ランダム著作:
作品リスト
SCP
- (25 Nov 2021 00:25) SCP-1227-JP 評価: 53 (+58/-5)
- (21 Dec 2021 12:06) SCP-1243-JP 評価: 31 (+38/-7)
- (10 Jan 2022 15:54) SCP-1796-JP 評価: 39 (+41/-2)
- (12 Jan 2022 12:21) SCP-1879-JP 評価: 45 (+48/-3)
- (20 Jan 2022 12:24) SCP-1867-JP 評価: 80 (+86/-6)
- (21 Jan 2022 14:59) SCP-1684-JP 評価: 28 (+35/-7)
- (30 Jan 2022 11:07) SCP-1237-JP 評価: 58 (+58/-0)
- (17 Feb 2022 07:40) SCP-1437-JP 評価: 61 (+62/-1)
- (17 Feb 2022 07:40) SCP-1438-JP 評価: 46 (+56/-10)
- (17 Feb 2022 07:40) SCP-1439-JP 評価: 44 (+48/-4)
- (27 Feb 2022 05:00) SCP-1639-JP 評価: 29 (+31/-2)
- (18 Mar 2022 01:36) SCP-1251-JP 評価: 37 (+43/-6)
- (28 Mar 2022 14:00) SCP-1000-JP-EX 評価: 95 (+99/-4)
- (07 Apr 2022 13:00) SCP-1150-JP 評価: 124 (+126/-2)
- (05 Jun 2022 14:55) SCP-743-JP-EX 評価: 27 (+37/-10)
- (13 Aug 2022 15:30) SCP-798-JP 評価: 156 (+166/-10)
- (04 Nov 2022 11:00) SCP-1665-JP 評価: 47 (+53/-6)
- (09 Nov 2022 04:00) SCP-1341-JP 評価: 75 (+86/-11)
- (30 Nov 2022 11:20) SCP-1413-JP 評価: 52 (+57/-5)
- (15 Mar 2023 05:00) SCP-1838-JP 評価: 23 (+34/-11)
- (16 Aug 2023 12:30) SCP-1724-JP 評価: 40 (+46/-6)
- (18 Aug 2023 13:30) SCP-1523-JP 評価: 35 (+44/-9)
- (16 Oct 2023 02:00) SCP-1174-JP 評価: 60 (+63/-3)
- (23 Nov 2023 14:00) SCP-1192-JP-EX 評価: 46 (+53/-7)
- (09 Jan 2024 11:00) SCP-3024-JP 評価: 182 (+188/-6)
- (30 Jan 2024 13:00) SCP-3384-JP 評価: 67 (+71/-4)
- (25 Feb 2024 13:00) SCP-3792-JP 評価: 53 (+54/-1)
- (12 Jul 2024 15:00) SCP-1394-JP 評価: 55 (+55/-0)
- (13 Jul 2024 15:00) SCP-1528-JP 評価: 34 (+35/-1)
- (14 Jul 2024 15:00) SCP-1651-JP 評価: 33 (+33/-0)
- (15 Jul 2024 15:00) SCP-1767-JP 評価: 37 (+37/-0)
- (20 Oct 2024 00:50) SCP-1458-JP 評価: 39 (+40/-1)
- (30 Nov 2024 03:00) SCP-1397-JP 評価: 72 (+74/-2)
- (01 Jan 2025 01:00) SCP-1781-JP 評価: 33 (+35/-2)
- (23 Feb 2025 07:00) SCP-1695-JP 評価: 58 (+59/-1)
- (16 Mar 2025 11:00) SCP-1667-JP 評価: 27 (+30/-3)
- (03 May 2025 15:00) 筒取の提言 評価: 151 (+153/-2)
Tale
- (31 May 2022 13:40) 緋い蜥蜴、硬い鳥 評価: 60 (+63/-3)
- (18 Jul 2022 14:55) 銀と黒のモノリスは、ケルワッサーに立つ 評価: 34 (+34/-0)
- (19 Jul 2022 11:30) 爆音ではなく静寂の中で 評価: 17 (+17/-0)
- (06 Nov 2022 15:05) 天与と彫刻、芸術家と狂奔 評価: 37 (+38/-1)
- (01 Feb 2023 05:00) ウツボは死んで、腐って朽ちて、朽ちさせて。 評価: 141 (+141/-0)
- (12 Aug 2023 15:04) 暗黒の此岸、翠緑の彼岸 評価: 46 (+50/-4)
- (28 Nov 2023 08:00) 夜より黒い空の下に桜の花は咲き誇る 評価: 33 (+35/-2)
- (16 Jul 2024 15:00) 氷の上の怪物 評価: 37 (+39/-2)
- (30 Nov 2024 23:30) 星霜を食む 評価: 33 (+33/-0)
GoIF
- (20 Oct 2024 02:01) 闇寿司ファイルNo.682 "鯨類" 評価: 67 (+70/-3)
- (09 Feb 2025 02:30) 闇寿司ファイルNo.683 "ダツのダーツ" 評価: 39 (+39/-0)
- (11 Feb 2025 14:00) 闇寿司ファイルNo.684 "ハモの握り" 評価: 15 (+21/-6)
翻訳
- (21 Mar 2022 16:52) SCP-5745 評価: 16 (+17/-1)
- (16 Jun 2022 02:43) SCP-6055 評価: 14 (+15/-1)
- (22 Jun 2022 10:05) SCP-6448 評価: 39 (+39/-0)
- (24 Aug 2022 16:25) SCP-4715 評価: 12 (+13/-1)
- (28 Aug 2022 02:50) SCP-4159 評価: 15 (+16/-1)
- (14 Sep 2022 07:40) SCP-4158 評価: 13 (+15/-2)
- (21 Sep 2022 03:00) SCP-6832 評価: 20 (+25/-5)
- (18 Oct 2022 15:40) SCP-7088 評価: 18 (+18/-0)
- (15 Nov 2022 13:30) SCP-6884 評価: 18 (+18/-0)
- (29 Nov 2022 14:15) SCP-7187 評価: 18 (+19/-1)
- (01 Nov 2023 07:29) SCP-7587 評価: 4 (+7/-3)
- (14 Nov 2023 16:24) SCP-5651 評価: 11 (+13/-2)
- (18 Nov 2023 08:40) SCP-7556 評価: 11 (+14/-3)
- (22 Nov 2023 01:50) SCP-6991 評価: 18 (+19/-1)
- (23 Jan 2025 23:30) 保安施設ファイル: サイト-44 評価: 17 (+17/-0)
- (25 Jan 2025 15:00) 未確認動物学部門 ハブ 評価: 25 (+25/-0)
- (09 Mar 2025 15:30) OzzylizardのWikiのコーナー 評価: 16 (+16/-0)
- (06 Apr 2025 06:00) SCP-5007 評価: 8 (+9/-1)
- (20 Apr 2025 10:58) SCP-6644 評価: 9 (+9/-0)
自著地球史年表
数字は概算、単位はMa。
冥王代 約46億年前~約40億年前 |
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---|---|---|
4470 | 筒取の提言 | 原始惑星テイアと原始地球との衝突(ジャイアント・インパクト説) |
太古代 約40億年前~約25億年前 |
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4000 | SCP-1341-JP | 代謝系を持つ原始生命の誕生 |
3000 | SCP-3024-JP | 火星の水が宇宙へ散逸 |
原生代 約25億年前~約5億3880万年前 |
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1600 | SCP-1437-JP | 金星が大規模火成活動により暴走温室状態に突入した年代の上限 |
717 | SCP-1227-JP | 全球凍結による未確認動物系統の根絶 |
555 | 夜より暗い空の下に | エディアカラ生物群の繁栄 |
顕生代-古生代-カンブリア紀 約5億3880万年前~約4億8540万年前 |
||
505 | SCP-1767-JP | 脊索動物における脊椎動物系統とピカイア系統の分岐 |
顕生代-古生代-オルドビス紀 約4億8540万年前~約4億4380万年前 |
||
466 | SCP-1695-JP | 地球の環の形成(隕石衝突期の開始、地球寒冷化の強化) |
457 | SCP-1237-JP | チョッカクガイの繁栄、意思疎通手段の確立 |
顕生代-古生代-シルル紀 約4億4380万年前~約4億1920万年前 |
||
顕生代-古生代-デボン紀 約4億1920万年前~約3億5890万年前 |
||
410 | 闇寿司ファイルNo.683 | ドリアスピスの生息時期 |
372 | 銀と黒のモノリス | デボン紀後期の大量絶滅(ケルワッサー事変) |
370 | 闇寿司ファイルNo.683 | ダンクルオステウスの生息時期 |
顕生代-古生代-石炭紀 約3億5890万年前~約2億9890万年前 |
||
320 | SCP-1243-JP | 陸棲腹足類の出現 |
310 | 夜より暗い空の下に | アースロプレウラの生息時期 |
顕生代-古生代-ペルム紀 約2億9890万年前~約2億5190万年前 |
||
280 | 闇寿司ファイルNo.682 | ヘリコプリオンの生息時期 |
278 | SCP-3384-JP | カセアの生息時期 |
260 | SCP-1684-JP | ディキノドン類によるサソリモドキの利用と地下文明の発達 |
252 | SCP-1439-JP | 地球外種族によるディキノドン類の征服 |
顕生代-中生代-三畳紀 約2億5190万年前~約2億140万年前 |
||
闇寿司ファイルNo.683 | この時代の全体に亘ってサウリクティスの生息時期 | |
237 | SCP-1437-JP | パンサラッサ海中央での大規模火成活動 |
232 | SCP-1651-JP | 単弓類優占世界と双弓類優占世界との分岐 |
218 | 星霜を食む | モノチスの生息時期 |
顕生代-中生代-ジュラ紀 約2億140万年前~約1億4500万年前 |
||
160 | 緋い蜥蜴、硬い鳥 | 一部の小型獣脚類恐竜(アンキオルニス)が飛翔性を獲得 |
顕生代-中生代-白亜紀 約1億4500万年前~約6600万年前 |
||
145 | SCP-1724-JP | マガキ属の出現? |
129 | 闇寿司ファイルNo.684 | オンコプリスティスの出現年代下限 |
113 | SCP-1528-JP 闇寿司ファイルNp.683 |
タラットスクス類の一般的な絶滅年代上限 プロトスフィラエナの出現年代下限(白亜紀末まで繁栄) |
110 | SCP-1150-JP 暗黒の此岸、翠緑の彼岸 |
ディノサウロイドの地球脱出 イネ草本植物最古の化石記録 |
99 | SCP-1879-JP | ミャンマー北部における琥珀化石の保存 |
96 | SCP-1639-JP | スピノサウルスの化石の堆積 |
94 | 闇寿司ファイルNo.684 | オンコプリスティスの絶滅年代上限 |
92 | 闇寿司ファイルNo.683 | ティロサウルスの出現時期 |
70 | SCP-1438-JP | 北太平洋西部におけるアンモナイト類の繁栄 |
67 | SCP-1439-JP 星霜を食む |
ティラノサウルス、トリケラトプス、エドモントサウルスの生息時期 オルニトミムスの生息時期 |
66 | SCP-1438-JP | 白亜紀末の大量絶滅、アンモナイト文明の滅亡 |
顕生代-新生代-古第三紀 約6600万年前~約2303万年前 |
||
58 | SCP-1438-JP | 最後のアンモナイト化石が記録媒体として蝦夷層群に堆積 |
55 | SCP-743-JP-EX SCP-1243-JP |
テチス海の海底堆積物の燃焼による暁新世-始新世温暖化極大(PETM) PETMに伴って吸血性カタツムリが一時的に増殖 |
53 | 闇寿司ファイルNo.682 | 初期の鯨類が海洋へ進出 |
50 | SCP-1458-JP | 植物に類似するアノマリーが石狩層群に堆積 |
45 | SCP-1528-JP | 台頭するバシロサウルス科と生存したタラットスクス類との競合 |
33 | SCP-1251-JP | 捕食性ホネクイハナムシがヨーロッパ地中海で繁栄 |
30 | SCP-1251-JP | アフリカ大陸でヒト上科が出現 |
顕生代-新生代-新第三紀 約2303万年前~約258万年前 |
||
23 | 闇寿司ファイルNo.682 SCP-3384-JP |
メガロドンの出現 急激な地殻変動によりジーランディア大陸が沈没 |
20 | SCP-798-JP | 細胞内共生を行うアクチノキクルス属の出現 |
16 | 星霜を食む | ビカリアの生息時期 |
15 | SCP-1150-JP | 全球的寒冷化に伴うイネ科草本植物の分布拡大 |
6 | SCP-1394-JP | ヨーロッパ地中海が消滅(メッシニアン塩分危機) |
5.33 | SCP-1394-JP | 大西洋から地中海へ海水流入(ザンクリアン大洪水) |
3.6 | 闇寿司ファイルNo.682 | メガロドンの絶滅 |
4 | SCP-1439-JP | ホモテリウムの生息時期 |
顕生代-新生代-第四紀 約258万年前~現在 |
||
0.99 | SCP-1397-JP | 既知の範囲内でナイトメアカブトガニの最大遡行範囲 |
0.73 | SCP-1651-JP | 北京原人が平行世界に進入し知的爬虫類と遭遇 |
0.7 | SCP-798-JP | ホモ・エレクトゥスが共生性珪藻と遭遇 |
0.5 | ウツボは死んで、 | SCP-3000が出生 |
0.34 | SCP-1781-JP | ナウマンゾウがユーラシア大陸から日本列島に進出 |
0.1 | SCP-1781-JP | 富士山の主要な火山体が噴火により形成 |
0.04 | SCP-1000-JP-EX | ネアンデルタール人の実質的な絶滅 |
0.02 | SCP-1838-JP | 北海道に人類が進出 |
0.01 | SCP-1397-JP | 縄文海進に伴うカブトガニの瀬戸内海進入 |
未来 | ||
-0.5 | 氷の上の怪物 | 全球凍結後の地球でSCP-682が蘇生 |
-4.9 | SCP-1796-JP | 陸棲偶蹄類の海洋進出、タケ類の繁栄 |
-5 | SCP-1523-JP | 飛翔性ヘビ類が空棲頂点捕食者として繁栄 |
-20 | SCP-1796-JP | オーストラリアにおける地上棲鳥類の繁栄 |
-40 | SCP-1796-JP | 齧歯目がヒマラヤ山脈下流域で文明を発展 |
-92 | SCP-1867-JP | 資源の枯渇した地球で地上棲鳥類が時間遡行を開始 |
自著語り
SCP-JP
- 2021年
本作の構想は2018年1月3日まで遡る。その日は2016年公開の新海誠監督の映画『君の名は。』が地上波で初放映された日であり、あまりにも流行する当該作に辟易していた私はその日初めて『君の名は。』を目にしたのである。圧倒的な映像美や声優の名演といった映像媒体の長所はさておき、当該作に強く魅了された私は、男女が時空の壁を越えて邂逅を果たす物語という構図に並々ならぬ関心を抱いた。自分がこのようなタイムトラベルの物語を描くならば何を題材にするか、と空想に走っていたのであった。
当時の私が見出した題材とは、2005年のNHKスペシャル『地球大進化』でも取り扱われたスノーボールアース ⸺ 全球凍結と呼ばれる事象である。約7~6億年前にかけて地球を襲ったこの大氷河時代は、地球の赤道域の海水まで厚い氷に閉ざされる極端な寒冷期であった。顕生代の五大大量絶滅に勝るとも劣らない絶対的な氷の断絶は、『君の名は。』で描かれた隕石災害のようなカタストロフを描写するのにはうってつけであった。宮水三葉から見た立花瀧は系統的に大きく離れた真核生物の枝であり、三葉の文明を滅ぼす厚い氷が消え失せた後にようやく系統的爆発を遂げるのである。
『E.T.の住む星』のような異星の雰囲気も孕ませながら構想していた本作であったが、SCP財団への参加にあたり、かねてより温めていた ⸺ 氷河時代の物語を温めていたとは奇妙な表現だが ⸺ 本作をSCP報告書として具現化することを思いついた。おおよそ3年10ヶ月に亘って埃を被っていた本作だが、SCP財団という場に投稿するにあたって、まず安直なボーイミーツガールは排除せねばなるまいと考えた。スターティアン氷期の以前、遥か遠い過去である原生代にヒトと瓜二つの種族がヒトに違和感を抱かせないだけの高度な文明を築いているというのはどだいあり得ない話であるため、まずは種族の設定を大きく変更した。触手で構成された多細胞生物という体にし、また人魚やヒトガタを彷彿とさせるボディプランに留める。SCP-1227-JP-2の誕生である。
SCP-1227-JP-2には石器時代相当の文明を営んでもらい、そこを潜水艦で財団職員が訪れて科学的調査を実施するという格好にした。職員の氏名は特に考えていなかったが、地球を舞台にした物語であることから「テラ」よりエージェント・寺澤とし、その恩師にあたる人物についてはフィールドワークを行う人物を想定し外原研究員とした。本作から連続した世界観にあるSCP-1243-JPとSCP-1796-JPにも彼らは続投させるつもりであったが、その他の作品にも時折姿を見せる形となった。『星を継ぐもの』を参考にこれらを纏めたTaleの構想もかつては存在したが、実現には至っていない。
SCP-1227-JP-2の系統の枝の断絶を描く一方で、人間サイドのストーリーはSCP-017-JPを参考にし、またサイエンティフィックな議論を展開しながら『星を継ぐもの』にも影響を受けつつ、今後に期待を持てる結末とした。発掘予定地のナミビア共和国は『地球大進化』でもエディアカラ生物群の化石産地があることで特集されており、氷の下で生き抜いたSCP-1227-JP-2の化石証拠というものもいつか得られるのかもしれない。それは、およそ7億年の時を隔てた、人類とSCP-1227-JP-2の再会の時である。
さて、本作は正真正銘の処女作であり、またサイト内外を問わず初めてサイトメンバーから直々に批評を頂いた作品でもある。複数名の批評を通して生存したことはある種の成功体験となり、今の財活を支えているように思われる。私の創作活動として決して外すことのできない要石と言えることであろう。
SCP-1227-JPから始まる三部作の構想は、過去から現代を経てそして未来へ至るものとして構想した。本作はその中盤にあたる現代を舞台とした作品で、エージェントから研究員へキャリアを変更した前作主人公の寺澤研究員と、出世を果たした外原上席研究員との相互作用が描かれる。人類の危機に対し後ろ向きになった外原と、前作で示した前向きさがいまだ健在な寺澤との交錯をテーマとした。
