あの時、部屋に外がある事を初めて知った。
いつもみたいにあの子と遊んでいたら、突然扉が開いて沢山の人達に外へ連れ出された。突然の事でずっとキョロキョロしてたと思う。気が付いたら違う部屋にいて、カーなんとか博士っていう人にいろんな事を聞かれた。
君は自分が作ったものと仲がいいのか?
うん。
友達ということ?
うん、友達。
友達以外は作れる?
ううん。
自分自身から友達は作れるかな?
分からないけど出来ると思う。やらないけど。
テストってのも受けた。いーきゅーが高いとか言われたけど、難しくてよくわかんないや。その後、博士はさいと24っていう所に僕を案内して、この建物の中なら好きにしていいと言ってくれた。部屋よりずっと広い、新しい家だ。でも友達は作っちゃダメって言われた。残念。あの子を探してみたけど、どこにもいなかった。別の所にいるのかな。
椅子に座って床を見てる人がいた。なんだか胸がキュッとしたから、近寄ってダンスを見せてあげた。ダンスは2番目に得意なんだ。そしたら、その人は僕を見て変な顔をした。その顔を見たらなんだか胸がホワッとした。もっと見たいな、その顔。この日から、色んな人の前で踊ったり、絵を描いたりするようになった。絵は3番目だから少し不安だけど。
窓の外が何回か変わった頃、カーなんとか博士が友達を作っていいって言ってくれた。やった、僕の1番得意だ。これでもっとあの顔が見れる。楽しみだなぁ。そこにいる人を使わせてもらおう。
違う。こんなはずじゃない。久しぶりだから失敗しただけだ。外側しか作らなかったからかもしれない。次はこの人の中身を使ってみよう。きっと上手くいくはずさ。
そういえばあの人、あの子と違って取った部分が戻らなかった気がする。おかしいな。
おかしいのは僕の方だったんだ。本当は分かってた。分かってたのに、認めたくなくて沢山の人を壊してしまった。皆が大声を出しながら僕の事を追いかけてくる。その時の顔、その目を思い出しただけで胸がズキズキと痛む。お腹がグルグルして、鼻の上も熱い。
取り返しのつかない事をしてしまった。もう誰も、ホワッてなる顔を向けてくれないのかな。そんなの嫌だ。騙してたんじゃない。僕はただ、あの顔が見たかっただけなのに。
痛い。何をしても痛みが消えない。こんな思いをするなら、あの部屋から出たくなんてなかった。いっそ壊れてしまいたいのに、友達と違って僕は壊れなかった。
(自分自身から友達は作れるかな?)
そうか
僕が
僕を
壊れるようにすれば―
「私だ。無力化したC個体の検査が終わったよ。ああ、結果は予想通り、自分の中の金属が材料だった。1145と同じ構造だな。こちらも調査が必要だが、今は君を称えよう。17人の命が失われたが、Keterクラス無力化の為の致し方ない犠牲だ。単体の異常性を踏まえても、管理下にある状態で無力化出来て本当に良かった。
昇進間違いなしだな、Carver博士」