄瓦の追手が追いつき、殃君は捕縛され、獣の檻に囚われてしまった。狄瓦は日取りを決めて殃君を食べようとした。殃君は神々に助けを求めたが、それに応える神は居なかった。
殃君は夜闇に対して泣き声をあげ、そこから遠吠えが響くのを聞いた。これは龍の鳴き声であった。その龍は殃君に「我が名は女媧、お前たちの母である。」と話しかけた。殃君は女媧を拝み、これが神であると悟った。殃君は檻の中の猪や羊を犠牲としてささげ、龍の下にいる六匹の獣たちに与えた。龍は喜び、「素晴らしい、お前を助けてやろう。」と応えた。
殃君は術者となり、龍、蛇、そして諸々の獣たちを使役した。狄瓦は力を得た殃君に敵わず、敗走して城を放棄した。殃君は「私は術者の王となる。」と宣言した。演説が終わると六匹の獣たちが参上して表敬した。そして都市の住民はみな六匹の獣に餌としてささげられた。
不末がこれを聞いて、僧侶を率いて殃君を討伐することにした。再び出会った殃君は四つの目、大きな口を持ち龍のように蛇に似ており、もはや人とは似ても似つかない姿となっていた。不末は「獣と争って、そして獣となった。ああ、なんと悲しいことだろうか。」と嘆いた。
殃君は圧羅にて敗北し、そして太歳に逃げ去った。これより後は、獣の檻に入ったように、日の光を二度と見ることはなかった。
群獣如何
殃君西土に居る有り。是れ猿国の旧地、狄瓦テキグヮの治なり。狄瓦は、巫蠱に事つかへ、悪神を崇ぶ。衣冠博帯と雖も、人を以て食と為し、或は呼喝、玩弄し、群獣の如し。民皆苦む。
殃君堪へず駆使し、夜遁よにげして、不末ブマツに遇ふ。是れ僧侶なり。伏羲に侍す。
不末曰く、「伏羲は、蛇の父なり。是れ金の神、大智慧者なり。当に銅を以て肌と為し、鉄を以て骨を置き、機巧を以て臓器に換へ、水銀を以て血と化す、汝の苦を解くべし。」と。
殃君願はず、曰く、「身体膚髪、之を捨て、人と為るべきや。是れ愚行なり。」と。
不末嘆きて曰く、「諸神を求むべし、龍母に求むべからず。」と。
遂に不末と別る。俄に、狄瓦の追ふものの至り、殃君を擒とりこにし、獣欄に囚ふ、日を択び之を食らはんとす。遂に諸神に求むるも、応ふる者無し。
夜に泣き、獣の音を聞く。是れ龍なり、曰く、「吾が名は女媧、是れ汝等の母なり。」と。殃君之を拝みて、神と以為ふ。又た欄中の豬羊を以て祭と為し、以て龍下の獣を飼やしなふこと六つ。龍曰く、「善きかな、当に之を助くべし。」と。
殃遂に術者と為り、龍、蛇、及び諸獣を牧有す。狄瓦敵せず、退走し、其の城を棄つ。殃君曰く、「吾当に術者の王と為るべし。」と。語畢りて、六獣来りて賀す。以て城中の民六獣を飼ふ。
不末之を聞き、僧侶を率ゐて殃を伐たんとす。之に再見するに、四目巨口なり。龍の如く蛇に似て、人に類にず。不末嘆きて曰く、「獣と相ひ闘ひ、反つて野獣と為る、嗚呼哀しきかな。」と。
殃君圧羅に於て敗れ、又た太歳に駆け入り、此より獣籠に入るが如く、天日を見ず。
人々について
秦の始皇帝の治世に、中華は統一され、蛮族は皆皇帝の威光に服した。また、世界中から異国の優れた人々が秦に来朝した。始皇帝は「朕は不老不死を望む。」と天下に宣告した。
盤甲という名のものが海外から秦にやってきた。この人物は、古代の種族であって、寿命に限りがなく、鳥や獣の言葉を理解した。盤甲は、竜と蛇の治世において建木の高塔が天地を貫き、楽土の庭園に獣たちが住んでおり、崑崙の殿宇に人々が住んでいた時代の話をした。また、盤甲は阿房宮を作り、高台を築くことによって星々を取り、獣たちを鎖につないで礎として、人々の言葉を記録して典籍を編纂し、始皇帝に献上した。
始皇帝は「不老不死となることはできるか。」と問うた。
盤甲は「もし陛下が不朽の業績を打ち立てれば、自ずと人々に尊崇され、永く心の中に刻まれるでしょう。」と答えた。
始皇帝は盤甲が献上した典籍を焚書した。盤甲はその行為に悲しみ、炎の光の中に紛れ込んで再び現れることはなかった。
魚鳧という名のものが蜀からやってきた。魚鳧は蚕叢の子孫であり、夏の遺民である。魚鳧は黄帝、堯、舜、そして禹王が伏羲の道に倣って政治を行い天下が安定して治まった時代の話をした。絡繰り仕掛けの兵隊を数万体あまり鋳造し、そして空を飛ぶ船を建造し、天の川を通り抜け、月に至った。