実は本作の直前に人間の血液を吸ってカルシウムを摂取するサソリモドキの報告書を執筆していたが、神速抜刀コンという魔境に呑まれ、あえなく低評価削除に至っていた。この時にk-cal氏や
Jiraku_Mogana氏から受けたコメントは、現在の私の執筆の方針の大きな柱になっていると断言できよう。さて、この消えてしまったサソリモドキのアイディアを活かすべく、サイトメンバーに対し怒りの炎を燃やした私は設定を練り直し、炭酸カルシウムの殻を持つカタツムリに注目した。螺旋を描くカタツムリの殻というものは輪廻を連想させ、それは『ドクター・フー』S9「影に捕らわれて」で12代目ドクターが経験した悠久の地獄を想起させるものでもある。カタツムリの渦に囚われ、数千万年に及ぶ比喩的な堆積輪廻に囚われる人類を描こうとした。
本作、そして削除されたサソリモドキのテーマの一つには、歪められてしまった生命系統の進化というものがある。地球上の生命の進化史というものは「我々はどこから来たのか」という人類にとっての根源的な問いかけへの答えであり、進化史の理解が歪むということは我々人類の実存を揺るがすものでもある(このあたりの観点は先行作としてSCP-1072-JPが描いている)。サソリモドキではこのあたりの恐ろしさを求め、カタツムリでは暁新世-始新世温暖化極大とも組み合わせて理論を展開した。
生存作だけを数えれば2作目ということもあって、本作の旧版にはニュービーらしい風味も多々あった。2023年に開催されたオーバーホールキャンペーンでは、その一環として2023年夏時点の感性で本作を改稿した。2021年のTutu-shと2023年の
Tutu-shによる共著という雰囲気で、一部には初々しさも残しつつアップデートをした。楽観と悲観という観点の対比を盛り込み、またサソリモドキ時代に掲載していたブラキオサウルスの写真を復帰するなど、評価-10の低評価削除からのリベンジを果たせたといって良いであろう。
- 2022年
過去と現代とくれば、次に待っているものは未来に決まっている。本作はSCP-1227-JPとSCP-1243-JPから世界線を引き継いだ三部作の最終章であり、また、SCP-1879-JPやSCP-1867-JP(そしてSCP-1150-JP)へと激化するインフレーションの土台でもある。本作では前作で人類の存続を諦めた外原の背景を描き、彼の諦念を浮き彫りにした元凶に光を当てる。
とはいえ、本作の内容は批評を通して大幅に変更された。izhaya氏の批評は大変にクリティカルなものであり、アノマリーとの冗長な会話や、映像作品であれば映えたかもしれない過剰な設定(時空間の接続が地震活動に関連するというもの)は大きく抹消されることとなった。SCP-1227-JPとのクロスTaleも意図していた本作の執筆だが、これを機に再び自身の執筆方針が大きく転換を迎えたと言って良い。クロスTaleの構想は立ち消え ⸺ 少なくとも無期限凍結に至ったわけだが、それを補って余りある視座を得ることができた。
さて、本作は跋扈する数多の未来生物が登場する。こうした思弁進化ものというものは幼少の私を魅了したジャンルであり、『フューチャー・イズ・ワイルド』をはじめ名作には枚挙に暇がない。本作は私の人生観を育んだ思弁進化へのラブレターでもあり、当時福岡で開催されていた『アフターマン』展にも便乗したものであったかもしれない。特にこれらの作品の作者であるドゥーガル・ディクソンの哲学には強く影響を受けているところがあり、鯨類の絶滅や兎形目・齧歯目・翼手目の繁栄といった観点は彼の著作に則ったものと言えよう。私の考えた架空未来生物のうち特に気に入っているのは、尺骨の退化を活かした進化を遂げたコウモリである。
そしておよそ4000万年におよぶ未来の歴史を地質的・生物的に構築できたことも、本作を通して得られた慶びの1つである。SCP財団を通して思弁進化に爪痕を残した作品として大切にしたいものである。
備考: OwlCat氏主催「風土コンテスト」にてSCP部門優勝。
外で雪が降りしきる中、暖房の恩恵にあずかりながら友人と話をした。「ジュラシック・パークの蚊はThaumielになるんじゃないか?」と。先の三部作で人類滅亡後の世界を描いた後、それに対するカウンターとして救済手段を用意することにした。全体的なコンセプトは現実に存在するスヴァールバル世界種子貯蔵庫を踏襲したものである。財団日本支部が日本を拠点にしているという発想の下、安定した地盤で知られる吉備高原を施設の所在地として設定した。
吸血昆虫としての設定と平行して、蚊の設定は『ドクター・フー』S3「まばたきするな」に登場する嘆きの天使を参考にした。嘆きの天使の持つクォンタムロックすなわち量子ゼノン効果は魅力的な設定であるが、SCPバースにおいて天使に類似する存在としては既にSCP-173という強力な前例が存在しており、そのまま活かすことは不可能である。そこで、観測によって状態が固定されるという概念を視覚的観測から接触観測へ移し、また状態固定による永久保存が可能な媒体として再構築した。
なお投稿を考えていた矢先、R-suika氏によるSCP-2360-JPというThaumielクラスオブジェクトが投稿され、私は当該作に強く惹かれるとともに焦燥感を覚えた。畑は違えどもこれだけ練りに寝られたThaumielクラスの後では、単に人類の命脈を繋ぐというSCP-2000でも描かれたテーマだけを追求するオブジェクトは生き残れないであろう ⸺ という思考が過った。事実、同様の指摘は批評の場にもあった。
というわけで急遽方針転換し、報告書の「書き手」を人ならざる者へ変更した。支配シフトシナリオを引き起こした彼らはおそらく、Homo sapiensが構築した遺産をある程度は引き継ぐはずである。既に確立された生命の分類体系や、地球全土に散らばる地名、ひょっとすると教育をはじめとする制度も継承するかもしれない。財団も継承されたこの世界で、かつてのHomo sapiensの痕跡に辿り着いたところで、物語は幕を下ろす。
前作SCP-1879-JPで人類に救済の手を差し伸べた後、今度はやはり人類を滅ぼそうという思考に至る。カウンターに次ぐカウンターである。SCP-1796-JPは人類滅亡後の世界を題材にしたが、さらにその先、哺乳類そのものも滅び去った世界で何が台頭するかと言われると、それは鳥類であると考えられる。
現代のように四季が存在し両極が氷に閉ざされた環境が持続するならば、おそらく哺乳類や鳥類といった恒温動物の覇権は続くことであろう。とはいえ、1億年近い時間が過ぎたということで、氷河時代にはそろそろフィナーレを迎えてもらうことにした。となると地球環境の激変は免れないし、爬虫類をはじめとする変温動物の帝国が反旗を翻すことになるであろう。鳥類から進化した知的生命体が過去へ進撃する根拠としてこのような時代背景を設定した。
鳥類の形態はテレビ朝日版『アフターマン』に登場したトゥア・チュートを参考にした ⸺ やはりドゥーガル・ディクソの御代には到底頭が上がらない ⸺ ほか、ジェイムズ・P・ホーガン『星を継ぐもの』のガニメンの形態にも着想を得た。現生の地球生物には存在しない骨格形態を取り入れたが、抜本的な進化というものを取り入れるのが思弁進化ものの醍醐味の1つであると思う。
なお、全体的な外見は作中にもあるように実在したフォルスラコス科の化石鳥類のものとした。肉食哺乳類と競合したともされる地上の一大勢力であった彼らは、恐竜、特に獣脚類の恐竜のボディプランを残した魅力溢れる生物である。そんな太古の生物に敬意を払いつつ、彼らが過去 ⸺ すなわち我々から見た現代への侵略に動く、生態系シフトをここに描写した。
なお、構文はSCP-1630-JPのものを参考にした。加えて、劇中に登場する鳥類の銃火器は『ドクター・フー』S3「ダーレクの進化」に登場した小道具がWikimedia Commonsで公開されていたため、これを使用している。
備考: Kuronecko氏主催「破滅のコンテスト」絶望賞受賞(総合2位タイ)
SCP-1227-JPからSCP-1867-JPまで地球史を題材とした一連のストーリーを描いてきたわけであるが、このあたりでそろそろ人類の直接的な存亡には関わらない、言ってみれば番外編的な作品を作ろうとした。アイディアの根底にあったのは、かつて低評価削除されたサソリモドキの報告書(SCP-1243-JPの原形)をどうにかして復活させようというものであった。
サソリモドキは強烈な臭いを持つ酸性の分泌物を尾部から噴射する。この特性を変更し、炭酸カルシウムを分泌させ、石灰岩地形を形成させることにした。サソリモドキの起源は恐竜よりも古く古生代へ遡るものであり、また日本の山口県に分布する秋吉台も石炭紀からペルム紀にかけて卓越した石灰岩層を形成している。本作の制作については、この時代の整合性に着目したという点が大きい。
本作の作風に関してはNHKのテレビ番組『プロジェクトX〜挑戦者たち〜』の雰囲気を目指した。試行錯誤を経て地下を探索する研究者らの姿を描き、また異常性ではなく技術的な困難性ゆえの苦難の描写を目標とした。私個人としてはまだ課題があるようにも感じるが、そういった観点の実現にはある程度成功したように思われる。また地下の描写は2016年の『地球ドラマチック』「洞窟に眠る新種の人類」や『ドクター・フー』S2「闇の覚醒」といった作品も参考とした。
本作の結末として明かされる真相は、『ウォーキングwithモンスター』や『地球大進化』でも登場した単弓類が高度な文明を地上に築いていたというものである。P-T境界に示されるペルム紀末の大量絶滅は顕生代における最大の大量絶滅事変であり、知的生命の断絶を描くには格好の題材である。天変地異を前にして地中に潜った彼らが空に何を見たのかは、後継作で明らかにされる。
ここのところ人類や知的種族が滅亡に直面する物語を多く執筆していたため、そろそろ明るいエピソードを描きたいと考えた。とはいえ、その背景が大量絶滅に関連することから逃れることはできなかった。本作の前提となるものはSCP-1684-JPからさらに2億年前に遡る、O-S境界にあたるオルドビス紀末の大量絶滅事変である。
オルドビス紀という時代はチョッカクガイやウミサソリが繁栄した時代として知られる。今回記事主題として取り上げたのはチョッカクガイの方で、アンモナイトやオウムガイの遠い親戚となる頭足類の仲間である。チョッカクガイの殻とアンテナの直感的類似性を異常性で以て紐づけし、人類よりも4億年以上早く電波による通信網を確立した文明を登場させた。科学的説明から可愛いらしい生物の会話劇へのシフトというものも、作劇上の工夫として狙ったポイントである。
なお、現生の頭足類は高い知性を持つことで知られており、チョッカクガイが知的文明を確立した根拠もそれに基づく。陸上で暮らすヒトと海中に生息するチョッカクガイとでは世界の認識に大きな差があろうが、彼らも海面という臨界を超え、外にも世界が広がっているであろうことを認識した。彼らの知らせを受けた者たちは、彼らの滅亡から幾億年の時が過ぎた現代の地球へようやく来訪した。
なお、『ドクター・フー』を想起させる報告書も一度は書いてみたいと考え、あまり捻っていないシンプルな異星人を登場させた。チョッカクガイの登場について『続 タイムスリップ! 恐竜時代』もインスパイア元にあることを踏まえると、BBCの強い影響力が窺える。報告書に登場する日付はそれぞれ『続 タイムスリップ! 恐竜時代』『ウォーキングwithモンスター』『ドクター・フー』(S4「盗まれた地球」)のBBC Oneでの初放送日にあたる。
本作の着想を得たのは旧サソリモドキ報告書やSCP-1796-JPの構想と同時期であった。当初は「狂山病」というメタタイトルで火山に感染して噴火を誘発するウイルスという自然災害ものを考えていたが、2021年1月にフンガ・トンガ=フンガ・ハアパイ火山が噴火したこともあって、しばらくは他の報告書の執筆に充てていた。
その後トンガの噴火が報道に取り上げられなくなった情勢を踏まえ、火山を題材にしたオブジェクトの案を復帰させた。とはいえこの段階ではトンガの案件に直接言及はせず、過去に発生したVEI6噴火であるピナツボの噴火を題材とした。またかつて個人的興味で調べていた三畳紀のカーニアン多雨事象とも結びつけ、トンガ噴火により煽られていたであろう火山の脅威を活用した。
ウイルスほど創作物にありきたりな存在ではないことや、またその外見や生態の特殊性から、対象生物には粘菌(後に粘菌様生物へ変更)を採用した。本作で取り扱う生物は単なる生物に終始させず、金属に擬態する生物という化学生物的な情報から火山学、地質学、古環境学、そして惑星学へと徐々にスケールアップしていくディザスターものとして昇華した。火山噴火プロセスと粘菌の生活環の親和性が高かったことに恩恵があった。SCP-1238のようなディザスター系オブジェクトを創作できたことには大変な喜びを覚える。
公開についてはSCP-1438-JPやSCP-1439-JPと共に同時投稿した作品であり、TwitterやDiscordでの話題作りに成功した一例とも言えよう。hitsujikaip氏の日辻養の提言で"大倉・ハドルストン型実体"という形で再解釈されたことは特筆に値する。
なお、本作も2023年のオーバーホールキャンペーンに際して大規模改稿を行っている。この改稿に際して彼らが金星を滅亡に追いやった設定が追加され、危険性をスケールアップさせるとともに2018年の映画『GODZILLA 星を喰う者』のようなコズミックな雰囲気も付与できたのではないかと考える。改稿にあたってはYouTubeチャンネル「惑星科学チャンネル Planetary Science Channel」から多大なヒントを得た。
本作は2023年のオーバーホールキャンペーンを経て原形を留めないほどの大幅改稿に至ったため、主に改稿後の内容について触れることとする。本作は掲載した国立科学博物館の圧巻の写真群からも見て取れる通りアンモナイトに焦点を当てた作品であり、チョッカクガイを扱ったSCP-1237-JPの精神的続編と呼ぶこともできるかもしれない。SCP-1227-JPが殻全体の構造を利用してアンテナとして機能したのに対し、本作ではアンモナイト ⸺ 特にその薄さからCDと揶揄されることもあるハウエリセラスを取り上げ、その縫合線を活用して光学ディスクとした。オブジェクトを入り口に物語を展開する、非常に自由度の高い手口である。
さて、本作ではジェヴデト・M・コーセメン "All Tomorrows" も参考にしつつ、現在の日本国北海道に分布する蝦夷層群を舞台としたアンモナイト文明の興亡史を叙述した。日本の古生物学と言えばやはりアンモナイトは外せない。アンモナイトの文明の発展過程は我々ヒトのものに沿うように設定したが、やはり海中に暮らす彼らが化石燃料を用いるわけにはいかないので、動力源の獲得過程を考えるのには苦労した。彼らの文明の主要動力源は改造した他種の生物や、あるいはそこから抽出した電気とした。なお、本作の改稿以前に執筆したSCP-1665-JPでも生体電流を用いた海洋文明を登場させており、本作はそれをよりダークなものにしたと言えよう。
結末に登場したワニの化石は現実にはハンユスクスと呼ばれる人為的殺傷痕が残された中国のワニである。アジアトスクスのような古第三紀暁新世のアジア産ワニ類も存在することから、白亜紀末の日本近海に初期のワニ目が進出していてもさほど問題は無いであろうと判断した。勿論ハンユスクスとの類縁関係は特別近いわけではないが、ワニの頭頂骨付近だけを見て識別可能な人物はそう多くなく、また識別可能な人物はむしろハンユスクスを知っているであろうことから、問題視はしなかった。
このワニの登場は、改稿前の版の要素の継承であり、同時に変更点でもある。旧版ではアンモナイトが動物食性動物であることに注目し、アンモナイトがモササウルス類を狩猟し捕食するという逆転現象を結末としていた。これは十分な効果を発揮しなかったが、本作ではそこをアップデートし、アンモナイト文明が存在したことの証左としてワニの遺骸を登場させた。処女作たるSCP-1227-JPにも通じる結末であるが、種族内の軋轢により滅亡に至るという、よりビターな物語とした。
本作はSCP-1684-JPの続編である。迫るペルム紀末の大量絶滅を前にしたディイクトドンの一団は地球を発ち、宇宙空間にそのフロンティアを見出した。しかし、暗黒の宇宙は必ずしも逃奔者に良い顔を見せるとは限らず、むしろ牙を剥くこともあるのである。
知的生命体の地球外脱出は様々な作品で描写されてきたが、特に本作のインスパイア元として挙げられるのは2017年の『GODZILLA 怪獣惑星』で地球を脱出したアラトラム号とオラティオ号であろう。一説によれば、主人公ハルオ・サカキの乗るアラトラム号と交信不能に陥ったオラティオ号は、その後目的地である移住先の惑星に辿り着いたところで、スペースゴジラと遭遇した可能性があるという。系外脱出を果たした知的種族が次なる脅威と遭遇する展開は本作にも通ずるものである。
さて、本作に登場した地球外生命体は『秘密情報部トーチウッド』S3「チルドレン・オブ・アース」に登場した456をイメージした存在と設定した。外見の共通性は無いが、人類に恩恵を与える代わりに隷属を強いる悪辣な姿勢は456のそれに近い。過去に地球外生命と遭遇した単弓類が奴隷化された様は、漫画『食糧人類』を想起させるものでもあるかもしれない。また宇宙船内部のデザインは図書館を採用した。これは『ドクター・フー』S4「静寂の図書館」に登場した図書館に近いイメージを付与したかったためで、本来であれば『ドクター・フー』のものと同じスウォンジーの図書館の利用を考えていたが、CCLに適合する画像が無かったため断念する運びとなった。
本作に登場した地球外生命体はSCP-1237-JPに登場したものよりも遥かに凶悪な存在であり、またSCP-1437-JPやSCP-1867-JPといった過去作の危険生物をも天上から俯瞰している。本作の執筆時点では、本作に登場する地球外生命体はTutu-shバースとも呼ぶべき共通世界の中で最強の存在として想定されている。今後、これを超過するような存在が登場するか、あるいは既にしているかは、私にも分からない。
私の愛するテレビシリーズ『ドクター・フー』は様々な歴史上の人物が登場する。主人公であるタイムロード・ドクターはあらゆる時代を旅し、ウィンストン・チャーチルやヌーア・イナヤット・カーンをはじめとする生きた歴史と対峙してきた。本作はそうした『ドクター・フー』の姿勢に敬意を払い、チャーチルやカーンを構成要素に組み込みながら、ある恐竜の物語を主軸にストーリーを構成したものである。S3「まばたきするな」のように時空軸の入り混じったタイミーワイミーな物語を追いながら、スピノサウルスの標本はなぜ破壊されてしまったのか、という真相に迫る。
スピノサウルスは『ジュラシック・パークIII』で一躍有名になった獣脚類の恐竜であるが、そのホロタイプ標本はイギリス軍によるドイツ・ベルリン空襲で失われており、現在に至るまで厳密な生体復元には議論がある。すなわち、過去を空想する余地が十分に残されているということである。本作では『ゴジラ』シリーズでも取り扱われるビキニ環礁での核実験をはじめ現実改変能力を持つ怪獣スピノサウルスとの戦いを描き、謎めいた恐竜の正体を危険極まる架空の怪獣として設定した。
スピノサウルスは2020年に新復元が提唱されている。この新しい容姿は河川や海洋という流体のみならず時空連続体中を遊泳する様を想起させ、またシーサーペント伝承との高い神話性も提供してくれた。当初はクラスVIIIの現実改変能力を持つ非人型神格存在を考えていたが、流石にそのレベルの存在を財団がSRAで対処できるのはやや不釣り合いな印象もあったため、クラスを格下げした。
本作ではスピノサウルスの記載者エルンスト・シュトローマーを主人公とし、彼がスピノサウルスを倒し、それを隠蔽し、破壊する、時空の循環するストーリーを描いた。彼の暮らした時代がカーンやチャーチルの居る第二次世界大戦期と重なっていたことは幸運でもある。チャーチルはともかくとして、Wikipedia日本語版に記事の作成されていないカーンは(少なくとも日本国内においては)著明でなく、彼女を創作に扱うことができるのは『ドクター・フー』を知る者のアドバンテージと言っても良いであろう。
