産土の百物語評判

あずき洗おか、人取って喰おか。

著作

SCP:

1. (16 Oct 2021 11:42) SCP-2354-JP (評価: 75) [3]
2. (17 Dec 2021 10:19) SCP-2552-JP (評価: 52) [8]
3. (02 Feb 2022 10:17) SCP-2772-JP (評価: 112) [6]
4. (01 Apr 2022 11:40) SCP-2227-JP (評価: 30) [1]

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Tale:

1. (02 Nov 2021 09:35) 地蔵崩し (評価: 71) [3]
2. (14 Nov 2021 02:43) けちえん (評価: 34) [1]
3. (19 Nov 2021 11:29) 生きている家 (評価: 40) [5]
4. (07 Dec 2021 11:15) うがい (評価: 55) [2]
5. (26 Dec 2021 01:33) 楽しくて仕方ないこと (評価: 25) [1]
6. (21 Aug 2022 11:37) 金魚すくい (評価: 78) [3]

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GoI-format:

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索引

SCP:

・SCP-2354-JP - 妖怪の親玉 みこし入道

• 収容対象: 妖怪の総大将

・SCP-2552-JP - 退職希望

• 「財団退職希望者」用プロトコル

・SCP-2772-JP - コンビニ傘

• 収容対象: 盗みたくなるビニール傘

・SCP-2227-JP -物語を教えて

• 収容対象: 人類と共生する精霊

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Tale:

・地蔵崩し - 依談

・生きている家 - 依談

・金魚すくい - 依談

・うがい - 怪談

・楽しくて仕方ないこと - 怪談

・けちえん - 妖怪談義¹

異聞

裏話です。ぜひ先に記事をご覧になってくださいね。

・SCP-2354-JP - 妖怪の親玉 みこし入道

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妖怪とは私たちの古い友人であるように思います。

天狗や河童、九尾の狐は今でも大スターですね。

かつて化け物の親玉ともてはやされた見越し入道も、今では見る影もありません。

当記事を執筆した動機のひとつは、かつて一線で活躍した化け物たちが数多忘却されゆく中で、この令和の世にもう一度 彼に化けて出てもらうことでした。

消えゆく影法師としてではなく、恐ろしい化け物として。

「かけぼし²や　みこし入道　山の月」〈宗朋〉鷹筑波(寛永十五年)

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・SCP-2552-JP - 退職希望

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テーマは「意外性」でした。

妖怪や怪談ばかり投稿していたので「こういうのも書けますよ！」と、改めて自己紹介するつもりで執筆しました。

たくさんの温かい批評をいただきましたこと、改めてお礼申し上げます。

イデア論、いいですよね。

哲学は門外漢のため力にはなれませんが、tutuji氏のイデア論のGoI 完成を心待ちにしております³。
【【どうしてこんなとこ見てるんですか？のコーナー】】当記事を001-JPにするかは正直かなり迷いました。通常ナンバーだったらもう少し評価をいただけたのかなと悩んだこともありましたが、新人がこれを残すことに意味があったと今では考えるようにしています。特定のGOIも壮大なストーリーも存在しない。そんな001-JPを綺麗に描き切るのって、実際 今の土壌ではかなり難しいと思います。001提言にリベンジすることが、自分の一つの目標となりました。考察要素もたくさん用意していましたが、ウケないと考察もされないですね。。【【小ネタ】】メタタイトル「退職希望」は「退職(を)希望(する)」と「退職(が)希望(となる)」のダブルミーニング。/財団保有の光学機器「Apologia」「Politeia」はプラトンの対話篇『Apologia Socratis(ソクラテスの弁明)』『Politeia(国家)』より。/「幻灯機のランプに火を灯し、フィルムに描画された像を投影する。」というシーンは、読者にプラトンがイデア論の解説に用いた「洞窟の比喩」を疑似体験させることをイメージしました。太陽(善のイデア)は幻灯機のランプ、実体(イデア)はフィルム、影は映写された像として見立てています。(幻灯機は暗室で投影を行いますが、この暗室が「洞窟」であるといえます。現象界の財団職員は当然、椅子に縛り付けられているわけですね。加えて「火を灯す」というのは「イデアに人間が干渉している」というイメージと、「忘れていたものを思い出す」というイメージを重ねた比喩的表現です。こんな風に誰もが分かるわけないけれど、全てに意味のある文章を描くのが好きです。/繰り返し用いた「想起してください。」はプラトン哲学における「想起説」への目くばせと、「想起」によって「忘却」されるという矛盾を孕んだ表現。お気に入りです。

