散文の銃身と雑誌の弾丸
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光速の2倍のスピードでワームホールを抜け出した宇宙船ケンタウルス号が悲鳴を上げる。そのシャーシは紺碧の光を放ちながら、幾重ものシールドを吹き飛ばしていく。リアカメラを確認したアンダーヒル船長は、ブレーキを踏み込んだ。船は宇宙ゴミのクラスターを撃ちながら逆行発射し、FTLのレベルを.5c安定に落とし込む。

ワームホールが閉じると同時に、最後の旅人が放たれる。HANDの緑の短剣だ。

コムリンクの通信音が鳴る。 « 本を返せ アンダーヒル »

光線銃を炸裂させながら、HANDは攻撃へと飛び込む。ケンタウルス号は、この宇宙一帯を囲むガラクタや粉々になった惑星をジグザグに横切り、双発の迎撃ミサイルの爆発をかいくぐるように飛ぶ。デブリの雲がコックピットに向かって飛んでくるようだ。彼は少しずつ推力を弱めていく。

« もう逃げられないぞ »

「知ってるよ」

彼はジョイスティックを強く引く。そして船が反転する。

「狙い通りに決まった」

HANDのクルーがケンタウルス号のバリアの下に取り付けられたスターブレイカー・キャノンを目撃したのは、ビームが照射される前の一瞬のことであった。輝くエネルギーの波が船体を切り裂き、装甲とシールドが折れ曲がると、HANDは爆発し、眩い

爆発し、眩い…

マリア・ニーヴンは、机の上のカオス・インサージェンシーのメダルを指で弾く。

…一体何だっていうんだ?

彼女はタイプライターから立ち上がり、アパートの空間を歩き回る。メダルを何度も何度も弾く。

文章はもう少しで終わる。もう少しで蛇の手のスパイが死に、散文宇宙の中に原子化され、アンダーヒル船長は栄光のうちに飛び立つ。次回は彼をフィクションから現実に引き戻すために必要なウィジェットを装備するところからだが、ここが肝心だ。メタフィクション的な追跡はここで打ち止めになる。

CIは物語戦闘で本を手に入れ、勝利する

爆発し、眩い…

…眩い—

壁が唸り、取り付けられた荷滑りの隙間からインクの腕が覗き、タイプライターを指差している。

「これを直ぐに出版するぞ、オイ。」

"出版"だと。もしCIの著作権ギアスを原稿に刻印して配給悪魔に渡し、それを(お金を払った)読者の集合意識群を通して広めることを出版と呼んでいいのなら、それでいいのだが。それが二次創作作家を寄せ付けない限りは。

そうだ、眩いやつだ。マリアは腰を下ろし、指の関節を鳴らして、椅子を押し込んだ…

…ページを横切る闇の滲みに向かって。

HANDの██ーがケンタウ███のバリア██に███けら██スターブレイカー・キャノンを目███のは、ビームが██され█████のこと█あった。█くエネルギーの波が██████、装甲とシールド█折れ███、HAND████、眩い

「今インク垂らしたのお前か?」

配給者は、壁に指を這わせる。

NO

「ハァ…」彼女は肩をすくめ、 タイプライターの側面にあるレバーを回して、こぼれた部分を元に戻し、ページを更新する。彼女は振り返る。こぼれたままだ。

「スランプの次はこれか…」とつぶやきながら、もう1度レバーを回し、よく観察する。何も変わらない。

再び回す、やはりシミがある。4回目、5回目、6回目と彼女はそれを叩きつけるようにし、機械から取れそうになるほどだった。7回目。8回目。彼女の目はページに、心はタイプライターを投げ捨てようと思っている窓に釘付けにされている。

今すぐ変われ!変われよ—

シミは変化した。

█████████████████バ██████████████████カ█████████████████████████████████た███████████████████████████れ███████████████

「バカたれ…だと…?」

「セキュリティが甘いからこうなったんだ」

ローブを着た蛇の手の魔導師が2人、机の間から現れ、マリアは驚き飛び跳ねた。1人はフードを下ろし、赤く染めた髪の束を出し、もう1人はボールペンになっている顔を揺らした。2人は体勢を立て直し、床に降り立つ。

「警備ゴーレムが2体に、お前の大学のルームメイトらしき警備員が1人、」彼女はタイプライターの歯車から万年筆の糸を引っ込め、その染みを袖に引きずり込む。「それに、ホチキス留めの殺害エージェント。徒歩で入れたわ。」