ホネクイハナムシや鯨骨群集について詳しく話を聞く機会があり、強くインスパイアを受けたために本作の執筆に至った。人類の起源を水中に求めるアクア説については小学生の頃に耳にし、大変興味深く感じたことを記憶している。海洋で脊椎動物の骨を穿つホネクイハナムシと、海辺で進化して直立二足歩行を獲得した人類との間には、非常に強い親和性がある印象を受けた。
『ドクター・フー』S4「沈黙の図書館」では生物が闇に対して抱く根源的恐怖の正体としてヴァシュタ・ナラーダが登場しており、またfirst man氏によるSCP-529-JPもまた通常の怪異とは異なる根源的恐怖に触れている。本作はそうした前例を踏まえ、ホネクイハナムシを根拠とし、「水」に対する人類の恐怖や解剖学的課題を取り上げた。哺乳動物のうち遊泳不能の種はヒトを含む霊長類のみであると聞く。ここにおいてアクア説はうってつけの存在であった。
一方で、アクア説は疑似科学としての側面が強い。SCP報告書は所詮創作物であるものの、『ドクター・フー』や『プライミーバル』がそうであるように、どこかで読者の役に立つものであることが創作物の理想の1つであると私は考えている。従ってアクア説をそのまま採用することは控え、その範囲をヒト上科の霊長類へ拡張した。また、SCP-1227-JPで寺澤研究員が発表した論文は査読付き論文の扱いであるが、本作でオーブリー研究員が発表した論文は紀要論文である。本作の内容は財団世界における史実として想定してはいるものの、当該の仮説はオーブリー研究員の自説に過ぎないというニュアンスも含めている。また、勘の良い読者であればメタタイトルからも同様の意図に察しがつくことであろう。
なお、オーブリー研究員は本作が初登場である。イヴ・H・オーブリーという名前は古人類に強い関わりを持つ『プライミーバル』の登場人物ヘレン・カッターにちなむが、ヘレンの言動や人格を反映するつもりは無い。
本作の背景には当時不参加であったリサコンがある。(971)氏のアイディアを元に旧SCP-1150-JPを2022年1月に投稿していたが、この内容に思うところがあり、ここからさらにリライトを行うことにした。そして前作SCP-1000-JP-EXはExplainedオブジェクトでありここまでの時点で主要なオブジェクトクラスをほぼ書き終えたこと、そして植物生理学の話を耳にする機会があったことから、本作の執筆に向かうことにした。旧作の不評のタネであった因果応報的要素を除去し、完全に世界を滅ぼしに向かうApollyonとしてのリメイクである。
旧作の題材は石炭紀のシダ植物であったが、本作の題材はここ数千万年で分布を広げたイネ科草本である。イネ科植物は過去の地球の気候変動と密接な関連があり、また人類の文明の発展にも大きく寄与した存在である。地球上に蔓延り、また人類を導いた存在を凶悪なアノマリーとして設定することには大変な価値があると感じられた。また、恐竜がイネ科草本を口にすることはほぼ無かったという、ある種の教育的要素についても盛り込むことを期待した。
本作のストーリーはティンバーゲンの4つのなぜに準拠して進行する。これは私が生物系オブジェクトを主に執筆しているからかもしれないが、異常存在、あるいは物語の登場人物の動機付けとしてティンバーゲンの論点整理は有効であるように思われる。SCP報告書に重要な説得力を複数観点から強化できるためである。今回は4つの観点からオブジェクトの設定を思考し、その思考を順序立てて垂れ流すことでそのまま物語の構築に至り、ありがたいことに一石何鳥にもなった。
本作はSCP-1867-JPへの対抗策として制作した側面がある。鳥類の過去侵略が新生代の初期まで遡って哺乳類を根絶するようなことがあれば、新生代で分布を拡大した彼らは大打撃を受けることに相違ない。それを何らかの手段で前期白亜紀時点で知り、SCP-1867-JPが活発化する2026年に起動した、という裏設定がある。彼らの初出現地点である岡山県倉敷市は石油化学コンビナートの拠点でもあり、それはSCP-1867-JPが攻撃目標に掲げる存在でもある。地球の生命を全て根絶やしにしてでも目標を撃滅するという設定は『ドクター・フー』S4「盗まれた地球」「旅の終わり」に登場する"オスタハーゲンの鍵"から着想を得た。
2022年4月20日、私はある夢を見た。それは旅館風の建築物の中でケイ酸質の体を持つセンチュウ状の生物に襲われる夢であった。当該生物はガラスに突き刺さり、身を捩って中に入り、そして貫通して襲い掛かる。その傍には透き通ったガラスの人型実体が立つ。私は彼らから必死で逃れ、旅館を脱出した。
この夢を執筆に活かせないかと考えた。藻類による海洋無酸素事変や細胞内共生などもアイディアとして考えつつ、6月書き上げた下書きは、パラントロプスの肉体を乗っ取った珪藻がガラス質の人型実体として活動するものであった。珪藻はガラス質の被殻を持つ生物であり、センチュウよりもガラスとの親和性は高いと判断した。HMFSCPの設定と絡め、ヴィクトリア湖を拠点にして世界中のガラスを介して人類に侵略を仕掛けることを想定していたが、人型実体を満足に扱うことが難しく、この路線は断念する運びとなった。この時点ではSCP-1150-JPと密接に関わる設定や、オーブリー研究員の再登場なども計画され、Taleという形態まで視野に入れていた。
その後は人型実体を取っ払って珪藻を主体としたが、ここからも改稿は続いた。当初の展開は正体不明の感染症の病原体の正体として最後に珪藻を明かすものであったが、内容が回りくどいことから、珪藻の異常は最初に伝える形に変更した。また当初予定していたホラー路線からオチに捻りを加えて鳥類を登場させた。当時は現在のハシボソガラスではなく、渡りの傾向も示すヒヨドリが"トリ"を占めた。
真駒内でエゾヒグマを殺害して溶解させる展開も考えていたが、異常性をガラス1本に絞るために溶解設定を弱め、さらに当時存在していた河川経由での感染も排除した。ページ分割や熱による活性化はDiscordでの批評で頂いた意見に基づくものであり、一度目の定例会で概ね現在の形に纏まる格好になった。その後もサンドボックスやDiscordで細々とした意見を拾い、Qコンのスタートダッシュを果たした。投稿はコンテスト開始から30分後のことであった。
熱戦の繰り広げられる会議シーンを描くために『シン・ゴジラ』や『星を継ぐもの』を参考にし、さらに現実の食品安全委員会の議事録も参照した。演出や数列に関しては『ドクター・フー』S8「平面の敵」や『エレメントハンター』の影響も大きい。議事録をはじめ、今までに試すことのなかった複数の手法を導入した意欲作である。]
本作はGW5氏や
matsuHDSS氏およびkeroyu氏との共著である。
highbriku氏が開催したキメタマコンFinalについては私よりも詳しい者がごまんと居ることであろうから詳細を綴ることは控えるが、要は複数名による共著の個人コンテストであり、その注目度は公式コンテストに次ぐと言って良いであろう。参加者の招集は
Musibu-wakaru王朝時代の蛮族鯖で進んだ。
GW5氏から誘いを受けて参加を決意したが、他のチームは3名以上で参加しているものが多く、当時国民であったkeroyu氏と鯖外ながらも外部で関わりのあった
matsuHDSS氏に声を掛け、4名でのチーム「絶滅鯖」を結成した(蛮族鯖関連の用語はnote「しもべどもから見た『蛮族鯖』の歴史」を参照のこと)。
Discordサーバーの設置は2023年7月28日で、他の参加チームと比較するとかなり早期に動き始めていたことになるであろう。この段階で提出した初期案は2013年にロシアに落下したチェリャビンスク隕石を題材としたもので、隕石災害が引き金となって異次元への扉が開かれ、異世界生物による基底世界の侵食が始まるというものであった。8月2日には、GW5氏が初期案として掲げていた海底文明との折り合いをつけ、チェリャビンスク隕石の設定は不採用となり、私の案からは異世界生物の観点が採用された(なお、隕石設定はSCP-1174-JPに受け継がれることになる)。この時点でバクテリア・魚人・平行世界の基本設定が確立された。
8月11日にはこの案に基づいて共有ページを作成し、8月18日には魚人の生物学的設定を確定した。この頃、担当を冒頭部/異世界・魚人の概説および追記/エビおよび映像記録/提言に分担し、各々で執筆を開始した。厳密に合意形成を取るよりは、大まかな方向性を示して共通見解をすり合わせ、サンドボックスの下書きに加筆するという体制を取った(と言うよりも、チャットで合意形成を図ったものの各人の素朴理論に基づく認識の差が大きく、下書きに書き起こして初めて齟齬が発覚したという方が正しい)。
当初はブラックホールを発生させる生物が世界間の壁を破ったという設定で思考していたが、8月20日に『マトリックス』や『ドクター・フー』S10「迫る終焉」を参考としたシミュレーション仮説としての平行世界接続の理由付けが提案され、以降はこれが基本方針となった。この時点で平行世界・魚人解説部分はほぼ完成した。魚人については異なる2種類の進化した魚類を登場させる予定であったが、8月23日に家畜種の魚類をエビの仲間の甲殻類へ設定変更した。この家畜種は火を得ることのできない水中で電気エネルギーを得るためのアプローチであり、後に[[SCP-1438-JP]]]のオーバーホールにも活かされることになる。エビ部分は9月14日に完成を迎えた。
9月7日にはシミュレーション仮説との接続のため9/7に宇宙論等を加筆し、また9月22日にはそれまで冷戦期を舞台としていた年代設定を変更し、現実世界で紛失された探査機をストーリーに組み込んだ。探査ログは10月8日に一旦の完成を迎えたが、〆切が迫る中で10月にはいまだ未完成であった提言部分を中心に議論が加速した。魚人の宗教体系(崇拝対象はバクテリアか上位存在か)やウイルスがシミュレーションプログラムに機能する機序(作用先は塩基かソースコードか)に関して重大な見解の齟齬が著者間にあることが発覚し、そのたびに議論は紛糾することとなった。ここに来て設定の理解に食い違いがあるとは、意思疎通とは存外に難しいものである。
さて、その後は公式Discordや蛮族鯖内で複数回のリアルタイム批評を受け、情報系の文脈が門外漢には難しくなってしまった提言部分を大幅に簡易化する、探査ログに隠し文字を仕込むといった対応に追われることとなった。また、胡蝶の夢に由来する現実部門のロゴを貼り付けるといったデザイン面の工夫も急ピッチで行われた。結果としてキメタマコンFinal〆切前に投稿を完了したが、構文エラーが発生してMikuKaneko氏とkeroyu氏に修正していただくなど、投稿日である11月4日まで波乱万丈の共著イベントであった。
振り返ってみると、日本支部の作品で初めて要注意種族(SoI)を登場させ、パラレルワールドや上位次元に跨り文明や宇宙をテーマにするという壮大かつ複雑なストーリーを、よくも複数名で共有し纏め上げたものだと我ながら感嘆してしまう。本作で得られた共著の経験は、今後にも何らかの形で糧になるものであろうと思う。
これまでに投稿したSCP-798-JPやSCP-1665-JPなどが長大な内容であったことから、一転して短い報告書の執筆を目指したのが本作である。本作の元となるアイディアは蛮族鯖内のチャンエル烏龍茶でSodyum氏が投稿したラーメンの油滴に関するものであり、自他境界を備えた1個の生命として油滴を解釈することで、原始生命から派生する進化史に拡張できるのではないかと考えた。
執筆を決意して24時間以内に投稿した、所謂ジャム作品でもある。あらかじめ原始生命や地球生物の初期進化について簡単に調べていたこともあり、本作の執筆は大して苦ではなかったと言える。本作は左右相称動物が出現した時点で幕を下ろしているが、これはその後の進化を描いたとしてSCP-1072-JPのような強力な前例が控えているほか、単なる危険生物が牙を剥く展開というものをやりたかったためでもある。Archonという特殊クラスを採用したことと最大瞬間風速で駆け抜けたことからか、動画化の機会も多く、また評価も徐々に伸びていることが特徴と言えよう。私の著作の中でも思い入れのある作品の1つであり、本作を投稿してから心なしかラーメンを食する機会が増えたような気がしている。
なお誤解を受けがちであるが、SCP-2770-JPのように本作はラーメンへの擬態やそれによる生理的嫌悪感そのものを主軸にした作品ではない。あくまでフックとして利用してこそいるものの、本質は生命が多様化していく無限の可能性やセンス・オブ・ワンダーにある。どちらかと言えば、児童書『ファルルーのなく海で』(別題:ファルルーの出てくる日)や、映画『エボリューション』で描かれている進化や変態の過程に近いものであろう。
『ドクター・フー』S2「女王と狼男」には狼を打倒するアプローチの手法としてヤドリギが登場する。ヤドリギにはアルカロイドやレクチンそしてビスコトキシンがあるため狼を支配できる ⸺ と劇中では説明されている。そして狼に効く武器といえば祝福儀礼を受けた弾丸や銀といったものも挙げられるであろう。こうした物品が狼に有効な理由は、狼男の正体が何かしらの病原体にあるためではないか、とも考えられる。本作は狼男のフサフサとした毛皮をある種のカビと設定し、カビ人間の猛威を描くことにした。
そしてSCP-1150-JPがそうであったように、植物は動物と違って活発な運動能力を持たない一方で多様な化学物質を用いて生存を有利にする。ここで、ヒトに感染するカビを支配する頂点の存在としてヤドリギを設定した。ビスコトキシンを用いてカビを制御し、自らの栄養分として利用し、分布を拡大する。日本全土を蹂躙するように勢力を広げていく彼らの姿は、映画『すずめの戸締まり』で圧倒的存在感を放った東京上空の"ミミズ"にも着想を得たものである。
そしてヤドリギは日本にも分布する存在であるが、劇中で問題視される以前にこのような事態に発展しなかった理由として、ニホンジカの増加とニホンオオカミの絶滅を挙げた。シカの増加について詳細な話を聞く機会があったためそれが動機ともなっているが、特定の動植物の絶滅のような人間活動の変化やその結果として引き起こされる事象は自然系アノマリーの行動変化を説明するのに便利な題材である。ヤドリギは神の宿る場であり、またニホンオオカミも神として信仰の対象とされてきたことから、本作では神と神の戦いが繰り広げられたことになる。メタタイトルが指す「神」とは、ヤドリギのことでもあり、ニホンオオカミのことでもある。
なお、本作冒頭のUAOとは私が翻訳したSCP-7088に登場する概念である。また牧場被害については現実のOSO18をはじめとするヒグマ被害を参考にした。OSO18が駆除に至ったのは本作投稿からちょうど8ヶ月後の2023年7月30日のことである。
- 2023年
本作はかつてハーメルンで連載していた『プライミーバル』二次創作小説の案を流用したものである。当該の小説は2020年に更新を停止してしまったが、その後の展開ではヨタカから進化した恐鳥類然とした未来の肉食鳥類を登場させる予定でいた。樹木に擬態し、獲物に悟られることなく至近距離から致命傷を加える凶悪な捕食動物。擬態するヨタカの映像を目にした際から、強く具現化したい画として思い浮かべていたものであった。
また、蛮族鯖ではヨタカとは別にKing-Crab373氏が植物として生育する太陽電池パネルを烏龍茶に投げていた。ハイマツあたりから進化させた設定にすれば絵面との親和性が高かろうと判断し、ヨタカと繋げるべく森林保全の観点を絡めてストーリーを展開した。ハイマツから進化させる都合上高山地帯や高緯度地域を舞台にするのが都合が良く、特に釧路市にメガソーラーが存在する北海道東部を選択した。アイヌ民族との関わりは批評を経て追加したものであり本来は想定していなかったが、展開をより自然なものに出来たと考えている。
なお作中に登場する森山博士はSCP-1150-JPやSCP-798-JPからの続投であるが、古木博士についてはleaflet氏のSCP-1481-JPに由来する。
主に陸で暮らす昆虫と主に海に生息する甲殻類の棲み分けに関しては2023年4月に興味深い仮説が提唱されている。それは昆虫と甲殻類の間では外骨格を硬質化させる機序が異なっており、カルシウムに乏しい陸上で甲殻類は不利であり、逆に粘性が高く酸素の乏しい海中で甲虫は不利であるというものであった。この話を受け、カルシウムを付与する異常存在を仮定すれば、昆虫は海に進撃が可能なのではないかと考え付いた。幾億年の壁を越え、ついに昆虫がブルーオーシャンへ還る時が訪れたのである。
本作の当初の設定ではカルシウムの供給源は異常な牛乳を想定しており、『ドクター・フー』S4「盗まれた地球」に登場したような牛乳配達屋を考えていた。しかし、陸上動物の海洋適応の示唆として人魚の登場を考えた際、牛乳よりも海のミルクと呼称される牡蠣の方が遥かに親和性が高いことに気付き、これを採用した。図書館で牡蠣に関連する資料を集め、牡蠣の進化史も含めて1本の報告書とした。
海棲霊長類の設定はかつて公式Discordで盛り上がった人魚の生物学的考察もある程度参考にしたほか、アクア説のなぎさ原人や『プライミーバル』第2章「水底に響く声」の存在も根底にある。またミズカマキリに関しては同じく『プライミーバル』第3章「絶望の世界」に登場するハチ目昆虫のメゴプテランをイメージしながら設定した。このほか、甲殻類の甲殻の間隙を狙うことのできる口吻など、随所に捕食者としての適応が見られる。
本作ではSCP-1665-JP以来となる要注意種族(SoI)が登場した。人魚の設定をどれだけ作中に盛り込み絡めるかという点は批評者との間でも意見が揺れた要素であったが、最終的にセンス・オブ・ワンダーを優先し、縄文海進に関連した縄文人の海洋進出を取り上げた。神話と実際の生物学を絡めることは『プライミーバル』の十八番でもある。また、劇中に登場するSoIの番号は『プライミーバル』や『ドクター・フー』で海洋生物が登場したエピソードとシリーズの番号に由来する。
音声記録に登場したエージェント・福留と石破管理官はKABOOM1103氏の著作に登場する人物である。特に前者は頻繁に死亡しており、世界観を共有しないローリー・ウィリアムズのようなものと認識して差し支えないであろう。また水波博士は漫画『血と灰の女王』に登場する海洋学者・津川麻耶にちなんでおり、私のヘッドカノンにおいて性別は女性である。結末の構成は私が翻訳したSCP-7187も参考にしている。
SCP-1724-JPの創作中に飛行機に乗る機会が多々あり、空を舞台にしたオブジェクトというものに手を付けたことが無かったことに気が付いた。陸と海の生物については数多く取り扱ってきたが、本作は初めて天空を飛翔する動物を記事主題とした報告書となる。前作SCP-1724-JPについては制作過程で批評に答えるためいろいろと設定や展開を変更していたため、今回は批評を一切受けずコールドポストすることに決定した。SCP-1724-JPで進化の意義を水波博士が口頭で噛み砕いて説明したのに対し、本作では徹頭徹尾報告書本文で言及した。
本作はSCP-1796-JPやSCP-1867-JPと同じく未来世界を舞台とした報告書であるが、直接的な世界設定の繋がりは無い。むしろ本作では人類の系外脱出や地球環境の壊滅が500万年後という近い未来に迫っており、前述の3作品と比較して人間活動の影響が色濃く残されてしまった世界になっている。生態系の崩壊描写は過去に構想していた人類滅亡系Explainedディザスターもの報告書のアイディアを流用したものであり、またそのロジックの一部はブレストに携わったmC shrimp氏のSCP-3200-JPとも共通する。
本作の登場生物は汚染された地球を放棄して大気圏に拠点を移し、そこで多様な生態系を構築している。本作の生態系の制作にあたり、『E.Tの住む星』の衛星ブルームーンや『フューチャー・イズ・ワイルド』の2億年後の世界の理論も一部参考にしつつ、寄生植物や両生類の空中進出といった新要素を取り入れた。このほかに、生物の相互作用には『太古の地球から よみがえる恐竜たち』の蚊のシーンも参考としている。
木星第II衛星エウロパに設置された財団施設はアニメ『ピカイア!!』で登場したエドワルド・エドワーズのエウロパ基地をモチーフとしているほか、過去にエウロパを舞台にした報告書を考えていたことに由来する。エウロパを含め、やはり宇宙ものの作品も執筆してみたいものである。
