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サイト-433管理官 ジョナサン・ミルデューのメモ書き


悪い方に転がりつつある、そう口にしたのは遠い昔のことだ。だが、それが現実のものとなっているのは疑いようもないな。

あのトゥーンのくそったれは、記号論理学的ロジスティックな悪夢であり続けてる。あそこにあるのは下らないモノたちだ。世界一面白いマンガが描かれてると読んだ奴に思い込ませる本だの、よく目を凝らせば [データ削除] に似たイヌを模した等身大パネルだの、クリーピーパスタのキャラクターが実在してるような奴だの、自分たちを蔑ろにするよう周囲に強いてくる連中だの。

だが、一部は下らなくないモノたちでもある。アメリカ国内のレストランでならどこでも注文できるようなミルクセーキは神隠しを引き起こすし、接続不可能な思考領域はそいつの頭の中に押し込まれて自分というものをあべこべにさせてくるし、段ボール箱の魔法によって不安定そのものな世界がいくつも創造されている。

サイト-433に置かれた我々は "俗物"snobs と評されている。自惚れに満ち、感情に流されやすく、非合理的で非科学的。そう思われている。君がここに異動してきたというのならばつまりは、同じようにお友達や同僚から思われているというわけだよ。

ただし、これだけははっきりさせておこう。ここでの職務というのは君の人生で最も意義深いものとなる。あの下らないアノマリーどもでさえド偉い存在になった。あるサイトには農家の男が題材のVRゲームが収容されてたんだが、そこは奴の手中に堕ちて大勢の職員が機能不全に陥った。我々がいなければ世界まるごと奴に呑み込まれていただろうに。我々の最大の功績がそいつだったんだが知る者はいやしない。それでもって、今じゃよりタチの悪い奴らに対処するのが常態化してるってわけだ。

もうお気づきかな?このアノマリーども — それが、段ボール箱であれ、ミルクセーキであれ、テレビゲームであれ、切り絵であれ、何であれ — 奴らの共通しがちなポイントについて。奴らはみなアートだ。子供じみていて、下品で、しばしば単純が過ぎるが、それでもなおアートなんだ。

アートの概念が何かおかしいんだ。

主観的かつ人間的な概念、それに準ずるものがアートだと捉えていた。だが、この世界 (もしくは別の世界) には我々とは異なる存在がいて、そいつらの持つアートの解釈というのは独特であることにすぐさま思い至った。もしくは、そいつらがアートそのものなのか、あるいは、客観的水準を以てして周囲のものがアートであるか否かを定義し直しているのか。そいつら全部が同一の存在というわけではなく、同一のルールに則るでもなく、その大半は人間の頭では到底理解しえぬものたちだ。

幾つもの、そう、幾つもの事態が想起される。至るところから黄衣の王の軍勢が湧き出で、この地平のあらゆる事物が終末を告げる時計と成りうる。なぜならば、アートは全てであり、いずれにもなりうるから。

彫刻、テレビゲーム、子供向けのおあそび、落書き、クリップ・アート、ショッピングモールのビラ、劇の台本、キャンディ・バー、全部アートだ。君が以前に勤務していたサイトにもアートが収容されていたかもしれない、君はそれを知らないままでいた。君がいたサイト自身もどれだけのアートが収容されているか把握していない可能性がある

展示されればそれはアートだ。前述のいずれであろうと、動物向けの動物園であろうと、展示物が生きていようと、展示する側が展示されていようと、そこからどんなクソが這い出てくるのかを知る者はいない。




愉快にmerrily


愉快にmerrily


愉快にmerrily




といっても、ただ座してこの状況に甘んじているわけではない。こいつは酷いことだし、君の人生の多くを食い潰すことになる。けれども、我々はここで善いことを、皆を助けることをしているんだ。超写実的に描かれた血眼がテレビ画面から飛び出してきてオフィスカーペットを汚しながら転がっていくのを目の当たりにする。その度に、沢山の子供たちが同じものを見ずに済んだと実感するんだ。

加えて、我々には手がかりが残されている。スプートニク・スタジオは数ある異常エンターテインメント企業のうちのひとつに過ぎない — もう潰れちゃいるがね。我々は彼らのゴーストを追いかけさえすればよい。そして、見つければ見つけただけ現実に生じた大きな乖離を縮めることができる。

我々は理論化にも取り組んでいる。研究だよ。哲学なり科学なりの探究さ。奴らに名前を付けているんだ — トゥーンズ、アルカナリクラスAlucanari-class実体、エルドリッチEldritch、なんて。つまりは、現時点で奴らを理解できていないということが今後も続きはしないということだ。奴らは我々を遥かに超越した存在でありながらも人間的な部分が残っている。もしかしたらここじゃないどこかに由来する人間なのかもしれない。人間がトゥーンになったり、トゥーンが人間になったり、その中間の存在も耳にしてる。

うちの職員がそうだ、例えばローワンとか。今の彼はどこか不調をきたしている。悪いことじゃない。それでもなお彼は財団の有用な人員だ。

だが、すごく腹立たしいよ。

近づこうとすれば壁にぶち当たる。近づくまではそこにあると分からなかった壁だ。しかし、何度も体当たりさえできれば壁は崩れ落ちるものだ。

我々の生涯をかけたところで成果はゼロかもしれない。だが前進している。この不可思議を解き明かすのは君かもしれない。この世界をこじ開けるかもしれない。私も試みてきたさ。デスクに置いたこのメモを読み返しながらね。それも踏まえた私の考えがどうかって?私が思うに、これは全てが

ただの夢but a dream


君が滑り込めるのはその大穴だけだ。我々のアートを取り戻すことができる。異なるアート解釈と共存することができる。そうすれば奴らに傷つけられることもなくなる、そう願っている。

仕事に戻ろう。

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