「いいか、インサージェンシーの作家ギルドは資金難でね—」マリアは机の上のメダルを掠め取り、その中にある緊急呪文のスイッチを入れ、筆記魔術師の頭部に打ち込む。

ボールポイントに当たる。穴が開く。筆記魔術師がメダルを食べる。

「より低予算なより良い仕事を見たことがある。」彼女は赤毛にジェスチャーをする。「オンジス、下がって見ててくれ。」オンジスは自分の手の中に銃を召喚し、そのようにした。「今だ。」

ペン先が両者から巻き上がり、マリアの首筋にその先端を押し当て、効果的に赤いインクをこぼさせる。「貴女は私の友人達を復活させるために書くのです。そして、彼らと本とアンダーヒルを現実に戻すのです。」

「でも、ウィジェットはまだ用意されていないんだ—」

「私が持ってきた。」ローブが分かれ、ローラーボールの爪が立方体の物語抽出機を机に落とす。その銀色の形而上学的針がすでにページに突き刺さっている。そのLEDディスプレイにはREADYと表示されている。

「…それと、私… 何というかスランプって言うか…」

「オンジスは銃を持ってる。書け。」

輝くエネルギーの波が船体を切り裂き、装甲とシールドが折れ曲がると、HANDは爆発し、眩いプラズマに包まれる。船はもうない。スターブレイクの痕跡には残光と塵しか残されていない。

「よし!ついにやったぞ!」アンダーヒルは拳を突き上げる。「コンピューター、時空間ドリルの燃料を補給したら、 ニュー・アースへの航路をセットしてくれ。手に入れなきゃならん本がある

突起が食い込む。

「分かった— 分かったから。」

手に入れなきゃならん本がある…急いでな…」

彼は息を呑む。デブリの塊同士が互いに結びつき出したのだ。ナノマシンが金属を引きつけ、全てを固体に再結合させる。勝利の余韻を突き破り、HANDが再び立ち上がる。

「そんな…そんなことがあり得るのか?」

アンダーヒルは椅子から立ち上がり、床に彫られヤギの血で飾られた6重八角形のフラクタルグリフを横目に、よろめきながら戻った。本能的に2丁の光線銃を構えたが、もうだめだ。希望はない。彼はそれをグリフの上に落とし、さらによろめく。

「航路はそんなのが上手くいくなんて本気で思ってたのか?に設定されています、キャプテン」とコンピュータがアナウンスする。

彼は動きを止め、ゆっくりと、「このタイプライターにどれだけの魔法がかかっているか知らないのか?」と答える。

ENGAGED

針はページを通して電流を流し、八角形のグリフの形に変化する。両方の光線銃が飛び出し、マリアがそれを手に取る。

ペンが首筋に殴り書きをする前に、彼女は2本のレーザービームを発射し、ペンドリルを真っ二つに切り裂く。筆記具魔術師は悲鳴を上げ、バックアップのペン先が飛び出すと赤いインクを噴射する。マリアは四方八方に撃ちまくる。壁は穴だらけになり、煙が満ちるが、ペンドリルは何度も何度も振りかぶって接触する。しかし刺さらない。彼女の肌に書き込んでいくのだ。書き込まれた命令が彼女の神経にロックされ、腕がキーの位置でピクピクと動く。

これで問題なし。

アンダーヒルは、自分が何をしなければならないかを悟った。慌ててコックピットの全区画を開け、隠していたガラクタを迷わずグリフに投げつける…

壊れた光線銃が破裂し、発射され、ショートし、燃焼し、その爆風でページから出た手榴弾が前方に吹き飛ぶ。ピンが抜け飛び、手榴弾はプラズマの球となって、筆記魔術師の周囲に飛び散る。だが彼女は無傷だ — 筆記文字の束が床板を割り、浮遊するシールドの列を形成する。

「お前が私たちへの奇襲を書いた時、自分が何人殺したか知ってる?」

応答なし。ただ夢中でタイプしているだけだ。

筆記魔術師は床板を掴んで突進する。背後からペンドリルが伸びてきて、さらに文字を書き、木材を火の玉に変えて撃ち出し、彼女はそれを飛び越える。火炎はマリアまで届くが、現れたホロシールドに阻まれ消える。

「お前は怪物のために働いているんだ、マリア。」

ドローンが回転式光線銃を発射しながらページから飛び出す。筆記魔術師はそれを躱す。オンジスの拳銃から2発、ドローンのローターは自らを切り裂く。墜落する。机が倒れる。マリアがカチャカチャと音を立てる。オンジスが立ち止まる。