始皇帝は「不老不死となることはできるか。」と問うた。
魚鳧は「身体を機械に置き換えれば、老いることはないでしょう。」と答えた。
始皇帝は喜ばず、その行為は外道であると考え、却下した。
徐福が西のかたからやってきた。徐福は、内殿の死者であり、龍母のしもべであった。殃君が女媧としもべの六匹の獣を拝み、魔人たちを退け、獣たちを使役して、強大な力を保有していた時代の話をした。
始皇帝は「不老不死となることはできるか。」と問うた。
徐福は「可能です。」と答えた。
始皇帝は大いに喜んだ。徐福は五百人の児童らを犠牲とすることの許可を求めた。秦の始皇帝はこれを許可した。児童らは女媧に生贄として捧げられ、間もなく、六匹の獣が現れた。ついに秦の始皇帝は不老不死と強大な力を女媧から与えられた。そして「一日に一人の犠牲をささげ、私に感謝しなさい。」と女媧は告げた。始皇帝はこれに対して、「百人の犠牲を捧げます。」と答えた。「すばらしい。」と獣は言った。ついに始皇帝は犠牲となる人々を市民から徴集した。徐福はこのありさまを見て、東海に逃げた。
魚鳧はこのうわさを聞いて、驚愕して「盤甲は最上の仙人である。夏の国民は、龍の子孫であるが、徐福は実は獣の類であった。始皇帝は盤甲に諮らず、徐福に諮った。これは大きな過ちである。このような行為は、一人の永遠の命を得て、天下全体に災いが及ぶようなものであり、容認しがたい。」と言った。
ついに魚鳧はかつて造られた絡繰りの兵隊を率いて始皇帝を阿房宮に閉じ込めた。そして、これを地下深くに沈めこんだため、始皇帝は不老不死であったが脱出することはできなかった。
人如何
始皇の時、四海一統し、蛮夷皆王化に服す、又た四方の異士来朝したる有り。秦皇天下に告げて曰く、「願はくは長生を得ん。」と。
盤甲海外より来たる有り。是れ古の民なり。寿数に窮り無く、鳥獣の語に通ず。龍蛇治世の時、建木の高塔は天地を溝通し、楽土の園林は諸獣を畜有し、崑崙の殿宇は人の居る所と為ることに言及ぶ。阿房宮を造り、高台を建て以て星を摘み、諸獣を鎖して基石と為し、又た衆生の語を録し典籍と為し、秦皇に献ぐ。
秦皇曰く、「長生を得べきや否や。」と。
盤甲曰く、「不朽の功業を立て、自から当に万民の念ふ所と為り、長く心に存らん。」と。
秦皇怒りて、其の書冊を焚す。盤甲之を嘆き、火光に遁入し、復び見ず。
魚鳧蜀中より来たる有り、是れ蚕叢の裔、夏の遺民なり。黄帝、堯、舜、及び禹王の、伏羲の道を行き、天下大に治まることに言及ぶ。機巧の兵俑を鋳すること万余、又た飛舟を造り、天河を穿行し、太陰に達す。
秦皇曰く、「長生を得べきや否や。」と。
魚鳧曰く、「機巧を以て軀殻と為さば、以て不朽たるべし。」と。
秦皇悦ばず、視て外道と為し、棄てて用ゐず。
徐福西土より来たる有り、是れ内殿の使、龍母の僕しもべなり。術者殃君の、女媧及び其の坐下の六獣を拝み、諸魔を退け、群獣を馭り、偉力を有することに言及ぶ。
秦皇曰く、「長生を得べきや否や。」と。
徐福曰く、「可なり。」と。
秦皇大に悦び。徐福遂に五百の童男童女を犠牲と為すことを索む。秦皇之を允す。大龍に祭し、俄に、龍下の獣至る。果たして秦皇に長生及び偉力を以て許し、曰く、「日に一人を祭り、以て龍母に謝せ。」と。秦皇曰く、「当に百人を祭るべし。」と。大獣曰く「善きかな。」と。遂に天下の民を徴す。徐福之を見て、東海に逃ぐ。
魚鳧之を聞きて大に駭き、曰く、「盤甲は、至人なり。夏民は、龍裔のみ。徐福は、実は野獣の属なり。盤甲に求めず、而して徐福に求む、大謬なり。此の如きは、一人生を得て禍天下に及ぶ、取るべからず。」と。
遂に昔日造る所の兵俑を率て、秦皇を阿房宮に困す。又た地下に沈入し、寿窮り無しと雖も、脱出することを得ず。
その男が物語を終えると、劉邦は「人々はこの沢の中に妖怪がいるという噂をしていたので、手土産なしに帰ることはできない。」と言った。男は、「この蛇を斬ればよい。」と答えて、帯を地面に投げうった。すると、その帯は白蛇に変化し、劉邦はこの蛇を斬り伏せた。その後、男は再び姿を見せることはなかった。劉邦が蛇を抱えて帰還すると人々は皆驚いて、これは劉邦が帝王となる兆しであると噂した。