名前: 双葉先 縁 (ふたばさき ゆかり)
セキュリティクリアランスレベル: 2
所属: 科学部門。
所在: サイト-8181。付属職員宿舎。居酒屋。宴会場職員食堂。
職務: 生物系オブジェクトの研究。管理。
カフェインの過剰摂取。 ストロング[Null]の過剰摂取。
経歴: 双葉先研究員は財団職員である故双葉先夫妻の長女として誕生しました。プリチャード学院高等部在学中に執筆した論文“異常性遺伝子生物進化の可能性と抑制”により科学部門の目を引き、スカウトされました。
201█年に発生したインシデント-███によりカウンセリング、[削除済]、リハビリの後に当時の人事課長██氏の推薦により財団に雇用され現在に至ります。
人物: 双葉先研究員は199█年6月30日生まれ、身長は16█cm、体重は[削除済]の日本人女性です。
肩まで伸ばした黒髪を結ばず、薄汚い白衣を着用しています。
ゴミの様な目付きで他人を睨みつける癖の為、不機嫌だと認知されるせいかサイト内においても大抵の場合孤立しています。
休日は大半の時間を発泡酒片手に過ごしている姿が目撃されてます。
ストロング[Null]を携帯してますけど、アナタ弱いですよね。お酒。 -██博士。
余計なお世話。アルコール好きなの。 -双葉先研究員。
先輩泣き上戸なんですから、自覚してくださいよ。 ██氏。
…えっ? そうなの? -双葉先研究員。
性格は酷く粗雑であり、自身の職務以外では専ら寡黙かつ荒々しい女性です。
同研究室の研究員からは“目付きが酷い。” “頼むから酒弱い癖に飲むな。” “弟の爪の垢を煎じて飲め。”と報告されています。
普段は粗暴ではありますが、異常性生物の収容における観察力と洞察力は特出しており、直感的ながらも6回にわたってオブジェクトの暴走を予見、当時は未定義であった適切な措置を実行し収容違反を未然に防いだ実績があります。
一回だけ見たことあるけど、暴れまくってるオブジェクトの前まで行って一人で宥めてたの凄いっすね。先輩のあんな顔初めて見ましたよ。 -█研究員。
なにそれ、どういう意味よ。 -双葉先研究員。
ガンマニアを自称しており、常に白衣の下には種別を問わないハンドガンを一丁程度所持しています。
追記: 所持に関しては精神安定の面で財団医療部門からの承認を受けています。
白衣脱いだ時にホルダーに入ってるのを見ましたよ。いやー、モデルガン持ち込んで良いって自由な職場だなーって。 -██清掃員
許可もらってるの。あとこれ実銃だから。 -双葉先研究員。
双葉先研究員は“モモ”と名付けた雑種の柴犬(Canis lupus familiaris)や“ゆず”と名付けた雑種の猫(Felis catus)を飼育しておりサイト-8181宿舎横に動物小屋を無断で設置しています。
業務によって不可能な場合を除き、サイト敷地内にて日に朝と夕の2度に渡っての散歩と食事を行なってる姿が目撃されています。
また人目につかない場合、飼い犬に優しい口調で話しかけてる姿が目撃されています。
おい、誰が書いた。そんなことない。そんなことないから。捨て犬拾ったけど元いた場所に返すの面倒なだけだから。人事課の職員はすぐに訂正して。 -双葉先研究員。
エージェント・双葉先とは一卵性双生児であり、出産順から姉になります。
容姿が非常に酷似しているため、同サイトの職員は両名の服装等から判断が求められます。
弟さんとそっくりですね。こう…髪結んだら見分けつかなくないですか? -エージェント・██。
昔はよくそれで遊んで寮母さんを困らせてたわね。懐かしいよ。 -双葉先研究員。
広報担当の█です。サイト-8181の瓜二つ姉弟の写真を撮りたいのですが、弟さんはどちらに?
