焼けた橋達
評価: +12+x

“ よし、ダニエル” エージェント・ディマシオはそう言うと、ダニエル・ナヴァッロに向けて最後の書類を机の上へと滑らせた。 “ ここにサインすれば、訓練は完了だ。君は正式に財団のスペシャリストとして任命される事になる。”

“ それじゃ、さっさと終わらせよう。”とナヴァッロが答えた。 “ペン持ってる?”

ディマシオは小さく笑みを浮かべ、書類を自分の元へと素早く戻した。

“ 熱意には感謝する、だが君は自分のサインが何を意味するのか、十分理解していないように見えるね。アナーティストであるダニエル・ナヴァッロは正式に死亡し、エージェント・ナヴァッロが彼の後を継ぐ。これはつまり、以前の友人や同僚は真っ先にPOIへと指定され、その時点ではまだ友人と言える者もその次に指定される事を意味する。君のサインによって多くの関係性が絶たれるだろう。 だから…数秒の間、それが二度と渡る事のない橋なのかどうか考えてみてくれ。”

“ それじゃあ何だ?訓練に費やした時間は無駄になるのか?財団はもう俺の記憶を消し去っていて、どこだかの貧困街にでも置き去りにするつもりなのか?”ナヴァッロは尋ねた。

“ そうムキになるな”とディマシオは答えた。“ 我々はそのような事を君にするつもりはない、少なくとも現段階では…よく聞け、私が言いたいのはここが最後のチェックポイントであり、安全装置だという事だ。神は我らがその行動により人々がより良い方向へと進む時に足踏みすることのないエージェントを十分に育成していることを知っている。改めて考えてみてくれ…”

ナヴァッロはうなずき、ポートランドでの彼の全ての友人達を思い返していた。ジル、トム、アレクシス、ジャクソン、ジェリコ、エリック、ターニャ、フランシス、エリザベス。

“ よし、これで充分だろう。"ディマシオはそう言うと机の上へ書類を戻した。

ナヴァッロは一瞬の躊躇いもなく、素早くサインした。

“ 以上で訓練は終了だ。”ディマシオは微笑んだ。 “ 財団へようこそ、エージェント・ナヴァッロ。”


シリーズ概要:

2004年の中頃、著名なアナーティストであるダニエル・ナヴァッロはオレゴン州ポートランドにある彼のアパートへの家宅捜索の後、財団職員によって確保されました。 財団の二重スパイとして働くことと引き換えにナヴァッロは記憶処理を回避し、2005年には財団エージェントとして正式に雇用され、アナートスペシャリストおよび様々なアナートグループ間の連絡役に務るようになりました。しかしながら、エージェント・ナヴァッロのような多くの人脈を持つ人物が幸先良く財団に加入できるはずもなく、過去の行動はすぐさま彼を悩ませる事となり…



特に指定がない限り、このサイトのすべてのコンテンツはクリエイティブ・コモンズ 表示 - 継承3.0ライセンス の元で利用可能です。