クレジット
タイトル: SCP-001-JP - Ave Maria
著者: ©︎
amamiel
作成年: 2018
Foundation Collective
維持され続ける意識
"我々は暗闇の中に立つ"
クローラー: SCP BOT | クエリー: SCP-001-JP とは | サーチ: MARY SUBNET
オプションフィルタ | アンド: Gabriel ? | 自動接続: 有効
アイテム番号: SCP-001-JP
オブジェクトクラス: Yesod
特別収容プロトコル: SCP-001-JPはサイト-01地下の機密収容施設において、コールドスリープ状態で収容されます。当該施設内部は完全にオートメーション化されており、O5評議会メンバー過半数の承認を得られない限り、如何なる人員の立ち入りも許可されません。認可外の人間による当該施設への接近行為が認められた場合、全ての対象者は即座に終了されます。
SCP-001-JPの健康状態は常に自動診断・監視され、その胎内に新たなSCP-001-JP-αもしくはSCP-001-JP-βの受胎が確認された場合、双方の状態に応じてプロトコル・アナンシエーションが適用されます。出生後のSCP-001-JP-α/-βは自動保育器にて収容され、規定年齢に達したSCP-001-JP-αのみが財団の児童養護施設へと移送されます。
SCP-001-JP-β出産後に死亡したSCP-001-JPの遺体は、回収後即座に焼却処分されます。また、SCP-001-JP-βが規定年齢に達した場合、その実体は新たにSCP-001-JPとして再分類、再収容されます。
説明: 20██/██/██現在、SCP-001-JPは異常な生殖能力を有するモンゴロイド女性の人型実体であり、単為生殖に類似したプロセスを経ることでのみ受胎します。この受胎現象のメカニズムは現在まで解明されておらず、その発生間隔や規則性も未だに不明です。その一方で、他の身体機能に関する異常性は一切確認されていません。
受胎現象によって生成された胎児は、約9割のケースでSCP-001-JPとは異なった人種になります。それにも拘わらず、通常の胎児と同様の速度・過程を経て成長し、一切の異常な振舞いや性質を示しません。また、生成される胎児は以下のSCP-001-JP-α/-βの2種類に分類することができます。
SCP-001-JP-αは、SCP-001-JPの遺伝子情報を一切有していない胎児です。上記の通り、SCP-001-JP-αは単為生殖に類似したプロセスを経て受胎しているにも拘わらず、あらゆる検査機器は両者が親子関係に無いことを証明します。なお、出生後も一切の異常性を示すことはなく、一般的な同年代児童と比較しても身体的な差異はありません。
それに対して、SCP-001-JP-βは、SCP-001-JPと完全に同一の遺伝子情報を有する胎児です。上記の通り、SCP-001-JPと胎内のSCP-001-JP-βの人種が異なっている場合であっても、あらゆる検査機器は両者が遺伝子的に同一の人間であることを証明します。なお、SCP-001-JP-βに限り、その性別は必ず女性となります。
また、SCP-001-JP-βの受胎は、SCP-001-JPの身体年齢が30~50歳程度の間に必ず発生する現象です。これによって受胎したSCP-001-JP-βを出産した場合、その24時間以内にSCP-001-JPは急激な身体的衰弱を起こし死亡します。その後、SCP-001-JP-βは満14歳を迎えた時点でSCP-001-JPと完全に同様の生殖能力を獲得します。
現在までに記録されているだけでも、SCP-001-JPの死亡は少なくとも███回発生しています。一部では、ベニクラゲ類(Turritopsis spp.)等に類似して見られる生活環のように、SCP-001-JPがSCP-001-JP-βとして、ある種の"若返り"を行う現象とする説も挙げられていますが、依然としてその詳細は明らかになっていません。
SCP-001-JPの出自に関しては、財団設立時点で既に収容下へと置かれていたとする記録のみが残されています。それに加え、大半の資料はデータベースより削除・検閲されており、閲覧にはO5評議会メンバー過半数の承認が必要指定されています。また、現在適用されている特別収容プロトコルに従い、SCP-001-JPに対する検査・実験及びインタビューの試みは無期限に凍結されています。
▶ このアクセスポイントは、関連ファイルの閲覧条件を満たしていません。
"私はドローンではありません"
▶ 接続したことのあるオネイロイ・ネットワークに自動的に接続しています。
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首都ミリアム抽象地区より、オネイロイもしくは夢界実体からの接続リクエストを検出しています。
照会作業が完了しました。当ホストへの接続を許可します。
アクセスポイントより、他のオネイロス型幽体は検出されませんでした。
アクセスポイントより、他の敵対的な夢界実体は検出されませんでした。
御機嫌よう、夢界の友よ。
君がそちらへと戻ってから、凡そ2年が経った。君はようやく全てを思い出し、ここへと辿り着いたのだろうか。そうであるならば、このメッセージは読み飛ばしてもらっても構わない。だが、自身の記憶が未だ曖昧なものであり、その曖昧な記憶を頼りに偶然ここへと辿り着いたというのであれば、以下に続くメッセ―ジを読み進め、全てを思い出す必要がある。
まず、君は自らが何者であるのか、それを理解しているだろうか? また、ここへ至るまでに読んだであろうSCP-001-JPの報告書について、どこまで真実を知っている? そもそも、かつて君が所属した財団の目的を覚えているのか?
