麻倉博士によって描かれたイァグトゥイル研究補佐の非学術的スケッチ
氏名: イァグトゥイル・レ(Iagtwerl Le)
クリアランスレベル: 1(通常時、必要に応じ2まで上昇)
職務: 麻倉博士の補佐 サイト-81██内の雑務 地球外起源の異常存在に関する調査への非公式な協力
所在: サイト-81██
形態: 地球外に起源を持つ炭素系知的生命体。頭頂高は最大で1.8 mほどであり、頭部と脚部を3つづつ有する3足歩行生物です。地球上の生物の中でもっとも身体構造が近似しているのは棘皮動物ですが、それでも「月とすっぽん程度」の差異が存在しています。また、性別に関しては、本人は「子供を産む性ではないという点から言うと、ヒトで言う男性」と申告しています。イァグトゥイル研究補佐の構成要素に異常性は存在せず、すべて主流科学の範疇内で記述することが可能です。
脳などの生命維持に必要な主要器官は、[編集済]と[編集済]からなる外殻に覆われた胴体内に存在しています。また、睡眠時や危険に遭遇した時などには、頭部および脚部を外殻内に引き込むことも可能です。この外殻は極めて強靭堅牢であり、それを良く示す事例として、イァグトゥイル研究補佐がGOC極東部門との偶発的遭遇戦に巻き込まれた際に、兵器化された超音波カッターによる2度の斬撃、100発以上の小銃弾と2発の携行型対戦車ミサイルの直撃、さらにはフルオロアンチモン酸の噴霧を受けてなおほぼ無傷で生還したという事件記録が存在します。また、外殻内に収まった状態でクリプトビオシスを行うことによって、大水圧や真空状態を含む極限環境下でも一定期間生存することが可能です。その他、呼吸器系は高効率な嫌気呼吸を可能としており、生命活動に外気を必要としないことから、肉体の頑強さも合わさって多様な大気組成の環境での活動能力をもたらしています。
胴体の上面中央には食事用の口器が存在し、ヒト用の食物も摂食・消化することが可能ですが、その食事風景は[編集済]。食事の際には他の職員から隔離されることが望まれます。
それぞれの頭部には1つの複眼、熱感覚器および聴覚器・発声器官・吸盤を有しています。イァグトゥイル研究補佐自身は頭部に関して「触手から進化したもの」と述べており、実際に頭部を触腕としてヒトの手と同等の繊細な作業を行うことができます。頭部および脚部は中心部に索を有する軟体質からなり、外殻に引き込まれた際に「蓋」となる円形の小殻をそれぞれの端部に有するほか、生物として異常でない程度に強力な再生能力を持ち、緊急時には自らの意思で自切することも可能です。また、発声器官はヒトの可聴域内の音を発することができ、これを用いて会話を行います。
なお、財団による確保当初から現在に至るまで、防疫が必要な地球外病原体はイァグトゥイル研究補佐の体内には確認されていません。本人はこれについて「星々を渡り歩く仕事をしていたので、検疫とかには気を使っていた」旨を述べています。
人物: その著しい肉体的差異とは対照的に、イァグトゥイル研究補佐の表面的な思考形態はヒトのそれと酷似しており、一般の職員と問題なくコミュニケーションを行うことが可能です。イァグトゥイル研究補佐は、現在は日本語、英語、改良型LINCOSを用いることができます。また、「星間標準語」と称する地球外起源言語を発話することもありますが、これと一致する言語を使用する地球外起源存在は現時点では確認されていません。
性格は「落ち着いた性格」「基本的には温厚」「状況の説明が長い」「見た目に反して突っ込み役」などと評されています。また、「自身の種族の生物学的形態こそが知的生命体としてもっとも洗練されたものである」との強固な信念を抱いており、時折ヒトやヒューマノイドの形態を見下しがちであることは問題点として指摘されています。
なお、脳組織や精神の深層構造にはヒトとの明確な差異が存在することから、ヒトには悪影響を及ぼす認識災害やミーム汚染などが、イァグトゥイル研究補佐に対しては正常な機能を発揮しない可能性が指摘されています。