悪いけど弟は出張が多いの。私も忙しいし、すぐには会えないよ。会う予定も無し。 -双葉先研究員。
CASE: Agt.桜野
まずは収容に成功したSCP-2███-JPについて。二人は素晴らしい成果を残しました。双葉先研究員はオブジェクトの初期収容方法の確立。今後もマテリアルは更新しますが、貴女の提示した手段が採用されるでしょう。…続いてAgt.桜野。貴女が行ったカウンセリングで被爆した23名の一般市民は無事終了処分を免れました。貴女も認識災害に被爆する危険を冒してまで立派な職務を全うしました。 -濃霧院博士
(うんうん。と言いたげな顔) -双葉先研究員
せやせや。 -Agt.桜野
それとこれとは話は別です。例え勤務時間であっても他の職員を巻き込んで食堂エリアにおいて“宴会”と称する騒ぎは看過されません。傘連判状形式の名簿を用意しても無駄です。 -濃霧院博士
ウィッス。 -Agt.桜野
スンマセンシタ-。 -双葉先研究員
CASE:もめん
フシャ-!!! -もめん
逃げなくていいのよ…ただ貴女に個人的な興味があるの…どうどう…どうどう… -双葉先研究員
タスケテ!!タベラレル!! -もめん
安心して…せいぜいいっぱい触るだけよ…。 -双葉先研究員
目が本気だよこのヒト!! -もめん
CASE: CP.小池
…うむ。この時間に頭を撫でてくる柔らかい人の手は…縁君だね? -CP.小池
はい。先生。おやすみの邪魔でしたか? -双葉先研究員
いや、構わんさ。私に興味を持って触ろうとする輩は多いが君は優しく触ってくれるから良い。 -CP.小池
[数秒間の沈黙]
悩み事だな?君はわかりやすい。 -CP.小池
そうでしょうか。私には…。 -双葉先研究員
定期カウンセリングにはまだ早いが、始めるかい? -CP.小池
…はい。 -双葉先研究員
[以下音声ログ削除。]
CASE:土橋博士
[無言でSCP-131を凡ゆる角度から何度も撮影する土橋博士]
[無表情でSCP-131に対し抱擁する双葉先研究員]
…素晴らしい…やはり興味深いな。 -土橋博士
なんで私達はサイト-19勤務じゃないんですかね。ここの職員が羨ましすぎます。 -双葉先研究員
人事異動は打診してるよ。全部却下だが。 -土橋博士
つら…。 -双葉先研究員
わかる。 -土橋博士
語彙力落ちてるよ。 -ブライト博士
CASE:鴉羽博士
生物学を専門としてる一人の研究員として私は貴方の身体に興味があるわ。 -双葉先研究員
単刀直入ですね…。 -鴉羽博士
曲がった事は嫌なの。いいから鳥から人への変遷を見せなさいよ。どうやって羽根が生えるのか骨格の変化とか見せなさい。 -双葉先研究員
そんな…まぁいいですけど…[変遷音]……こんな感じで… -鴉羽博士
…変遷中の解剖ってできないのかしら。生命維持装置ぶっ刺したら2、3回ぐらいならできるかもしれないわね。確か私の研究室に…。 -双葉先研究員
だ、誰か…!! -鴉羽博士
CASE:亜月博士
[薄暗い部屋。二人のタイピング音だけが響く]
これで最後…やっと終わりが見えてきたか…。 -亜月博士
すみません。わざわざ来て頂いて手伝って頂きてありがとうございます。 -双葉先研究員
いいですよ。ついこの前も同じ様に手伝って頂いたので。 -亜月博士
…時に双葉先さん。 -亜月博士
なんですか? -双葉先研究員
いい加減。貴女は自分の部屋の掃除に着手した方がいいのでは? -亜月博士
貴方も身嗜みに着手した方がいいのでは? -双葉先研究員
CASE:竹垣購買部員
なぁなぁゆかやん。こっち向いてーなー。いつまで仕事してん? -竹垣購買部員
何よ翔留。今忙しいの。お遊びなら後にして。 -双葉先研究員
ぶー。けちんぼー…ゆかやんが仕事サボったツケやろー。 -竹垣購買部員
その通り。あと私の名前は縁よ。ヘンな名前で呼ばないで。だからさっさと向こう行って。 -双葉先研究員