端的に言おう。君はSCP-001-JPが見ている夢の中の住人だ。そして、それは君だけじゃない。O5評議会メンバーや幾つかのサイト管理官たち、更には財団の上層を構成する人員、その大半はかつてSCP-001-JPの夢界、潜在意識の都市に住まう存在だった。我々は赤子として受肉することで、彼女の潜在意識より、物理的な肉体をもって文字通り産み落とされたのだ。そして君も再び、我々とともに現実の固い地面を足で踏み締める機会を得ようとしている。
何を言っているのか、よく分からないか? それでは全ての始まり、SCP-001-JPのことから話そう。Zachariah、より適した心象の風景描写を。
"この幻は終りの時にかかわるものです"
▶ クラスII 疑似オネイロス型幽体の操作を実行。心象内の壁紙は問題なく上書きされました。
目の前に広がる草原を走駆する1人の少女
だが、同時に少女は彼女の両親とともに、神殿にて自らの神へと祈りを捧げている
草原の彼女は、祈る少女の潜在意識に広がる草原を駆ける夢見オネイロイである
我々は彼女のことを知っている、それはかつて我々が抽象であった時の微かな記憶
時代は紀元前まで遡る。SCP-001-JPは元々何の異常性も持たぬ、どこにでもいるユダヤの娘だった。強いて言うならば、両親ともに神への信仰心に人一倍厚く、そして彼女自身もそんな両親に習う形で神を一身に信仰していたくらいだろう。もっとも当時であれば、別段おかしな話でもないか。
初め、我々の多くはそんな彼女の夢界にて生まれた、非常に曖昧かつ抽象的な存在でしかなかった。ある者は草木であり、ある者は虫や動物であり、ある者は道具や概念であった。それ以外は、非肉体者の夢界探求者オネイロノートがたまに通り過ぎていく程度。なんてことのない、牧歌的な心象風景が広がる、ありふれた潜在意識の世界でしかなかった。
だがある時、奇妙なオネイロイの集団がこの夢へと流れ着く。彼らはただ、自分たちは単なるオネイロイの集団コレクティブであるとだけ名乗った。聞く話では、彼らは我々の世界の現実とは異なる、既に滅び去った世界の現実より、自らの肉体を放棄して純粋なるオネイロイ、非肉体者と成ることで脱出を果たした集団であるとのことだった。如何なる要因から、彼らがどこにでもいる少女のありふれた牧歌的な夢へと流れ着いたのかは定かではない。そして、彼らの抽象は目に見えて弱り切っていた。
彼らは我々に商談を持ちかけた。彼らは、自らの抽象を休めるための止まり木となる都市を、少女の夢の中に築く許可を求めたのだ。そしてその見返りとして、夢界から現実という永続的な世界へと至るための技術を、我々に全て譲り渡すと提案をした。彼らが語る現実という未知なる世界の存在・知識・永続性は、我々にとってあまりにも魅力的であった。そのために、我々は少女のオネイロイに断りを入れることもなく、ただ二つ返事で商談に応じた。もっとも、少女のオネイロイは、自らが夢の中の存在であることにも気付いていなかったのだが。
我々との商談を終えると、まず彼らは少女が信じる神の使徒の写し身を造り出し、彼女のオネイロイへと接触を試みた。
"おめでとう、恵まれた方。主があなたと共におられる"
▶ クラスII 疑似オネイロス型幽体の操作を実行。心象内の壁紙は問題なく上書きされました。
神の意志による婚約は、少女の心象を少し大人びた内装へと上書きする
牧歌的な風景は数を減らし、多くは神を讃える建造物へと様変わりしている
その信仰心は崇高なものであったが、同時にその純真性はどこか危な気にも見えた
嗚呼、そうしている間に、神の御使いは彼女の夢界へと姿を顕した
彼らは写し身を通して神の使徒の名を騙り、受胎告知を行った。そして、これから起こる全ての出来事が神の御業であり、神に仕える者としての役目を"永劫"に全うせよとも告げた。彼女、そして彼女のオネイロイは無垢であり、その信仰心は我々の想像よりも高潔なものであった。今思い返せば、なんと酷い仕打ちを強いたのだとも思えるが、かつての我々は今のように思慮深い存在ではなかった。これこそが、ただの少女がSCP-001-JPになった瞬間だ。唯一の救いは、もはや彼女及び彼女のオネイロイは全ての意識を喪失していることくらいか。
そして、SCP-001-JPは胎内に子を宿した。それは受肉した我々の指導者でもあった。その者は夢界にて抽象の土塊であったが、かつての我々の中で最も聡明であり、明晰だった。現在ではO5-1と呼ばれる彼だが、初の現実において、彼はコレクティブより与えられた知識で多くの奇跡とされる現象を起こして見せた。それこそが財団の発足へと繋がるのだが、まあ、この話をあまり長く話す必要はないだろう。