来歴: 201█年4月に ██県██市██区██山で発生した「未確認宇宙船墜落事件」の際に、太陽系外から飛来したとみられる落着大破した宇宙船(AO-6164-JP-MAAGNYEN)より回収され、AO-6301-JP/OS-RENSPOIとしてAnomalousアイテムに分類されました。財団に収容される以前の経歴に関しては、本人は以下のように供述しています。
自分の種族の母星は地球で言う所の[編集済]、銀河系サジタリウス腕のハビタブルゾーンに存在するG型恒星系にありまして、自分自身もそこで生まれ育ちました。
成人後は父の後を継いで、いわば「星間古物商」として銀河系内を行商する日々を送っていました。そして、古物商業の一環として、機能を停止した地球製の宇宙機──好事家の間では高い値がつくんですよ──を回収していたところ、星系内用エンジンの故障によって墜落したというわけです──。
公式には、現在もイァグトゥイル研究補佐は麻倉博士管理下のAnomalousアイテムとして扱われていますが、自身に顕著な異常性が見られず、財団の活動に協力する意思を積極的に示したこと、さらには[編集済]の観点から、サイト-81██内限定という条件付きでクリアランス1研究補佐としての権限を与えられ、麻倉博士の補佐に当たっています。
研究補佐としての勤務成績は概ね問題ないものと判断されています。また、その起源から、太陽系外宇宙に存在するオブジェクトの研究に協力を求められることもありますが、存在を認知してこそいるものの「調査研究が仕事だったわけではないため詳しいことはわからない」といった結果に終わることがほとんどです。
また、これまでのイァグトゥイル研究補佐の証言は、複数の未発見地球外異常存在や、超光速航行・通信技術に立脚する銀河系規模の文明圏が存在する可能性を示唆しており、追認のための調査が進行していますが、めぼしい成果は得られていません。彼が語る「太陽系外宇宙の様相」を鵜呑みにすべきでないことは周知されるべきです。
補遺-01: イァグトゥイル研究補佐の外殻に対するこれ以上の強度試験は、費やされるリソースが成果に見合わないと判断されたため、無期限に中止されています。
その、「イァグトゥイル」ってすごく発音しにくいのですが……。 - ██研究員
「イアグトゥイル」とか「ヤグトゥイル」とか、もう少し発音しやすい形で呼んでいただいても大丈夫ですよ。 - イァグトゥイル研究補佐
去年の忘年会でしていたイスの大いなる種族のコスプレ、腕が1本足りないとはいえ、なかなかハイクオリティでしたよ。 - ██技師
ありがとうございます。まあ、自分ではなく麻倉博士の趣味なのですけどね。脚をスカートで覆うのはともかく、2つの頭にそれぞれハサミと口の張りぼてが覆い被った状態で動くのは少々大変でした。なお、今年はパペッティア人なるもののコスプレをさせられるみたいです。 - イァグトゥイル研究補佐
物理的危険性が存在するオブジェクトの実験時における、明確な理由なきイァグトゥイル研究補佐への参加申請は受理されません。彼は無敵の「メイン盾」ではありません。彼の外殻に「破壊は絶対に不可能」などといった異常性は存在せず、単に極めて強靭なだけであるとの報告が研究班より寄せられおり、破壊される可能性は常に存在しています。 - サイト-81██人事部
その甲羅、重かったりしないの? - エージェント・██
まったくもって問題ありません。我が種族の進化は「初めに外殻ありき」で始まり、この外殻に適応しつつ、それによる優位性を最大限に生かす身体を作り上げました。外的環境の変化によって直立歩行し出したために頭部の脳容積が増大したという場当たり的な進化を遂げた結果、少し姿勢を悪くしただけで頭部の重量によって肩こりが発生するようになったような、やわな人型生命体とは身体構造が根本的に違うのです! - イァグトゥイル研究補佐
その頭兼用の触腕で私に[編集済]なことをする気だろう。パルプマガジンみたいに! パルプマガジンみたいに! - 麻倉博士
