by stormbreath
やぁ! 僕の名前はオル・ショック!
住み心地の良い愛情たっぷりの、できれば自由に駆け回れる広~いスペースがある家を、スリー・ポートランドの辺りに探しています。 (誰にも見られずに走り回れるなら、スリー・ポートランドの外でも大丈夫!) ウィルソンズの人たちは僕がどういう種類の生き物かよく分かってないんだけど、とっても良い子なのは僕自身がよく知ってる! みんなはオオカミと犬の合いの子のウルフドッグか、ある種の飼い慣らされたオオカミだと思ってるみたいだ。確かに僕は犬みたいに行動するからね! |
でも他の子たちとは大違い。僕は普通の犬には無い特殊能力を沢山持ってるんだよ。 例えば、いつも何処からともなく姿を現す癖がある。それに犬よりずっと力強くて足も速いから、お世話の仕方も結構違ってくるだろうね! 軋みがちな床板の上を歩いたって、僕は絶対に足音を立てない。目は暗闇で光り輝く - まるでランタンみたいだって言う人もいるんだ! そして、見掛けの予想よりもずっと大きな声で遠吠えすることもできるのさ。(ごめんね、お隣さん!) |
僕についての重要事項!
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昔の里親さんたちからのメモ!
行儀が良くて訓練されてはいるが、自主性が強い。気が乗らなければ滅多に指示を聞かないとは言え、私が昔引き取った中にはもっと聞き分けの無い犬もいた。不品行な振る舞いは全くしない。
屋内トイレを絶対に使おうとしないが、用足しに外に出してやる必要もほとんど無い - 彼なりの手段で勝手に出ていく。どういう手口か見当も付かないが、1分前に近くで寝そべっていたかと思えば、次の瞬間には家の外で立ち木に小便をかけている。全てのドアを確かめても、おかしな所は何も無い - ドアの前には、改めて家に入れてくれるのを待つショックがいるだけだ。
普段のショックはかなり物静かな犬 オオカミです。クンクン鳴くこともほとんど無く、ただ座って大きな目でこちらを見つめるばかり。あまり活発ではなく、一日の大半は家の中でゴロゴロしています。とても冷静で静かなオオカミなので、その点は正直言って非常に素敵でした。
でも… ある晩、彼が遠吠えするのを聞いて、やっぱり根底ではオオカミなんだと悟りました。ショックの遠吠えには、今まで聞いたどんな犬の鳴き声とも違うものがありました。僕も今までオオカミの遠吠えを結構聞いてきましたが、あれは全く別物です。哀しげな、何かを悼むような遠吠えでした。背筋がゾッとして、寒気が全身を駆け巡りました。何より最悪だったのは、ショックがそれを1時間近く続けたことです。
ごめんなさい、僕がどれだけ望んでも、こんな風に遠吠えするオオカミを育てることはできません。自分の事を自分で済ませられる静かな犬を探していたので、ショックはぴったりだと感じていました。でも住宅管理組合が翌朝怒鳴り込みに来たので、オオカミは飼えなくなりました。すみません、ウィルソンズの皆さん。惜しかったです。
俺は長年にわたって沢山の、あらゆる品種の犬を飼ってきた。仲良くなれなかった犬はほとんどいなかった。オル・ショックに関しては、まぁな、仲が悪いわけじゃないが、いまいち反りが合わない。これっぽっちも反りが合わない。オオカミだからという理由だけではなさそうだ。
ショックは奇妙だ。良い子だが、実に奇妙な坊やだ。窓の外をじっと見つめていることが度々あるし、いつもとても悲しそうに見える。昔の飼い主が恋しいのかもしれない。助けになれれば良かったんだが、ショックは時々調子が悪くなる。俺は勿論引き取らないが、きっと何処かに受け入れてくれる家が見つかるだろう。
私たち (伴侶と私) はこの狼を愛している。子供たちはそれほどでもない。
先日、私たちの家に強盗が入った。幸いにも未遂に終わった。私は当時家におらず、連れ合いと子供たちだけだった。連れ合いは2階、子供たちは1階に居て、オル・ショックはその時眠っていた。ごく穏やかな一日だった。
そして、何処ぞのろくでなしが家に押し入ろうとした。悲鳴を聞いた連れ合いが下に駆け降りると、子供たちは全く危険な目に遭っておらず、ショックは食い千切った強盗の腕をのんびりと噛んでいた。子供たちは恐れおののき、衝撃を受けてはいたが、無事だった。
私も連れ合いもショックを飼い続けたいと思っている - 彼は家族を救ってくれた。だが子供たちはもうショックと同じ部屋に入ろうとしない (前から少し彼を警戒していたが、今回の事件でそれが酷くなったようだ) 。
卓越した番狼である。
縁組についての更なる情報は:
住所: スリー・ポートランド、ノース・ディアウェイ通り31番地
電話: (503)-555-0187
Eメール: moc.liamg|snoitulosefildliwsnosliw#moc.liamg|snoitulosefildliwsnosliw
Void: Wilson's Wildlife Solutions! (⁂wilsons-wildlife)
送信者: アンダース・ウィルソン
受信者: セレナ・アンダーソン
日付: 2012/5/11
セレナへ、
オル・ショックの正体は黒妖犬ブラック・シャックだ1。コンサルタントを数人呼んだけれど - ハイ・ブラジル出身の専門家も1人いる - 全員間違いないと言った。最初の誰かさんがどうにか黒妖犬を飼い慣らしたとしても、ヘルハウンドが良いペットになり得ると考えるほど頭の悪い人間がいる確率は相当低い。雷は同じ場所に2回も落ちないんだ。
