組織犯罪対策特別措置報告書:暗号名「反黒」
評価: +13+x

背景


古来、裏社会と異常の間には密接な関係があった。裏社会構成員のような犯罪者によって構成される地下の秩序そのものが、地上の政府とは異なる有効な隠匿空間を社会に作り出しているからである。このような闇市・地下取引所は、裏社会構成員が容易にヴェールを越えてアノマリーに手を伸ばすのに最適な環境となっている。そのため、財団や世界オカルト連合のようなヴェール管理団体は、長年これらの組織を監視、追跡してきた。

しかし、これらの組織に対して、財団はしばし受動的である。主な理由は、世界のグローバル化に伴い裏社会の組織同士が緊密に結びつき、それが広大な組織犯罪のネットワークへと発展したことにあるだろう。彼らは異常を完全には理解していないかもしれないし利用者ですらない可能性もあるとはいえ、複雑な人間関係を有し高度に組織化されているため、ごく単純な手段で様々な組織に効果的な潜入/暗殺をすることができるのだ。一方、現在のヴェール協定の巨人の一つである財団は、同時にヴェール協定にも制約を受けていることが多く、摘発活動を行う上で制約を受け、柔軟性に欠けている。

とはいえ、当初はあまり効果的ではなかったものの安定していた秘密の観察と追跡の線が、以下の関係者の失踪によって途絶えてしまった。:

My chasing person lost!-桑名博士、本情報の編集を担当した。

要注意人物番号:POI-3656-JP

要注意人物氏名:清水 竜次郎

所属組織: 広域指定暴力団東栄會直系有村組

説明:POI-3656-JPは、主に兵庫県における有村組の運営とアノマリーの回収を担当している。彼は何度かMC&Dや青色倶楽部など要注意団体と接触していることが注目されており、組織が認知したか否かにかかわらず、地下アノマリー取引活動に関与していた疑いがある。

財団は、香港黒社会での活動に参加していた彼の最後の拠点を発見。その後、同人物は姿を消した。

その後、半年の間にさらに7人のPoIが失踪。情報を確認したところ、これらの人物には以下のような共通点があることが判明した。:

1. 世界各地の裏社会と関連しており、その大多数が構成員である。
2. 所属する組織内での評価が下がった。
3. それらの所属組織は香港の三合会組織たる和朝義と関連がある。

これらの共通点の中で、特に和朝義が重要視されている。香港での彼らの活発な活動とアノマリーの使用はヴェール外の人々の生活に大きな影響を与えており、香港の政財界との活発な繋がりも相まって地域的なヴェール破綻リスクを大々的に増大させている。行方不明者のほとんどが和朝義の関係者であることから疑惑は更に深まり、財団は香港三合会の和朝義に対する特殊調査活動、暗号名「反黒」を開始した。主な目的は、一日も早い関係者の所在および組織内の運営パターンを把握することである。


行動指針


本件の捜査は以下の段階に分かれている。:

第一段階:想定される範囲の確認

まず、和朝義の活動範囲を特定する。最近発見されたいくつかの異常現象(SCP-ZH-031AO-ZH-035を参照)によると、この2つのアイテムは香港の新界で、いくつかの孤立した村の家屋で発見された。その結果、香港在住だった現サイト-ZH-81エージェントの小羽を中心とした20名のチームが香港に戻り、和朝義の拠点と思われる26の建物を一つ一つ観察した。

2つ目は、和朝義に関わる人物達の連絡先とその内容の記録を収集することである。殆どの犯罪組織は資金洗浄のためにフロント企業を持っているため、彼らが関係する会社や経営する会社の内部資料のほとんどが当面信用できず、また、構成員が実際に話し合ったり連絡を取ったりした文書記録もほとんど存在しないため、この段階を実行することは困難が生じた。そこで、上記の段階は、和朝義の「四九」や「藍燈籠」という下部組織のメンバーを中心に、インタビューという形で進めていく。それらの活動は、現在和朝義に潜入している3人の財団エージェント(C.K.、F.Q.、R.E.)が行う。

第二段階:強襲・証拠品探しの執行
まず、地元の異常な法執行機関に通知する。第一段階で得られた情報は茶嶺警署に伝えられ、茶嶺警署は香港警察に異常組織のアジトの摘発を正式に申請することになる。この行為の正当性をヴェールの内外でさらに高め、この行為による財団の損害を軽減するために、関連する活動は財団が直接行わず、香港警察の香港三合会・組織犯罪局の捜査員が茶嶺警署で実施する。

