黒の女王ハブ
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アリソン・チャオ(シータ)
あなたの世界で黒の女王と知られる者へ

お元気でしょうか。先日の私たちの振る舞いについては謝罪したいと思っています。あなたは強い人ではありますが、蛇の手だけでなく自らの本質まで発見したとしたらきっと混乱してしまうでしょう。私も、初めて妹たちLittle Sistersに出会ってから随分経つので、それがどんな感覚かは忘れてしまいました。無力感というのは、決して愉快な感情ではありません。特に、自分が世界の誰よりも五歩先を行っているのだという感覚に慣れきっている場合はなおさらです。あなたがあのような暴言を吐いたのは、不幸ですが、理解できます。将来いつか、あなたが心の中で納得して、図書館で私たちと再会する時が来ることを願います。

願わくばこの手紙が、図書館でその答えを得られるはずだった疑問のいくつかに寄与せんことを。一つ目に、ギアーズは必ず存在します。そして、彼は必ず妻を置き去りにして、超常的な組織に加入します。また、彼は必ずその感情を失っていて、これは修復可能な場合もありますが、不可能である場合もあります。加えて、彼は最終的に彼のいる宇宙を破壊するような物事に巻き込まれてしまう場合もあります。

二つ目に、ギアーズは高頻度で一人の娘を持ちます。父親との離別は彼女の人格形成に大きな影響を与え、離別からある程度の年月が経つと、彼女は父親を探し求めるようになります。彼女はモンスターと化し、ほとんど人間性を失う場合もありますが、一方で、良心の類を残す場合もあります。また、父親を奪還することには成功するものの、ただ心を失い抜け殻のようになった父親を見つけ出すのみに終わる場合がある一方で、父親を救い、もう一度昔のような家庭を再構築する場合もあります。多くの場合において、彼女は傷ついてはいても全くもって平凡な女性のままであり、また他の場合では、彼女は彼女自身の筋道を立てることさえできずに死んでしまうこともあります。そして時には、ごく少数ではありますが、彼女は図書館のことを知ることになります。

自らが置かれている境遇が決して特別なものではないこと、つまりは自らの苦しみが無限に存在するありふれた苦しみのうちの一つに過ぎないということ、そして自らが握っていると思っていた主導権なんて存在しないのだと知ることは、気持ちのいいことではありません。でも、絶望しないでください。この世界たちworlds(世界ではありません。世界たちです。)not world. Worlds.に対するあなたの影響力は、あなたが知っているよりも遥かに大きいものなのです。

妹たちの中には、自らの活動範囲を自分の世界に限定して、図書館を隠れ家、或いは資源として活用している者もいます。一方で、世界を繋ぐ道を渡り歩き、古代の世界や未開の世界を追い求める者もいます。ある者はギアーズを見捨て、ある者は執拗にギアーズを探し求めます。少数ではありますが、私たちの収束は神、或いは神々によるものであると見做している者もいます。そして時には、妹たちそれぞれが対立することもあります。

私たちのことを団体と呼ぶのは、あまりに寛大すぎるかもしれません。というよりは、似たような経験を持つ個人の集まりに近いでしょう。

あなたが最終的にどのような道を選ぶことになったとしても、もう一度私たちを探してみてください。あなたは怯えていて、混乱していて、そしておそらくは怒っているかもしれない。私にも、そういう時がありました。ですが、あなたのことは誰よりも私たちがよく知っています。もし、あなたが図書館に留まることを選ぶならば、私たちが可能とすることに限りはありません。

あなたの妹
アリソン・チャオ(イプシロン)
私もまた私の世界で黒の女王と知られる者より

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