「オンジス、何してるんだ。」

「眩しすぎる。見えな—」

ミサイルの爆音が彼女の言葉を遮り、衝撃波が天井を突き破る。マリアは壁際に吹き飛ばされる。骨にひびが入るが、タイプライターは持ちこたえ、針はまだ刺さったままだ…

筆記魔術師が頭上に立つ。彼女のボールペンの顔は、にらみつけるように下を見つめている。

「どうだ?書く気になったか?それとも、お前の脳を奪って無理やり書かせる方がいいか?」

「…どこか別の場所…彼女はホールを走り、エアロックへの角を横滑りしながら降りていく…」

「何言ってる?」

ローラーボールの爪がマリアの右手を引っ張り、粉々になったペンのインクをそこに沿って出血させ、ロックの魔法を解いていく。マリアは呟くのを止めない。

「…ハッチを閉じる。彼女は、骨折した腕で可能な限り宇宙服を着て、しっかりと密閉した。 彼女はスイッチを押す。」彼女の手が宙を舞う。

「待て、お前キャラクターになろうと—」

「一等航海士マリア・ニーヴンは儀式用パッドに足を踏み入れた。」

彼女の空いている手は、タイピングを終える。

IMPLANTING

壁も床も天井も白い板に溶け、現実は捻れ、回転している—

そして筆記の獣が恐怖の声を上げる。

遅すぎる。

エアロックのハッチが開き、チャンバーは爆発的に減圧される。空気の壁が獣にぶつかり、そのまま宇宙へ飛び出していく。ニーヴンは懸命にスイッチにしがみつく。それはカチリと鳴る。扉が閉まり、シューという音とともに酸素が充填されていく。

アンダーヒル船長が室内ドアを開ける。

「マリア?何があった?」

「蛇の手が攻撃し、本を奪おうとしました。とは言え、短時間なら物語を書き続けられるだけの精神的なコントロールはできていましたので。ここから出て、これを出版しなければいけません。」

彼は彼女の腕を掴む。「着いて来い。コックピットには…」

「警告!」コンピューターがインターコムで叫んだ。「複数の船が空間トンネルを抜けました。連邦の所属と確認。」

アンダーヒルは立ち止まる。「…お前が書いたのか?」

マリアの顔が青ざめる。「いいえ、しかしタイプライターには魔法が掛かっていますから誰も…いや、そうか、私はもう現実にはいないんだ、魔法も消えてしまっています!」

外ではケンタウルス号とHANDがエンジン制御を失っている。トラクタービームがフレームに食い込み、連邦軍の大型戦艦のカプセルフィールドに引きずり込まれる。

「では誰が—」

「ジェームスはまだ外にいます。手の連中ははこっそり通り過ぎたので。ゴーレムは書けません。私はこのようにシナリオをコントロールできません。」

船体に呻き声が響く。

アンダーヒルはこめかみに手を当てながら、何度も何度も歩き回る。船はカプセルフィールドに到達する。

「マリア、一体誰に書かせてるんだ?」

ページがタイプライターから排出される。オンジスは断片化した机の引き出しの中からスタンプを取り出し、原稿に押し付け、手でギアスを覆い、超能力で荷滑りまで滑らせる。配給者がそれを引き込む。

1は大きく息を吸う。4週間の見習い期間は、彼の好みからすると十分すぎるほどの潜入作業だった。

« デル捜査官?現状はどうだ? » どうやって手に入れたのか分からないウォーキートーキーが鳴る。

「アンダーヒルともう一人のCI工作員は、手のメンバーと一緒に、シナリオに閉じ込められました。今それを出版しました。」

« 良くやった。チームAは荷滑りが繋がるパイプラインをコントロール下に置いた。原稿を手に入れたら、全員を救出することになる。 »

デルはタイプライターと物語抽出機を空中に放り投げ、背後に浮かばせる。「了解。」

« 最後にもう1つ、別のメタフィクション事件が起きた。財団が、コミックアンソロジーを通じて超常兵器を密輸している緋色の鎚の工作員を捕まえようとしたんだ。それで爆発が起きて、その工作員は今、半径1マイル内のあらゆるフィクション作品に散らばっている。»

彼らはため息をつく。

« 片付けが終わったら、本部に戻ってくれ。準備をする。 »

UIUの物語監視官に退屈な日はない。

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