結末というものは、それまでの美しさを評価する人がいなければ、悲劇でしかないだろう

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2006年11月29日。

マーカス・マシューズは恐怖に怯え、どうすることもできなかった。月末だというのに、ブライトはネックレスを新しい持ち主に渡す気配がない。マーカスは数分ごとに自分が抜け出していくのを感じ、意識を保つためには自分を捕らえるほかなかった。これが何であろうと。

今、彼は窓が並ぶやや広い白くて、中央には黒い巨大な石柱が立っている部屋にいる。ブライトの足音が壁に反響し、マーカスはその柱が柩であることに突然気がついた。あるいは、せ……石棺?そんな言葉が合いそうだ。

棺桶が大きく軋むと、ブライトは歩みを止めた。それから、その前部が蝶番で開き、黒い刺青に覆われた男が歩み出て、目の前のブライト博士を見ると大きく笑った。

「ああ、供物か?」刺青の男は歯を食いしばって言った。

「あーっと、ちょっと違うな」マーカスは胃から喉の方まで出かかっているものを感じていたが、ブライトは表に出す様子はなかった。「ちょっと確認することがあったんだ、早かったね」

ブライトは手を差し伸べた。

アベルは一人ほくそ笑むと、ブライトに歩み寄った。ブライトの前腕部を掴み、「ブライトのネックレスをつけているんだな」

「そうとも。これが私で、私は彼なんだから」

「良い。武器をとれ」刺青の男はブライトの腕を離し、後ろに下がった。

ブライトは頷き、ショルダーホルスターのピストルに手を伸ばした。引き金を引くよりも前に、剣がブライトの胸を突き刺した。すぐに警備員が部屋に入り、発砲した。マーカスは、最後にもう一度自分が逃げ出すのを感じ、すぐに3人全員がいなくなってしまった。

2018年 3月3日:

アベルは真っ暗な部屋へと足を踏み出した。彼は再び生きかえったのだ。頭上のどこからか、増幅された声が聞こえてきた。「やあ、またブライトだ。一個借りがあったね」

地面から見えていなかった、大きな砲台が飛び出して砲撃を開始した。

2024年 4月 20日:

「私はお前に謝罪しなければならない。お前が目覚めた時、そこに居られなかった。だから前もって記録しておいた。弾丸が本物であったにも関わらず」

アベルは砲台が作動する前に、「顔を見せろ、臆病者!」となんとか言うことができた。


アベルはさらに三度目を覚ました。その度にブライトはそこで待っていた。もちろん、最期の刻まで。アベルは石棺から、砲台のある同じ部屋に足を踏み入れた。今度は彼に反応することはなく、弾丸も発射されることもない。天井の割れ目から少し日差しが入り、西側の壁全体が瓦礫のように崩れていた。彼はタイル張りの床と、少し光を反射している一つの覗き窓が見えるようになった。

彼は窓際まで歩いて行き、剣で窓を叩き割った。観察室の中には彼が今まで気づいていなかった見覚えのない機材、いくつかの椅子、机、そして山羊と思われる骨格があり、その胸郭の中には非常に見覚えのある宝石があった。アベルは手を伸ばし、ネックレスを拾い上げた。

彼は、自分の心を詮索する別の心の力をすぐに感じることができた。ネックレスを落としても、すぐに影響はなかったのだが、彼のプライドと負けず嫌いがそれを許さなかったのだろう。その代わり、彼は目を閉じ、別の戦場で戦う準備をした。

目を開けると、真っ白な部屋が広がっていた。向かいにはブライトが立っていた。そこに宝石はない。その顔にも偽りはない。本物のブライトだ。ブライトの残った髪は白髪だった。レンズの厚い特大の眼鏡をかけている。アベルは、この男の首がどこで終わり、顎がどこから始まっているのか分からず、困っていた。アベルもまた、この男が自分を殺し続けてきた男であることを間違いなく知っていた……あれからどのくらい経ったのだろうか?

「そうだねえ、」アベルの向かいにいる嫌味な男が言った。「こんなことは初めてだよ」

アベルは苦笑した。「財団で何が起きたんだ?」

「壊れてしまったよ。一番底の方まで」

「私の兄は?」

ブライトは首を横に振ったが、何も言わなかった。

「アイリスは?」

ブライトは小首をかしげた。「私たちは残された者だ」

「これからどうなる?」

ブライトの手には、大きなライフルが握られていた。

アベルは空中から黒いギザギザの剣を引き抜いた。「結構だ」

その後、地球上の最後の一人がこの世に歩み出した。

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