はいはーい…じゃあさ、最後にゆかやんが元気出るように…ホラ、飴ちゃんやるわ。あーん。 -竹垣購買部員
あーん。 -双葉先研究員
名前: 双葉先 明 (ふたばさき あかり)
セキュリティクリアランスレベル: 1
所属: 諜報部門。
所在: サイト-8181。付属職員宿舎。サイト近隣のingressXMポータル。
職務:要注意団体の捜索、潜入。要人の暗殺。
電子機器のハッキング。電子情報の改竄。オブジェクトの収容における初期探査。攻性防壁の作成。
経歴: エージェント・双葉先は財団職員である故双葉先夫妻の長男として誕生しました。プリチャード学院高等部在学中に一般機動部隊訓練課程を修了した後、中でも特出したハッキング技術と変装技術により諜報部門にスカウトされました。
201█年に発生したインシデント-███によりカウンセリング、[削除済]、リハビリの後に当時の人事課長██氏の推薦により財団に正式に雇用され現在に至ります。
人物: エージェント・双葉先は199█年6月30日生まれ、身長は16█cm、体重は[削除済]の日本人男性です。
変装任務を帯びている場合が多い為、サイト内では任務に応じた服を及びウィッグを着用しています。
基本的には肩まで伸ばした黒髪を後ろで結び、黒縁眼鏡に掛けた私服姿でサイト内の随所でスマートフォン端末を弄っている姿が目撃されます。
本人はハッキングの練習と称していますが、ただのスマートフォン向けゲームです。
それingress? 双葉先もやってんの? -エージェント・██
あ、先輩もやってるのですか! 陣営! 陣営はどっちですか! -エージェント・双葉先。
性格は柔和で穏やかであり、他部門の職員相手にも積極的にコミュニケーションを行なっていますが、大抵の相手とは接触時間と反比例してコミュニケーションが苦手になる傾向にあります。
その後は好きな話題等、どうにかコミュニケーションを続けた場合のみ人並みの関係になれるというのが同部隊隊員の見解です。
あれですよ。初対面だけ饒舌な人みたいな…ハハ、自分で言ってて泣けますね。…はぁ。 -エージェント・双葉先。
大半の職員からは同部隊の職員からは“普通に優しそう。うん、普通に。” “任務時みたいにシャキッとすればいいのに。” “姉に爪の垢を煎じて飲ませろ。”と報告されており、同部隊内の職員からは概ね好印象です。
彼の人間性や技量もあり、全国各地のオブジェクトの捜査に止まらず、海外支部への出張も頻繁に行っています。
彼は素晴らしいハッキング技術を持っています。
ただ、攻性防壁と称して相手方のHDDを破壊するのは頂けませんね。 -エージェント・F。
すみません。こういうの好きですので…。 -エージェント・双葉先。
潜入時はなんで女装してんの? -███研究員。
声の可変域の関係と体格のせいでしょうか…。普通に着てるよりこっちの方が目立たないみたいで…。 -エージェント・双葉先。
知識の浅いガンマニアを自称しており、常に種別を問わないハンドガンを一丁程度所持しています。
追記: 非任務時における所持に関しては精神安定の面で財団医療部門からの承認を受けています。
双葉先研究員とは一卵性双生児であり、出産順から弟になります。
容姿が非常に酷似しているため、同サイトの職員は両名の服装等から判断が求められます。
お姉さんとそっくりですけど、二人並んでいるところ見た事ないですね。同じサイト所属ですし是非見比べてみたいですけど…。 -██事務員。
…僕も姉さんも忙しいから難しいかもですね。姉さんは実験にかかりっきりで僕も出張の方が多いから…。 -エージェント・双葉先。
CASE:桜野研究員
…んあ、何処ここ…。 -桜野研究員
サイト-81██の宿舎行きの廊下ですよ…飲み会で寝落ちした貴女をお姉さんの命令で部屋まで送ってるとこです。
