アハシマ
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黒の女王・ホローポイント、カタログ動作チェック完了。セッションスタート。

妾は黒の女王・ショウロウじゃ。

黒の女王・グラファイトも到着したわ。…大丈夫?顔くしゃくしゃだけど。

……ダチュラです……ありがとう、私のことは気にしないで……。

亡き最愛のにこのセッションを捧げましょう。進行は黒の女王・カルミナが務めます。


ベースライン

まずは定型通り、実例に共通する要素の説明からお願いします。アハシマとは、日本国淡路島の地下に存在する巨大な岩石構造体であり、大まかな外観はホモ・サピエンスの胎児に類似している。これほどの構造を内包する長楕円体の空洞が淡路島の地下に存在し、かつ2000年以上の長期にわたって島の自重による崩壊を起こさないでいる原因は不明であり、何らかの物理法則の改変を伴うものと見られる。多くのタイムラインでは、アハシマは長い年月をかけて少しずつその体積と質量を増し、それに応じて島の空洞も拡大していく。実例の際限ない成長の結果として、西暦2000年から前後50年程度のどこかの時期に分娩イベントが発生する。分娩イベントの経過は各タイムラインごとに多種多様だけど、イベントが成功裏に終わった場合、最小でも全長750m級の神学的・終末論的な岩石生命体が淡路島の地上に誕生することは共通するわ。

外界から地中のアハシマ内部にアクセス可能なルートは一つだけ確認されており、大抵の実例では海面に近い高さに存在する天然の洞窟の一つという形を取る。しかしこのルートは一方通行であり、アハシマが地表に出現しない限り脱出は不可能である。民間人や超常コミュニティの調査によれば、アハシマの体内は人間にとって快適な環境であるとは言い難い。アハシマの体内に囚われた人間は、体内の至る所から滲み出す岩漿によって身体を溶かされ、白き異形へと成り果てるとされておる。外に出られぬ異形の者は体内で独自の集落を作り、悠久にも等しい時間の中で互いの生まれし時代を超えた交流に勤しむという。ただし、この毒素の危険性はアハシマが成熟するにつれて薄れていき、産まれる直前には生身でも影響を受けることなく探索が可能になるようじゃ。この生命プロセスのどれほどの割合を神学的作用が占めているのかは不明だが、いずれにせよ実例内部へアクセスするのは極めて危険と言える。内部調査が目的なら、使い捨ての人間を動員できる団体に任せておくように。別の目的があるのなら…私にはただ幸運を祈ることしかできない。詳細な情報をありがとうございます。

必須条件

この神格存在がタイムラインに存在するために必要な要素は何でしょうか?

  • まず、淡路島、日本列島、それらを含む地球が最低限必要だわ。否。地球があれば、日本列島の形成が完了している必要は必ずしもないようじゃ。その前身となる存在がアハシマの親として振る舞うであろう。神学的実体の母子が海原を闊歩するようなタイムラインでは、人間の文明が醸造される余地の存在する可能性が極めて低いということを除けば、ショウロウの意見は正しいと思われる。彼女は希少な例外の一つであることを付記しておく。
  • 日本列島がきちんと存在するタイムラインに話を戻すけど、その場合にもう一つ必要なのは、アハシマの成長のために栄養を送る機構が正常に作動していることね。あたしは今までにその機構の断片を2ヶ所見つけているわ。大抵の場合、一つは田沢湖の底に、もう一つは鬼界カルデラの奥深くに。どちらが欠けた場合でも、その時点でアハシマの成長は止まり、やがては死胎の形をしているだけの何の変哲もない洞窟へと変わることでしょう。地盤の強度不足による淡路島の崩壊に実例が耐えられれば、の話だが。アハシマ周囲の空洞も全て破綻するからな。