しません。一応真面目に回答しますが、確かに、自分にも性的欲求の類は普通にあります。ですが、その対象はあくまで同族ですし、そもそも自分の種族は生殖メカニズムやセックスアピール自体が人間のそれとは大きく異なります。自分は、自身と似ても似つかない形態の生物に性的欲求を抱くような変態では断じてありません。 - イァグトゥイル研究補佐
「私が海王星人である」という事実を麻倉博士が頑に認めてくれないのですが、どうすればいいでしょうか? - 濃霧院博士
正直言って処置無しです。麻倉博士はかのリチャード・シートンの如く、「既存の理論よりも観測された事実を優先する」ということをモットーとしています。これは普通だと思考の柔軟さに繋がるのですが、今回のケースだと、麻倉博士は実際に生命などいない海王星に足を踏みおろしたことがありますので、その……。 - イァグトゥイル研究補佐
呼びにくいし、やっぱり「いあいあくん」って読んでいいかい? - 茅野博士
それ自体は別に構いませんが、スタンスのほうは宇宙的恐怖をただ恐れただけのヨハンセン航海士ではなく、異形に対しても「彼らは人間だったのだ」という結論に達したダイアー教授に倣っていただきたいものです。 - イァグトゥイル研究補佐
うに うにに うに うににー! - うに
おお! トゲこそないものの、自分の種族の祖先もあなたがたのような姿の生物でした。あなたがたも、自分たちのような知的生命体への、栄光ある進化の階梯を上りつつあるのです。……ところで、彼らはなんと言っているのでしょうか? - イァグトゥイル研究補佐
氏名: 麻倉 志穹(あさくら しく)
クリアランスレベル: 3(接触対象によって4まで上昇)
職務: 非ヒト的知性体とのコンタクトおよびコミュニケーション
所在: サイト-81██ 必要に応じ各地に出向
来歴: 日本人女性。19██年生誕。19██年、城南大学在学中に執筆した[編集済]に関する論文において、SCP-████のものに類似する思考形態の地球外知性体の存在を仮定していたことから、財団による接触を受け雇用に至りました。財団における彼女の本来の所属は外宇宙支部であり、現在は同支部主導によるランヴァボン計画の現地統括のために日本支部に長期出向している状態です。
財団に雇用される以前から、地球外知的生命体を始めとするヒトと異なる思考形態の知性体との接触に対して強い関心を抱いており、財団においては外宇宙心理学や構造主義知性体学、異星言語学、補助的な宇宙生物学などの知見を生かし、ヒトと一定以上の差異が存在する知的異常存在とのコンタクト、およびコミュニケーション体制の確立を職務としています。現在は統括責任者としてコンタクト計画に関わることが主ですが、接触対象とのインタビューなどを自ら担当することもあります。この職務内容は日本支部においても同様なほか、日本支部における外宇宙支部の窓口の1つとしても活動しており、概ね「宇宙関連の何でも屋」として扱われています。
いくら私がヒマそうに見えてるから、そして宇宙に関連してるからといって、慶長年間の流星刀とか、べんとらべんとら唱えているよくわからない教団とかの話を私の方に持ち込まれても、正直専門外なんだよねぇ。 - 麻倉博士
人物: 同肉体年齢の平均的日本人女性と比較すると童顔かつわずかに低身長であり、腰まで伸ばした亜麻色の髪を無造作に束ねています。また、職務中は基本的に眼鏡と研究用白衣を着用しているほか、頭部を除く皮膚の露出面積が可能な限り低い服装を好む傾向があります。その容貌などから高校生程度の年齢の未成年者と誤認されることもありますが、彼女は肉体年齢[編集済]歳の成人です。また、年齢に関する特筆事項として、亜光速航行能力を持つ財団宇宙船での近距離太陽圏外任務に█度に渡って参加しているため、亜光速移動時に生じる時間の遅れによって実年齢と地球における年齢に[編集済]歳の差が生じています。