本作はSCP-1523-JPに続き宇宙を舞台にした作品ということになるのかもしれないが、精神的続編という意識はあまりない。むしろ本作は過去を舞台に地球外生命体と歴史上人物の相互作用を描く、日本版『ドクター・フー』を目指したものと言って良いであろう。
花弁に擬態する地球外生命体というコンセプトは、菅原道真からの逆算でもある。菅原道真の飛梅伝説を『ドクター・フー』的に解釈した場合、それは間違いなく地球外生命体との接触であろう。道真自身が悪霊・怨霊として知られていることも接触した地球外生命体の凶悪性を裏付ける。空から来襲して物理的に人間を危機に陥れるだけでなく、過去の日本の政治闘争にも介在し暗躍する脅威という、『ドクター・フー』の風味を含んだ存在になったと思われる。
今回はこれまでの著作と違い、地球外生命体の生物学的設定はそこまで深く作り込んではいない。植物に類似するからと言って情報伝達手段も植物と同様とは限らないし、地球外生物の生理について詳細な議論はしていない ⸺ これは菅原道真に焦点を当てることや、本筋に拘わらない内容を極力排除したことによる。既存作と比べるとSCP報告書として良い塩梅に近づいたのかもしれない。なお光合成色素の色に関して2019年の『NHKスペシャル』「SPACE SPECTACLE」に登場したトラピスト-1の植物も参照したが、赤色矮星の周囲を好転する惑星上で赤色の光合成色素が卓越する理屈を私自身あまり呑み込めなかったため、拾わないことにした。紅藻類が様々な理由で赤色の光合成色素を持つように、恒星が赤色矮星であることそれ自体はダイレクトには効いてこないのかもしれない。
本作ではSCP-1665-JPの初期設定にあったチェリャビンスク隕石が再登場した。隕石に付着した地球外生命体という設定は映画『エボリューション』や『クワイエット・プレイス』など様々な作品に見られるが、今回は平安時代の福岡に落下した直方隕石という経路でストーリーが接続されることになった。思いもしないところで整合性が取れてしまうものである。
菅原道真についてはさらに詳述した演出も考えていたが、私自身は日本史について関心があるものの特別知識があるわけではないため、エッセンスを抽出して終いとした。異分野の隔たりを埋め合う共著者というものはこういう時に居ると役立つのであるなあと感じたりもした。
- 2024年
本作はSCP-JPアンソロジー企画「始のいろは」で先陣を切った作品である。とはいえ、KABOOM1103氏から誘いを受けて直後に書き上げたわけではなく、当初はいろはと無関係に構想していた下書きであった。Discordのログを確認したところ、2023/12/11の時点で少なくとも構想段階にはあったようであり、そこから本企画の予備記事として間に合わせた格好になる。
本作は『ドクター・フー』60周年記念スペシャル第1話「スター・ビースト」から影響を受けている。2008年の第4シリーズから地続きの物語が15年越しに展開され、デイヴィッド・テナントが演じる14代目ドクターや、キャサリン・テイトが演じるドナ・ノーブルに感銘を受けたものである。この「スター・ビースト」では、新たにドナの子どもローズが登場する。ローズはノンバリナリーという特性を持ち、それが第4シリーズから引き継がれた従来の設定と融合し、ポジティブな結末に帰結していた。SCP-3024-JPではこれを逆手に取り、ノンバイナリー(とりわけジェンダーフルイド)という性質を宇宙とネガティブに融合させ、ラッセル・T・デイヴィスに対して1つのアンサーを叩き付けることにした。
本作の構想にあたり、まず1つの舞台は火星を選択した。過去の数々の作品で地球は滅亡や危機においやっており、また金星を滅亡させたSCP-1437-JP、小惑星帯や太陽系外縁天体を制圧したSCP-1174-JPという前例があるため、太陽系制覇に向けた次の1歩が本作となる。火星上空に出現するという冒頭部の展開は、『ドクター・フー』「クリスマスの侵略者」に対する目くばせもある。私の人生というものはどうにも、ラッセル・T・デイヴィスから多大な影響を受けた面を否めないであろう。
本作の真桑氏は北海道在住であるが、真桑氏の設定の多くは私の私生活をトレースし、そこからある程度の変更を加えたものである。北海道羽幌町は私が訪れたことのある町の1つであり、道北に広がる満天の星空に魅了されたことも本作の執筆の動機でもある。現地の写真を使うことも投稿目前まで考えていた。旭川市出身という設定は親元を離れた大学生という設定を用意するために札幌以外の自治体を導入したものであり、そこに拘りは無かったが、最近になって旭川を訪れて真桑氏の生活を感じ取ることもしてきた。旭川駅は思いのほか大規模でかつ洒落た駅であった。
本作はSCP-1439-JPやSCP-1174-JPをはじめとするコズミックシリーズの集大成と呼んでよいものかもしれない。本作の設定構築にあたり、『NHKスペシャル』「SPACE SPECTACLE」に登場したTRAPPIST-1の惑星の様子や、『法治の獣』「方舟は方舟は荒野をわたる」での翻訳過程は大いに参考になった。宇宙SFを描くならば潮汐固定は描いてみたいものの1つであり(実際に700字文体シャッフル「黄昏」にも潮汐固定を登場させている)、本作でようやくSCP-JP上の創作として実現したことになる。
SoI-456-JPの設定は、かつて思弁進化ものを調べていた際にWikimedia Commonsで発見した画像から想像を膨らませたものであり、その根底にはやはり「SPACE SPECTACLE」がある。生物種族としての方向性は地球上の昆虫類から類推できるものとしつつ、『メイドインアビス』の黎明卿ボンドルドや『秘密情報部トーチウッド』の妖精・456といった対話の成立しない存在の度し難さというものも目指してみた。
結果として本作はSCP-798-JPを破り、自著で最高評価を獲得した(2024年3月8日時点)。QコンとXコンでブーストをかけた作品をも上回る伸びの速さを受け、始のいろはのパワーにはただただ驚嘆するばかりである。
本作はKABOOM1103氏からSCP-JPアンソロジー「始のいろは」の誘いを受けた際、最初に執筆した作品である。1作でも欠けられない状況下にある中で絶対に作品を残すべく、当時最高評価であったSCP-798-JPを参考とし、同様に会話劇で真相に迫る謎解きの方針を採用した。結果として自著史上最長の作品となり、その字数は構文抜き2万字に達した。長きにわたり開催されていた
Fireflyer氏のロング・コンテストへの唯一の参加作である。
Discordの記録を遡ってみると、本作は2023年3月14日にGW5氏からクルーラー科昆虫の写真を提供されたところから着想を得たようである。ケラ類に類似した削剥能力に注目し、3月19日までに肉体穿孔と時空間移動能力という大まかな方針は決定していた。寄生性に関する掘り下げと演出の補強を行ったのは、3月23日に訪れた目黒寄生虫館のウオノエ類の展示に新鮮さを感じたことに端を発する。二条研究員の議論内容の根幹はこの春先の時点で方針を立てていた。
4月から5月にかけては図書館に通い、現実の寄生性節足動物や寄生性線虫を参考にして特性の細部を詰めていった。5月19日に一旦原形が完成し、6月13日に完成品チェックに提出、7月11日にチェックを通過した。およそ2ヶ月に亘っていろは鯖で批評を受け付けていた下書きであったが、この間にちまちまとした改稿を進めていた。モンゴルから帰国した後に内容の簡略化を行い、ついに2024年1月30日に投稿。休止期間も挟みながら、最も長く自著と向き合った期間となった。
本作は個体発生と系統発生の2本の柱でオブジェクトの起源(=「始」)に迫っていく。その起源に辿り着いた際に明らかにされる要素がジーランディア大陸である。そもそもジーランディア大陸はいつか著作で使用しようと考えていた要素であったが(おそらく3000-JPコンテストの頃に思いついたものであったと思う)、「始のいろは」という大舞台でついにそれが実現することになった。海の底に沈んだ現存しない大陸という要素は心を惹かれるものであり、ロストテクノロジーや未知の化石種といった要素を登場させられる舞台装置になりうるであろう。
なお、本作の登場人物の氏名は読み方によっては顕生代の各地質時代との関連を読み取ることができる。それぞれの色は日本地質学会が採用しているものか、あるいは見栄えも考慮してそれに近いものを選出している。特に驚異の前触れとしての蜂群崩壊症候群 ⸺ これは『ドクター・フー』S4にも通じるものである ⸺ に迫った5名は、五大大量絶滅の発生した5つの時代(オルドビス紀・デボン紀・ペルム紀・三畳紀・白亜紀)で統一している。
本作は旧SCP-1412-JPのリメイクである。旧SCP-1412-JPはトリコディナについて話を聞く機会があり、その外見に強く魅力を感じたことが執筆の動機となった。トリコディナの持つ吸着盤の形態は工学的な連想をさせるものであり、例えばチェーンソーのように回転する刃であるとか、プロペラやスクリュー、ないし発電機といったものを自ずと想起してしまうものではないであろうか。SCP-1237-JPと同様に今回はこの部位に発電能力があるものと設定し、彼らに電気的なエネルギーを付与させた。電気エネルギーの干渉は『ドクター・フー』S2「テレビの中に住む女」を参考にしたものでもある。
幽霊を想起させて実際にはそうでない何かであると示唆することは怪奇創作ではたびたびやられていると思うが、本作では人類が足を踏み入れてしまった禁忌の領域を描きつつ、トリコディナによるSK-クラス: 支配シフトシナリオに言及した。人類が当たり前のように利用している電波通信技術を介して、そこから我々の思考に侵入できる者が居るならば。大昔から電波を利用できる存在を前に、人類は無防備に戸口を開いてしまったのではないか。禁忌に辿り着いた人類を待ち受けるものは、希望か、それとも破滅か。
本作について2022年11月30日の投稿時点では出来栄えに満足していたが、やがて時間が経って改善点を自ら見出すことができ、改稿に踏み切ることとなった。当時、KABOOM1103氏の主催する「始のいろは」が下書き不足に喘いでいたことは渡りに船であり、完成品チェックという批評・レビューの機会が用いられていたことも逆手に取ってコウプスコウパスの予備下書きとして書き上げるに至った。真桑友梨佳氏の存在は、その作品に多かれ少なかれ人間ドラマを含ませることになる。真桑友梨佳を自殺させないといけない(あるいはそう見える状況を成立させなければならない)という制約はあれど,人間要素のゼロからの盛り込みが得意でない著者にはブレイクスルーになりうると考えている。
さて本作では、同じくコウプスコウパスで始のいろは参加作であるSCP-3024-JPとは対照的に、真桑友梨佳がアノマリーに対して一矢報いて絶命するというポジティブな死を迎えている。海・陸・空が揃った始のいろは三部作であるとともに、SCP-3024-JPとの対極を意識した作品にもなっている。なお、本作に登場した住田博士はSCP-3024-JPに登場した住田丈一郎博士と同一人物であると私は考えている。この名前は英語圏で偽名として用いられがちなジョン・スミスを日本語的音声に変換したものであり、付随して登場する研究員や博士の名前も併せて『ドクター・フー』の登場人物にちなんでいる。
SCP-3024-JPとの間では真桑氏のバックボーンが札幌にあるか福岡にあるかという大きな違いがある。日本を代表する二大地方都市の対比というものも、本作とSCP-3024-JPとのささやかな関連である。もう1つ福岡を舞台に選んだ理由としては、鉄道系YouTuber西園寺が大韓民国の首都ソウルから釜山・福岡を経由して大阪に鉄道とフェリーで帰るという動画を投稿していたことも大きい。私もモンゴルから韓国を経由して帰国した身としてシンパシーを感じたし、彼の動画の臨場感や解説といったものも本作には大きく視座を与えてくれている。
本作は「始のいろは」SCP-3024-JPの成功や、その後に投稿された「恣のいろは」SCP-3043-JPの内容(またはその著者KeiShirosaki氏主催の「人外のコンテスト」)、また当時読んでいた春暮康一『オーラリメイカー 完全版』に収録された短編「滅亡に至る病」から影響を受けている。これらの作品群に共通するものは非人型知的生命体とのコンタクトが描写されていることである。既存作との差別化のため、真桑友梨佳を巡る悲劇に終わったSCP-3024-JPと異なり、ポジティブな方向に帰着させる方針で動くこととした。
また、メッシニアン塩分危機 ⸺ ヨーロッパ地中海の消滅事象 ⸺ という地質学的イベントを使う構想も、知的生命体の取り扱いとは全く別の過程で浮かんでいた。非常に大規模かつ鮮烈な変動を伴う地質学事象であり、これを使わない手は無い。過去のツイートによれば早くも2022年11月頃にはジーランディアと共にメッシニアン塩分危機の使用を漠然と考えており、また2023年4月頃にはメッシニアン塩分危機を論理に組み込んだExplained記事の下書きを作成していた。この下書きは結局のところ頓挫してしまうことになるが、メッシニアン塩分危機に作中で言及するという思惑はその後も心の奥底で燻り続けていた。
さて下書きの頓挫から1年が経過し、またジーランディアがSCP-3384-JPで晴れて登場した中で、ついにメッシニアン塩分危機にも日の目を見る機会が回って来た。メッシニアン塩分危機に関連して被害ないし恩恵を受けて物語を展開できそうな存在といえば、かつての海底に堆積する岩塩であろうと考えた。我々のように炭化水素化合物を主体とする生命体系でなく、完全に塩化ナトリウムで構成された異質な生命を考案した。
この背景には、かつて高校2年次の終わり頃に友人から借りて読んだ有川浩『塩の街』もある。『塩の街』では東京湾に落下した巨大な塩化ナトリウム結晶が暗示性形質伝播物質として働き、視認した人間を食塩に改変していた。SCP-1394-JPはそのような有害性を持たないが、『塩の街』に登場した結晶体は当時の私の目に非常に奇特に映っており、少なからず根底にその存在があると思われる。
SCP-1394-JPはモーフィック・フィールド(形態形成場)により遠隔個体同士で意識や記憶の統合が可能という設定を持つ。モーフィック・フィールドはルパート・シェルドレイクの提唱した仮説に基づくが、このヒントは『秘密情報部トーチウッド』S4「人類不滅の日」で人類が一斉に不死化したイベントの説明から得ている(SCPverseには「死の終焉」ハブが存在するが、興味のある者にはその先駆けとなったS4の視聴を推奨する)。ともあれ、遠隔で影響をおよぼせるという点は、『塩の街』の塩と近い特性になったかもしれない。
またSCP-1394-JPはモーフィック・フィールドの拡張によりヒトを含む炭化水素生物に図らずも危害を加えてしまうことがある。この点は上述した「滅亡に至る病」に登場した、ツォン・テ・モックらの種族からインスパイアされた点である。彼らの種族は別の知的生命体に危害を加えずにいられない特性をもち、それは生物学的に絶対不可避の理とされている。SCP-1394-JPの場合ツォン・テ・モックらと異なり、その特性は物語全体の根幹となる主要課題でなかったが、上述したモーフィック・フィールドと上手く結びついて彼らの思想を表現することに繋がったのではないかと考える。
エンターテイメント作品の他では、本作の構想には『地球大進化』第1集「生命の星 大衝突からの始まり」が大きく寄与している。本作で財団サイトとして登場した核廃棄物隔離試験施設(WIPP)やその地下の約2億5000万年前の岩塩層は『地球大進化』で取り上げられたものであり、番組中で紹介された放射性廃棄物の重厚な封じ込め手段や大規模施設は、財団サイトとしての説得力の演出や地質学的な面白さを私に味わわせてくれた。『地球大進化』でWIPPの地下を案内したラッセル・ブリーランドは、SCP-1394-JPに登場するフィリップ・ブリーランド博士のオリジナルの人物である(なおフィリップの名は古生物学者フィリップ・J・カリーに由来する)。
本作を公式Discordの定例会に出したところ、eringiumexe氏から多大な支援をいただき、オブジェクトの設定をさらに練り上げることができた。ブレストを打診してくださった氏には大いに感謝している。
2024年7月から9月にかけ、私は個人コン「太古のコンテスト」を主催した。このとき5本の作品を連日投稿したわけであるが、前作SCP-1394-JPに続いて白羽の矢が立ったのが本作である。
この自著語りでは翻訳作品を主要な話題として取り上げていないが、私はSCP-JPにおいて翻訳活動にも手を出しており、特にOzzyLizard氏の作品を中心に翻訳している。氏は私が後にハブを翻訳することになる未確認動物学部門記事 ⸺ おそらく最も有名なものはゲーム『家へ帰れ、アニー』にも登場したSCP-6448であろう ⸺ を精力的に執筆なさっていた著者であり、その世界設定の魅力には私も惹き込まれている。そこで日本支部オリジナルの未確認動物学部門記事を書こう、と思い立つことは至極自然なことであった。
さて、私はOzzyLizard氏ほどイギリスの未確認動物について詳しくはないため、誰でも思い浮かぶであろうネッシーを題材とした。ネッシーがそうと言われる首長竜は絶滅した古脊椎動物であり、普段の執筆で記事主題にしづらい古脊椎動物を真正面から取り扱えるというメリットがあった。とはいえそのまま首長竜とするのも芸が無いので、少々進化史に捻りを加えることとした。私の推し分類群である偽鰐類(もっと言えばワニ形類)から、タラットスクス類を登場させ、首長竜に収斂させたのである。
タラットスクス類は重厚な外骨格を失い海棲に適応したワニ形類新鰐類のグループである。有名な属にはメトリオリンクスがおり、『続 タイムスリップ! 恐竜時代 古代の海へ』で瀕死のリードシクティスの肉を齧り取っていた様が印象に残っていた視聴者も多いのではなかろうか。彼らは一般に前期白亜紀で絶滅したとされているが、北海道羽幌町で蝦夷層群から発見されたとあるワニ化石がタラットスクス類のものである可能性が指摘されている。本研究はまだ論文化されていないが、小林快次『ワニと恐竜の共存』でも取り上げられている。これが真であれば、タラットスクス類の生存期間は白亜紀末まで飛躍的に伸びることになる。
本作ではタラットスクス類の生存期間をさらに延長し、新生代に生きるネッシーの正体を彼らに求めた。SCP-1438-JPでも取り扱ったK-Pg境界での大量絶滅事変を生き延びれば、その後に待ち受けるのは新生代での海棲哺乳類の台頭である。彼らはその過程で生態的地位を変え、現生の鰭脚類たちが完全には進出しきっていない、空白となっていた首長竜の地位を埋めることとなった。奇抜な適応放散は思弁進化ものの醍醐味である。
さて、SCP-1528-JPの糞が燃料として利用可能でありイギリスの産業革命を促進したという設定は、『ドクター・フー』S10「氷の下の怪物」にヒントを得ている。同作ではテムズ川の河床に潜む巨大魚の排泄物が無酸素環境下でも燃焼する画期的な燃料として人類に利用されており、本作ではこの観点を史実の産業革命と結びつけた。産業革命とネッシーという、2つのイギリス要素がここで邂逅を果たすわけである。SCP-1528-JPが排泄する化石燃料の熟成過程についてはかつて大学院入試対策で押さえた内容を活用し、首長竜型体型との親和性も高いものとなった。
本作の結末には、ENのオブジェクトであるSCP-1238(に類似する生物)を利用した。物質循環の観点から関連付くものであり、また、鯨類の乱獲というイギリスの過去の方針にも淘汰圧の減少の側面で結びつけることができる。既に鯨類の減少がSCP-1238の活発化に繋がったという文面が存在した点は盲点であり、論理が車輪の再発明になってしまった面は否めないが、自身のやりたいことを優先して結末を維持することとした。
なお本作に登場するF・オズ、エージェント・カーター、デイヴィス管理官はいずれもOzzyLizard氏の著作の登場人物である。本著者ページの翻訳欄に彼らの登場作品が掲載されているため、興味のある方はそちらもご覧いただけると良いであろう。
P.S. hikikakuanaguma氏主催「グラフのコンテスト」出たかった!
