もしも、君が大型かつ本部より独立した財団支部を組織したいのなら、最良の方法は、支部組織の能力と資源によって収容しなければならない何かがあると、皆に訴えることだ。これにより、皆は諸手を挙げて賛同するだろう。殆どの財団支部は、そうやって設立される。ただし、中国支部は例外だ。本当のことを言うと、あそこには、自身を地底に埋もれさせ、将来中国の大部分をマグマの海に変えてしまうかもしれない収容不可能の巨大生物なんてものは一切存在しない。それはただ、中国支部を継続させることが合理的だと見せかける、表看板に過ぎないのだ。
このようなことを言ったのなら、君はきっと疑問に思うだろう。「もし、あそこに収容するべきものが一切存在しないなら、なぜ中国支部を設立する必要があるのだ?」と。そうではない。私は「あそこには収容すべきものは無い」と言ったのではない。「あそこには、自身を地底に埋もれさせ、将来中国の大部分をマグマの海に変えてしまうかもしれない収容不可能の巨大生物」などいないと言ったに過ぎないのだ。
あそこには確かにSCP-CN-001が存在する。しかし皮肉なことに、それを収容する最も良い方法が、中国支部がその存在を知らせないままでい続けることなのだ。我々は中国支部へ偽の文章を編集させ、全く必要のない機器を設置させ、我々へ意味の無い観測データを提出させ、SCP-███とSCP-CN-███を使用してまで「自身を地底に埋もれさせ、将来中国の大部分をマグマの海に変えてしまうかもしれない収容不可能の巨大生物」の存在を見せかけ続ける。それは、ただ彼らの注意を別方向へ引きつけ、彼らを永遠に無知の中で彷徨わせるためなのだ。
君は今、また質問があるのではないだろうか、違うかね?真のSCP-CN-001とは何か?それを答える前に、私もまた、君に質問がある。
君は、これまで考えたことはないだろうか?何故、幸いにも中華文明は今に至るまで存在できてきたのか?人類の数千年と言われる歴史は目まぐるしく移り変わっている。何故この文明だけが狂風急雨をやり過ごし、今日に至るまで依然として、それが生まれた時代と同様の言語を使用しているのだろうか?
答えは、歴史の偶然の一致などではない。説明しよう。SCP-CN-001とは、中華文明そのもの、生物の如く生きる文明系統であり、この文明に属する全ての人間の潜在意識深くに存在する猛獣なのだ。感謝すべきことに、それは一貫して深い眠りにある――真相を隠すためにでっち上げられた巨獣のように。しかし、それは決して無害なものではない。深い眠りについているとはいえ、それは依然として自己を保ち、本能的に外からの文明を飲み込み吸収する。その過程は相当に緩慢で温和だが、しかし非常に徹底して行われる。満州族を見たまえ。この哀れな民族は決してSCP-CN-001の最初の被害者ではないし、また断じて最後の被害者でもない。
この猛獣が覚醒した時、何が起こるのか?我々の先達はこの一点を知るために、今から見ればとても愚かなことをした――財団はそれを、部分的に呼び覚ましたのだ。
SCP-CN-001の存在がその文明系統に属する人物に認識されると、その人物の心中には実に容易くその猛獣が呼び覚まされ、この人物はSCP-CN-001-1に変化させられると共に猛獣の意識の外延部となる。最初にこれに気づいた人物は、恐らくは深く考えずにやっていたのだろう――君の想像する通り、実験をだ。 彼らはこれに気付いた後、実験、絶え間なく実験を繰り返したのだ。中国出身のDクラス職員を用いて大量のSCP-CN-001-1を作り出した後で、財団は発見した。全ての実験体は同一の意識を持っていることを、SCP-CN-001本体によって実験体の全ての記憶を奪われて、乗っ取られてしまっていることを。
君も既に、財団が実験体に使用したDクラス職員をどうするか知っているだろう。これ以上の研究が必要ないと判断した後、財団は全ての実験体の終了を決定した。このことがSCP-CN-001を激怒させた。それは反撃を開始した。蓄積された数千年の智恵により、二、三十体のSCP-CN-001-1をコントロールし、全てのサイトを占領した。その戦術は、全くもって完璧で、最後に我々は無力化ガスを用いてどうにか勝利を収められた。その後我々は、正常な手続きによりほとんど全てのSCP-CN-001-1を終了し、ドキュメント上のセキュリティレベルをSafeからKeterへ引き上げた。こうして事件は幕を閉じた。
ああ、そうだ。実は、事件はまだ終わってはいない。私は「ほとんど」と言ったばかりだろう?我々はあの幸運な生存者がどのように脱走し、またどのように海を渡ったのか知ることができない。ともかく、我々が気付いたときには、[データ削除]で既にSCP-CN-001の強大勢力が出現していて、同一の古の叡知と憤怒に満ちた意識に支配され、常にその復讐を起こしたがっていた。ほぼ全ての欧米文明系統が財団の仲間と見なされていると推測されることを鑑み、それが更なる危険な行動を起こすことを防ぐため、我々はまだSCP-CN-001の影響を受けていない少数の中華系移民を避難させることを講じ、その後に現地政府名義でSCP-CN-001-1に対する大暴動を扇動し、ようやく事態の発展を制止した。
しかし、既に過ちは起きてしまった。我々の行為はあの猛獣を最も危険な敵にしてしまった。それは我々を憎み、またその過激な思考のために我々の属する文明をも憎んでいる。決して、中国人にその存在を知られてはならない。ひとたび収容違反が起これば、我々と我々の文明は必ずや、決して反逆しない十幾億人の軍隊による侵攻と直面するだろう。しかし一方で我々は、この消極的な収容が永遠に続かないこともまた知っている。万が一に備え、我々はSCP-CN-001の真相に関する文献や記録を破棄し、O5を除く全ての関係職員へクラスA記憶処理を施し、この文章の閲覧者の人間関係を厳格に検査して統制下に置いている(そうだ、もしこの文章を読み終わった後、自主的にAクラス記憶処理を受けようとしなければ、君は恐らくこの先一生、中華系移民と会うことはないだろう)。だが、いつの日かこの猛獣は完全に覚醒し、我々へ向けて復讐の怒号を放つだろう。それは決して忘れない。幾千年前の出来事を忘れていないのならば、高々幾十年などものの数には入らない。
従って我々は、我々が消失した世界、――我々と欧米文明が揃って破壊されても、地球上には依然として人類が存在し、我々が既に収容している、あるいは収容していないものが依然として日常世界の脅威として存在している――そんな世界に向けて準備をしなければならない。我々の仕事を引き継ぐ者がいて、我々がいなくなった後も、白日の元に晒されるべきではない存在を収容し続けなければならない。このために我々は、安全な場所へ種を残さねばならない。そして、最も安全な場所とは最も危険な場所なのだ。
これこそが、中国支部を設立する真の理由であり、それは収容プロトコルではなく、我々が将来へ種を残すためのものなのだ。我々は彼らに我々の文書を翻訳整理させ、様々な異常オブジェクトをいかに収容するかを彼らへ習得させる。SCP-CN-001は自身を傷つけない。その内部に財団の複製品を設立すれば、SCP-CN-001と同時に存在するだろう。こうすれば、この文明の異常に旺盛な生命力によって、理論上、人類が完全に滅亡しさえしなければ、この新しい財団は永遠に存在できるのだ。
これで、我々がついに猛獣に呑み込まれたとしても、依然として我々の代わりは居続けるのだ。我々に代わって、確保、収容、保護を行う者が。