…あ、動かないでください。貴女が重いとは言いませんが貴女の方が身長高いですからおんぶで背負ってるのバランス危ないんですから…。 -Agt.双葉先
りょーかーい…時にあかりくんや、君本当に男…? 何の匂いこれ、香水? シャンプー? -桜野研究員
頭髪嗅ぐのってそれセクハラですよー。 -Agt.双葉先
CASE:Asst.藤花
ほら動かないの。傷口開くから。 -Asst.藤花
痛っ…痛い痛い! さなえさん消毒液つけすぎ! -Agt.双葉先
[数分後]
はい終わり。今日1日はガーゼ剥がさないでね。 -Asst.藤花
どーも、ありがとうございましたっ…痛てて..。 -Agt.双葉先
無理しすぎ、腕っ節弱いくせに。私よりも弱いんじゃないの? -Asst.藤花
流石にそれはないって…一応機動部隊訓練課程は修了らせてるんだぞ…痛てて…。 -Agt.双葉先
はいはい。無理しないでよ。明くんは昔から変わらないんだから…。 -Asst.藤花
CASE:Agt.篝火
そういえば…篝火さんと仕事って何度目でしたっけ。 -Agt.双葉先
まだ2度目じゃなかった? 初めては1、2年前でしたっけ。あの時は凄い荒事になって大変だったなー…。 -Agt.篝火
そして今回は最長72時間を予定した対象の監視…まぁなんとかなるでしょう。篝火さんは先寝てて下さい。何かあったら起こしますから。 -Agt.双葉先
そう? そういえば昨日は寝なかったし…私寝起き悪いけど大丈夫? -Agt.篝火
ええ、姉さんも寝起き悪かったんで大丈夫ですよ。慣れてますよ。 -Agt.双葉先
そう…じゃあお願い…ふわぁ… -Agt.篝火
[以降の音声データはAgt.篝火の銃声と二人の悲鳴の後、破損。再生不能]
CASE:秋教授
あっ秋せーんせ! お久しぶりです! -Agt.双葉先
おや、君は…双葉先クンか。仕事モードの君のその格好と声のテンションだと一瞬誰だかわからないな…久しぶりだね。元気にしてたかい? -秋教授
はいっ! おかげさまで! …少し会わないうちにせんせー背が伸びました? -Agt.双葉先
そのセリフは本来年長者が歳下に言うものですよ?…あいにく身長は測ってないですが…そう言う君は学生時と変わらないな。化粧だけでそうなるものなのかい? -秋教授
ふっふっふー、諜報部の極秘技術の賜物なのですよ…! -Agt.双葉先
若返りでもしてるの? -秋教授
CASE:睦月研究員補佐
睦月さん。別に怒ってないですよ。僕。 -Agt.双葉先
すみません! ほんとにすみません! このサイト来たの初めてでこっちの更衣室が男性用だなんて…。 -睦月研究員補佐
いいですよ。まさか僕が中に入ってる間に立て札が外れてたんですから。それに僕も女装してたし…。 -Agt.双葉先
双葉先さん後ろ姿見たら本当に女の人みたいで全然わからなかったんです…それに躓いてその着物の帯の部分引っ張っちゃって…。 -睦月研究員補佐
まぁ…くるくる回って“あ〜れ〜”ってやつ体験出来ましたし…。 -Agt.双葉先
下着も女性物で全然気付かなくて…。 -睦月研究員補佐
ぼ、僕も怒ってないですから…。 -Agt.双葉先
CASE:アイランズ調停官
双葉先君。今日の予定は? -アイランズ調停官
10時より██院財閥の重鎮と会談。13時から指定暴力団██会の会長との食事会です。 -Agt.双葉先
やれやれ…何気なく敵対組織同士の抗争の食い止めなんだよなぁ…重要度低いとはいえ大仕事だなこれ…。 -アイランズ調停官
秘書の名目で僕も同行します。サポートは期待してください。 -Agt.双葉先
それは心強いが…。 -アイランズ調停官
[数秒間沈黙]
…何故君は女装なのかな? -アイランズ調停官
そちらの方が監視が緩くなると思うのですが…? -Agt.双葉先
以降のインタビュー記録は人事課、医療部門、███委員会により、削除が申請されています。
許可なきアクセスは禁止されています。
-
・弟さんとは同じ学校を卒業で?