本作は「太古のコンテスト」の第3の矢にして、旧SCP-642-JPのリメイクである。かつて私はSCP-642-JPとして過去・現在・未来の知的生命体が織り成す三つ巴の冷戦を描いていたが、これは当時受けた批評に流され、本来目指していた方針を逸脱してしまった路線であった。全く別の異常存在の話から違法建築のように別のストーリーを増築してしまったため、個人的にもやや思うところがあった。
太古コンの開催に際して、異なる知的生命体との軋轢や対立を主軸としたストーリーを成立させるべく、最初からそちらの方面で筋を通した物語としての再投稿を目指した。旧SCP-642-JP時点では翼手目から派生した未来生物を知的生命体として登場させていたが、改稿後は翼手目を進化の傍証として残しつつ、知的生命体の座は他の分類群に譲ることとした。ひとまず、『プライミーバル』のように翼手目に起源を持つ架空動物を登場させたいという欲求は、この形で満たされたと言えよう。
さて、新たに採用した知的生命体は鱗竜類から派生したレプティリアンである。未来との接続が起きた旧版と異なり、新版では爬虫類と哺乳類の勢力が逆転した平行世界との接続が発生した。史実においてペルム紀末から三畳紀にかけての時代は複数の脊椎動物が群雄割拠していた時期であり、今回は三畳紀末の大量絶滅事変を歴史の転換点に設定した。本来ここで天下を獲るはずであった恐竜に代わり、哺乳類ないし哺乳形類が陸上生態系において支配的となったのである。
その後、哺乳類は翼手目を残して白亜紀末に壊滅。飛翔性のグループのみを残存させたという結果は、基底世界の史実において恐竜が獣脚類の鳥類のみを残して死に絶えたことと一致する。ある程度生物学や地球科学を齧った人間でもなければ、我々は生き残った鳥類だけを見て彼らが恐竜の一団であることを見出しづらい。それと同じことが哺乳類を対象に起こるのである。多様な哺乳類が絶滅し、その後に台頭した爬虫類が大型動物相を占める中で、翼手目のみが空で繁栄を謳歌した。
このほかに、私個人が奇抜であると感じたイやラザナンドロンゴベのような動物を爬虫類王国の動物として登場させた。特にイは小型獣脚類でありながら翼竜や翼手目のような被膜を持ち、鳥類の姿に収斂した翼手目の動物として利用できると考えた。この他で報告書に掲載した架空爬虫類の画像は『Ryzom』というCCライセンス下で公開されているゲーム作品に由来する。よもやこのような数奇な架空生物のCC画像が手に入るとは思っていなかったため、この発見は非常に大きい。
舞台として使用した霧がかった樹木の写真はR-suika氏からご提供いただいたもので、旧SCP-642-JP時代からの続投である。記事冒頭部の画像は中華人民共和国の武陵源のもので、霧の醸し出す雰囲気のほか、特異的な地形にそそられたために採用した。同様の地形はジェームズ・キャメロンの映画『アバター』でも舞台として取り上げられており、私自身はその本編を視聴したことが無いが、生物系SF作品としてシナジーを感じさせるものである。
旧SCP-642-JPで後半の主軸となっていた、知的生命体同士の種族間対立は本作でも物語の主軸となった。終盤の台詞は『ドクター・フー』「クリスマスの侵略者」にインスパイアされている。また、レプティリアンと機動部隊との戦闘描写は『プライミーバル』第1章「未知なる獣」を参考としている。翼手目由来の知的生命体は設定を抹消されたが、『プライミーバル』に登場した鋭敏な未来の捕食動物は今なお作品の中に息づいている。
SCP-1651-JPは太古コンに際した過去作のリメイクであったが、本作SCP-1767-JPも同様である。SCP-1651-JPほど抜本的に題材を変更しなかったものの、依然としてピカイアを記事主題に置きつつ、より危険性と深刻性を増す方向へ改稿した。
ここで旧版に関する自著語りを引用してみる。
まだカンブリア紀を題材として取り扱っていなかったことが本作執筆の動機である。フィクションにおけるカンブリア紀と言えば『カンブリアン・ウォーズ』での祖先抹殺による歴史改変が思い当たる。カンブリア爆発と呼ばれる動物種の多様化が起きた時代を前にして、この根幹たる時代に歴史改変を引き起こすことは大変な被害をもたらしうると改めて実感できる。かつて脊椎動物の直系の祖先として扱われたピカイアは今やその座をミロクンミンギアに明け渡しており、ここに歴史改変の痕跡を見出せるのではないかと着想を得た。
このような前提に立った上で、本作ではピカイア系統の動物と地球上の脊椎動物系統との間で生存競争が発生した、というストーリーを新たに追加した。遠い異星に転移したピカイアの系統は、旧説で脊椎動物の直系祖先とされていた地位を追われ、重力 ⸺ さらには時空間そのものへの干渉力を有する別の動物系統の祖となったのである。この観点は、映画『ドラえもん のび太の月面探査記』で登場した、野比のび太が生み出した系統のウサギにヒントがあったように思う。
地球以外の天体にピカイアが生息するという絵面は、NHKアニメ『ピカイア!!』に由来する。『ピカイア!!』ではエドワルド・エドワーズが木星第2衛星エウロパにて生物を生み出す実験を行っていたが、本作ではエウロパと同じく地下海の存在が示唆される土星第2衛星エンケラドゥスを採用した。当初は私もエウロパを舞台に設定していたが、エウロパの酸素生成量が従来的な期待を下回ることが2024年の研究で明らかになったこと(生命の存在自体を否定する材料ではない)、またSCP-1523-JPでエウロパを既に登場させたことから、エンケラドゥスへ変更した。
また旧SCP-1767-JPのリライトを考えていた当時、ピカイアの復元が上下反転するという珍事が起きた。従来腹側と考えられていた側が背側であったのである。ハルキゲニアを彷彿とさせる大転換であり、非常にタイムリーな出来事であった。この観点自体が物語に寄与したわけではないが、報告書に掲載していた復元図は応急処置的に上下を反転させた。また、ピカイアの新復元を提唱した研究論文がCCライセンス下で公開されていたため、そこに掲載されていた系統樹や解剖図を報告書に盛り込むことができた。ピカイアの新復元を取り入れた創作物としては、史上初なのではなかろうか。
時空間操作という能力はこれまで著作で扱ってきた中で強力な特性であり、ストーリーも『トップをねらえ!』などとも共通するコズミックなレベルで展開した。SCP-3024-JPの後に樹立に至った火星連合文明を解体させ、また、太陽系の小惑星帯の形成過程もここに盛り込んだ。旧SCP-1767-JPも凶悪な設定開示を行っていたが、本作ではよりSFに踏み込んだ深刻な物語展開を実現できたように思う。
なお本作の投稿の翌年である2025年には、第6回収容違反インシデント(通称:収デン6)が開催された。私は何も知らずに東京大学SCP同好会が出版した同人誌「東大生がSCPを解説してみた7」を購入したのであるが、なんとそこでKeiShirosaki氏による本作の紹介・解説が掲載されていた。帰りの新幹線の中で大層驚いたものである。
私が主催した個人コン「太古のコンテスト」開催期間中、蛮族鯖にてKABOOM1103氏が「石炭になることでようやく発芽条件を満たす植物」のような案をいくつか捻出していた。最終的に氏の太古コン参戦は無かったが、熟成した石炭の状態を呈しながら生体として振舞うアノマリーというアイディアには興味深いものがあった。
それから2ヶ月ほどが経過した頃、私は当時三笠市立博物館で開催中であった特別展『恐竜研究200年』の見学を企画していた。道中で何人かのサイトメンバーと挨拶しつつ、GW5と札幌駅で合流し、翌朝にさらに同行者1名を連れ、トヨタレンタカー札幌駅前店で車を借りて三笠へ向かった。本来は滝川にも寄るつもりであったが、三笠への移動に思いのほか時間を要したことと、常設展も含めて約5時間と驚異的な長時間に亘って見物したことから、その日は三笠のみ見学して札幌へ引き返すこととなった。常設展に陳列された種々のアンモナイトが圧倒的な物量であった。
さて、三笠市立博物館を出て三笠市街地へ向かうと、北海道中央バスのバス停付近に「あいすの杜」という小規模な売店 ⸺ その名に違わないソフトクリームや石炭ザンギを売っている ⸺ がある。そして博物館を背にして「あいすの杜」に向くと、右手側に住友奔別炭鉱が位置する。「あいすの杜」でソフトクリームに舌鼓を打った我々は、まだ帰札まで時間があったので、炭鉱施設も見に行くことにした。生憎その時期は炭鉱の一般公開こそしていなかったが、立ち入り制限のある門の外から、古めかしい炭鉱施設を見ることができた。
三笠市は化石愛好家の間ではアンモナイトの町として注目を浴びているが、石炭産業もかつての三笠市を支えた基幹産業であった。爆発でコンクリートが吹き飛んで鉄骨が露出した様は、痛々しいほどに当時の事故の様子を伝えてくれる(この事故に関しては、三笠市立博物館内の常設展示のうち人文系のコーナーに詳細な解説がある)。一般人でも立ち入りのできる最大限の範囲で写真をカメラに収め、その後は帰札へ向かった。
さて、生きている石炭と奔別炭鉱の爆発事故は、非常に食い合わせが良さそうである。歴史にアノマリーを絡めかつ科学的ないし疑似科学的に説明する手口は『ドクター・フー』が得意とするものであるし、ラッセル・T・デイヴィスの子どもたちである自分ならばものにできるであろうと考え、本作の執筆に取り掛かった。
参考資料には、爆発事故を特集した当時の新聞記事や三笠市が公開している資料を採用した。当時の三笠市に暮らす人々の息遣いが聞こえてくるような濃密さや、また爆発事故の真相を究明しようとする一般人の努力を感じることができた。作中の写真にはこの度の三笠訪問や以前の三笠巡検の際に撮影したものを使用した。現状の本作がどこまでそうしたリアリティを創出できているかは分からないが、その場に立った人間が感じた空気というものはなるべく詰め込むように心がけた。
なおSCP-1458-JP自体はというと、アニメ『エレメント・ハンター』のQEXのような雰囲気を目指している。ほぼ純粋な炭素である石炭(使用した写真は備長炭)を題材に、炭素の同素体に注目してその性質に応じた行動特性を持たせた。特筆すべきは、作中の時間軸で未発見であったカーボンナノチューブがアノマリーにより先んじて成立している点であろうか。また、人類という種族が化石燃料という過去の遺物にいつまでもしがみつき束縛されている……という、人類の無限のユートピアを阻む現実的側面も盛り込んでいる。
なお登場人物の人名は石炭の熟成度に対応している。エージェント・泥谷は泥炭、エージェント・青山は瀝青炭、エージェント・音無は無煙炭に由来する。
Twitterの財団TLで持て囃されている胡乱概念に「ナイトメアカブトガニ」がある。これはKanKan氏のツイートに由来するものであり、どうやら米津玄師のとある歌に母音だけ合わせてもじったものであるらしい。2023年2月時点の蛮族鯖でも「年単位で使い続ける財団TL」「もう味ない」と揶揄されているが、それから2年が経った今日でもいまだ擦られている。まだ味わえるようである。
さて、そんなナイトメアカブトガニをどうにか記事化しようという考えはおそらく2022年頃から私の中にあったが、記事化構想が浮かんできたのは「始のいろは」も終わってしばらくが経った2024年4月であったようである。カブトガニといえば岡山県笠岡市に笠岡市立カブトガニ博物館が存在しており、私も何度も足を運んだことがある(最後に訪れたのはシファクティヌスやパキリゾドゥスの展示された特別展が開催されていた時期であった)。ナイトメアカブトガニを報告書で取り扱うならば笠岡を舞台とすべきであろうとはこの頃から考えていた。
SCP-JPが「恐怖!怖すぎ屋敷!!」旋風に包まれる中、より古株ミームであるナイトメアカブトガニの記事化に着手した。ツイートを見る限りオネイロイをはじめそっち方面のオブジェクトとして解釈するパターンもあったようであるが、私の領域で記事化するならば純然たる生物とする。笠岡湾干拓の歴史と結びつけ、SCP-3384-JPと類似するパターンでの時空間拡散で物語を展開した。なお、展開こそ逆方向のアプローチではあるが、相変異を含む設定がSCP-3384-JPとの間で似通っていることは投稿数日前程度の段階でようやく認識した(SCP-3384-JPの執筆自体は2023年春であったので、私目線でかなり時間が過ぎているというのはある)。
ナイトメアカブトガニを電車と絡ませるアイディアはどこから来たか出自が定かでない。『ドクター・フー』2009年スペシャル「死の惑星」でエイ型地球外生命体に襲われるロンドンバスかもしれないし、『プライミーバル』第5章「希望の光」で時空の亀裂に呑まれて消失した鉄道かもしれない。他のパニック作品での乗り物の取り扱いによるかもしれない。いずれにせよ、SCP-798-JPで新幹線がカラスの群れに襲撃されたような、高速移動する乗り物の中でアノマリーに襲われるというシチュエーションはとても良いものである。
また活発にヒトを襲うカブトガニの図は映画『エイリアン:ロムルス』に登場した多数のフェイスハガーの行動がヒントになっている。これまでエイリアンシリーズではエイリアンエッグから射出されたフェイスハガーがヒトの顔面に覆いかぶさる場合が主であったが、同作ではフェイスハガーの群れが自由に泳ぎ回り、また縦横無尽に走り回ってヒトを襲撃した。倉谷慈『地球外生物学』のようにフェイスハガーの起源を水棲の節足動物様生物に求める見解もあり、鋏角類が積極的にヒトを襲う本作はフェイスハガーの原点に帰ってきたと言えるのかもしれない(なお、ヒトの妊婦を対象にしたシーンは『エイリアンズVSプレデター』におけるプレデリアンの行動にインスパイアされている)。
本作は久々に ⸺ SCP-1767-JPのリメイクがあったので久々でもないが ⸺ 時間改変を結末とした。古来ほぼ姿を変えることが無く「生きている化石」とも呼ばれるカブトガニであれば、時空間移動を通した分布拡大との親和性も高い。「ナイトメアカブトガニ」が持つ「ナイトメア」の要素は寄生性に特化した特性の1つというところに落ち着き、むしろ時空間移動の側面が異常性として際立つ結果になったが、まあ良いであろう。夢の方を主題にしてしまうと、いよいよ『ドクター・フー』S10「最後のクリスマス」の夢ガニ(別名:カントロファリ)との真っ向勝負を強いられてしまう。
なお本作の登場人物である糸崎研究員と三原研究員の苗字は、福山周辺の地名である糸崎と三原に由来する。2名は現状でこそ上下関係が存在するが、高校なり大学なりの同窓生であったという裏設定があったりする。
- 2025年
2024年のSCP報告書はSCP-3024-JPに始まりSCP-1397-JPに終わったが、そのどれもが作中に会話文を含む作品であった。そろそろ会話文の存在しない報告書を書きたいと考え、また当時開催が予告されていた棍棒コン2024への参戦も見据えながら ⸺ 結局のところ要注意団体が登場予定であったため参加しなかったが ⸺ 執筆していたものが本作SCP-1781-JPである。
本作の執筆の動機としては、Grim-G氏によるSCP-3322-JP(太古コン参加作)や、
CAT EYES氏によるSCP-3196-JP(SCP漢字ドリル)がある。こうした地形地質に擬態ないし溶け込んでいる巨大生物の著作を自分も欲しいと考え、これらの島嶼と異なる地形として火山を考えたのである。題材として富士山を採用していたため、一富士二鷹三茄子ということで2025年1月1日に投稿した。UTC基準では2025年に投稿されたSCP-JP最初のSCPオブジェクトである。新年あけましておめでとう。
さて本作のインスパイア元は何であったかと考えたとき、1つは『怪獣古生物大襲撃』のムームーである。たまたま訪れたオーテピア高知図書館 ⸺ 中四国最大の図書館の名に恥じない綺麗かつ広大な良い場所であった ⸺ で手に取った本書には、古生物をモチーフとした数々のオリジナル怪獣が収録されている。その中で北海道札幌市を襲撃したムームーはケナガマンモスに由来する怪獣であり、体内を巡る高温の血液を操作して熱を発生し、長大な象牙であらゆる障害物/構造物を切断して闊歩する猛獣であった。高温の血液の操作という点が火山活動としての振る舞いに繋がった。
また私は同じくオーテピア高知図書館でクラカタウに関する書籍を手に取った。クラカタウといえば『ドクター・フー』S1「マネキン・ウォーズ」で9代目ドクターの来訪の痕跡が残されていた火山であるが、これはVEI6に相当する巨大噴火を19世紀に引き起こしている。その噴火の前兆として惑うゾウの様子が鬼気迫る文体で綴られており、惑う動物相の様子も作品に盛り込めそうであると考えた。本作では任意のSCPオブジェクトの収容違反を起こさせたほか、SCP-798-JP・SCP-1437-JP・SCP-3384-JPと既存著作のうち火山活動や地質学的異変に反応しうるものに言及した。
本作では富士山の本体をマンモスでなくナウマンゾウに指定した。ナウマンゾウは古来日本の北海道以南に生息していた大型動物であり、巨大な熱エネルギーを蓄積することに莫大な容積を要することを考えると、日本で火山生命体を実現するにもってこいの動物となる。そして、富士山の形成時期にも日本列島に生息しており、時間的矛盾も存在しない。加えて、ナウマンゾウも富士山もドイツの地質学者ハインリッヒ・ナウマンの研究対象であったという共通点もある(本作に登場するオペレーション名はナウマンにちなむ)。富士山のマグマが高温低粘性の苦鉄質であることと紐づけ、巨大恒温動物が噴火活動を和らげているという方向性で執筆した。
火山の観点では、火山学やマグマ科学で基本として教わるマグマの発泡を特集し、それを哺乳類の生態や生理と結び付けて説明した。溶岩洞窟をナウマンゾウの鼻腔として取り扱うところは我ながらお気に入りの理屈でもある。また、貞観噴火と宝永噴火という富士山の2大噴火を取り上げており、これによりMAKOdot-氏主催「痕跡のコンテスト」へ堂々と出場できるようになった。現実に地形を大幅に改変し、また江戸の町まで火山灰を降り積もらせるとは、自然の脅威とは侮れないものである。
なお本作以前の富士山関連作品として、MikuKaneko氏による旧SCP-3939-JPが存在した。当該作には私も気に入っていた面があるので、本人に許可を取り、掲載画像を含めて旧SCP-3939-JPの一部を本作に取り込んでいる。
備考: MAKOdot-氏主催「痕跡のコンテスト」タイタニック号部門優勝。
全日本学生SCP選手権大会参加作。SCP-1781-JPが会話劇の無い報告書であったため、本作SCP-1695-JPではその反動として会話劇がメインとなる報告書を執筆した節があるかもしれない。しかし、執筆の動機自体はそれよりも遥か以前から存在した。
SCP-1458-JPの自著語りにて、2024年9月に私がGW5と札幌駅で合流したことは記載した。その前日に財団界隈に属さない相互の知人からオルドビス紀の地球に関するある形での情報提供があった。彼の疑問に目を通して見ると、どうやら、約4億6600万年前の地球には環が存在した可能性があるとの論文が投稿されていたようであった。現在では決して見ることのできない天文学的光景がオルドビス紀には存在した、と考えると太古へ思いを馳せてしまうようなそそられる情景であるように思う。
この情景を創作に落とし込めればよいのであるがとしばらく考えていたが、ふと2025年2月に入りたまたま『秘密情報部トーチウッド』を見ていると、過去や未来を観測できる電子機器のエピソードがあった。エピソードのメイントピックとなったのは一般英国人男性による強姦殺人事件であり、エイリアンテクノロジーはその事件を紐解く道具としての意義が主であった。主題とそれを究明する舞台装置とがそれだけ関連を持たなくても良いのかと、創作のヒントをこの時に享受したように思う。
そこからはトントン拍子に執筆が進んだ。オルドビス紀の状況を認識できる知的生命体を登場させ、財団職員とコンタクトを取らせればよい。幸いにもオルドビス紀のアノマリーであればSCP-1237-JPを既に執筆しているため、彼らを別角度で描くスピンオフ的な作品に仕上がった。知的生命体同士の会話はSCP-1394-JPやSCP-3024-JPでも描写しているが、本作は特に幼児的な ⸺ しかし知性の感じられる表現を心掛けた。
幸いにも地球に環が存在したとする論文はCCライセンス下で公開されていたため、文献に掲載された画像をそのままSCP-JPにも転載できたという点は大きい。時代はやはりCCライセンスでの論文公開である。そういえば日本古生物学会誌『化石』も2025年度からCC BYでの公開が開始されるらしく、これまで以上に化石の写真資料には困らなさそうである。日本の未来は明るい。
なお、本編中で明記こそしていないものの、やはりSCP-1695-JP-Aの正体はチョッカクガイである。登場人物のセラスという名は、オルソセラスに由来する。また、青木研究員がスマートフォンを契約・購入した日付は、実際に私がスマートフォンを初めて入手した日付であり、機種も揃えている。既にiPhone 7からiPhone 14 Proに機種変更してしまっているが、あの日からもう8年も過ぎているというのは月日の流れる早さを感じるものである。