2つ目は、捕獲に成功した後のアジトの調査である。茶嶺警署の警察官による摘発が成功した後、財団の現在のヴェール契約による高い影響力を利用して、捜査に介入する。 作業中に偶然、行方不明者が発見された場合は、状況を把握するためにすぐにインタビューを行うことを推奨する。関連する検索および調査作業は、サイト-ZH-25の吳██研究員が行う。

さらに、入手した内部資料をバックアップする。逮捕後に入手した書類の大部分は比較的小さいものであるが、バックアップを取ってデジタル化することを推奨する。その中でも特に重要なのが、帳簿やメモなどの書類ある。 これらの資料を整理する作業は、サイト-ZH-25のRAISA責任者である張道士に一任される。

第三段階:証拠分析

今回の作戦で明らかになった資料と証拠物によって部署別に責任を負うことになっており、詳しい内容は証拠調査が終わった後に発表する。

29/8/2008追加:

回収されたSK-BIOの調査・解剖は文研究員を中心とした4名のチームによって実行する。SK-BIOの付加価値ゆえこの調査には同サイトの張道士とサイト-ZH-12に所属する元サーキック信徒の研究員Kris博士も参加する(後者はインターネットを通じて遠隔で支援)。

発見された帳簿とSCP-1005-RUに関連した財務書類は現在の組織犯罪ネットワークの資金網を早期に解明するため、サイト-ZH-88で処理。そのため文書はデジタル化され、サイト-ZH-25の"Books.aic"からサイト-ZH-88の"Hanabira.aic"へと転送される。

行方不明者7人との関連があるかどうかを調べるため、現場Nの分析と追加調査はNG研究員が率いる法医学チームによって行われる。

組織間の調整は張道士が担当し、異なる位置関の情報連絡と整理は以下のリストに従って分割担当する。

地点 所属支部 人員
ロシア RU Reverberate博士
台湾 ZH 小翼
兵庫県 JP 小羽、桑名博士

実行状況


第一段階:12/8/2008~23/8/2008

第1段階はかなり順調であった。小羽率いる小隊のもと、26ヵ所の疑わしい地点を探知したが、このうち14ヵ所は関連性が確実(番号A-N)であり、関係や用途推定リストは次のようになった。:

番号 用途
A~C 和朝義傘下の不動産会社が所有する物件にて、観察期間中に3回、不動産会社の社員が顧客を案内して、売りに出すはずの物件を見学しているところを目撃
D~H 数日前から大量のトラックがこの付近を出入りしていたが、移動するものはすべて箱に封印されており中身は観察できなかった。 倉庫ではないかと推測された。
I~M ここでも大量のトラックが出入りしていたが、移動していた物の多くは科学的な泥や植木鉢、大麻栽培に使う肥料の一部であることが偶然にも確認できた。大麻を栽培するための屋内農園と推測される。
N 毎日5〜6人の青少年が入ってくるのが観察され、その中の一人が後でインタビューを受けたところ、間違いなく組織の構成員であった。これらの人物の出入りの頻度はかなり高く、長い間、2人の「四九」が警備しており、重要な拠点であるはずだが、実際の使用は不明である

また、潜伏工作員によるインタビューにより、和朝義は近年、同じ異常な犯罪組織である「天已堂」や「有村組」と対立しており、その幹部までもが比較的大規模な銃撃戦や武力衝突を行うかどうかを話し合っていることがわかった。このような状況は、主に次の「四九」の阿達(仮名)に対するインタビューにて参照できる。

その後、財団はさらに3人のエージェントを派遣し、インタビューの際に拠点Nの実際の用途を聞き出そうとした。しかし、次の3回のインタビューでは、エージェントが接触したほとんどの人物が、どの場所が「坐堂」が最近設置したいわゆる「新人訓練所」であるか詳細を説明することはなく、明確にはわからないままだった。

第二段階:24/8/2008~29/8/2008

2008年8月24日、財団は入手した情報を茶嶺警署に正式に連絡し、香港警察の監督のもと、双方が疑わしい拠点の調査に協力することを希望した。

警察が裁判所から捜査令状を得て拠点I~Mに突入したところ、和朝義の構成員に先を越され、銃撃を受けて身動きが取れなくなってしまった。結局、警察官は構成員の何人かを射殺して侵入したが、中にいたSK-BIOが突然、侵入してきた警察官に襲いかかった。その後、警官は拳銃で数匹を撃ち殺し、最終的には和朝義が経営する大麻農園であることを突き止めた。しかし、捜索終了後、同じSK-BIOに襲撃され、2度目の襲撃では警官1名が殉職し、襲撃に関わった43匹のSK-BIO全個体が死亡した。

D~Hの捜査中、一般の組織員5人に襲われたが、抵抗は弱く、結局全員逮捕された。倉庫の中には、同じような異常な装置が大量にあったが、中に入っていた資料によるとこれらは組織の普通の備品であって重要な資産ではないようだった。また、拠点Eの建物の調査ではSCP-1005-RUが発見された。