実用性

私たちはこの実例から何を得ることができると考えますか?あー…それって今この場で議論しても大丈夫な内容かしら?私は詳細を記録する必要があると考えるが。ダチュラ?……ああ……彼女のためにも、全てを……。ご協力感謝します。ええ、そうね、わかったわ。今までに述べた通り、アハシマは極めて暴力的で危険な実体よ。誕生した後に放置されれば、速やかなタイムラインの崩壊を招くわ。物理的にも、宗教学的にもね。成熟したアハシマはその宇宙における支配種としての人間を無数に生み出す力を持ち、世界の人間はアハシマを親とするものへと置き換えられていくじゃろう。新たな人類は古い人間の生き残りを捕らえてアハシマへと献上し、新たな神は信者と生贄を分け隔てなく平等に踏み潰すことでそれに応えるじゃろう。人間を産生する行為は先述したアハシマの生命プロセスの変化と関連を持つものかもしれないが、詳細を確認し得る方法がタイムライン上に残存しない場合が多いため、仮説に留まる。いずれにせよ、あたしたちに面と向かって口を利くことを許してくれるような存在じゃないのは間違いないわ。

協力関係を結ぶことができない相手をそれでも活用しようとするなら?アハシマが活動可能な状況を保つよう、タイムラインの局所へ干渉することは考えられるだろう。あくまでも崩壊させたいタイムラインが存在すればの話だが。…そして、あの女にはそれがあった。誕生直前のアハシマを外敵から防護するために、あの子は自身が持つあらゆる手段を尽くしてタイムラインへの干渉を行なったのよ。ただ、その結果は…。……止めてあげられなかった……許してくれ……。当該タイムラインについては後述すべきでしょう。賛同する。ひとまずダチュラには一度落ち着いてもらうべきだろう。一つ言えるのは、ダチュラの行動は可能な範囲で最善であり、あの結果は私にも予期し得なかったということだ。

傷つきやすさ

次に移りましょう。この実例を破壊するために必要な手段は何ですか?誕生を完遂し、超巨大な神格としての実体を地表へ露わにしたアハシマを抑制することは極めて難しい。頻度の高い宇宙の流れで言えば、世界オカルト連合が擁する対神格用の軍勢を総動員してようやく五分。仮に勝利を収めたとしても周辺への二次被害は計り知れず、超常社会の隠蔽体制の崩壊は免れぬじゃろうな。実例が地中にいる段階なら、まだ幾らかやりようはあるわ。さっき言ったようにエネルギー供給路を遮断したり、生還させることを度外視して決死隊を送り込んだり。ただ、タイムライン上の主流テクノロジーを使う場合、こっちの方法でも1人2人の人間だけでやってのけるのはとても無理だと思う。いずれにせよ、アハシマの分娩イベントが発生する時期を超過した後も人類の文明が存続しているタイムラインでは、基本的にどこかの時点でアハシマの破壊は完了している。ただし、誰が、どうやってそれを行ったかは千差万別だ。このセッションではその点を共有すべきだと考える。ありがとうございます。各タイムラインにおいて、どのようにしてアハシマは打ち倒されたのか?今後はそれについて議論していくことにしましょう。そして、彼女がやったことも……。そうね、それは一番最後に回しましょうか。


実例: タイムライン A-036

まずは私が確認した実例を2つ示すことにする。当該タイムラインにおいてアハシマの分娩イベントは2014年に完遂された。地表に出現した実例は明石海峡を徒歩で渡海し、本州に上陸して琵琶湖方面へ進行しようとしていたことが示唆されている。この実例は誕生直前から神学的な認識阻害作用を強く発達させていたため、一般社会には不明な原因によって圧壊した淡路市街の光景のみが報道された。アハシマは本州上陸直前で財団・GOC連合軍と会敵し、11時間の激闘の末に破壊が完了した。死傷者数は公的なものだけでも5万は下らないが、それらは非異常性の地震災害によるものとして処理されたようだ。超常隠蔽社会体制の決定的な崩壊が引き起こされなかったことを鑑みると、このタイムラインは比較的幸運な転機をとったと判断できるだろう。念のため前もって補足しておきますが、各タイムライン間の時間的な位相のずれは、放浪者-“図書館”間の接続が開始された時期の差違により発生しているものであり、その基線の一つとして私たち各人の父が失われた日を使用することが可能です。