本作はterukami氏との共著である。誕生祝いに用いられる風船が死をもたらしてしまう、またその風船が犠牲者の存在した空間を埋め尽くすように残留する……という皮肉な主旨は
terukami氏が既に完成させていたものである。既に生物的な側面も申し分なく練り上げられていたため、非常にありがたかったことを覚えている。従って私が本作に携わった領域の大部分は、そこに至るまでの道程を整備することであった。
共著に入る前段階の本作はterukami氏により真正のクラゲすなわち刺胞動物として指定されていた。人物間の会話の導入や情景描写の補強を考えたとき、リアルな刺胞動物よりも空想に寄せた地球外生命体の方が話を動かしやすいであろうと考えた。刺胞動物に類する地球外生命体は『ドクター・フー』「危険なお絵かき」や春暮康一『法治の獣』「主観者」をはじめ数多の作品に登場しており、親和性が高かったというのは大きかったであろう。また知的生命同士の会話としたことにより、誕生祝いが悲劇的な死をもたらすことの強調が実現したように考える。
さて本作はシリーズJP-IIすなわち1000番台の国産オブジェクトスロットを閉塞した作品の1つでもある。低評価削除によりポツポツと空きが発生するため、完全な閉塞には約3ヶ月後に登場するKABOOM1103氏によるSCP-1617-JPを待たなくてはならなかったが、いずれにせよSCP-JP史における1つの転換点、その一部を占めたであろう。
また本作は蛮族頂上決戦リターンズや第1回全日本学生SCP選手権大会の参加作でもあり、2つの戦場で戦った稀有な作品でもある。後者に関してはOB参加であったため各大学対抗戦にへの寄与としては無に等しかったが、前者に関しては共著ということで得点1.5倍の恩恵を受けている。
これまで自分は主に古生物や地球史上のイベントを中心とする作品を多く手掛けてきたが、その大多数は炭素生物を題材としていた。SCP-798-JPやSCP-1150-JPのように生物学的活性を持たない二酸化ケイ素を持つ分類群は幾度か登場したが、地球外生命体を取り扱ったSCP-3024-JPも含め、真の意味でのケイ素生物は登場してこなかった。しかしDiscordでの会話記録を遡る限り、Qのコンテストの時期には既にケイ素生物のオブジェクトをぼんやりと構想していたようである。
太古代には嘆きの天使みたいな珪素型生物が跋扈していてワイら炭素型生物を完全に支配してたんや~みたいなノリで考えてた
Tutu-sh
2022/09/05 02:04
SCPverseにおけるケイ素生物の大きな前例として、SCP-5814がある。SCP-5814は地球惑星科学という学問分野を代表するSCP報告書である。地球惑星科学は高校の理科科目でいう物理・化学・生物の他3科目の要素を全て内包する学問領域であり、SCP-5814ではとりわけ化学と生物という観点に根差している。多方面から大地に切り込む学際的な展開に脳汁が溢れる思いを覚えるというのは、SCP-5814が持つ大きな魅力の1つに違いない。幸いにもシェアードワールドというSCP財団の特性は、このSCP-5814を高い前例の壁でなく、むしろ強力な追い風に仕立ててくれた。
さてそれから時が経ち、SCP-5814やケイ素生物とは別に、私は他の「ジオい」路線のアノマリーを考えていた。かつてSCP-1174-JPでは隕石を取り扱ったが、このような地球外から飛来する高エネルギーの天体は、並みの自然災害とは比にならない規模の破壊をもたらすことがある。より直近の作品ではSCP-1695-JPで隕石に由来する局所的な絶滅イベントを可視化したが、直接的に生物相を書き換えるような、さらに特大規模の衝突事変を扱おうという考えがあった。
当時考えていた衝突イベントは約18億4900万年前にカナダ・オンタリオ州を直撃したサドベリー隕石によるものであったが、3年程度頭の中にあったケイ素生物という観点との結合を起こした時、より有力な候補が浮かび上がってきた。それこそが約44億7000万年前に発生したと仮定されているジャイアント・インパクト ⸺ 原始惑星テイアと原始地球との衝突である。私の記憶の限りでは小学校の国語の教科書にも掲載されている程度に有名な出来事ではあるが、それはやはり民衆の間に生じた衝撃や興味の強さを反映するのであろう。
ジャイアント・インパクトは単に地球自体が大きく変形したというエピソードの規模だけでなく、SCP-5814と年代が整合するという利点がある。SCP-5814で描写されたケイ素生物の根絶自体は約37億年前の出来事であるためこれとジャイアント・インパクトとを直接結び付けることは不可能であるが、炭素生物以前にケイ素生物による生態系が存在した、という点では整合する。現実世界でケイ素生物の実在可能性が議論される際に高温条件が要求される点でも、マグマオーシャンが存在した赤熱する当時の地球はうってつけであった。
そしてマグマオーシャンやジャイアント・インパクトを扱うということは、本作がこれまで執筆した作品の中でも最古の時代を題材とすることを意味する。これまでの最古級オブジェクトであったSCP-1394-JPやSCP-1341-JPはいずれも海洋の存在を前提としており、地球に液体の水が存在しなかった頃まで遡ることはできない。冥王代という遥かな過去を扱うという点で、本作はこれまでの著作群を総括し財団世界の創世記を綴る001提言に相応しいのではないか、という思考が鎌首をもたげることとなった。
今書いてる下書き提言にしても良いかもな〜
Tutu-sh
2025/04/19 19:15
SCP-XXXX-JPとしていた下書きのアイテム番号をSCP-001-JPに定めるとともに、コードネームについても考えることとなった。Tutu-shの漢字表記として何が妥当であろうかと考えた時、「筒取」と「津々朱」の2つの当て字が思い浮かんだ。煌々と輝く灼熱のマグマオーシャンを踏まえると津々浦々が朱に染まるという意味で「津々朱」が適切とも考えたが、漢字2文字でコンパクトに押さえたい思いから「筒取」を採用した。結果として、日本最古の物語文学『竹取物語』らしい字面(
renerd氏談)を月形成に関わる物語へ与えることができ、完全に嬉しい誤算であった。なお、「筒取」という語は既存の日本語の語として存在するようであるが、そことの掛詞は想定していない。
本作はケイ素生物を扱った前例であるSCP-5814と、また世界設定を共有する未来の自著群の他に、SCP-173に対する匂わせがなされている。我々の世界における原初のオブジェクトの要素はやはり001提言に挿入しておきたいという思いがあった。またそもそもケイ素生物を考えた際に『ドクター・フー』第3シリーズ「まばたきするな」に由来する嘆きの天使のコンセプトが根底に存在したことから、その反映も兼ねている。宇宙創成から存在し対象を過去へ飛ばす嘆きの天使と、地球創世から存在し自らが未来へ飛ぶSCP-001-JPとの対比である。
本作はこの他にも『ドクター・フー』やそのスピンオフ作品『秘密情報部トーチウッド』からインスピレーションを受けた要素が存在する。例えばフロビシャー博士の名前は『秘密情報部トーチウッド』第3シリーズで地球外生命体456との対話に臨んだ内務省事務次官ジョン・フロビシャーに由来し、SCP-001-JPのコンテナが現代の地球のものと異なる組成の大気で満たされている点は英国政府が採用した456への待遇を反映している。スミス=ハークネス係留器という名称は、ドクターが頻繁に用いる偽名ジョン・スミスと、トーチウッドのリーダーであるジャック・ハークネスに由来する。
原始惑星テイアについては、執筆の過程で取り扱いが変化している。当初は『ドクター・フー』第4シリーズ「時の終わり」でのガリフレイのように地球近傍に天体として顕現させることを考えていたが、地球内部に潜伏した脅威として描写する方が地学的作風に合うと判断した。この結果、LLSVPsという現実の要素を使ってリアリティを向上できたほか、火成活動という天体衝突と異なる(そして共に大量絶滅事変の原因として挙げられがちな)アプローチを取ることもできた。
サモトラケのニケを題材に選んだ理由には、1つには純粋にその美しさに惹かれた経験があること、そしてもう1つは永井豪による漫画『新デビルマン』でのSF的解釈を魅力的に感じた経験があることがある。『新デビルマン』ではニケが当時の人類を煽動し勝利を目指すデーモンとして描かれていたが、本作では人類の宗教とは無縁の、しかし勝利との対極に位置する敗北を味わう存在として描写されている。また勝利と敗北という本作のテーマには、『ドクター・フー』第4シリーズ「火星の水」でのタイムロードを巡るフレーズが嘆きの天使に関連した小ネタとして盛り込まれている(タイムロードと嘆きの天使自体は次話「時の終わり」で繋がりが暗示されている)。
⸺ さて、本作はオブジェクトクラス最強決定戦のその他チーム参加作にして、チーム功一級勲章の受賞作である。なるべく優位に立てるスタートダッシュを完遂したが、ここで初の金賞相当賞を受賞できるとは意外であった。茜刺財団新聞令和7年6月号にもコメントを寄せたが、開催期間の全体に亘ってコンテストの戦況を楽しむことができた。欲を言えば本作が参戦したその他チームの優勝を願っていたが、チームの栄華は前半で終わり、レイドバトルを制したKeterチームが優勝をかっさらってしまった。
本作は大学の同期の家に上がり込んで投稿している。氏は特にSCP財団というコンテンツに触れたことのない人間であったが、Containment Breachの実況動画も見ながら財団の基礎を解説し、またその数十分~数時間後に開幕するOCコンについても説明した。本作に関連するプルームテクトニクスやSCP-1528-JPの進化過程なども議論しつつ、ポテチとチューハイに舌鼓打ちながらなかなか楽しく財団談義ができたように思う。時間差わずか1秒未満の世界でスタートダッシュを制し、タグやライセンスを整備して眠りにつくまで、非常に充実した夜を過ごせたものである。財団に乾杯!
なおその翌朝に滝川市美術自然史館を訪れた。昭和末期から平成初期のレトロな雰囲気が漂う中、大迫力の冥王代のイラストに何故か「パンゲア大陸」の名が刻まれていたのはまた別の話である。
SCP-JP-EX
ヒトの進化を追うという観点で本作はSCP-1251-JPの続編であり、同時にメタタイトルの通り小説『星を継ぐもの』に刺激を受けている。内容は伏せるが、『星を継ぐもの』でネアンデルタール人はある理由でHomo sapiensとの生存競争に敗れて絶滅する。それは『星を継ぐもの』の主題ではなく終盤で簡単に流される程度のことであった。しかし当時それを読んだ高校時代の私は、順当に進めばその星で覇権を握っていたであろう種族がポッと出の存在にその道を断たれる、という構図に痛烈な残酷さを覚えたものである。
支配シフトシナリオは私が最も好むKクラスシナリオである。支配者層の変遷には、必ず文明の交代や生態系の変化がある。過去の地球で起きた支配シフトシナリオを描くSCP-1000に古生物学的知見を加え、ネアンデルタール人の滅亡を結び付けたものが本作である。他種の人類として交雑関係まで指摘されているネアンデルタール人に言及がないのは不自然であり、SCP-1000を掃討した人類であれば必ず彼らも滅亡に追いやったはずである、という考えが根底にあった。
nDNAとmDNAに関する記述は、肉体の改変を実施しても配列の変更はミトコンドリアまで及ばないであろうという認識の下で加筆した。旧版で唐突だと感じられた部分を自然なものにするための処置であり、功を奏したようである。また、加筆の合間に訪れた動物園で飼育されていた高齢のライオンが死亡するという事例があり、この死因がヒトの高齢者でも良く見られる症状であることから、実例の死因として採用した。数年前に私の前で悠々とした姿を見せてくれたライオンには深く敬意を表する。
もっとも、ネアンデルタール人の絶滅はSCP-1000の報告書で記されている1万5000年前よりも過去の出来事ではある。しかし本設定に関してはプロジェクト・パラゴンでの"花の日"の年代は40万年前とここでも大きな齟齬がある。このため本作では"花の日"の真の年代はいずれでもないとし、ネアンデルタール人の絶滅年代に近いものとして設定した。
ナチスの設定は『ジョジョの奇妙な冒険』第2部を参考にしたが、執筆の過程で実際にアーネンエルベなる組織がオカルト研究にも着手していたことが分かった。なお明言こそしていないが、ナチスによるホロコーストなど民族浄化は祖先の所業を見て正当化の風向きが強まった、というニュアンスも含めている。
SCP-1684-JP、SCP-1251-JP、SCP-1000-JP-EXの執筆に際し、「ただの新種に見える」と言う旨のコメントを受けることはあった。それならばいっそただの新種として非異常存在を作り、Explainedオブジェクトとして投稿してしまえばよい、というのが本作の執筆に至った思考である。
人間以前に存在したアリによる知的生物の文明と見せかけ、真相は単なる非異常のアリであった、という過程を論理立てて執筆した。やや人間至上主義的な見方を孕むが、単なる非異常の昆虫相手にヒトが手玉に取られている、という構図は倒錯性を孕む。神のように絶対的で理不尽な異常存在ではなく、通常の生物が人間を麻薬にして弄んでいるという、人類の屈辱に焦点を当てた作品とした。『秘密情報部トーチウッド』S3「チルドレン・オブ・アース」の影響も強く認められることであろう。
アリが人類を利用するようになった過程には、SCP-1243-JPで利用した暁新世-始新世温暖化極大(PETM)に白羽の矢を立てた。これはPETMのWikipedia日本語版の記事をそもそも私が執筆したこともあり、Wikimedia Commonsから画像を引用し、またWikipedia上の記事よりも簡単に纏め上げるとにした。PETM自体はNHKスペシャル『地球大進化』の第5集で取り上げられており、地球のドラマチックな環境変化や進化史への影響に魅了された視聴者も数多く居たのではないであろうか。
なお、SCP財団の前身がヴンダー・カマーにあるという考え方は私のヘッドカノンでもある。万物を蒐集して知識を得る博物館という組織が財団と袂を分かち陰と陽に分かれて発展を遂げた、とする歴史には頷ける側面もあろう。
2023年9月、私は1ヶ月ほどモンゴルに滞在した。首都ウランバートルと中国国境近くのゴビ砂漠で過ごし、砂漠の猛威や異文化を体験した。当時私はモンゴリアンデスワームを題材に、サイト-44の未確認動物学部門にも言及しながら、オズ研究員(OzzyLizard氏の人事)を主人公とするTaleの執筆を考えていた。生物としての設定やオチも何となく考えていたが、実際にゴビ砂漠の大地に立つと、当初思い描いていたTaleの設定は通用しないことを痛感した。
日本に帰国したのち、私は国立科学博物館(東京)や大阪市立自然史博物館(大阪)で開催された『化石ハンター展』が名古屋市科学館(愛知)に巡回することを知った。同展は101年前の1922年からゴビ砂漠の調査を開始したロイ・チャップマン・アンドリュースを題材とする企画展で、恐竜化石・哺乳類化石のレプリカが多数展示されるものであった。私は大阪開催の際に行く機会が無かったこともあって、飛行機を予約し、11月中旬の名古屋を訪れた。タルボサウルスやチベットケサイの復元展示は圧巻の一言であった。
この時、名古屋に向かう飛行機の中で私は本作の設定を思いついた。かつて考えていたモンゴリアンデスワームの案を復活させ、財団職員であったアンドリュースが発見したことにする。実際にアンドリュースはデスワームに言及しているため、これは親和性が高い。後は自身が経験したゴビ砂漠の情景や撮影した写真も併せてリアリティを増しつつ、実在の昆虫の生理に基づいてデスワームを再解釈できると考えた。名古屋から帰って、企画展の図録の説明も参考にしつつデスワームの生物学的設定を固めた。
加えて、モンゴルと言えばモンゴル帝国やチンギス・ハーンといった文化史・人類史的観点も興味をそそるものである。ウランバートル滞在中に訪れたチンギス・ハーン博物館は国内外から多くの来館者が訪れているようで、私もその巨大な設備や歴史を語る展示物、そして駆使される映像展示に強く印象付けられた。チンギス・ハーンの時代のフロアを見学することは何故かできなかったが、世界から見たモンゴルに焦点を当てたらしい8階の展示では、展示室に入って比較的すぐに元寇が取り上げられていた。海を越えた先で竹崎季長が大々的に取り上げられている様には、日本人として喜ばしいものがある。
チンギス・ハーンと言えば、源義経=チンギスハン説の存在が挙げられる。日本でしか流行していない俗説であり学術的には完全に否定されているが、明治以降人の心を惹き付けてやまない設定でもある。実際、在日モンゴル大使館の職員らが辟易するほどにこの話題は日本人の間でよく上がるものだという。本作は自身のモンゴル渡航の記念も兼ね、モンゴルという地に関する歴史的物語として、源義経による生物兵器の利用と鎌倉への怨嗟という形で締めくくることにした。かつて日本を去った義経の子孫が日本へ侵攻する、その背後の思惑はつい想起してしまうものではないであろうか。
なお、目に卵を産み付けるハエがゴビ砂漠に生息するという話は事実であり、私はモンゴル滞在の際にはサングラスやバグネット付帽子を着用していた。また砂嵐が吹くような風の強い日に彼らは少なく、穏やかな日にやたらと数を増すという、作中の記述も私が直に体験したものである。ゴビ砂漠の奇病「ジン」については先達から耳にしたものであるが、これについてはインターネットにも情報が無く、謎のままである。事実は小説よりも奇なり、とはこのことなのかもしれない。
Tale
TwitterのTLに流れてきたスタイリッシュなSCP-5000のイラストを目にした際、私の目はSCP-682の姿に釘付けになった。当該のアートワークを制作したDrdobermann氏がそこまで考慮していたかは不明だが、そこに描かれていたSCP-682は一般に言われるトカゲの姿ではなく、獣脚類然とした風貌を見て取ることができた。
爬虫類としか言及されていないSCP-682は、その中でも恐竜である可能性がある。体を自由に変えられるSCP-682ならば、有翼化して飛翔し ⸺ 鳥類に至る可能性もある。SCP-682が鳥類へ変態 ⸺ あるいは比喩的に進化する本作の思考がここに成立した。当初は財団の1人の研究員目線で話を進めて恐竜ルネサンスに繋げる路線であったが、途中で物足りなさを覚えたたため、SCP-444-JPを絡めることにした。
本作は詩的文学に挑戦した作品でもある。作中の季節感の循環については指摘を受けるまで私自身認識をしていなかったが、著者の意図しない箇所にも作品の本質というものは宿るのであろう。
本作では、語り手を明かさずに表現を試みた詩的文学から切り替え、『星を継ぐもの』に近い作風のTaleの執筆を選んだ。題材として取り上げたSCP-294は私がSCP財団を知った頃にフォベロミス・パッテルソニを使った報告書として非常に強い印象を受けたものである。どうもSCP-294におけるフォベロミスの登場は読者の間であまり印象に残っていなかったようで心外ではあったが、ともあれ私が初期に思い描いていたものに挑戦した作品となる。
四肢動物の祖先を皆殺しにするという展開は旧SCP-1767-JPと同時並行で執筆を進めていた、ボツになった歴史改変報告書の設定を流用したものである。本来は食肉処理場で先史時代の動物の肉を取り寄せて加工して歴史改変を起こすというものであったが、私と読者との間での歴史改変に関するヘッドカノンの隔たりが大きく、また作品の核とする部分の印象に無視しがたい乖離が存在した。当該の報告書のオブジェクトは本作には登場していないが、その役回りはSCP-294が継承した。なお、SCP-294自体は原型となった報告書でも言及されていた。
Taleを幾つか執筆するうち、自著を題材とするTaleの執筆意欲が増進された。特にSCP-1796-JP、SCP-1879-JP、SCP-1867-JP、SCP-1150-JPの4作に関してはあらかじめ脳内で設定を接続していたこともあり、登場させるのは容易であった。他のオブジェクトの登場も検討はしていたが、本筋に絡まないためこれらは言及程度に留めた。
思いのままに執筆して実現した作品であるため特に多くを語ることはないが、タイトルはT・S・エリオットの詩 "The Hollow Men" の引用・改変である。この作品は『ドクター・フー』S3「ラザラスの欲望」でも引用がなされている。
This is the way the world ends
Not with a bang but a whimper.⸺ T. S. Eliot "The Hollow Men"
本作はSCP-173に関連するオブジェクト群から導かれる物語を総括したTaleである。SCP-3007で人類の祖先は地球外からこの惑星に到来したことが示唆されているが、その時人類は『星を継ぐもの』よろしく、SCP-1000を筆頭とする現地の霊長類との間で熾烈な生存競争を繰り広げたはずである。本作は人類と共に地球へ到来したSCP-173がどのような意図を以て青色の"神"によって遣わされたのか、あるいはどのような目的で人類によって連れて来られたのか、そこを解き明かしていく。