拠点Nに該当する2階建ての一戸建て住宅の調査は、組織の下部構成員2人だけで防護されていたが、調査の結果、この家には次のような異常な効果があることが確認された。:

AO-ZH-037は、異常な効果を持つ建物と生活器具の集合体の総称です。AO-ZH-037は、香港元朗の[編集済]路58号にある2階建ての一戸建て住宅の1階にあります。

AO-ZH-037には、主に玄関の1m×1mの犬用のフェンスが設置されたエリアに、黄色とオレンジ色の陶板(AO-ZH-037-A、B)と長さ0.5mの5本の鎖(AO-ZH-037-C)が存在します。人間が範囲内に入ると、AO-ZH-037-Cが手足と頭にそれぞれ巻き付きます。実験によると、AO-ZH-037-Cに巻きつかれても致命傷にはなりませんが、手足の骨が折れることが多いです。

AO-ZH-037-Cが人間の実体を3時間以上苦しめると、AO-ZH-037-AとBから出所不明の物質が現れます。AO-ZH-032-A内からは人間の尿が出現し、AO-ZH-032-B内からは人肉のすり身が出現したことが確認されました。

AO-ZH-037-Cに巻き込まれた人間が結合期間中に死亡すると、その遺体は自動的にリビングの右側にあるトイレに併設されたバスタブに移されます。検査結果によると、故人の胃から出た尿と人肉は、次の被験者がAO-ZH-037-Cに絡まれたときに発生するAO-ZH-037-AとBの内容物となります。

また、拠点N内部には以下のものが存在しました。:

  • 使用後に洗っていないステンレス製のフライパン3個、中身から悪臭がしている。実験室での検査の結果、内容物は分解された女性の太腿の骨と筋組織であることが判明した。
  • 針と糸で縫い付けられた開口部のある麻袋7枚、X線撮影したところ、中には複数の男女の頭部の遺骨が入っており、中にはウジ虫が生えているものもあった。
  • 30グラムのメタンフェタミン
  • 覚醒剤の液体を注入するための注射器57本、針の固定部分から採取したDNAが、回収された7体分の遺骨のDNAと一致。
  • 牛肉包丁8振り
  • 人間の体から剥ぎ取られた入れ墨1枚。

これらの作戦が成功した後、財団は茶嶺警署にヴェール条項第15章「超自然的犯罪(組織犯罪及び地下犯罪網の拡張)の処理に関する規則」に基づく捜査への介入を申請、手続きは順調に進み、財団は382ページの内部文書(デジタルコピー、口座やマネーロンダリングの流れを含む)、現場の証拠品、そして突入時に押収されたSK-BIO本体を入手しました。

第三段階:29/8/2008~14/10/2008

1.SK-BIO方面

その白い鳩は、まるで犬のように吠えていました。-茶嶺警署警員 譚己德

連中はこの鳥たちをロクに飼うことができず、みんな鳩痘が大量にできていた。-文研究員

文研究員によると、31羽の個体を解剖した結果、改造ハトのほとんどが若いハトによく見られる感染症の鳩痘にかかっており、いずれの攻撃を行ってきた個体の間で流行していたことから、改造や飼育期間中に飼育されていたコロニーでの集団感染が考えられる。また、ハトの目はほとんどが透明な骨で覆われており、眼球の構造は人間の目に近いものだった。また、ハトの声帯系統にイヌの小型声帯系統が接続され、遺伝子検査の結果、この声帯系統は主にグリーンランド・ドッグに因むものであることが判明したが、研究者はこの声帯系統がどのようにして縮小されたのかについては困惑していた。異常な生物改造であることから、Kris博士に情報を渡して調査してもらうことにした。

吠え方を知っているだけの鳥なんて、サーキックらしくない。-Kris博士

Kris博士の調査によると、少なくとも彼が出会ったサーキックの宗派では、鳩を改造した記録はほとんどないという。今のところ、SCP-ZH-019と身体的な変化が似ていることを指摘するに留まる。この2つが何か関連しているのか、同じ派閥のものなのかは不明である。しかし、SK-BIOの拠点防衛者・門番としての変身・訓練は古くからよく行われているので、サーキックの構成員が関与していることはある程度確実だろう。

これは新しい派閥の仕業かもしれないが、複数の派閥が絡んでいる可能性も否定できないし、2つの形態の高度な調和はダエーバイトを連想させる。-張道士

張道士は、ネオ・サーキックの一派である「盧亭」とのインタビューから、鳥の訓練方法がサーキックの手法である可能性があるがあるとした。しかし、高度な種の改良技術はダエーバイト族が残したものである。和朝義がどのようにしてダエーバイト族の遺産に接触できたのか、さらに注目すべきである。

