ある経理部のデスクに積んであった書類
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███/█/█ 2:34 被害報告書 担当: ██ ██

被害状況: 対象用の臨時収容室全壊、隣接した収容室半壊、廊下天井その他諸々の一部倒壊
修繕費用概算: ██████円

夜の静けさを妨げるのは、いつも人工的な騒音。常夜灯と着信音。重い瞼にブルーライトが刺さる。

確か、最後に担当施設の資料をまとめて、ひと段落着いたのが一日前のはず。新規収容室の施工から既存施設の破壊された部分の修繕用の経費資料、全部上司の机に叩きつけて家に帰ってきたのに。
軽度な話なら明日また職場に行ってから呼び出されて聴くことになるだろうけど、こうやって連絡が来るって言うことは、つまり、そう。担当施設でまたとんでもないことが起きたってこと。
電話の先ではその収容室がほとんど大破したとかいう。どうにか他の設備に被害が出る前に止まったらしいけど、あれの設計部署からいくらの費用捻出の願いが来たと思ってるのやら。新規じゃなくても高危険度用なんだから仕方ないんだけど。
はぁ、また私の年収を軽く超える紙面と睨めっこか。
 


 
███/█/█ 14:06 被害報告書 担当: ██ ██

被害状況: 対象用の臨時収容室全壊、該当の収容フロアの半壊、施設隔壁の一部損傷、共に収容されていた貴重品の全損
修繕費用概算: ████████円

遅めの昼休みに、固形栄養食と乳飲料を胃に詰め込んでいたら、上司に声をかけられた。嫌な予感と共に喉を通過していったモノの味はもう感じない。前回から三日、今度はまた収容室以外も破壊されたらしい。どうやら今回は一緒に貴重品も収容していたみたいだけど、それが形を保っていなかった責任は誰が取るのでしょう。まさか私じゃないといいけど。
 


 
███/█/█ 19:52 被害報告書 担当: ██ ██, ██ ██

被害状況: Dクラス職員監房半壊、関連設備の大規模な損傷
修繕費用概算: █████████円

帰り道に夕ご飯の買い出しによって、今日はいいお肉でも買おうか迷っていたら右ポケットに振動。前回から二日。しかも今度は収容室じゃなくて職員監房。担当が違うと言いたいところだが担当オブジェクトでもあるから職員監房の担当と一緒にやらなきゃいけない。急に仕事に駆り出された職員施設の担当経理も、数日スパンで資料を作らされている私も顔が死んでいる。初対面の空気は最悪だった。
 


 
███/█/█ 21:58 被害報告書 担当: ██ ██

被害状況: 対象用の臨時収容室半壊、廊下天井その他もろもろの損傷
修繕費用概算: ██████円

いいかげん早く寝たいんだけどなあ。前回から一日。どうやら今度は半壊で済んだらしい。それに新しいオブジェクトの性質も分かったとか。関係ない、いい加減にしろ。なんで昨日の今日なんだよ。
 


 
███/█/█ 16:22 被害報告書 担当: ██ ██

被害状況: 対象用の特別収容室半壊、関連設備への損傷
修繕費用概算: ██████円

ようやく仮設だけど特別収容室が完成。よほどのことがない限り大丈夫でしょうなんて思って仮眠をとっていた自分をバカだと思う。前回から二日。収容室は半壊。あれだけ意気込んでた設計部署の一人と話したけど、顔が死んでたわね。ああ、修繕費用と、今後破壊される部分も考えないと。
 
 
███/█/█ 18:34 被害報告書 担当: ██ ██

被害状況: 対象用の特別収容室半壊、既に破壊された設備へのさらなる損傷
修繕費用概算: ███████円

嘘でしょ。ふざけてるの?前回から二時間よ二時間。ついさっき修繕費用の計算が終わったところなんだけど。今度も予備の収容室を半壊。他設備に影響はないらしいけど、それが何なのか。あと何枚書いたら家に帰れるの。
 


 
███/█/█ 10:07 被害報告書 担当: ██ ██

被害状況: 対象用の臨時収容室全壊、関連施設への大規模な損傷
修繕費用概算: ████████円

大体前回から一ヶ月ぶりに連絡が来た。仮設の収容室が全滅したからまた既存の収容室に移して、割と持った方ね。ただ収容室は全損したらしいけど。設計部署のやつはウチは半壊で留めてるから優秀だなって喜んでたけど、馬鹿じゃないの。全壊でも半壊でも費用計算をするのは私なの。拳骨で済んで良かったと思いなさい。
 


 
███/█/█ 15:11 新規建設費用報告書 担当: ██ ██

費用対象: 新規に博物館の建設、付随する特別収容室、関連設備、展示用の美術品
施工費用概算: █████████円

前回から九日。なんか担当しているものの収容手順が確立したとか何とかで上司から呼び出された。それから、それに伴って完全な特別収容室を作るみたい。設計書を見て私は3回くらい卒倒するかと思った。偽装博物館の建設なんて、もし破壊された時のことも考えたら心臓がいくつあっても足りない。今日家にちゃんと歩いて帰れるかしら。

それと…

何が

だって良く考えたらあいつに壊された分を合わせると、あいつには50億円くらいの価値があるんだなあって、ふと思ったんだ。

よ!

現場はお気楽なこと!
 
腹が立ったからアイツのために私がいくらの経費資料を作ったか再計算してやった。占めて総額█████████円!
私がどれだけ働いたらこの額になるのかって上司にキレたら、報告書に書いておくように頼んでおくと笑ってた。笑い事じゃないってのに。

はぁ、ほんと
 
 
 
世界で一番頭にくるわ。

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