その職務内容に基づく印象とは対照的に、麻倉博士の対人コミュニケーション能力は高いものではなく、業務時の会話は型にはまった硬いものに、オフ時における他の職員との会話は他人行儀かつ必要最低限に限られていますが、一定期間以上の付き合いが存在する人物に対してはうって変わって親しい態度(通称: 親密モード)でコミュニケーションを行うことが知られています。個々人に対するこの態度の変化は口調の変化などを含み、ある時点で一瞬にして行われるため、相手からはしばしば「別人のように豹変する」と評されています。これに関して、麻倉博士本人は以下のように述べています。
私は元来、他者の思考パターンを理解したり、完全に理解しないままアドリブで会話を行ったりするのがとても苦手でね、いわゆるコミュ障の凄い奴なのかな、非ヒト型知性とのコンタクトと同じくらい長いプロセスを経て相手がどんな存在か理解しなければ、複雑なコミュニケーションに基づくまともな対人関係を構築できない。構築できて初めて親密に話せるってわけだ。まあ、構築プロセスは私の中で勝手にやるからそこまで気にしなくていいけどね。
……正直言って、即座にコミュニケーションを確立できるなんて端から思ってない異星人相手の方が、コミュニケーションできるのが当たり前と思ってる人間よりも話しやすいんだよねぇ。 - 麻倉博士
麻倉博士による財団職員向け地球外知性体関連推薦図書群(非公式)
地球外知性体、より平たく言えば異星人に対する研究・接触を行う可能性のある職員は、それらの在り方が非常に多様であるという事実をまず心に刻むべきである。多くの場合、諸君らが相対する対象に人類の常識や道理は通用しない。それを意識せずに行われた初期のコンタクトがいずれも惨然たる結果に終わっていることが、これの重要性を何よりも物語っている。
故に私は、財団外宇宙支部が管理する報告書や公式に閲覧を推奨している専門的な読み物に加え、以下の書籍のいずれか(可能であればすべて)の一読を諸君らに強く薦めたい。これらはいずれもフィクションであるが、異星人という存在の異質さ、あるいはそれに対する人類の反応の可能性を諸君らに考えさせてくれるだろう。 - 麻倉博士
・ダグラス・アダムス『銀河ヒッチハイク・ガイド』
・有川浩『空の中』
・グレッグ・イーガン『ディアスポラ』
・石原藤夫『銀河を呼ぶ声』
・柞刈湯葉『人間たちの話』
・ジョン・ヴァーリイ『へびつかい座ホットライン』
・A・E・ヴァン・ヴォークト『宇宙船ビーグル号の冒険』
・ジェフ・ヴァンダミア『サザーン・リーチ』シリーズ
・アンディ・ウィアー『プロジェクト・ヘイル・メアリー』
・ロバート・チャールズ・ウィルスン『楽園炎上』
・ブライアン・W・オールディス『III』
・オースン・スコット・カード『アグネスとヘクトルたちの物語』
・ジェフ・カールソン『凍りついた空』
・デイヴィッド・カイル/エド・カーティア『星間生物園』
・梶尾真治『地球はプレイン・ヨーグルト』
・川又千秋『宇宙船∞号の冒険』
・ジェームズ・ガン『宇宙生命接近計画』
・神林長平『戦闘妖精・雪風』シリーズ
・グランド・キャリン『サターン・デッドヒート』シリーズ
・今日泊亜蘭『光の塔』
・アーサー・C・クラーク『2001年宇宙の旅』シリーズ
・アーサー・C・クラーク『宇宙のランデヴー』
・アーサー・C・クラーク『楽園の泉』
・マイケル・クライトン『アンドロメダ病原体』
・マイケル・クライトン/ダニエル・H・ウィルソン『アンドロメダ病原体─変異─』
・ハル・クレメント『重力の使命』
・レックス・ゴードン『宇宙人フライデイ』
・小林泰三『三〇〇万』
・小松左京『虚無回廊』
・小松左京『見知らぬ明日』
・笹本祐一『星のパイロット4 ブルー・プラネット』
・佐藤大輔『地球連邦の興亡』
・クリフォード・D・シマック『中継ステーション』
・朱川湊人『ウルトラマンメビウス アンデレスホリゾント』
・新城カズマ『星の、バベル』
・オラフ・ステープルドン『最後にして最初の人類』
・アルカジイ・ストルガツキー/ボリス・ストルガツキー『ストーカー』
・チャールズ・ストロス『アッチェレランド』
・カール・セーガン『コンタクト』
・ロバート・J・ソウヤー『イリーガル・エイリアン』
・ロバート・J・ソウヤー『スタープレックス』
・谷甲州『パンドラ』