SCP-173に関連するオブジェクトとして外せないものはSCP-3220であろう。私は本来怪奇部門には興味のない利用者であるが、まだ怪奇部門というジャンルを知らなかった頃、SCP-173を掘り下げるSCP-3220のコンセプトには強く衝撃を受けた。本作はSCP-3007に絡むSCP-173に迫るとともに、怪奇部門が何を目的とした組織であったのかについても追及している。
本作に登場したO5の姿勢は『CLASS -ねらわれたコールヒル高校-』に登場する"理事会"を踏襲している。嘆きの天使を崇拝する天使教団の"理事会"が存在するならば、同様にSCP-173を信仰対象とする集団があってもおかしくはないという発想の下でのことであった。本作はSCP-173というSCPの火薬庫のような存在を守護天使になぞらえており、かなり挑戦的な設定をしてしまったものだと考えていたのだが、2023年11月に発刊された『SCP大百科』ではがっつり天使像の姿となったSCP-173が登場してしまった。事実は小説よりも奇なりとは、このことを言うのであろう。
本作の執筆の動機はいくつかある。第一に挙げられるのは蛮族鯖内での会話であった。SCP-169が死亡したら何が起こるのか?という疑問に対し、その巨体から推測される腐肉や腐臭等の被害や、SCP-169の体重支持機能など、様々な事柄を浮かべることができた。やがて会話の内容はSCP-3000へ移り、Y-909の成分について雑談が行われた。ここで鎌首をもたげた疑問は、Y-909が温度条件等により効果を失うならば、それはタンパク質をはじめとする有機化合物ではないか?というものであった。
まあそもそも組成の分からない物質を使う財団が悪いので……
KABOOM1103
2023/01/19 15:25
別の動機として、同年1月9日に大阪湾に迷い込み同月13日に死亡が確認されたマッコウクジラの淀ちゃんの存在がある。大型海洋生物が人間のすぐ傍の海域で死亡するというショッキングな事故から、鯨骨群集を扱った作品を作ることができるのではないかと思いついた。また直近で骨組織学に関する詳細な話を専門家から聞く機会があったことも手伝い、鯨骨群集・骨組織・Y-909の考察という、本作を構成するメインの要素がここに揃い踏みした。
本作の内容の多くは有識者の話や論文・専門書等に準拠するが、フィクション作品では『星を継ぐもの』から着想を得た場面もある。登場人物の氏名は『プライミーバル』の主人公ニック・カッター役を演じたダグラス・ヘンシュオールや、『秘密情報部トーチウッド』『ドクター・フー』の登場人物の名前にちなむ。
本作の評価は着地+30くらいであろうと読んでいたため、まさか自著で2番目にテレキルを達成するとは想像だにしていなかった。コンテスト不参加記事かつTaleが1ヶ月も経たず+100に到達するとは、屈指の成功体験と呼んでよい。
備考: EianSakashiba氏主催「最強の大会コンテスト」総合1位、Tale部門優勝。
本作はXのコンテスト参加作であるが、Xコンへの投稿は自著の2大巨頭であるSCP-798-JPとSCP-1150-JPの宣伝を兼ねたものであった。従って販促Taleと言えばそうなのである。
本作の着想はSCP美術館というYouTubeチャンネルで公開されたSCP-798-JPの解説動画(リンク)から得られている。SCP-798-JPの被害者を火葬すれば被害が拡大する、すなわち火気と共にSCP-798-JPを用いれば容易に感染爆発を引き起こせるということである。生物兵器としてのSCP-798-JPの利用というテーマに心が沸き立ち、炭疽菌をはじめとする実在の生物兵器を参考に前半部を執筆した。SCP-5000との関連は財団による異常生物兵器の散布に合理性を持たせるためである。なお、個人的な好みで前半部にはSCP-1437-JPも登場している。
また後半の内容は他ならぬSCP-798-JPを構想していた際に取りえた選択肢の1つである。SCP-798-JPの創作にあたり、珪素および光合成生物の繋がりでSCP-1150-JPを最大の脅威として登場させることを計画していた。このアイディアは結局その時点では日の目を見ることが無かったが、ついにTaleという媒体で実現に至った。新生代が生んだSCP-798-JPという悪魔か、中生代が生んだSCP-1150-JPという終末装置か、どちらに軍配が上がるかはぜひ刮目して読んでいただきたい。
さて、本作は宇宙へ脱出するディノサウロイドが登場しており(SCP-2945-JPや他のディノサウロイドとの関連の明言はしていない)、彼らの哲学については『ドクター・フー』S4「旅の終わり」に登場したオスタハーゲンの鍵の考え方を拡張し、SCP-1150-JPへ新たなバックボーンを付与した。自著オブジェクトを利用したTaleは以前にもあるが、本作はそのアップデート版にして集大成と呼んで良いのかもしれない。
夜より黒い空の下に桜の花は咲き誇る
本作は2023年の筆納めである。良いお年を。
さて、遡ること1年半前、2022年に開催された新人コンこと「わかばコンテスト2022」は個人的に不満の残る結果となった。当時は初の公式コンテスト参加ということもあって、本気で勝ちを取りに行くべく、現在SCP-JPで最高評価の座に輝くSCP-280-JPを題材としたTaleを執筆することにしたのであった。しかし、当時Taleという環境に慣れていなかった自分は大いに苦戦し、後は野となれ山となれと投稿した結果、評価がかつてないほど真っ二つに近いものになってしまったのであった。
それから1年半近くもの間本作は私にとっての古傷となっていた。評価が大きく割れただけでなく、「Tutu-shの古生物ファイル」の名を冠するページに並べておくには古生物との繋がりが弱い。その創作の過程もまた、批評者の方々には申し訳ないが、自身の本意に沿ったものであったかと問われるとそうとも言えないものがある。当初はやれるだけのことをやって胸を張っていたが、次第に今の自分ならばこうするであろうという意識が強くなり、ついに2023年10月28日に自主削除へ至った。ここまで至るには多数の思惑と葛藤があった。ともあれ、下手に自主削除で永久欠格該当者にならずに済んだのは至極幸いであった。
さて、自主削除前の作品は詩的文学に挑戦した結果玉砕したようなものであった。主人公の詳細を明示しないという方向性は前作から踏襲したものの、本作ではストーリー性を増強させ、ある種のロードムービー風のものとした。その道中ではSCP-280-JPにトラップされた過去が具現化する。ホログラフィック原理を利用し、縮小する時空間異常の表面に保存された情報として、過去の世界を描写した。この設定自体は前作と共通するものであるが、本作では人類史に関連する要素を省き、先史時代の生物だけを抽出して登場させた。
生物の選定はWikimedia Commonsや統合TVといった素材サイトでリアルな模型や復元画を利用できるものとした。採用に至った生物はヒグマ、ヴェロキラプトル、プロテロスクス科らしき爬虫類、アースロプレウラ、ディッキンソニアである。各生物を採用した理由の詳細は以下のとおりである。
- ヒグマ - 最近に投稿された旧SCP-732-JPでその活躍が描かれていたことからの触発。新生代の哺乳類であれば現生の写真を利用するのが最もリアルでもあるし、過去に本州に分布したヒグマであれば時空間変化にも対応できる。
- ラプトル - 精密なラプトルの復元画に目星を付けていたが、作中の設定からの乖離があったため改めて模型を捜索。肉食恐竜の中でも小柄であり、話を動かしやすく、また描写もしやすい。直前に翻訳したSCP-6991でより大型のアウストロラプトルが機動部隊で簡単に打倒できる相手として描写されたことへの反骨心もあろう。なお、作中ではデイノニクスとして扱った。
- ワニ -
GW5氏が共著用サーバー「絶滅鯖」にてリアルなティラノサウルスのアニマトロニクスの写真を共有し、同カテゴリ―にこの写真が存在したことから。また水圏の生物を登場させることは物語や登場生物にバリエーションを与えると考えたため。
- ヤスデ - 前々からSCP-JPで利用してみたい写真があったため。今回使用した写真はそれそのものではないものの、同一の模型を採用した。アースロプレウラは『プレヒストリック・パーク』や『プライミーバル』など多くの作品に登場しており個人的愛着もある。非脊椎動物の登場は生物相にいっそうのリアリティをもたらした。
- ディッキンソニア - 氷床に埋もれゆく生物の悲壮を描く上でエディアカラ生物群の親和性が高いと判断した。その中でもディッキンソニアは一度は使用したいと考えていた統合TV上にHETAKA氏の復元画が存在しており、また氷面との相性も良かったため。エディアカラ群と我々ヒトとの境界はSCP-1227-JP、特にその原型で強調されたテーマでもある。
さて、前作に皆無であった要素としては、SCP-280-JPからの脱出手段が挙げられる。本作では46億年を蹂躙した怪物SCP-1857-JPを破壊し、その膨大な熱エネルギーで急速なホーキング放射を引き起こし、SCP-280-JPを消滅させることにした。蒸発と共にSCP-280-JP表層の情報が逃げ出してくれるならばそこから復元が可能かもしれないし、そもそも時間軸の根本でSCP-280-JPが消滅してくれるならば地球は正常な発生を辿りそうに思う。この議論は劇中本編でしていることであるため、ここで改めて字数を割くことはしない。SCP-1857-JPから熱エネルギーを解放できるならば破壊手段は何でも良かったが、今年開催されたショートコンテスト2023(自分は不参加)で投稿されたSCP-3535-JPの適正が物語的に高く、また絵面としても良いものであったため、これを採用した。
本作はFireflyer氏のロング・コンテストへの参加も検討していたが、投稿十数時間前のワニパートの挿入を以てしても構文抜き2万字には届かなかったため、この参加を見送った。 構文抜き2万字ってキツくね? ともあれ、わかばコンテストの無念を果たし、当時自分の思い描いていたものを理想に近いSF作品に仕上げ、またパレオメディアとして昇華することができた。これを以て、自分のわかばコンテストは終結したと言ってよいであろう。
本作は「太古のコンテスト」最後の矢にして、Genryu氏主催「映画のコンテスト」参加作である(氏からは「参加記事の中で一番お気に入り」とのお言葉を頂いた。嬉し~~~)。これまでの太古コンサンドバッグ記事を振り返ると、以下のようになる。
- SCP-1394-JP - Ticonderoga
- SCP-1528-JP - Euclid
- SCP-1651-JP - Euclid(敵対的)
- SCP-1767-JP - Apollyon
5日間連続投稿でインフレーションを続ける中で、トリを飾るのはApollyonクラスオブジェクトを打倒する物語であろうと考えた。4日間SCP報告書が続いた後でTaleを投稿するというのも、バランスが良さそうである(中盤にTaleを挟むことほど中途半端なことは無い)。
また本作は公式Discordで上がっていた話題から着想を得ている。2024年6月18日の公式Discordでwithout-T-letter氏が話題を提起した氷我記世界でのSCP-682の動向は、私の興味をかき立てるものであった。遍く生命にダーレクばりの憎悪を抱いているSCP-682はきっと全球凍結を引き起こしたSCP-2203-JPのノコギリソウに対しても同様であろうと考えた。神のように大量絶滅を引き起こすSCP-2203-JPと、手玉に取られながら並々ならぬ憎悪の矛先を向けるSCP-682、という構図が脳内で成立した。
全球凍結を取り扱う以上、避けて通れないものはNHKスペシャル『地球大進化』第2集「全球凍結」であろう。酷寒の世界の描写について同書籍を読み直し、脳内で入念な情景描写を浮かべた上で文字に起こした。奇しくも財団世界の再生にまつわるSCP-2000の存在したイエローストーンが、全球凍結後の再興の切っ掛けになる……という点も、火山活動により全球凍結が解除されたとする説から容易に導くことができた。
本作を映画コンに出品するにあたって何かモチーフは無いだろうかと考えていたところ、映画『プロメテウス』にてエンジニアが地球に自らのDNAを拡散させる場面が思いついた。本作でSCP-682は最強の個であることを放棄し、人類のように群となることを目指したわけであるが、その過程でエンジニアの振る舞いがモチーフに選ばれることになった。なお、集団としての人類の強さは小説『星を継ぐもの』から着想を得ていたが、アニメ『新世紀エヴァンゲリオン』における他の使徒に対する人類の考え方と通じるものでもあるかもしれない。
本作の大きな特徴としては、EianSakashiba氏から懸念点の1つとして触れられた点でもある、SCP-2203-JPに明らかな人格を持たせ神として設定した点が挙げられよう。これは発話可能なSCP-682との対話相手を用意したかったという理由が大きいが、もう1つ、当時Disney+で公開されて大きな反響を呼んでいた『ドクター・フー』S14「ルビー・サンデーの伝説」に登場した邪神スーテクの影響も強い。スーテクは旧シリーズで登場した神格存在であるが、禍々しい喋りと共に仰々しく登場し神たる由縁を視聴者にまざまざと見せつけていくその様は、私に途方もない衝撃を与えたものである。
なお本作のタイトル「氷の上の怪物」は『ドクター・フー』S10「氷の下の怪物」に由来しており、URLもその原題"Thin Ice"を元としている。
本作はFireflyer氏のTale「傷心旅行」のリライトである。まだ私がサイトメンバーになって半年も経たない2022年4月、サンドボックスIIIに置かれていたその作品は、絶滅種を食材として飲食店を営むアノマリーと、その店を訪れた財団職員の話であった。氏のTaleは非常に面白く映り、投稿を渇望する作品の1つであった。当該作は2023年に投稿されたものの低評価削除を受けてしまい、非常に口惜しく思ったものである。
さて時が経ち2024年11月。そろそろ「傷心旅行」を自分の手で蘇らせてもよかろうという考えが芽生え始めた。当時私はTwitterで「#いいねした人の著作の中で好きなのを言う」というハッシュタグを運用しており、それぞれの著者の作品で好きなものを1つ1つ列挙していた。この時、Fireflyer氏の作品として思考に上がって来たものは「傷心旅行」であったのである。
間もなくご本人に確認を取ってリライトに着手した。絶滅種を食材にする料理店という設定は既に魅力的なものであったし、財団職員と店主との間で議論が起き、その後に提示された品目に衝撃を受ける……という展開自体も既に完成されたものであった。従って自分が本作のリライトに際してやることは、ある程度の舞台変更と、化石種を中心とする食品の追加、そして別のアノマリーとのクロスリンクの追加程度であった。
まず、元の「傷心旅行」では舞台が福井県勝山市に設定されていたが、本作では広島県庄原市に移した。これは庄原市に伝わる未確認動物であるヒバゴンがオチに登場するアノマリーとの親和性を感じさせること、また、作中で登場させるビカリアやモノチスの化石産地から物凄く距離があるわけでないためである。加えて庄原市からはショウバラクジラという中新世の鯨類の化石が発見されており、山奥に店舗が位置するにも拘わらずクジラ肉を地産地消できるという異様さを際立たせる効果も見込んでいる。
また、絶滅動物を食材にすることのワクワク感を創出するため、オルニトミムスやアノマロカリスをはじめとする化石分類群にも言及した。原作「傷心旅行」では、自分の寄せた批評もあって、ヒトと共存した絶滅種のみに品目が限られていた。完全な化石種を先に出し、後に現代の絶滅種を提示することで、人類の業の深さを浮き彫りにすることができると考えた。店主と財団職員との間の議論内容も、人類を非難する原作の内容から一転して、人類を皮肉にも肯定的に捉える店主の姿勢が垣間見える方向に変更した。なお、作中で使用した親子丼と牛とじ丼の写真は、私が行きつけの店で撮影したものである。食レポ描写は今回初めて挑戦する領域であったため試行錯誤した。
そして原作からの最大の変更点は、SCP-1000-JP-EXとの関連である。原作「傷心旅行」が2022年4月に批評に出される以前、2022年3月末に私はSCP-1000-JP-EXを投稿していた。時を同じくし、また非常に近い題材を取り扱ったこの2作品は結びつけるに限る。人類の所業をより闇の深いものにするため、本作の結末にはSCP-1000-JP-EXを採用した。原作の時点で既に帯びていた衝撃や残虐性を活かす改稿ができたのではないかと考える。一部には気分を落ち込ませる読者も居たようで幸いである。
なお、本作のタイトルはEianSakashiba氏からご提案いただいたものを改変して採用させていただいた。URLはネアンデルタール人の登場する『ドクター・フー』小説"Only Human"に由来する。
闇寿司
本作は私が初めて執筆したGoIフォーマット記事である。これまでSCP報告書とTaleばかりを書いていてGoIFの勝手は全く分からなかったのであるが、ふとネタの浮かんだままに筆を進めてみると思いの他纏まったものが執筆できた。なおEianSakashiba氏からエルマ外教の布教を受けていたこともあって最初にGoIFを書くならばエルマであろうと考えていたのであるが、まさか闇寿司になるとは思ってもみなかった。
本作の執筆の動機となったのは2024年7月21日の私のツイートである。当時NHK『地球ドラマチック』で放送されていたBBCの番組「ジュラ紀の怪物!プリオサウルス」では、保存の良好なプリオサウルスの頭蓋骨化石が登場した。番組の内容に興味を持ってみていたのであるが、BBCがwebサイトに掲載されていた画像はSCP-682の旧画像にしか見えて仕方のない代物であった。これをツイートしようと思ったが、SCPの実在を信じている痛い者と思われるのも困るので、SCP-682の旧画像が(シロ)イルカの腐乱死体である旨も添えて投稿した。
さて、この投稿は非サイトメンバーの間である程度拡散されたのであるが、サイトメンバーの間ではむしろSCP-682の画像が爬虫類でなくイルカであることに戸惑う声が散見された。古生物界隈では既に「クソトカゲはクジラの画像使ってんだから哺乳類だろ」という主張が見られていたため、SCP文化圏の本丸であるSCP-JPにおいてSCP-682=鯨類説が提唱されていない事実は心底意外であった。新画像がザトウクジラの座礁死体であることも含めて記事に昇華できるのではないかと考え、ネタを温めることにした。
それからしばらく経って、いよいよ記事化に移った。SCP-682=鯨類という外見上のギャップをメインウェポンに据え、対抗するスシネタを考える。鯨類の天敵として名高い古生物はやはり巨大ザメのメガロドンであろう。また、2022年5月のわかばコンテストの時点で既にヘリコプリオンをスシとして回転させることは考えていたようである。確かに回転ノコギリを思わせるヘリコプリオンの歯を回すというのは、凶悪な武器になりうる。単発のネタとしては弱くとも、鯨類に対抗するスシとして使えると判断した。
SCP-682の爆発はKABOOM1103氏がクジラの爆発に関する日本生類創研のGoIF(低評価削除済)で採用していたメタタイトルを踏襲した。イルカといえば軍用イルカの話題もあるため、それも後日談のオチに持ってくる形とした。イルカの骨格に関する解剖学的説明も既に別の下書き用に用意しつつあったため、それを半ば流用する形で完成に漕ぎ付けた(投稿後に
Snowy-Yukinko氏から舞台設定に関して深読みの感想をいただいため、そちらの方がより合理的であると考えて加筆もした)。解剖学用語を盛り込んだ骨格写真は
LR0725氏によりSCP-KOに綺麗に翻訳輸出されており、それに気付いた際には非常に驚嘆したものである。
本作は小ネタを多く含んでいるが、その大半はLR0725氏が韓国語版のディスカッションに明記しているため、そちらを参考にしても良いかもしれない(よくもそこまで高精度で抽出できたものである)。氏が述べた通り本作の参考文献は全て実在しかつ私も購入済みの書籍である。その道に興味がある者にとっては非常に面白い本であるため、是非手に取ることをお勧めする。
全日本学生SCP選手権大会参加作。蛮族鯖でドリアスピスを戦闘機のように使いたいという構想をちらと話していたが、その一部が発露した作品でもある。この構想は先述した『怪獣古生物大襲撃』に登場したシネミス・ガメラ由来の怪獣 ⸺ オリジン生物に存在する突起が翼のように広く伸びて滑空を実現している ⸺ からインスパイアされたものでもある。
さて本作を投稿するおよそ2ヶ月ほど前の2024年12月には、ダツ関連の下書きがサンドボックスIIIに投稿されていた。件の下書きには私も相談を受けておりその構想を興味深く考えていたのであるが、特に冒頭部に掲載されていた画像を気に入ったため、自分もダツ関連の記事を構想を練ることにした(同じくダツで記事を書くことは氏との間で合意形成済み)。ダツといえば言わずと知れたその突撃の特性が極めて危険であり、それを活かす形での執筆となった。