実例: タイムライン B-229

次に、分娩イベントの発生が阻止された例を述べる。この実例は1891年に地中での成長を停止し、1年後に地下の空洞内にて崩壊した。不特定多数の肉塊が実例を内部から食い破り、更なる自己増殖の末に空洞は有機物によって充填されるに至った。結果として、分娩イベント阻止事例でしばしば引き起こされる淡路島の崩落が発生することはなかった。私にはどの時点でアハシマ内部に肉塊が侵入していたのかを特定することはできなかった。このタイムラインでは、1870年代から日本国内におけるサーキシズム宗派の活動が激化していることが知られているわ。国内統治体制変革の過渡期に乗じて、ヨーロッパ諸国から直接的に持ち込まれたようね。淡路島内の小集落へ信仰を広める活動中に、誤ってアハシマ内部にアクセスしてしまった布教者がいたのではないかとあたしは推察しているわ。

実例: タイムライン F-384

次はあたしから2つ紹介するわね。このタイムラインでアハシマが誕生したのは1992年のことよ。私が知るタイムラインの中でもとりわけ巨大な個体で、淡路島の地下から現れたというより、島そのものが這うように動き出したと言った方が正確ね。A-036とは対照的に、この実例は誕生後に南下して太平洋へと向かっていったわ。ところが日本の経済水域の境界に差し掛かった辺りで、実例は突如として消えてしまった。消失地点の周辺の海底にはそこへ辿り着くまでの巨大な這い跡だけが残されていたわ。ひとたび降臨した実例が破壊前に消失するのは極めて異例です。何か思い当たる原因を挙げられますか?アハシマが人類の拠点に危害を加えない位置へと移動したことを受けて、隠蔽を急いだ正常性維持機関が淡路島の消失に対する情報統制を強めたことが間接的な理由じゃないかと睨んでいるわ。というのも、しばらくしてサンニコフ島の新聞が、幻海極北の外れでアルマダの爆撃中隊と人型島嶼が物理的に激突した事件を号外として大々的に報じていたから。ある一定以上の体積まで実例が巨大化すると、実例自体が「島」と見なされ得る、と考えるのが妥当だろうか。もはや人類社会に可能な理解の範疇を超え、記憶に残すことも許されなくなった島として。

実例: タイムライン G-527

次のタイムラインは誕生前に仕留めたパターンね。実例が破壊されたのは1949年、実例を内包する空洞内に転移した人員による実例外部からの神学的破壊行為が首尾よく成功した。特筆すべきは実働人員の少なさかしら。彼らは「神殺し」をたったの5人でやってのけたわ。…あれを「人」と数えて良いのなら、だけど。日本の超常団体にとって、魔術的行為の代替手段としての肉体改造術は昔からの十八番じゃな。御名答。第二次世界大戦後の日本における超常勢力の再編に伴って、蒐集院上層部の職員の大多数が日奉いさなぎ姓で占められるようになったようね。アハシマの破壊を主導したのは日奉目薬木みつばはな、数多くの神格をその身に宿す異形の巫女として知られた存在よ。私はこの人が公的に記録されているタイムラインをここしか知らないから、彼女の人となりについては不明な点だらけだわ。日奉家の人間が戦後も表立って活動しているタイムラインはさほど多くない。ただ、公的にせよ内密なものにせよ、地中のアハシマに引導を渡した事例数が最も多いのが日奉家に属する勢力であることにはほぼ疑いがない。

実例: タイムライン D-752

このタイムラインは…ショウロウの出身地ですね。左様。この宇宙の日本は永く未開の地として扱われておった。多くの宇宙で発生している天地開闢、つまり古代の超常組織による神格の討伐事象、これが何らかの要因で正常に完了しなかったのではないかという見立てがなされておる。その結果として本来であれば紀元前遥か昔に斃れているべきじゃった身重の神格が、西暦1945年までその命を繋ぐことになった。妾の父は日本の津々浦々に散らばった神格の断片を研究するためにこの地へ入植し、そのうちの一つを永く守護することを告げて妾と別れたのじゃ。詳しい身の上話をありがとう。それで、このタイムラインにおけるアハシマの所在は?親と運命を共にしたと聞く。この宇宙における日本の開拓に最も重要な役割を果たしたのは原子爆弾じゃった。列島の地を踏みしめる子連れの母の上でそれが炸裂した時、パイロットは親子の能面のような顔がはっきりと視認できたと手記に書き残しておる。アハシマの体高であれば顔まで見えて当然じゃろうな。岩造りじゃから能面に例えるには些か凸凹し過ぎていたと思うがの。最期の時まで、肉親と一緒にいられたのか……幸せなことだ……。

