アンブローズ・NYC: 唯一無二の“食事処”

唯一

“食

事処”

かつて見た中で最低。
文責: アーロン・キングストン
10分で読了可。
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お断り: 私はまず最初にチャズ・アンブローズ氏自身への直接の質問を載せることにした。読者諸氏は暇な時にでもこのレビューの冒頭を読んでいただいて構わないが、恐らく皆さんはチャズ・アンブローズではないので、必ずしもその必要はない。もしあなたがチャズ・アンブローズであるならば、何はともあれ次の文章に目を通していただきたい。


アンブローズ様へ

アンブローズ・NYCは如何なる経緯で開店に至ったのでしょうか? あなたはその過程でどのように関与しましたか? あの店舗のほぼ全てのものにあなたの名前が付いている以上、きっと相当深く関わっておられたことでしょう。あなたはご自分の店舗の評判や料理の質に誇りを持っていらっしゃるので、きっと少なくとも一度はアンブローズ・NYCで食事をなさったことでしょう。あなたが以前にあの店舗で食事をしたと仮定して、何故そこで提供された料理はあなたの厳格であろう基準から合格と見做されたのでしょうか? それともあなたは日常的にあのような類の食事を - あれらを“食事”と呼べるほどにあなたが寛大であるかは疑問ですが - 摂っていらっしゃるのでしょうか?

今までアンブローズ・NYCの“潜入調査”を行ったり、一般の顧客の目線から接客対応を体験する機会はありましたか? あったならば、その接客をどう思われましたか? あなたがどの店舗でも宣伝し、誇っているクオリティに達していましたか? 注文した料理はテーブルに届きましたか、或いはメニュー表で見た覚えすらない謎めいた品が供されましたか? 料理は時間通り迅速に運ばれてきましたか、或いはそれらしい概念に近付くことさえありませんでしたか?

答えが私の予想 (そして恐らくは望み) 通りであれば - 即ち、あなたがアンブローズ・NYCの店内に入ったことが一度も無いならば - 是非とも足を運んでいただきたい。必ずや私と同じような食事体験を為さるでしょう。逆に、もしあなたがあの店舗での経験を快く思うのであれば、そんな可能性は全く以て狂気の沙汰であり、考えたくもありません。


装飾

アンブローズ・NYCは全力を尽くして“アメリカーナ”の雰囲気を捉えようとしているが、そのためには実際何が必要とされるかをまるで理解していない。アンブローズ氏はロンドン出身で、アメリカ文化に触れた経験は乏しいので、無理もないことだ。しかし、アンブローズ・NYCの装飾デザインを巡る胡乱な意思決定に、設計段階で異議が唱えられ、阻止するための行動が起きていてもよさそうなものである。だが悲しいかな、開店前にそのような試みは全く無かったようで、我々はアンブローズ・NYCと共に生きるという呪わしい宿命を背負わされている。

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私が撮影できたそれほど見苦しくない写真の1つ。

アンブローズ・NYCの内装は、一般的な“小じんまりしたアメリカンダイナー”に予想できる類型を一つ残らず、それも相乗効果を生じさせない手法で融合させたような、身の毛もよだつ代物である。カウンタートップの島々がフロアの中央にあり、四方はブースに囲まれている。動かないジュークボックスや自動販売機がテーブルと椅子の間に点在するので、事あるごとに通行の邪魔になる。料理の提供が無闇に遅れるのは、この迷路のようなフロアの構造のせいであろうか。

私のテーブルには自然光が入らなかった。どうやら我々がアンブローズ・NYCのはらわた深くまで潜り込んだ結果、外の世界はただの儚い思い出と化してしまったらしい。周りは何処もかしこも照明が不十分であり、装飾は入店時に見かけたアメリカーナに似ていたようだったが、暗すぎてほとんど何も見分けられない有様である。壁の絵画に覚えがある気もしたが、特定できるほど明瞭には見えなかった。

座席とテーブルは快適ではなく、大きさも不十分だ。どうにか大昔に注文した料理が運ばれてきたところで、せいぜい皿二枚分のスペースしかないテーブルが、見たところ三人掛けとして設置されている。座席配置にも、レストラン内の他のデザインと同程度に幅広いばらつきがあるようだ。私のテーブルには二脚の座席があった - 背もたれが無くて座り心地の悪い低めのスツールと、子供が座るのにぴったりなサイズの木製の椅子だ。そしてまた、見る者の精神を掻き乱す三脚目の椅子の非存在も目を引いた。妻はスツールに座り、私は木製椅子を選んだがテーブルまで手が届かず、椅子の上に正座しなければならなかった。我々は三脚目の椅子の形をした穴を無視しようと最善を尽くした。