・谷甲州『星を創る者たち』
・テッド・チャン『あなたの人生の物語』
・テッド・チャン『大いなる沈黙』
・筒井康隆『農協月へ行く』
・フィリップ・K・ディック『ウーブ身重く横たわる』
・ジェイムズ・ディプトリー・ジュニア『老いたる霊長類の星への賛歌』
・ジェイムズ・ディプトリー・ジュニア『故郷から10000光年』
・サミュエル・R・ディレイニー『バベル - 17』
・夏海公司『葉桜が来た夏』
・ラリー・ニーヴン/ジェリー・パーネル『降伏の儀式』
・ラリー・ニーヴン『ノウンスペース』シリーズ
・野尻抱介『太陽の簒奪者』
・野尻抱介『南極点のピアピア動画』
・H・ビーム・パイパー『オムニリンガル』
・H・ビーム・パイパー『リトル・ファジー』
・ロバート・A・ハインライン『ラモックス』
・林譲治『AADD』シリーズ
・林譲治『大日本帝国の銀河』
・J・G・バラード『溺れた巨人』
・春暮康一『法治の獣』
・テリー・ビッスン『赤い惑星への航海』
・フィリップ・ホセ・ファーマー『奇妙な関係』
・ロバート・L・フォワード『竜の卵』
・ロバート・L・フォワード『ロシュワールド』
・藤崎慎吾『ハイドゥナン』
・ジェイムズ・ブリッシュ『悪魔の星』
・マイクル・フリン『異星人の郷』
・グレッグ・ベア『女王天使』
・マット・ヘイグ『今日から地球人』
・グレゴリイ・ベンフォード『白い生き物』
・グレゴリイ・ベンフォード/ゴードン・エクランド『もし星が神ならば』
・クリス・ボイス『キャッチワールド』
・フレッド・ホイル『暗黒星雲』
・ジェイムズ・P・ホーガン『星を継ぐもの』『ガニメデの優しい巨人』
・ジェイムズ・P・ホーガン『造物主の掟』『造物主の選択』
・星新一『ようこそ地球さん』
・堀晃『エネルギー救出作戦』
・光瀬龍『東キャナル文書』
・光瀬龍『ボレロ一九九一』
・水見稜『マインド・イーター』
・クライン・ユーベルシュタイン『緑の石』
・吉岡平『新・昭和遊撃隊』
・フリッツ・ライバー『放浪惑星』
・マレー・ラインスター『最初の接触』
・六冬和生『みずは無間』
・H・P・ラヴクラフト『狂気の山脈にて』
・エリック・F・ラッセル『超生命ヴァイトン』
・劉慈欣『三体』シリーズ
・スタニスワフ・レム『エデン』
・スタニスワフ・レム『ソラリスの陽のもとに』
・スタニスワフ・レム『天の声』
・S・G・ワインボウム『火星のオデッセイ』
・ピーター・ワッツ『ブラインドサイト』
・イアン・ワトスン『エンベディング』
別に読まなくても大丈夫ですよ。麻倉博士は仰々しいことを書いてますが、要するに趣味、つまり宇宙人ネタのSF小説の布教ですから。まあ、普通に面白いので読んで損はないと思いますけどね。入手困難なものもちょくちょく混じっているようですが。 - イァグトゥイル研究補佐
あと博士、読んでほしいのならば、タイトルだけ羅列するのではなく内容の紹介なども書いた方が良いのでは。 - イァグトゥイル研究補佐
そのうち余力がある時に書くよぉ。 - 麻倉博士
当ファイルは、外宇宙支部よりSCiPNETへと提出された情報を元に作成されています。
地上サイト-0003近海でバカンス中のチャーリー情報参謀
識別名氏名: ロタネブ・チャーリー(Rotanev-C)
クリアランスレベル: 4/Star
職務: 情報参謀、外宇宙支部における軍事情報の統括
所在: サイト-00██(木星圏・ガニメデ)
来歴: 199█年、慢性的な低級職員不足の解決策の一つとして外宇宙支部が進めていた「ブレーメン計画」の一環として、メキシコ湾にて捕獲(当時7歳)の後、知性化が施されました。訓練の後に財団宇宙船SCPSイーハトーヴに観測員として配属され、数度の長期独航任務に参加しています。200█年にブレーメン計画は中止されましたが、観測員時代に情報収集および処理能力の高さが評価されていたため、当該任務でコマンダーを務めていた麻倉博士の推薦を受け、外宇宙支部統合軌道機動部隊群参謀本部J O T F s - C S・情報部への転属と、それに伴う地球外勤務の継続が特例として認められました。その後の幾度かの昇進により、現在は情報参謀の任に就いています。