ともあれ、先駆者に続く形でSCP-001-JPによって我々の仲間、残り12人のO5評議会メンバーやその後任者たちは受肉し、次々と現実に産み落とされた。当然ながら、これは財団の介入によって語られぬように隠匿された物語の内の1つとなった。更には、コレクティブが他の人間の夢界でも神の使徒の名を騙り、夢から我々を手助けしていたことも。
もう分かるだろう。SCP-001-JP、並びにコレクティブによって今日の財団、人類があるのだ。もっとも、現在ではコレクティブは首都を別のホストに移し、我々と行動を共にせず、オネイロノートとしての自由な活動と、失われた技術の再開発に努めることを望んだのだがね。
我々は現実で死ねば元の夢界へと降下する。そして、SCP-001-JPは再び我々を受胎し、また我々を現実へと顕現させる。更には、自身のオネイロイすらも受胎し、新たなSCP-001-JPとなる新たな自分を繰り返し生成し続けるのだ。全ては現実を維持し続けるために。
"これがあなたがたへのしるしである"
▶ クラスII 疑似オネイロス型幽体の操作を実行。心象内の壁紙は問題なく上書きされました。
遥か昔の記憶、我々は議論を交わしていた
そう、我々は受肉した、13の夢界実体であった
彼らにより与えられた知識と知恵により、我々の集団コレクティブは構築されるに至ったのだ
だが、現在までの道程は決して平坦なものではなかった
取引や目的など投げ出し、今の現実を謳歌すべきだと言う声は幾度となく上がる
それでも、我々は真の意味で現実に立つ日を信じ、この場所を維持する
これで思い出しただろうか? 君はO5評議会メンバーの1人、再びSCP-001-JPより産まれ落ちるのを待つ夢界実体。だが、未だ思い出せぬどころか、これを知ったことで苦悶し、嫌忌すら抱くのであれば、忘れてくれて構わない。またミリアムの首都に戻り、夢の中の生活を過ごしてくれても構わない。他にも産まれてくる夢界実体や非肉体者が居るのだからね。
さて、君がまだこのメッセージを読んでいるということは、前回の現実での記憶を完全に取り戻したか、あるいは記憶がなくとも財団職員として産まれ落ちることを良しとしたかだろう。では、ここからが本題だ。我々とコレクティブの間に成立した取引、その中で彼らが我々に求めたものがもう1つだけあったのだ。
既に話した通り、SCP-001-JPによって我々のような夢界実体や非肉体者のオネイロイは受肉し、現代に至るまで財団として人類を保護、維持し続けてきた。これこそが彼らのもう1つの要求に他ならない。彼らは我々に様々な異常存在の知識と情報を与えた上で、それらの脅威から現実を保護し、いずれ全ての異常存在を収容するように求めたのだ。彼らから与えられた情報、その中には彼らの世界を終末に導いた原因となったのであろうオブジェクトの目録すらもあった。だが、彼らの情報により、我々はそのオブジェクトに類似する存在の収容、取り扱いにも成功している。
なぜ彼らが全ての異常存在の収容を求めたのか、未だにその真意は分からない。人類が滅びれば全ての夢界も失われ、彼らもまた居場所を失うからだろうか。もしくは、全ての異常存在が消えた安全な世界で、彼らもまた現実へと降り立ち、闊歩、もしくは元居た世界のように支配するつもりなのか。あるいは彼らもまた、かつての世界においては、我々とはまた別の財団のような存在だったのか。全ては仮定に過ぎない。
更に、我々は長い年月の中で幾つかのミスを犯している。SCP-001-JPの収容、維持、運用についてだ。かつては現在のように、他の人間のオネイロイ・ネットワークより遠く隔離された状態ではなかったためか、我々とは異なる行動原理のオネイロイが受肉し、現実へと顕現する事態が幾度となく起きていた。そして、彼らの多くにも異常存在の知識が与えられ、彼ら自体が異常存在となるか、新たに異常存在を創り出すケースさえあったのだ。
しかしながら、我々の目的は現在も変わらず、いつの日か全てを収容し、現実を平静のものとする。そしてその時こそ、我々が真の意味で夢の暗闇より目を醒まし、光差す現実に立つ日となるのだ。その日が訪れるまで、我々は夢想に描かれた様な全ての異常を確保し、収容し、保護するのみ。
……アナンシエーション・プロセスを実行中です。しばらくお待ちください。
アナンシエーション・プロセスを完了しました。
続けて、インカネーション・プロセスへと移行します。
プロセスの完了には長時間を要する場合があります。
それまでの間、しばらくお休みください。
"夜明け前が一番暗い"
▶ 夢界実体の置換処理を実行中です。しばらくお待ちください。処理が完了すると意識と抽象は一時的に失われます。
全プロセスを完了しました。
そして、新しいお誕生日をおめでとうございます。
C:¥miryam.psyをスキャン中……設定条件を満たす夢界実体は検出されませんでした。
Gabriel ver.4.05をシャットダウンしています。定例ファイルの更新後、Gabriel ver.4.05は自動的に再起動します。