実例: タイムライン K-998

次のタイムラインに関しては私が確認したので、私から報告します。この世界で実例が起動したのは2048年であり、誕生の瞬間までにその存在を探知していた勢力は存在しませんでした。その後、実例は島に駐屯していた日本国自衛隊により速やかに爆破処理されました。誕生後、自衛隊による爆破処理…はい?何ですって?もう一度?ええ、日本国の、自衛隊による、速やかな、爆破処理です。馬鹿じゃないの!?地上に降臨が完了した神格を?非超常団体が!?何をどうやったらそんなことになったのさ?うるさい!弔いの場ぞ!ホロー、ちょっと慌てすぎよ。ごめん!思考回路がエラーを吐いてた。はい、長くなるので掻い摘んで話しますが、このタイムラインでは1998年以降、世界各地が神学的巨大実体の発生を含む散発的な超常事件に巻き込まれています。これは早々にヴェールの崩壊を招き、それまで超常現象と縁のなかった一般民衆を発展させる強烈な動機付けをもたらしました。50年間で公的組織の持つテクノロジーは超常性の有無を問わず飛躍的に向上し、結果としてアハシマ誕生時点の人々はもはや神の存在を歯牙にすら掛けなくなりました。俄かには信じがたい現象ですが、確かな事実です。うーん…申し訳ない、きちんと説明されてもまだ信じられない。常識から著しく逸脱したタイムラインの社会がこれ程の長期間を存続可能だとは。環境の激変に対する人間の適応能力はあまり舐められたものじゃないってことが分かる良い事例ね。他のタイムラインの「看守さん」たちにも教えてあげるべきじゃない?私たちと仲の良い方々の多くはそれを望むでしょうが、実際それでうまくいくかどうかは私には保証できませんね。健康な世界を悍ましい混沌に沈めるがごとき行為には、少なくとも私は賛成できかねます。

実例: タイムライン O-925

さて…そろそろ良い時間になっただろう。ダチュラ、心の整理はついているか?……わかりました。始めましょう……。辛い話になるでしょうが、話して頂けることを私たちは嬉しく思います。……O-925のアハシマが誕生の兆候を見せたのは1994年末……当時、同時多発的な神格発生現象を重点的に調査していた私は……同じことに興味を持ってくれた彼女に、まさに神格誕生の瞬間を見学できるかも、とO-925のことを教えてしまいました……まさか、あんな使い方をするために話を聞いていたとは思いもよらなかった……!落ち着いて話を続けるのじゃ。ここの者たちがお主を責めることはない。ありがとう……O-925に向かった彼女は、現地の蛇の手の指導者の一人だと偽って、財団に向けてアハシマの存在をリークしました……生まれ出るアハシマを財団に防護させ、その危険性を知る他団体に妨害させないようにするために……。世界の看守たろうとする者に対する適切な常套手段だ。あの子が実際に引き連れていた手勢は、O-925の財団が起こした過誤によって滅亡の危機に瀕したタイムライン、Z-132から来たものたちだった。人類の繁殖が絶望的となった世界。そして、あの子…そう、黒の女王・スターリング本人もその生まれで、世界崩壊の元凶に対する並々ならぬ殺意を纏っていたのよ。あたしが思わず怖気を震うほどの。当然、程なくして、財団側もアハシマの危険性に気づきました……事前に行った内部調査の結果を見て、財団は実例を体内から破壊するために動き出し……それを見越していた彼女は、アハシマ内部の財団部隊を撃破して世界の滅亡を決定づけるため、手勢と共に実例の中へと突入したのです……必ず自らが勝利し、神格の降臨を尻目に悠々と“図書館”に帰還できることを、信じて疑わずに……!Z-132に由来する超常物理学的携行兵器のポテンシャルには目を見張らざるを得なかった。私が所属するタイムラインの社会もこの分野にはある程度精通しているものと考えていたが、あれほど高水準なものは私の人生で一度たりとも見たことがなかった。O-925の財団なら尚のことだ。私はあの女の持つ自信が決して虚構でないことを知っていた。そう、彼女が自分にできる最大限の周到な準備をしていたことは疑いない事実のはず……でも……現にこういう結果になったんだから……。…続けられますか?……1995年初頭……アハシマの分娩イベントの推移を調査しようと、いつも通り財団に潜り込んだ私がデータベース上に見たのは……誕生目前で頭が体内に落ち込むように崩れ去った実例の写真と……ああ……。大丈夫?……あれは……剖検の写真だった……腹を裂かれて横たわった、彼女の……ね。嘆かわしいことだ。予期し得ない帰結であり、紛れもない最悪の結果だった。黒の女王の一人は敗北し、その命は永遠に失われたのだ。