僕らは何人かの里親にショックを預けることができたけど、彼はどの家でもせいぜい1週間しか続かなかった。ショックが永住できる家は存在しないという証拠だとは思わないか? しつけが行き届いていても、家族のペットに向いているとは限らない。魔法のオオカミを探し求めていて、尚且つ面倒を見てあげられる人はそうそういない。
僕はショックがいつも悲しんでいるのを、多分昔の飼い主に捨てられたせいで心に傷を負っているのを知っている。君がショックのために可能な限り良い家を見つけようとしているのも知っている。彼のためにウィルソンズにできる事があるかもしれないと知っている。そうだよ、セレナ、僕だって分かってる。本当だ。
ただ、僕らがショックの引き取り手を見つけるのは無理かもしれない。そろそろ代案を検討し始める時期じゃないかな - 彼をボーリングに移すとか、監督者たちに頼んで問題を解決してもらうとかさ。
素晴らしい選択肢じゃないのは分かってる。でもこのままオル・ショックの里親を募集し続けることはできないよ。なるべく早く返信してくれ。僕だって好きでこんな事を勧めてるわけじゃない - ショックは良い子だ。
よろしく、
アンダース・ウィルソンより
送信者: セレナ・アンダーソン
受信者: アンダース・ウィルソン
日付: 2012/5/17
アンダース、
今日、1人の男性がオル・ショックの里親募集ポスターを持って、スリー・ポートランド・ウィルソンズ・ワイルドライフ・シェルターを訪れました。彼は受付デスクまで来ると、先程ポートランド島から来た時にポスターを見つけたと言いました。そして、オル・ショックに見覚えがあるような気がするので会いたいとも。
私たちがその男性を - ミスター・ナイトと名乗っていました - 囲い場に案内するや否や、オル・ショックは飛び跳ねながら吠え始めました。ナイトさんは囲い場に入ってもいいかと訊ね、私たちは大丈夫だと言いました。(おかしな話ですよね、普段ならそんな事は許可しないのに。どうしてあの時は認めてしまったんでしょう - ショックの反応に心動かされていたんでしょうか?)
ナイトさんが囲い場に入っていくと、ショックはすぐさま彼を地面に押し倒して覆い被さりました。あの一瞬は少しだけ不安になりましたが、ナイトさんが笑い始めたので、ショックは彼の顔を舐めているだけだと気付きました。あの子はこれまで誰にもそんな事をしませんでしたよ。
ナイトさんとショックは数分間一緒に遊びました - あんなに幸せそうなショックを見たのは初めてです! 駆け回り、飛び跳ね、お腹を見せてゴロゴロ転がっていました。私たちがここ数年間お世話してきた子と同じ犬だとは信じられませんでした。
ナイトさんは正式に里親になるため、オフィスに向かいました。話によると、オル・ショックは元々彼の家族のペットで、兄弟の1人がお世話していたそうですが、数年前にその兄弟に何かが起きて、ショックはその時はぐれたに違いないとのことです。ナイトさんはポスターの写真を見てすぐショックだと気付き、半信半疑で確かめに来たのでした。
やっぱり、ペットと飼い主の再会ほど素敵なものはありません。ナイトさんが旧友を連れて去るのを職員総出で見送りましたよ - リードすら必要なく、1人と1匹、仲良く並んで歩き去りました。
なのにあなたときたら、ショックがハッピーエンドを迎えるとは思ってなかったんですからね。その考え方はウィルソンズにあるまじきものですよ。
— セレナ
送信者: ゲイリー・ハープ
受信者: ティム・ウィルソン
日付: 2012/6/20
きっとディアウェイのスリー・ポートランド・シェルターで数日前に何があったかはもう聞いているだろう。例の“シカゴ・スペクター”がみかじめ料の取り立てに来た事件だ。スリーポートの警察はあんまり優秀じゃないから、俺たちとしては支払うしかなかった。
とりあえず、それに関しては、次回の会議で監督者たちに助けを求める必要はなくなった。実際、話題に出さないのがベストだと思う。
今日、シカゴ・スペクターがまた来た。スリーピースの黒いピンストライプ・スーツを上品に着こなした男が同伴していた。フェドーラ帽も被っていた。まるでギャング映画から抜け出してきたようなその男の隣を、オル・ショックが歩いていたんだ。そしてその後ろから恥ずかしそうに項垂れて付いてきたのが、先日押しかけて来たチンピラどもの親玉だった。
スーツを着た男は責任者と話したいと言い出したんで、先日の夜にスペクターに対応した俺が引き受けることになった。俺が2人 (とショック) をオフィスに通すと、スーツ男はすぐさま謝罪の言葉を口にした。
彼は、自分がスペクターの指導者で、手下が俺たちからみかじめ料を取り立てたと聞いた時は思わず憤慨したと説明した。もっと早く謝りに来たかったが“時期が悪かった”らしい。君たちは何年も僕の犬の面倒を見て、再び出会わせてくれた親切な人たちだからね、というのが彼の言い分だった。
先日来たチンピラの親玉は、お金の入ったブリーフケースをテーブルに乗せて謝罪した。ナイトは、取り立てたお金は全額返すし (実は数えたらちょっと多かった) 、今後はみかじめ料を心配する必要も無いと言った。ウィルソンズがシカゴ・スペクターの代わりにやってくれた事に対する、せめてもの恩返しだと。
2人は立ち去り、ショックはそのすぐ後を付いて帰っていった。ナイトは俺に名刺を渡し、もし他所の連中と揉めたら電話してくれと言った。
ウィルソンさん。俺たちはそれと知らず、マフィアのボスの友達になっちまったらしい。