ダツと同様に危険な化石分類群といえばサウリクティスとプロトスフィラエナが思い浮かんだ。特にサウリクティスは翼竜を捕食していたと考えられていたこともあり、ダツと同等かそれ以上の高次消費者として是非とも掲載したい思いがあった。記事後半に登場するティロサウルスは元々記事に盛り込むつもりであったが、執筆の過程でオキザヨリの属名がTylosurusであることを知って検討を加速することとなった。
なお記事に掲載している鮮魚店の写真は、Flickr上でOwlCat氏が公開していたものである。私は財活以外でもCC素材に触れる機会が多い身である(財活に限っても、記事に普段から何枚も画像を掲載する上に他記事の代替画像探しをしているため、CC画像に触れる機会は多いかもしれない)。幅広く活動していると、いろいろと財活に繋がる要素を見出せるものであると実感している。
全日本学生SCP選手権大会参加作。ハモ科魚類とスピノサウルス科恐竜との間で収斂進化が見られる事実は、古生物界隈においては準鉄板ネタ程度の扱いを受けている。ワニ顔だのウナギイヌだのと呼ばれているスピノサウルスであるが、本作ではそんなハモとの共通点を一発ネタで取り扱うこととした。
スピノサウルスとの捕食-被食関係があるとされる典型的な魚類であるオンコプリスティスは、本編で記載した通りガンギエイ目に属する。この魚類はBBCの恐竜番組『プラネット・ダイナソー』に登場してスピノサウルスの食餌として紹介され、知名度を高めた印象がある。番組内で巨大なエイが派手に咥え上げられる様は非常に記憶に残りやすいものである(なおファストヴスキー&ウェイシャンペル『恐竜学入門』によると、スピノサウルスの口腔から発見されたオンコプリスティスの化石は偶発的に流れ着いたものと解釈されているようである)。『プラネット・ダイナソー』は当初SCP-1528-JPでもキンメロサウルスのくだりで言及する予定であったが、こちらの記載は省略したため、本作が初の言及となる。
本作の執筆に向けてハモについても下調べしたのであるが、首に深く切れ込みの入った状態でヒトの指を噛み千切った事例があるなど、獣脚類に負けず劣らずの獰猛性を感じられた。SCP-1724-JPやSCP-1341-JPのように食品系のオブジェクトはこれまでにも書いているため、ハモもいずれ実食したいものである(腹を開いた画像を見ていると食欲の立ち上りを覚えた)。
評価グラフ
TOP20までの評価グラフ
評価
0% ―10%-20%-30%-40%-50%-60%-70%-80%-90%-100%⁻
+182SCP-3024-JP
+156SCP-798-JP
+151筒取の提言
+124SCP-1150-JP
+80SCP-1867-JP
+75SCP-1341-JP
+72SCP-1397-JP
+67SCP-3384-JP
+61SCP-1437-JP
+60SCP-1174-JP
+60緋い蜥蜴、硬い鳥
+58SCP-1695-JP
+58SCP-1237-JP
+55SCP-1394-JP
+53SCP-3792-JP
+53SCP-1227-JP
+52SCP-1413-JP
自己紹介
Tutu-sh
Tutu-shは、日本のSCP-JPサイトメンバー。イギリスのSFドラマ『ドクター・フー』『プライミーバル』をはじめとするNHKコンテンツに多大なる影響を受けていることで知られる。ウィキペディアンでもあり、自身がWikipedia日本語版に投稿した記事やWikimedia Commonsにアップロードした写真を題材にしてSCP-JPでの執筆活動を行う場合がある。
作風
個人的な興味・関心・嗜好に基づき、地球惑星科学と生物学のトピックを用いた作品を主として制作している。サイト参加当時は過去46億年におよぶ地球史を引用した作品を中心に創作していたが、後に現生の生物や宇宙を題材とする作品も見られるようになった。ただし全ての現生種は切っても切れない化石種との関連があり、地球外生命体を考察する際には地球生物を基底にせざるを得ないため、この地球惑星システムを土台としている点に変わりはないと言える。
またテレビ番組の黄金時代は2000年代にあった。当時のNHKは『NHKスペシャル』「地球大進化〜46億年・人類への旅」をはじめとする良質な番組を制作していたほか、BBCの『ドクター・フー』やITVの『プライミーバル』をはじめとするサイエンス・フィクション作品を輸入していた。2000年代に吸収したこうしたコンテンツが現在の自己の形成に寄与しているとされる。
SCP-JPへの参加のモチベーションは地球史を題材に『ドクター・フー』に近いことを実現したいというものであった。このため創作物は、『ドクター・フー』が見せる大規模災害や知的種族の侵略といった、人類の存亡を揺るがす比較的大スケールの結末に帰着する傾向にある。また、『ドクター・フー』が十八番とする人文科学的要素にも魅力を見出しており、世界史や日本史を絡めて展開することもある。一方でSCP-JPにおいて人間ドラマは重要視されている要素であるように見受けられるが、その領域への強い関心や技巧は持ち合わせていない(コウプス・コウパスの真桑友梨佳はこの点に新たな視座を与えるものである可能性がある)。
また『ドクター・フー』や『プライミーバル』がSF作品であり、作中の設定に(荒唐無稽なものであったとしても)科学的説明を付与していることから、それらに影響を受けた自身の著作も同様の傾向がある。
来歴

嘆きの天使の1体として『ドクター・フー』S7「マンハッタン占領」に登場した天使像
SCP財団を知ったのは2016年3月17日のことであった。当時友人による「目を離すと首を折りに来る彫像」についての言及を耳にした自分は、それが『ドクター・フー』に登場する嘆きの天使(Weeping Angel)のことであると考えて会話に加わった。その話題はSCP-173に関するものであり、天使に類似する設定の存在が他にも実在することに関心を覚え、嘆きの天使の怖ろしさを再認識できるキャラクターとして衝撃を受けた。
それ以降、最初は『SCP Containment Breach』に登場するオブジェクトを中心に、ニコニコ大百科や当時のSCP-JP・非公式翻訳wikiを掻い摘んだ。幸いにもTwitterのFFやリアルの友人にもSCP財団を知る者は少なくなかったため、会話に花を咲かせることも頻繁であった。当時はENのシリーズIを中心とし、SCP-8900-EXやSCP-1739に強い衝撃を受けるとともに、2017年頃に知った特に世界オカルト連合をはじめとするGoIに面白みを覚えた。
なお2017年下旬から2018年上旬にかけて自身でもSCP創作をしようという思いが芽生えてはいたものの、wikidotに参加することは無かった。記事生存のハードルを高く見積もっていたことと、他の趣味も多く存在したことが理由である。ただし、2018年にTwitterでTwitterで後の処女作SCP-1227-JPの原型となる創作をしたり、2019年に小説投稿サイト「ハーメルン」で二次創作をしたりと、後の活動に繋がる布石というものはこの時期に存在した。Wikipediaでの精力的な活動を開始したのもこの頃である。

ペンギンとキリン
2019年頃にはYouTube上の解説動画が隆盛を極めはじめ、またアニオタwikiにも多くの記事が投稿されていたように記憶している。当時は自身も複数のチャンネルを視聴していた。この頃にはサリーの部屋を視聴していたが、キリン【考察系youtuber】も大きな影響力を残すインフルエンサーであったように思う。2020年に入ってキリンと株式会社Plottとのタイアップで誕生した秘密結社ヤルミナティーも含め、裾野を広げる活動が大きく展開されていたように思われる。コロナ禍においてSCPへの関心を強めながら過ごしていた。
第12シリーズが2020年にHuluで配信されて以降『ドクター・フー』に公式の動きが無かったこともあり、娯楽に飢えた自分は一度立ち上っていた創作意欲が膨れ上がり、物は試しで2021年5月にwikidotにアカウントを作成した。転機が訪れたのは同年10月であり、オープンチャットに参加すれば報酬としてLINEポイントを獲得できるというキャンペーンが開催されていたことを受け、せっかくならば興味のある話題が良いと考えSCP関連のオープンチャットに参加。terukami氏や
Musibu-wakaru氏をはじめとするサイトメンバーと出会い、彼らに触発されて11月にサイト参加を果たした。同月中に批評を受けて処女作を投稿し生存。
2022年1月に最多投稿者となり著者ページを開設した。同年のわかばコンテストでは望む結果を得られなかったものの、Musibu-wakaru氏から誘いを受け21,22職員鯖(通称:蛮族鯖)に参加。栄えあるQコンや激動のキメタマコンFinalを含め、2022年度の来歴は「しもべどもから見た『蛮族鯖』の歴史」が詳しい。2023年にはショートコンテストに乗じてサンドボックスIIIに98本の批評を投下した。同年に
KABOOM1103氏からSCP-JPアンソロジー「始のいろは」の誘いを受け、2024年にSCP-3024-JPをはじめとする複数の作品を投稿し、現在に至る。
個人コンアーカイブ
読み札コンテスト
総合優勝
SCP-1707-JP - "🕊"は「🕊🎇🛩」の"🕊"
優秀賞
SCP-3397-JP - "終"は「終演」の"終"
金賞
SCP-1707-JP - "🕊"は「🕊🎇🛩」の"🕊"
銀賞
SCP-3043-JP - "仁"は「仁道⊃人道」の"仁"
銅賞
SCP-3059-JP - "部"は「部屋」の"部"
ルール
[参加条件]
- A:始のいろはの記事を基にした、SCP記事・Tale・Goiフォーマット・アートワークであること
or
- B:始をテーマとし、メタタイトルが始のいろはの形式となっているSCP記事であること
- 参加記事のDiscussionで参加を表明している(気づいてなさそうだったら直接連絡お願いします!)
- Aの場合基にした記事をディスカッションに明記している
[期間]
投稿期間: 2024/3/1~4/30
投票期間: 2024/3/1~5/15
[概要]
SCP-JP初のアンソロジー企画である『始のいろは』が無事に終わり、ハブには様々なかるたが並んでいます。
この度「読み札コンテスト」と題しまして、いろはのかるたがあるならそれに対する読み札も必要だ!ということで発足しました当企画。
誘われなくてつまらない?参加したけどまだ書き足りない?まだまだ機会チャンスはございます!
いろはの記事に対する最高の読み札をあなたの手で創り出してください!
[賞]
総合優勝: A・Bの作品の中からrate1位の作品
優秀賞: Aの作品の中からrate1位の作品
ベスト読み札: Aの作品の中でそれぞれ元にした記事(い〜京)につき1つずつrate1位の作品
金賞〜銅賞: Bの作品の中から1〜3位の作品それぞれ
[FAQ]
Q: 『メタタイトルが始のいろはの形式』って書いてるけどひらがな被ってもいいの?
A: 大丈夫です。なんでもいいです!(漢字・変体仮名などなど…)
[投稿作品]
- SCP-3397-JP - "終"は「終演」の"終"
"む"は「無垢」の"む"
- SCP-3397-JP - "終"は「終演」の"終" ベスト読み札
- SCP-3043-JP - "仁"は「仁道⊃人道」の"仁"
- SCP-3397-JP - "終"は「終演」の"終"
- SCP-3053-JP - "保"は「保護色」の"保"
- SCP-3059-JP - "部"は「部屋」の"部"
- SCP-3664-JP - "才"は 「才能」の"才"
- SCP-1707-JP - "🕊"は「🕊🎇🛩」の"🕊"
太古のコンテスト

結果発表
縞状鉄鋼賞(SCP部門1位)
SCP-1394-JP - 「水」は『洪水』の「水」
作者: Tutu-sh
相対年代: 新第三紀中新世〜鮮新世
絶対年代: 約600〜533万年前
評価: 50
石油鉱床(Tale部門1位)
氷の上の怪物
作者: Tutu-sh
相対年代: 古原生代シデリアン紀~リィアキアン紀、未来
絶対年代: 約24億~21億年前、約500万年後
評価: 29
石炭鉱床(GoIF部門1位)
ニンゲン諸君に告ぐ!
作者: snoj
相対年代: カンブリア紀シリーズ2~ミャオリンギアン
絶対年代: 約5億2100万~5億500万年前
評価: 29
K-Pg境界賞
ニンゲン諸君に告ぐ!
作者: snoj
相対年代: カンブリア紀シリーズ2~ミャオリンギアン
絶対年代: 約5億2100万~5億500万年前
評価: 29
P-T境界賞
Tutu-sh(5作品)
- SCP-1394-JP - 「水」は『洪水』の「水」
- SCP-1528-JP - 「土」は『泥土』の「土」
- SCP-1651-JP - 「火」は『戦火』の「火」
- SCP-1767-JP - 「空」は『時空』の「空」
- 氷の上の怪物
参加作品
評価は開催期間後のリアルタイム数値。
SCP
SCP-1394-JP - 「水」は『洪水』の「水」
作者: Tutu-sh
相対年代: 新第三紀中新世〜鮮新世
絶対年代: 約600〜533万年前
評価: 55
SCP-1528-JP - 「土」は『泥土』の「土」
作者: Tutu-sh
相対年代: 前期白亜紀~第四紀完新世
絶対年代: 約1億1,300万年前~現在
評価: 34
SCP-1651-JP - 「火」は『戦火』の「火」
作者: Tutu-sh
相対年代: 後期三畳紀〜第四紀完新世
絶対年代: 約2億3,400万年前~現在
評価: 33
SCP-1767-JP - 「空」は『時空』の「空」
作者: Tutu-sh
相対年代: カンブリア紀ステージ3
絶対年代: 約5億1,000万年前
評価: 37
SCP-3322-JP - 精霊を喰らう島
作者: Grim-G
相対年代: 新第三紀中新世
絶対年代: 約1,300~1,200万年前
評価: 25
Tale
GoIF
ニンゲン諸君に告ぐ!
作者: snoj
相対年代: カンブリア紀シリーズ2~ミャオリンギアン
絶対年代: 約5億2100万~5億500万年前
評価: 47
イントロダクション
夏と言えば恐竜です。日本のみならず世界でも、夏休みの恐竜展は夏の風物詩の1つに数えられているのではないでしょうか。2024年の日本では、遥々イギリスの大英自然史博物館の特別展が国際巡回にやってきて、横浜で大々的に『巨大恐竜展』を開催するそうです。
さて、今年も大きな展示があるということで、勝手にそれを記念して個人コンテストを開催することにしました。元々以前からやろうと思っていてやる気の問題でポシャったものですが、これも好機。ついでに自分もこれに乗じて何かできればなと考えています。横浜に行かれる方もそうでない方も、是非この個人コンテストに寄って行かれてはいかがでしょうか。
お題は1つ、第四紀完新世よりも前の時代の要素を含むこと。日本地質学会が公開している日本語記述ガイドラインによれば1万1700年前から後が第四紀完新世と定義されています。すなわち、1万1700年前から前の要素を含む作品を対象とします。詳細は下記のQ&Aを参照ください。皆様のご投稿をお待ちしております。
追記: バナーには恐竜が載っていますが、古生物でなくとも全然良いです(考古、地質、地球物理、地理、環境、惑星、天文、おもっきしファンタジー etc.)。
参加資格
- jpタグが付与されている
- scpまたはtaleまたはgoi-formatタグが付与されている。
- 第四紀完新世よりも前の時代の要素を含んでいる。
期間設定
純推敲期間: 2024年5月16日~7月12日
投稿期間: 2024年7月13日~9月14日
純投票期間: 2024年9月15日~9月20日
9/11追記: 横浜の巨大恐竜展2024の会期が9/14まで延長されたため、それに伴い投稿期間を1日延長します。
参加方法
投稿後、参加の意思を可否 | 手法 | 備考 |
---|---|---|
推奨 | wikidotのPM | |
推奨 | DiscordのDM | |
推奨 | Twitterのリプライ・DM | |
可 | LINE(個チャ) | 連絡先開通済みの人間のみ |
可 | LINE(オープンチャット) | 気付かない可能性あり |
禁止 | ウィキメディア・プロジェクトの会話ページ | 目的外利用 |
また参加意思の表明時において、使用した時代や要素も一言程度で簡単に説明いただけますと大変手間が省けます。よろしくお願いいたします。
投稿時に作品のディスカッションで参加意思を表明していただいても構いません(任意とします)が、確実を期すためご連絡ください。連絡が無かったことで見落としがあった場合、責任を取りかねます。
表彰
SCP、Tale、GoIFの各部門で評価1位の作品を表彰の対象とします。
- 縞状鉄鉱賞: SCP部門で最高評価の作品に贈呈されます。
- 石油鉱賞: Tale部門で最高評価の作品に贈呈されます。
- 石炭鉱賞: GoIF部門で最高評価の作品に贈呈されます。
なお、以下2つの特別賞を設けます。
- P-T境界賞: 投稿作品数が最多の著者に贈呈されます。
- K-Pg境界賞: 主催者が最も好む作品に対して贈呈されます。
参加者全員が投稿数1であった場合、P-T境界賞は該当なしとします。
なお、細かい仕様は主催者の気まぐれで予告なく変更になる可能性があります。
Q&A
Q: 1万1700歳の長命種の人型オブジェクトを考えています。参加できますか?
A: 生息する時代によります。もしそのオブジェクトが現代に生息しているならば参加可能とします。ただし、財団4Kのように未来を舞台とする作品である場合、当該オブジェクトの出自は完新世ということになりますので、その場合は参加不可となります。
Q: 渚カヲルやエンリコ・プッチのように前の宇宙から生きている/前の宇宙を経験しているオブジェクトを考えています。参加できますか?
A: 渚カヲルやエンリコ・プッチは有史以前の地球史を経験した描写が無いため不可です(第一使徒アダムの扱いは知らんけど)。もし当該オブジェクトがオルドビス紀の酸素不足に悩まされていたり、マグマオーシャンで風呂に浸かっていたりと、有史以前に関連する描写・要素を持つならば可とします。
Q: 『ジュラシック・パーク』の登場生物のように、現代において遺伝子工学で創造された恐竜のオブジェクトを考えています。参加できますか?
A: 可とします。『ジュラシック・パーク』の恐竜は中生代を生きた恐竜そのものではありませんが、恐竜の再現を目指して設計された生物です。有史以前に生息した恐竜という生物の要素を多分に含んでいると言えます。
Q: 『ディノクライシス3』の登場生物のように、恐竜に擬態した地球外生命体のオブジェクトを考えています。参加できますか?
A: 可とします。『ディノクライシス3』に登場する「恐竜」は中生代を生きた恐竜そのものではありませんが、恐竜を彷彿とさせるデザインをしており、恐竜という要素を多分に含んでいます。擬態・再現した有史以前の要素が作中で意味を持っているとなお良いです。
Q: 『フューチャー・イズ・ワイルド』の登場生物のように、未来生物のオブジェクトを考えています。参加できますか?
A: 原則不可とします。ただし、その生物の辿った進化史が有史以前から引き継がれて説明されていたり、有史以前の地球史との関連を見いだせたり、有史以前の生物と強く収斂する場合、可とします。
Q: 有史以前という要素が本筋になりそうにありません。参加できますか?
A: 程度によります。ただ、SCP-1219-JPにはヴェロキラプトルの骨格レプリカがさらっと登場しますが、この程度でも参加を認めるかもしれません。なるべく緩く判定したく思います。
Q: 地震・火山・気象現象は参加可能ですか?
A: 更新世までの要素(活動・記録など)が記事内容に盛り込まれていれば可です。主催者は上よりも下の方が得意なので下基準の記載が多いですが、上の方も歓迎します。
Q: 考古学記事を書きたいです。参加できますか?
A: 主催者の思惑としては古生物学記事が読みたいです。レギュレーション上、縄文時代草創期(のうち1万1700年前以前)を舞台・題材にした作品であれば参加可能です。旧石器時代であれば問題なくクリアできます。
Q: 天文・宇宙記事を書きたいです。参加できますか?
A: 1万1700年前以前の天文現象に触れる限り、参加可能です。「宇宙そのものは137億年前に誕生しているから無条件で参加できる」みたいなのは認めません。そういう主張をする場合は宇宙誕生が筋に絡むようにストーリーを組んでください(これは宇宙に限らず、地球や人類でも同様です)。
Q: サンドバッグ記事は書きますか?
A: 書けたら書く。 5/16時点で弾になりそうなのが2発。
Q: 横浜行くんですか?
A: 横浜から蒲郡まで4タテしました!
ファイルページ: コンテストバナー
ファイル名: コンテストバナー.png
ソース: http://scp-jp-storage.wikidot.com/file:7450069-296-57ba
ライセンス: CC BY 4.0
タイトル: コンテストバナー
著作権者: Tutu-sh
公開年: 2024
補足:
以下の画像を編集。
ソース: https://www.nature.com/articles/s41598-021-87719-5
ライセンス: CC BY 4.0
作品名: Figure 1
作者: Masato Hattori
公開年: 2021