ある時点で、私は席を離れ、洗面所を探しに行った。その途中、取付けの甘いお粗末なガードレールが付いたレッジを通りかかった。下を覗いてみると、そこには大きな縦穴が数階分伸びていて、壁面に窓があり、その向こうにキッチンが見えた。これには困惑させられた - と言うのも、キッチンは数階層あるのだが、そこから窓越しに見えるのは陰気臭い穴の中だけなのだ。私がその時居たエリアは人通りが少なかったので、客に配慮して調理の様子を見せるための窓ではなさそうだった。

最終的に洗面所は見つかったものの、壁には標識が無かった。実際、多くの廊下には明確な意味を持たない奇怪な印章シジルやルーンしか記されていない。それらは細心の注意を払って配置されたように見えるが、全く道理に適っていない。オカルト活動の経験がある私でさえ、書き殴られた文字をさっぱり理解できなかった。何かしら効果があるとしても (あるかどうか分からないが) 意図した結果ではないだろう。

洗面所は問題なかったが、表示はかなり奇妙だった。二つの洗面所が隣り合っていて、性別は - 少なくともヒトの性別は - どちらにも示されていない。代わりに、一方のドアに触手、もう一方に牙が描かれていた。誰も近くにいなかったので、私は適当に片方を選び、問題が起きないのを願うしかなかった。


接客

正直なところ、アンブローズ・NYCの接客対応が心底耐え難いものだったとは言い難い。このレストランの他の要素とは異なり、私が接客に関して捻り出せる最善の表現は“言語に絶する”というものである。成程確かに気に障る点は色々とあったが、給仕スタッフたちはできる限り最高のサービスを提供すべく、一丸となって努力しているように見受けられた。一方で、そのための能力は、アンブローズ・NYCに勤務するという羨ましくもない経験のせいで擦り減っているように思われた。

まず入店すると、接客係は妻と私に対して、テーブルまでの案内方法に問題がある可能性を前以てお詫びしなければならないと述べ、どうやってテーブルまで歩いて向かうかを口頭で指示した。滑り出しから奇妙な雰囲気を感じ取った私はそのやり方を疑問に思ったが、その理由は、我々がテーブルに着く前に接客係が忽然と消失したことで説明が付いた。彼女のアドバイスに従ってテーブルまで進んでいくと、奇妙にも、予約メモにすでに我々の名前が記入されていた。

注文はことごとく遅れた。最も単純な要求 (例えば水一杯) でさえ、キッチンから出てくるのを理不尽なほど長く待たされた。しかし、テーブルにやって来た給仕スタッフたち (毎回違う顔ぶれだった) は常に申し訳なさそうで、全力を尽くしていると言ってくれた。彼らの物腰からは、人を惑わせるだけを目的にややこしく設計された敵対的な建物の中を必死に通り抜けてきたのは一目瞭然だった。私から言える限りでは、確かにスタッフは力の限りを尽くしていたし、接客対応についても彼らを責めることはできない。

これは私が受けた仕打ちへの全面的な許しではない。単純に、このレストランでの体験を可能な限り不愉快にしようとしているのは上層部らしいので、クオリティの低さを給仕や料理人のせいにはしたくないと言いたいのだ。アンブローズ・NYCを存続させたければ大きな変革が必要だが、その変化は個々人よりも高いレベルで行われなければならない。給仕たちは悲惨な状況の中でもできる限り立派に振る舞っていた。


食事

アンブローズ・NYCの他全ての要素と同じく、メニューは異様で支離滅裂に近い。大半の料理の説明書きは不十分か、何かしら誤りがある。結局、メニュー表は各料理がどういう名前かを大雑把に掴む以外にはほとんど役に立たず、しかもそのように使ったところで有益な指標にはならないと判明した。このため、ウォルドン・スタジオのレビュー恒例となっているメニュー表の抜粋は掲載していない。

前菜にはまんまと騙された。メニューの他の料理とは異なり、前菜の説明は簡潔でしっかりしていた。私が注文した“太陽注入フライドカリフラワー”は、極めて高濃度の収穫された太陽光だけを使い、ほんの数秒で調理される料理だと記述されていた。説明文は、この前菜は霊妙な風味がする、食物ではなく光に当て嵌まる言葉を使わずして表現できないとしていた。注文通りの料理が運ばれてきたし、確かにメニュー通りの味だった。唯一戸惑ったのは、カリフラワーが皿ではなく、ある種のオカルト文献の上に乗せて提供されたことだ (料理の脂で本は汚れ、読めなくなっていた) 。その点を除けば、アンブローズ・レストラン系列店で賞味した中でも最上の料理であり、まだ食事でマイナス点の取り返しが付くという偽りの期待を抱かせた。