えぇ、クラスは違ったけど同じプリチャード学園卒よ。卒業写真あるわよ。見る? -双葉先研究員。
・卒業後は財団へ雇用された、という事でしょうか?
はい、部門は違いますけどね。姉は科学部門。僕は諜報部門です。 -エージェント・双葉先。
・お二人ともお若いのに大活躍とお聞きしますが、一つ噂話を聞きまして。
なんでしょう? -エージェント・双葉先。
・“お二人を同時に見た人間はいない”というものです。
あぁ…ありますね。そんな話も。 -エージェント・双葉先。
・監視カメラの映像は保安上の理由で我々には閲覧が許可できませんでした。
どちらかを尾行しても、必ず撒かれてしまいます。
お二人が雇用され、█年が経過しました。サイト-8181のそっくり双子で有名ではあるのです。我々広報課しても、お二人の事を記事にしたいのですが…なぜ、こうも時間が合わないのでしょうか?
ほんの数分。お写真とインタビューで済む筈なのに私達は、貴方達お二人には同時に会えていないのです。
なぜでしょう?
さぁ? 明の奴が忙しいんじゃないの? 私も週一ぐらいで通院してるし。 -双葉先研究員。
対象: プリチャード学院付属孤児院。元寮長 玄野 久子。
インタビュアー: 広報課職員。エージェント・█
<録音開始>
エージェント・█: 双葉先職員。双葉先姉弟が孤児院に在籍時の事をご存知だと伺っております。
玄野氏: えぇ、もちろん。あの子達が来たのは暑い夏の日だったのを覚えているわ。██さんに手を引かれて…まだ5歳ぐらいだったかしら。とっても不安そうでしたね。
エージェント・█: 5歳というと…██年前ですね。その頃というと…。あぁ、双葉先夫妻の…。
玄野氏: …不幸な事故だったわ。誰が悪い訳でもないけど、あの子達には酷だったでしょうに。だから、最初の何ヶ月は2人で部屋の隅に座ってたわ。おもちゃを見せても遊ぼうとしなかった。
エージェント・█: [沈黙]。
玄野氏: 強い子だったのよ。結局最後まで一度も聞かなかったけど、きっとご両親に何があったのか分かってたのよ。でも、明くんが泣き出しそうになると、お姉ちゃん頑張ってたわ。必死に笑わせようとしてたのよ。自分も泣きそうだったろうに…。
エージェント・█: 仲が良かったのですね。
玄野氏: えぇ…そしてそこから元気になって…とってもいい子だったわ。…高校2年生ぐらいの頃かしら。今の…皆様の所で働きたい、と。
エージェント・█: 『財団』に?
玄野氏: えぇ、でも正直反対したわ。なんだか、ご両親の後を追ってる様で。…その、初めてでした。あんなに喧嘩したの。私、親でも無いのにね。
エージェント・█: [沈黙]。
玄野氏: 結局私が折れて、就職が決まった。…里親も決まらなかったし、あの子達の面倒は特に長く見てたから…その、自分が親とでも勘違いしてたみたい。
エージェント・█: 今は、お二人とは…。
玄野氏: ええ、今でもクリスマスカードと年賀状は必ず来ます。休みの日はよく遊びに来てたわ。…最近は忙しいみたいで、2人一緒に来ることは無いけど…。
エージェント・█: またこちらに顔を出すように伝えておきます。
玄野氏: えぇ…ありがとうね。
<録音終了>
双葉先縁、双葉先明に実施されたb██████及びlo█████の記録を削除を命じます。
その他全ての診療記録はレベル4/O-█の権限により倫理委員会によって管理されます。
-[削除済]
上記二名は予定通りサイト-8181に雇用されます。
各部門への通達を予定通り実施してください。
-[削除済]
双葉先縁及び双葉先明に関して、人事ファイルの改竄もしくは何らかの不具合の可能性があり得ます。
上記両名による財団内のおける倫理に反する行為が可能性を考慮し、現在調査中。 -[削除済]。