人物: 知性化されたメスのバンドウイルカ(Tursiops truncatus)です。ブレーメン計画では複数のイルカ知性化プランが検討・実施されましたが、チャーリー情報参謀はそのうちの肉体への処置を最も限定した「ロタネブ・シリーズ」の1体であり、肉体の改造は非水中および0G環境への適応を主眼とした限定的なものに留められています。
肉体的な改造点としては、寿命の延長措置と全般的な体組織の強化などのほかに、胸鰭および尾鰭の機能が拡張され、限定的ながら手として用いることが可能となっています。また、チャーリー情報参謀専用の身体機能拡張装備として、他職員との円滑な意思疎通のために汎地球外言語自動発声翻訳機パ ン ス ペ ー ス イ ン タ ー プ リ タ ーの試作機を転用したコミュニケーションツールが、天体上の大規模サイトなどの有重力環境での勤務のために、コックピット内部に海水を充填した改エッグウォーカー型多脚ポッドが用意されています。
職務内容は[データ削除]。勤務地はサイトもしくは大型宇宙船の内部が主となります。情報参謀としての職務をこなしていることは各種記録から明確ではありますが、低クリアランス職員からの印象は「本職の仕事をしている姿を見たことがない」「いっつも適当にうろついているように見える」「遊び人というか遊びイルカにしか見えない」などといった傾向で一致しています。「目撃証言を統合すると、明らかに一週間のうちに仕事をしている時間が存在しない」という非公式の報告もありますが、これに対し本鯆は「トーシロがプロの情報屋の情報を集めて正しい結果に至れると本気で思ってるんですか?」(原文ママ)と反論しています。
性格に関しては、他の外宇宙支部職員からは「常にものを斜めから見ている」「皮肉屋」「毒舌」「真面目さはあまり感じられない」「イルカとしてものを見ているので人類への脅威に対して深刻に相対していない」などと称されており、本鯆もこれを否定してはいません。反面、外宇宙支部内で行われた性格プロファイルなどの資料は「職務上の必要性」を理由として支部機密指定されており、クリアランスレベル5/Star以下の職員は閲覧不可となっています。チャーリー情報参謀と接する場合、前掲の印象が人工的に形成されたペルソナに由来するものである可能性は常に留意されるべきです。
頼まれた情報の件ですが、クロチルドの太陽系外掃天観測データのみ揃えられるだけ用意しておきましたよ。系内の小天体チャートは航路情報であって、機密に属する品なことは少し頭を働かせればわかりそうなものですが。そもそも地内の化学屋の貴女にとってこの情報は必要なものなんですか? - チャーリー情報参謀
いやあその、こう見えて私って蒐集課の一員じゃないですか。観測可能なあらゆる天体のデータを反映した超強化ホロスコープでも作図してみようかなぁって。 - 潮海補佐
はい? - チャーリー情報参謀
氏名: アサクラ・アケミ(Asakura Akemi)
クリアランスレベル: 1(試験担当装備によって3/Starまで上昇)
職務: 外宇宙支部における実験・試作装備の試験運用担当、テストパイロット
所在: サイト-00██(木星圏・ガニメデ)
来歴: 19██年、当時城南大学の学生であった██博士が下宿していたアパートで発見され、彼女とともに財団に雇用回収されました。当初はAnomalousアイテムとして日本支部の管理下にありましたが、その後、生命維持機構なしでの船外活動(EVA)が可能なことから、宇宙空間用装備開発のためのテストベッドとして外宇宙支部航宙技術本部に移管されました。外宇宙支部においては有人機動ユニット(MMU)や携行型推進装置、遠隔操作式作業用アンドロイド、複数の小型無人宇宙機の開発などに貢献したほか、数度の太陽系外探査任務に装備として参加しています。