悲しいお話でした。しかし私には、皆様から提供された情報だけではスターリングが敗北した理由をつけることが困難だと感じます。財団と戦うにあたって不足のない武装は所持していたはずでは。妾が後から調べた限り、事前に立てられていた計画から外れる事案が2件ほど発生していたことが察せられる。彼女の進言によってアハシマ周辺に防備を敷いた財団は、確かに他の人間を一人たりともアハシマの下へ通さなかった。…じゃが、海の底に巣食う人ならざるものが財団の監視を掻い潜り、アハシマへの突入を許したことが記録されておった。奴らの棲息地は確かにアハシマの近場じゃが、両者に如何なる関係性があったのかは預かり知れぬ。鳴門海底都市の生物は海底に沈んだ神格の分霊から生じたと噂されているわ。でも、その神格がアハシマのことを指しているわけではないと思う。近所同士で、お互いに仲が悪かったのかしら。もう一つは、アハシマ体内に囚われていた元人間たちが、彼女の目論見に反して破壊勢力に協力的な態度を取ったことじゃ。彼らはアハシマと共に生きる悠久の時を選ぶことができたのに、敢えてそれを拒んだ。財団が事前の内部調査時に彼らと何らかの交流を行なった可能性が高いと見ておるが、潜入した使い捨て人員が己の果てるまでに異形の者たちに何を語り、如何様に彼らの心を動かしたのかは、財団自身にも把握できておらんようじゃ。言い換えると、スターリングは財団という「人間の組織」に対しては間違いなく勝利を収めていたが、財団の存在するタイムラインに属する「人間でないもの」たちの予期せぬ反撃により勝機を逸することになった、とも言えるのでしょうか。……彼女は、決して愚かではなかったと信じています……自分の世界を崩壊させた仇敵である人間を倒す力を、確かに持っていました……それでも、その仇を含む世界そのものの抵抗には、敵わなかったのだと……そう理解することにしています。復讐からは何も生まれないことが改めて実証されてしまった。あの女が燃やした底知れぬ怨念の炎が、神の命を、そして自身の命をも焼いたのだろう。大いに悔やまれる。

この悲劇は、自由度の高いタイムライン間の移動手段を保有する一個人が、タイムラインに対して行える干渉の限界について再考する余地があることを示唆するものだ。タイムラインの住人から見てあたかも全能の存在のように振る舞えるとしても、実際のあたしたちは決して全能じゃない。こうして“図書館”で過ごしていると、どうしても忘れがちになる事実ね。……私にも、絶対に許せない敵は存在します……父の仇、世界の仇……でも私は、奴らがしでかした所業に……彼女とは違う方法で対抗しなければならないと思っています……彼女の死を、無駄にしないために。いずれにせよ、妾のかけがえのない同胞が一人、ここを去ったという事実は残る。今のわしらに出来ることは、同胞の死を静かに悼むことじゃろうて。お疲れ様でした。淡路島の神格実体に関する長きにわたるセッションを通して、皆様には単なる知見の集積に留まらない確かな実りがもたらされたことでしょう。それでは、私たちの最愛のに改めて哀悼の意を捧げ、セッションを終了することにしましょう。…黙祷!

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