調査は不要。即時中止を命じます。
以降の独自調査は貴殿の解雇の理由になり得ます。
-人事顧問委員█████。
-倫理委員会███。
隣に立つ、血を分けてた弟の顔を見る。
揺れる瞳孔、僅かに荒れた息遣い。
強く握られた手を握り返す。
不安げな表情だ。共に生きた5年間で把握できる。
父はいなくなった。母はいなくなった。
その時は理解し得なかったが、住む家が変わり、共に過ごす様々な年代の子ら
時折かつての自分と同じ様に連れてこられ、見知らぬ男女に手を引かれて去って行く子供。
それを見て、「あぁ、私はもう両親に会えないだな。」と。
入所から数ヶ月。この私、双葉先縁は齢6歳程度でその事実を呆然と理解した。
小学生の頃の事である。
その時期から私は亡き父に似て勉学が得意であり、それも未だ学校で習わない生物学を得意としていた。
思い返すと恥ずかしいエピソードだが、よく学校の先生と生物雑学を話していたのを覚えている。
生物学は専門外である教諭に面白い生き物のエピソードを披露していたものだ。
成績も良く。当時は私も社交家だったので友人も多かった。
比較的充実した学生生活を送っていて毎日が楽しかった記憶がある。
その頃だっただろうか、私が孤児院に帰ると寮母さんが私と大きく歳上の見知らぬ男女、正確にいうととある見ず知らずの夫婦と会わせる回数が多くなった。
何を話していただろうか。
名前。好きな食べ物。嫌いな食べ物。得意な勉強。
そんな当たり障りのない会話をして、その夫婦は遠くから私が遊ぶ姿を眺めている。
そして、何回か会って、たまに家に招待されては出されたお菓子とお茶を頂く。
そうした日が数日続いたある日の事。
薄く日が傾いた晴れた日の午後。
その夫婦が孤児院前まで迎えに来た姿を見かけて、
「また、お菓子を貰える」と私は意気揚々と駆ける。
孤児院の門の前でそんな時、夫人の方が少しだけ躊躇って、か細い糸を紡ぐ様に口を開いた。
「私達と一緒に暮らさない?」
夏の木漏れ日の下での問い、今でもその時の情景は鮮明に覚えている。
魅力的な提案だったのかもしれない。
この夫婦には子供がいなかった。身体の問題だったらしい。
裕福な家庭であったが、唯一出来なかった子供が欲しくこの孤児院に足を運んだという。
その夫婦の事は好いている。
寮母さんを除けば最も親身になって自分に接してくれる大人の一人だ。
それに、心の何処かには両親というモノに強く惹かれる気持ちもある。
きっとこの人達は私を愛してくれるだろう。
その確信が頭を過って。
差し伸ばされた優しい手を────。
「いや、です。」
手に取らず。そう私は言い切った。
その答えにきっと二人は困惑しているだろう。
夫婦の顔を直視できず、思わず目線逸らす。
遠い窓の向こう。部屋の隅で孤独に本を読んでいる弟を見た。
伏し目がちで、内向的。どこか虚ろげな雰囲気の血を分けた家族の姿。
「あかりといっしょがいい、です。」
「いっしょにいさせてください。」
この時の決断が、後にも先にもターニングポイントだったのだろう。
一人ならともかく二人引き取るとなると難しい。
その後も間を開けて何人か里親になろうと提案はあったが二人揃って迎い入れてくれる家族はなかった。
あの時、弟と決別していたらどうなっていただろう。
幼いなりにその膨大な想像力で描いた真っ黒な未来に思わず涙しそうになる。
だから、これでいいのだ。
将来は不安でいっぱいだが弟がその名の通り、これからの道を照らしてくれる。
だからきっと大丈夫。二人一緒なら。
そう確信し、毛布に包まって寝息を一つ。
養子縁組を断ったその晩、私は目を閉じる前に、その隣で安心した様に眠る弟の髪をそっと撫でたのだった────。