2.会計·金融方面

どうやら我々は彼らに騙されているようだ。彼らはこれほど多くのフロント企業を持つ必要はないし、持ってもいない。-Chrome博士

発見された帳簿は大規模かつ詳細で、押収された大麻の主な販売先が以下の2つであることを示していました。:

  • 末端メンバーによる酒場やその他の娯楽施設でのバラ売り
  • 「童党」達の間で共有させる

同時に反ミーム的なチラシを配布して、潜在的な顧客を見つけることも行っている。これらのミームの大半は若者、特に10歳から16歳の若者を対象としており、近年、黒社会が若者の間でさらに力をつけ、主要メンバーに引き込もうとしていることがわかる。その結果、他の黒道が販売している大麻よりも10~15%安く、より多くの量を低価格で販売することで、若者の市場を少しでも拡大することができるようになっている。

しかし、研究者はこのイベント中にSCP-1005-RUを発見し、これまで予測されていた多数のフロント企業を介している主張が覆され、SCP-1005-RUの助けを借りて資金源を不明瞭にしていたこと、いわゆるマネーロンダリングが極めて簡単に可能であることが判明した。当時の保管施設を担当していた人員の少なさからすると、SCP-1005-RUは和朝義内で高額商品でもなかったということになり、複数台を保有していた可能性も否定できない。しかし、フロント企業の減少は、ヴェールの外での活動の減少も意味しており、ヴェール協定への脅威はやや弱まっている。

現在、第1段階で観測されている不動産取引は現金取引と考えられるが、サイト-ZH-88は、今後、不動産業界の大規模な現金取引を引き続き観察すると明らかにしており、その背後には短期的もしくは長期的な計画が関与している可能性がある。これらの現金取引活動が銃器購入のためである可能性は否定できず、その用途として最も考えられるのは、大麻農園を守るための銃器の購入である。

3.事件現場及び行方不明者について

うわ!ハローキティ1のフレンド2だぜ……-NG

調査の結果、この事件の処刑方法は非常に残酷なものであったことがわかった。彼らは家の異常性を利用して監禁対象を虐待し、途中で何度も強制的に薬物を注入した。これは、人道的に耐えないというだけでなく、遺体の身元を著しく損なうものであった。背中の刺青により清水竜次郎が殺害されたことが判明した以外は、他の被害者は全く身元がわからなかった。

しかし、第1段階において、この施設が一部の構成員から「新人訓練所」であるとの指摘を受けた。財団と茶嶺警署はこのことを非常に憂慮していた。

その答えは、「汚点を持つ」証人であることが判明した黃傑遜に対するインタビューでの証言にあった。

これらのインタビューから、「新人訓練所」と呼ばれる犯行現場は、和朝義による虐待の現場であるだけでなく、新人を脅迫し、強制し、洗脳する場であったことが明らかになった。現在、被害者を特定するための目撃者を増やすべく、犯行現場に入った若者の追跡調査を行っている。

4.組織関係とネットワーク

思ったより多いですね。-小翼

まず、今回注目されているのは左利きとの関係である。これは、拠点D~Hで発見された異常なアイテムの大半が、以下の通り左利きが作ったものであることに起因する。:

また、以下の文書も発見された。:

以上の項目や情報から、左利きは、資金洗浄や武装などの異常な物品を和朝義に大量に供給していたことがわかる。左利きは、アジアの他の2大異常犯罪組織である「天已堂」と「有村組」が明らかな敵対者になっている中で、アジアでは珍しく強力な和朝義の味方になったのではないかと考えられる。また、異常性を有さない大量の半自動拳銃、突撃銃、弾薬の類も発見された。

次に、サーキック・カルトおよびダエーバイト文明に関連する知識を持つ人物の存在も留意すべきである。異常な犯罪組織が異常な宗教団体と結託することは珍しくはないが、2,000年以上前の謎のテクノロジーや人工物を入手できることは極めて稀である。これが、この組織の構成員の一部がすでに十分な情報を持っていることを意味しているのかどうかはわからない、もしそうであるならば、この組織はより一層脅威となりうる。

最後に、天已堂および有村組との対立は、両派が争う可能性をさらに高めており、またこの場合、有村組の構成員が殺害されたことは確実である。今回の事件は、警視庁公安部特事課と青色倶楽部にも通知されており、今後、各局でさらなる共同作戦を展開し、関係者の逮捕・連行を行う予定である。


報告終了


特に指定がない限り、このサイトのすべてのコンテンツはクリエイティブ・コモンズ 表示 - 継承3.0ライセンス の元で利用可能です。