人物: 身長171 mmの自律意志および可動能力を有する武█神姫 メ█娘 フ█ームアー█ズ・ガ█ル メ█ミデ█イス █ルカ█ディ█ すー█ーふ█な 30 █INU█ES S█STER█ レデ█コマ█ダー VF█ール チ█セリ█ム ギル█ィプ█ン█ス ダー█ア█ヴェン█ █ロッ█ーズ F█OR█ G.█.P. 女性型の人形です。外見は10代後半から20代前半のモンゴロイド系女性のものであり、身体の主な材質は非異常性の合成樹脂であると判明していますが、ヒトの感覚器官では例外なく「サイズ以外はほぼ人間そのもの」と捉えられ、長期間行動をともにした場合でもわずかな違和感を感じる事例があるのみです。サイズの差による認識の相違を除いて、思考活動においてもヒトとの差異は見受けられていません。
アサクラ試験員の異常性は東洋系の超自然的手段の産物であり、日本・富山県の人形神や中国華南の降頭術などを元に、日本の山陰地方で独自の運用思想に基づく改良を加えられたものであると推測されています。その構造などから、本来は呪物としての機能を意図していたとも考えられていますが、意図されていた効果の発現には失敗した可能性が高く、██年に及ぶ財団での活動期間の間にも影響は観測されていません。なお、アサクラ試験員はその任務の中で極端な高低温および宇宙線に曝されていますが、それによる異常性の変質は確認されていません。
体内に動力源の機能を有する部位は発見されておらず、活動に際し外部から何らかのエネルギーを得ているかも不明です。生活の中で「食事」を模倣した行為を行うことはありますが、実際に食物を摂取することはありません。また、関節部の機能はヒトと完全に同様のものですが、接合部は一体成形されており、何らかの構造は一切確認できません。身体内部は中空となっており、内部にはヒトの[編集済]および[編集済]が充填されています。思考を可能としているメカニズムに関しても多くが判明していませんが、脳波に類似する微弱な電流が全身を流れていること、事故によって頭部が損壊した際にも問題なく活動を継続できたことなどから、全身が思考機能の源であると推測されています。
性格は明るく、試験要員として素早く的確に情報を伝えるのに十分な高い社交性と状況説明能力を持つと評価されています。反面、感情が高ぶると擬音を多く含む抽象的な表現が主になる点は欠点と指摘されていますが、長期間に渡って関係性を構築している研究者らはそれらの内容を正確に把握することができるため、大きな問題として扱われてはいません。
一般生活においては有志によって制作された衣服や家具などを使用しており、現在は、おおよそ1/12スケールの居住区画を携行型コンテナに納めた「ドールハウス」を生活の場としています。これは公式にはアサクラ試験員の収容設備として扱われており、管理担当者によって彼女の「任地」へと運ばれます。
また、外宇宙支部航宙技術本部によって、以下に代表されるアサクラ試験員専用のパッケージ化された拡張装備が複数開発されています。これらはいずれも装身具状の3 mm径ハードポイント・ユニットを介してアサクラ試験員に接続され、思考制御システムのプロトタイプによってコントロールされます。その多くは有志の自腹で員数外装備として開発されているため、財団データベース上に子細な情報は存在しません。
スラスト・パッケージ
無重力の財団資産内での活動のための簡易的なパッケージです。与圧環境下では手回し式のダクテッド・ファンを、無大気環境下では油圧式の液体噴射装置を推進器として脚部に装着します。
ベーシック・パッケージ
もっとも初期に開発された、標準的な0G空間用パッケージです。ヒトの腕に近い大きさの2対の作業用マニピュレータ、反動制御システム(RCS)、各種アタッチメント式工具、通信設備などを一体化させたもので、格納形態ではコンテナ様の形状となります。主にEVAで広く使用されており、任務に応じて推進剤タンクと一体化された大型推進ユニットや、試料採取用の増加コンテナなどが追加装備されます。
12/1エクゾスケルトン・パッケージ
