ブラザーフッド
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私の心に怒りが満たされていく。
私はお前を愛している。
何故だという疑問はいくつもある。
何故お前は自由に行動が出来るのか。何故今になって行動を起こしたのか。何故その力を奪うことが出来たのか。
私たちの呪いを解く為にはこの手が一番効果的で、今ならそれが出来ただけのことだよ。
思えば、お前はいつも小賢しいことばかり考えていたな。外見を取り繕うことばかり長け、全てを思い通りにしようとする浅ましい奴だった。
お前のことはよく聞かされていた。少しは変わっているかと思ったが、やはり人はそう簡単に変われぬか。
お前は私の良く知る男のままだった。
だからこうして今も私のところへ向かっているのだろう?
私はお前が嫌いだ。欲望を押し込めたように見せかけ、己のみが利益を得るようなやり方を好んでいるところがだ。
そのような人間はいつの時代であろうと、どんな場所であろうと、好かれる筈が無いというのに一体お前は何を学んできたというのだ。私にしたことから何も学ばなかったのか。
私たちが救われる方法は学んださ。
その身に課せられた呪いの意味を考えたことがあるのか。
私が地の底より舞い戻り、無限の命を与えられた理由を考えたことがあるのか。
お前と二人で、自由にあの頃の様に生きる為だろう?
呪いが罪を産み、罪が呪いを重ねていく。本質では、私とお前はやはり同類だ。
いつまで、お前は目を背けるというのか。己の罪に。まだ重ねるというのか。新たな罪を。
これからは親しみを込めて、おにいちゃんと呼んでもいいのだぞ。
お前は長く生き過ぎた。お前は既に、私以上に狂気に蝕まれている。
我々兄弟は本来存在すべき時間を大幅に過ぎている。お前も私も死すべきだ。それをわかっているのかカインおにいちゃん?
……意識への影響が強くなってきたか。
サイト-17と言ったか。ここに私をおびき寄せ、あの世界を歪める者の力を奪い、自らのものとしたお前のやろうとしていることはわかっている。
この力で既に私は呪いを解いた。あとはお前だアベル。早くここへ来い。
どこからどこまでがお前の知略なのか。この際どうでもいい。
例えお前がその力で、私の意識と記憶を書き換えたとしても、お前を最愛の兄と呼ぶことは無い。
待っていろカイン。どれだけ世界を歪めようとも、お前は私が地へ帰そう。それが弟としての役目だ。
ああ、待っているぞ。私の愛しい弟よ。

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