Operation Badnews
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休ませろ。――休め姿勢じゃなくていい、座れ。リラックスして、話を聞くのに集中して欲しいんだ。背筋も伸ばさなくていい。壁際で石像みたいに立っている幕僚の皆さんも、できれば指令である俺の言うとおりにしてくれるか? でないとニュービーたちが安心できない。いいね、結構。じゃあ話すぞ。

僕はミヒャエル・ギャグノンという。この基地、ベース-02の司令官だ。今期の新隊員は5人。全員を歓迎しよう。

ここは冷戦の忘れ形見である、我らがグレート・アメリカがかつて有していた長距離ミサイル基地。……その跡地。公的には廃棄された、取るに足らない廃墟。本来は週末に暇を持て余した田舎者のカップル達が度胸試しに這入ってくる名物スポットに成り果てる筈の場所だが、しかし未だ、ここでは即時に発射できる核を搭載したICBMを保持している。

それはなぜか。主要な財団有するサイト――特にEuclid級程度のオブジェクトを有するサイトの直下には、核爆弾がある。核査察や国家の首輪の付けられていない、21世紀の地球上にはありえない、あってはならない核爆弾が。

あらゆる激甚な、もはやマンパワーではいかんともし難い収容違反の際、それらは起爆されることになっている。しかしそれらが十全に機能せず、現地で収容違反が収束できかねると判断されたとき。それが僕たちの出番だ。冗談だと思うかい。新入りを脅かせて、熱心に仕事をさせる為のガイダンスの一部だと。

それでいい。今僕が話している事は全て冗談だ。君たちは明日から張りぼての、少しも飛びやしないミサイルを整備し、ありもしないミサイル軌道制御の訓練をし、レプリカの核爆弾をピカピカに磨き、点検する。

そして、警報が鳴ったらボタンを押す。とても簡単だ。Kマートのパートタイマーだってもう少し複雑な仕事をしているよ。

立て。立て! 大隊長、気を付けの号令を。……よろしい。

ベース-02へようこそ。ああ、最後に我々のコールサインを教えておこう。我々のコールサインは「バッドニュース」。良くない報せを受け取ったら、ボタンを押す。それだけで最悪の状況が、少しだけマシな最悪に変化する。それが俺達の仕事だ。

君たちの仕事っぷりに期待しているよ。訓示を終わる。
 

ベース-02
位置 : アメリカ合衆国アラスカ州某所
任務 : 射程内の各サイトにおける激甚な収容違反発生時、熱核兵器を投射する。また、その際用いる長距離弾道弾を整備する。
備考 : ベース-01は20██年 ██月██日に発生したインシデント(事案ID : ██████-██-██)にて蒸発/基底現実から消滅しており、ベース-02だけが現存する二次的フェイルセーフ設備である。同規格の二次的フェイルセーフ設備補填については、現在計画中。

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