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・SCP-2772-JP - コンビニ傘

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テーマは「侵蝕」。裏テーマは「風刺」です。

今でも雨が降るたびに、日に二度ビニール傘を盗まれた”あの日”が思い出されます⁴。

日本って明らかに問題があることでも、大事件が起きてからしか対処しませんよね。

それが異常なものなら尚更対応は後手に回るわけです。

認識の改変というやり尽くされたネタに、構成で差別化を図ろうと挑んだ作品でした。
【【どうしてこんなとこ見てるんですか？のコーナー】】当オブジェクトの異常性は「非常に軽微な倫理観異常をビニール傘を媒介として発露させる」というものでした。厄介なのはオブジェクト自身もビニール傘であり、殺人という大事件が起きるまで異常性の検証が十分になされなかったことですね。初めからKeter指定されていたのも「発生が予測できない」＋「軽微でも感染性のミーム汚染を引き起こすから」という単純な理由です。異常性の影響を受けるか否かは、曝露者が元々もつ倫理観/道徳心に大きく依存します。つまり傘くらい盗んでもいいと思っている人は傘を盗むし、子どもを殴ってやりたいと思ってる人は子どもを殴ってしまうわけですね。【【小ネタ】】・「もちろん、傘で遊んだら危ないというのは子どもたちにもよく、指導をしていたのですけれど。」→「傘で遊んではいけない」ということを傘で殴って指導している。/「現在まで犯罪発生率および刑法犯認知件数に、有意な増加傾向は確認されていません。」→増加傾向が確認されることは、今後もないでしょう。ビニール傘なら仕方がないって、みんな思ってるんですから。/・メタタイトルは名盤『ワンルーム叙事詩』より「コンビニ傘」。/・学校名「麗翔学園」→同曲冒頭「冷笑」から。/・夏木氏と歌川博士の名前は小説『虚無病』の登場人物「ナツキ(→夏木)」「クニヨシ(→国芳→歌川国芳→歌川)」から。これは分かるわけないですね。

・SCP-2227-JP - 物語を教えて

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異常性の切り口としては私らしいなと思う記事です。

今あなたには、この声が聞こえていますか？

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・地蔵崩し

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コンセプトは「善意で結界を壊す少女」でした。

書き始めてすぐに少女は大人になって、善意は好奇心になりました。

賽の河原といった設定も書いてるうちに着いてきたものです。

書き始めるって大事ですね。

高浜さんの性格は『SIREN』の高遠先生のイメージを投影したものでした。

彼女はきっと子どもの頃から献身的で、いつも損な役回りをしてきたんだろうなと想像しながら書きました。

私は言うまでもなく「禍話」リスナーで、本作はタイトルのみ「祭り覗き」のオマージュです。

これは完全に蛇足ですが、町で続けて人が死んだのって、実は偶然なんですよね。

彼女はまた勘違いをして、一生 苦しみ続けます。

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・生きている家

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感情って色が付いてると思いませんか。

中でも恐怖が青色をしているというのは、そんなに特別な感覚ではないと思います。

でも、いろんな色の恐怖があってもいいんじゃないでしょうか。

オレンジ色の恐怖があってもいいんじゃないでしょうか。

幽霊もいない、怪現象も起きない、怖い人間も、恨みつらみも、妬み嫉みもない。

そんな暖かい恐怖を描きました。

ステイホームなんて言葉がなければきっと生まれなかった物語です。

賛否両論ありましたが、愛してくれた皆様に感謝を申し上げます。

今夜はどうか 暖かくしてお休みください。

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・うがい

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テーマは再び「ステイホーム」です。

全体の雰囲気は初期の伊藤潤二作品を少し意識したかもしれません。

日本の短編ホラーは伊藤潤二先生の『長い夢』を越えられない壁として、残された恐怖を拾う営みであるとさえ思います。

それはもちろん過言ですが、書棚に並ぶ彼の作品を手に取るたびに 私はそう思わされるのです。

メールをくれた先輩の話もどこかで書きたいですね。名前は筋肉少女帯の楽曲から。

作中の音声ファイルは主人公がスマホのボイスメモに録音していたという設定です。

誰かに助けを乞おうと録り溜めたその音は、残念なことに次の宿主にしか聞こえません。

手遅れでごめんなさい。

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・楽しくて仕方ないこと

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異常な情動を楽しく描けたなと思う一方で、読者をぐっと惹きつける工夫が必要だと痛感しました。

精進いたします。

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・けちえん

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私がO5”鵺”を知ったのはサイトメンバーになってからでした。

SCP財団というフォーマットで妖怪を語る以上、敢えて無視するのも不自然だろうと思い、知恵をしぼりました。

とはいえ記事内の「鵺」に関する描写は、学問的探究からは大きく外れた諧謔です。

蒐集院が好きで創作した境界師「けちえん」ですが、なんとなく色々と使えそうな気がしています。

裏設定では今も残党がいて、現頭目は才能だけで選ばれた若い自由人です。

最近は仕事もなく暇なせいか、道祖神を自動生成する術式を組んで遊んでます。

記事には無関係ですが、市場通笑作/鳥居清長画『 怪 物 昼 寝 鼾 』ばけものひるねのいびき(天明四年)に次のようにあります。

　昔むかしより化物なかまの総座頭 みこし入道

　皆みな手下の物は 入道のけち⁵をうけれども

　親玉いたって古風にて なんでもこれが流行るということを知らず

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著者

ID: miyageubusuna

名前: 産土土産

専門: 妖怪学

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私が専門と標榜する妖怪学は、いわゆる民俗学とは領域を異にする学問です。

その定義は曖昧ですが、広義には妖怪の正体を明らかにするアカデミックな営みであると考えています。

ごあいさつ:

このような最果てにお越しいただき、ありがとうございます。

さようなら。

親に向かってなんだその明朝体は。

脚注

1. 一応SCP-2354-JP関連Taleです。

2. 「影法師」の意か。

3. 相乗効果で私の記事も伸びたら嬉しいなあ。

4. その日はコンビニで傘を三回買いました。

5. 「結縁」の意。