アサクラ試験員が収まる胴体フレームに、4肢とセンサー・ユニットである頭部を接続した、ヒトと同サイズの人型の形状を取る重力環境下にも対応した汎用パッケージです。ヒトとほぼ完全に同様の活動を行うことができます。元々はパワードスーツの実験機として開発されたもので、操縦者の体積が小さいことを生かし、完成系では人体が入る空間にも改良途上の駆動系などが収まっています。宇宙空間での運用時にはベーシック・パッケージと同様のRCSが追加装備されるほか、各種オプションパーツを装着することも可能であり、高機動仕様、水中仕様、野戦医療仕様、高重力環境仕様、大気圏突入仕様などの多くの派生型が制作・検討されています。
ディープ・ストライダー・パッケージ
宇宙空間仕様の12/1エクゾスケルトン・パッケージを中核とした宙戦パッケージです。元々は「宇宙戦闘機」の実現可能性を検討するための技術デモンストレーション・プログラムとして開発されたもので、高加速推進ユニット、姿勢制御用可動肢と一体化したフレキシブル・スラスター・コンテナ3基、各種兵装用ハードポイント、可動式放熱板、センシングユニットなどが装着されます。当初の主兵装は37 mm電磁加速砲1門でしたが、計画中止となった重制宙船プランに参加していた技術者が開発に合流してしまったことにより、同プランで試作された大型熱核グレーザー砲へ換装されています。その他、ミサイルランチャー、対艦急設網ランチャー、浮動爆雷散布装置などを選択装備することが可能です。さらなる追加装備として、用途廃止処分となった旧式高加速船を転用した惑星間単独強襲侵攻パッケージも基礎設計が進められています。同派生案は外宇宙支部理事会の介入により中止されました。
補遺: アサクラ試験員の運用に対する見解
我々用兵側にとって、彼女の起源などはどうでもいい。異常性についても著しく危険でないならば許容する。我々が評価しているのは彼女の能力だ。水も食料も空気も生命維持機構も必要とせず、僅かな生活空間のみで人間の飛行士と同等かそれ以上の能力を発揮できるヒューマノイド。切り詰められた長期探査計画の中で必要な人員を確保するのに、彼女のことをどれほど重宝するか。我々が彼女を1人の職員として扱うことを非難するのであれば、職員扱いを取りやめる損失を補填できるだけの予算をよこせというのだ。 - T・M・スパークス大将
我々にとっての彼女の魅力は、非常に小型で高性能な中枢制御装置として機能しうるということです。彼女が外宇宙支部に「配属」された当時、彼女ほど高性能でスペースを取らない制御システムというものは、用途と手段を問わず存在していませんでした。故に、人材不足を慢性疾患とする外宇宙支部が自動化を押し進める過程で、彼女はハードウェア開発における得難い「テストパイロット」となったのです。彼女の後に続くAI制御の「完成系」が普及した現在においては、その優越性は低くなっていますが、決して失われたわけではありません。未だに我々のAIは、全ての面で人間≒彼女に勝っているわけではありませんから。 - B・ラムズデン博士
説明: 地球外起源の電波発信機。単一のメッセージと思しき指向性の██F通信を太陽系外へ向けて定期的に発信しており、一種の電波標識であると見られている。
回収場所: 太陽系最外縁部・オールト雲の小惑星「6█████」
回収日: 20██/██/██
現状: 不活性化処置の後、惑星間観測サイト-00██にて保管。オールト雲内に存在が確認された██基の同型装置は未回収のまま現状維持。
AO-7945-OS-PLYOPSが発信しているメッセージは、AO-6301-JP/OS-RENSPOIが用いる「星間標準語」と同様の言語によるものであると判明している。解読されたメッセージの内容は以下の通り。
警告: 渡航制限星系
当星系内には異常な総数の既知理論外存在が観測されており、その潜在的危険性を鑑みて隔離および情報封鎖措置が取られています。[解読不能な固有名詞]法第93条により、当星系への許可なき進入は禁止されています。許可を有する渡航者は、一切の基本的被保護権を放棄するとともに、当星系の現住知性体との直接的・間接的接触を確実に回避してください。
- 連合航路局保安部