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未編集の写真。フラッシュは使用していない。

カクテルメニューの良さを語ることはできない。ごく単純な飲み物だから下手に作り様があるまいと考えて、私はロゼ・サングリアを注文した。この時点で既にアンブローズ・NYCからストレスを受け、うろたえていたので、神経を落ち着かせてくれるようなワインが飲みたかったのだ。しかし、叶わぬ夢だった。届けられたワインは不可解にも輝いていた。テーブルが暗かったので、ワインが積極的に光を生成しているのが分かり、グラスの中で揺らしても消えなかった。本当にワインなのか、そして安全なのか、甚だ怪しかったので、その液体を飲むのは控えた。

アントレには“山盛りカーニタス&バルバコア・ナチョ大皿”と“ウルトラデラックス・オーロックス・バーガー”を注文した。前者は特に奇抜な点が無さそうに思える単純な料理で、アンブローズ・NYCがどのように作ってみせるかに興味が湧いた (メニュー表の料理の多くは十分に説明されておらず、特に奇抜な食材や特性に関する記述は少ない) 。後者は絶滅したオーロックスの肉を使っているとあり、今こそそれを味わう数少ない機会だと思った。

私が実際に提供された料理はそのようなものではなかった。煙が詰まったワインボトルと、黒いゼリーを乗せた皿が、代わりに目の前に置かれた。一体これは何かと訊ねると、単純に「瓶詰め生贄と虚空ゼラチンです。どちらも完璧に食べられますし安全です」とだけ回答があった。実際に注文した料理を食べられるか訊くと「いいえ」だと言う。私がウォルドン・スタジオの料理評論家であることを改めて伝えると、給仕はただ肩をすくめ、私がアンブローズ・NYCのレビューを書いても五十億年後に太陽が消える頃には無意味なので、宇宙的観点からすれば影響は皆無であると言った。

まず“虚空ゼラチン”を試すことにした。目を凝らすと、盛られている皿よりもずっと、ずっと深みがあることにまず気付いた。敢えて例えるなら、大空を内包するかのように何千マイルもの深さがあったように思えた。中にスプーンを沈めた時は、もし手を放したら深淵に滑り落ちて二度と戻ってこないのではないかと感じた。案の定、その嫌な予感は三口目で当たった。ゼラチン自体は予想以上に歯応えがあり、チョコレートとブラックベリーの豊かな風味がした。

では“瓶詰め生贄”はと言うと、ボトルに小さな放出弁があり、それを開けて煙を吸引するように指示書きが添えられていた。私は指示に従って内容物を吸った。煙の制作に使用された全ての食材がそこにあった - 牛、豚、鶏、各種の果実や野菜、その他諸々。それら全てを一度に堪能することができて、他のどんな調理法よりも味わい深かった。その上、私は咳込んで煙の大半を吐き出してしまったのだが、腹は非常に満たされた。私と妻の二人がかりでどうにかボトルを半分まで空けることができた。

デザートがあるかどうかも訊いたが、結局は注文しなかった。提示された選択肢は“ヴァンパイア・パンプキン・パイ”、“本物溶岩なチョコレート溶岩ケーキ”、“不和のアップルコブラー”だった。何が起こるか分からないことへの強い不安もあれば、その影響を直接体験したくもなかったので、丁度いい頃合いだと考えて会計を頼んだ。

ほとんどの点で、アンブローズ・NYCが提供する食事は美味であり、そのうち幾つかは世界最高峰とも呼べる。料理の大半は、私が別なレストランで賞味する機会があったどんな料理より優れているし、他所で似たようなものを作れるとも思えない。だが、本当に口に入れても安全かどうか疑わしい料理があり、多くの注文はメニュー表での説明が不明確であり、頼んだものと実際に届くものが異なるかもしれないという事実がアンブローズ・NYCに泥を塗り、本来得られるはずの星を全て盗み取っている。


結び

狂気と混沌の感覚は、アンブローズ・ニューヨークシティ全体に隅々まで染み渡っている。これは私がかつて経験した如何なるものとも全く異なる食事体験で、偶然ではなく故意に悪質なサービスを提供していると結論付けざるを得ないほどだ。建物の設計は美味しい料理を提供する環境を整えるのではなく、完全に別な、完全に不可解な意図があったようだ。

アンブローズ・NYCは一般の方々にはお奨めできない。このレストランは、私が食事に、そして建造物に求める資質を何一つとして満たしていない。しかし、もし読者諸氏がごく稀にいる精神異常者であり、何らかの全く狂った理由から、必要最小限の栄養素を提供される過程で道義心と倫理観をそっくり剥ぎ取られるのを望んでいるならば、アンブローズ・NYCが向いているかもしれない。そのような客にさえ、私は満足を保証できない。

自己責任で食事するか、好ましくは、そもそも訪れないことを推奨する。

星零。


追記

以下の返信は、このレビューへの応答として、アンブローズ・レストランからウォルドン・スタジオへ送られたものである。我々はアンブローズ氏の声明の多くの真意を把握するに至らなかったが、念のために掲載させていただく。

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