第二の演説
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ヒュブリス卿はウィズダム卿の対極に座していた。彼のしるしはカタルであり、王冠をそのシンボルとしている。彼の右目は世界を見ることを拒み、彼だけに色のない未知の世界を見せている。彼の左目は勇気を宿していたが、関心のない彼にとっては、いつも悩みの種となるばかりであった。彼と賢者の間には困っている人や価値のない人がおり、彼は自身がそのような人間よりは上であると信じている為、胃の中の酸でもかけてやるのだ。

ダエーバイトでは、彼は決して死なないと伝えられている。本の終わりに彼の死は含まれていないからだ。信じるか信じないかは、あなた次第であるが。

ヒュブリス卿は大層狡猾で、十分な時間さえあれば公平評議会を常に、自分の有利な方へと動かせるほどと言われている。彼の力は100人分に匹敵すると言われているが、最大の武器は声である為、その力の行使の必要性はない。彼は人の心へと訴えかけ、戦の最中に人が彼の元へ寝返るように仕向けるのである。ヒュブリス卿の表情が揺るがない意思を示せるのは、彼の目をみて、彼の声を聞けば、敵の忠誠心を揺さぶることすら出来るからだ。

ヒュブリス卿は人を欺き、操る力を持ち、その策略に完璧な耐性を持つのはウィズダム卿だけである。彼は常に裏切り者の側におり、賢者の疑念を説得を出来るにも関わらず、賢者の意見を変えられない。

ヒュブリス卿は耐久性も優れており、仮に彼が真っ二つに切り裂かれようとも、頭の無い彼の半身が生き返り彼として戦うとされている。戦闘中、死の運命にある敵が自身の肉へ刃を突き刺したとしても、彼はそれを無視して敵へと話しかけるだろう。特に頑健な者でさえ、彼の爪がその運命を奪ってしまう。ヒュブリス卿は、能力のある全てのエスピィの中で、誰よりも耐久性が高く、誰も彼を打ち負かす事は出来ないと彼自身も自負しているのだ。

彼の賢者へ対する対抗心は永遠を生きるダエーワを信仰している為、その心は終わりなき不屈のものである。彼は評議会の十人の構成員がウィズダム卿の名声を落とし、反旗を翻すようにすれば、ヒュブリス卿が勝利を得られると信じているのだ。

スタレルは嘆き悲しんだ。

ヒュブリス卿は幽霊のような顔をしているが、その顔は石で造られている。塩のように白くありながら、岩のような硬さを持つ。彼に言葉は人々の心に突き刺さる為、口から話される事はない。ヒュブリス卿が表情を変えるのは彼と話した人の記憶の中だけであると言われている。

それだけでなく、ヒュブリス卿は首が長く筋が通っているので、常に話しの間相手の顔を見る事が出来る。加えて、彼はその皮膚から汗のように冒涜的な言葉を垂れ流す為、顔を体から離すことで嫌悪感の囁きをかき消している。彼は憤慨する卿でもあり、彼の無数にある爪は、彼に従わなかった人の血肉にまみれている。

長老達の語る神々の黄昏の話によると、ヒュブリス卿は昔から存在していたが、今日のような姿ではなかったらしい。私たちの時代よりもずっと昔の時代には、彼は二つのものを持っていたが、今はもう一つだけとなっている。それは古代のタラスクの着用した殺された貧者で出来た仮面である。

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