キャロル#188: 双子座
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RAISAファイル: 要注意団体 [消滅済]
GOI-001: シカゴ・スピリット

ファイル作成日時: 1923年頃
GOIによる最後のファイル改訂: 1925年10月
ファイル回収日時: 1936年7月
[文章を以下に再現]1

{Carroll 188: Gemini}

キャロル#188: 双子座

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キャロル188: まだ結合していた時期のヴィクターとヴィンセント・リー。


{Where We Keep Them}

何処に保管しているか


ヴィクターはシカゴ、36番街と4番街に近い小さな隠れ家に住んでいる。用心棒から身体検査を受けずに入りたければ、合言葉が必要だ。“日光のしずく”。そう言えば用心棒はお前を中に入れて、ヴィクターを良い様に使わせてくれるだろう。

ヴィンセントはニューヨーク、ワシントン街とウィルソン通りの角にある小さな赤煉瓦の家の地下室に隠れている。こちら側の合言葉は“月のしぶき”。上階はニューヨーク活動の足掛かりに使っているから、目立たないように動け。

更新: 俺たちはヴィクターの残りを焼き捨てて湖に沈めた。まだヴィンセントの首には懸賞金を掛けたままだが、興味を持つ奴が出るとは思えない。


{Who Knows about them}

誰が知っているか

このファイルを読んでいるなら、チャペルはもう既に、お前は内幕を教えて構わないぐらいの重要人物だと考えている。用心棒を別とすれば、この双子の存在を知っているのはごく一握りだ。他の奴らは弾丸や薬や命令を受け取れる限り、それが何処から来るか分からなくても別に気にしない。

双子の用心棒たちは特に忠誠心のある候補から慎重に選び抜いた。このキャロルは俺たちのニューヨーク進出に不可欠だから、何としても失うわけにいかない。

更新: 命令はまだ有効だ。誰にもこの大失態を探り出させない。誰がタレ込んだかはっきりとは分かってないが、俺はあの恩知らずのヴィンセント自身だったという説に賭けてもいい。

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ヴィクターの住処の残り。


{How We Worked with them}

どうやって協力したか


チャペルは昔からサーカスが好きだった。本人はそう言っている。

演目を楽しんだかどうかはともかく、6月15日の晩、ハーマン・フラーの不気味サーカス一夜限りのシカゴ公演をチャペルが観に行ったのは確かな事実だ。帰って来たチャペルは、ただの見世物フリークと手品師のみじめな寄せ集めだったと言った。ただ、一組だけは毛色が違うのにも気付いていた。2人のサーカスフリーク、双子だ。伝説のリー兄弟、というのがそいつらの演目の名前だった。どうも元々はシャム双生児という奴で、腰の辺りが繋がっていたのを実験的な手術で切り離したらしい。この2人1組の手品師は“失われし秘術を用いて彼らの間で物体を転送”できる。片方が呑み込んだ物が、どれだけ遠く離れていても、もう片方の口から吐き出される。言葉にすると完全に馬鹿みたいな話だが、真実だ。

何にせよ、公演の後、双子の片割れはチャペルの後ろに回り、スタンドに立っていた彼の後ろを通り過ぎざまズボンのポケットから懐中時計をくすねた。筋金入りの路地育ちだったチャペルはすぐスリだと悟って悪ガキを引っ掴んだ。ガキは懐中時計を半分呑み込んでて、双子の弟はそれを食道から引っ張り出す途中だった。またとない好機だ、というのでチャペルはその好機を上手く活かした。ハーマン・フラーは自分のチンケなフリークショーを抜け出す奴らへの仕打ちに定評がある男だが、スピリットなら双子が必要とする保護を提供できる。

双子には奇妙奇天烈な中国人の名前があるんだが、俺たちはヴィンセントとヴィクターで呼ぶことにしている。

更新: あの馬鹿野郎はどんな相手を敵に回したか分かってない。誰かの恩情に暗殺未遂で答えようなんて以ての外だ、ましてスピリットの首領を狙うとはな。俺たちがヴィンセントの居場所を嗅ぎ出してにブチ込んだら、ヴィクターはまだしも運が良いほうになるだろう。

{how we use them}

どう使うか

双子が俺たちの世話を受けるようになって以来、利用はごく僅かだった。だが、帝国作戦の手筈が整ってからは二人とも残業続きだ。俺たちは護衛団を送ってニューヨークにヴィンセントを潜伏させ、命令を送るのに2人を使っている。連邦捜査局の犬どもは組員に目を光らせているし、チャペルは盗聴を懸念している。それでも人間の喉を盗聴するのは無理な相談だ。伝言を丸めて小さなプラスチック容器に入れ、お前がいる側のキャロルに渡せばいい。後は双子が魔法を働かせるだけだ。

更新: ヴィンセントを痛めつけるのも重要だが、それは連邦捜査局との全面戦争に踏み切る十分な理由にはならない。奴はすぐに相応の報いを受けるだろう。だが今のところは、これまでと同じように使い走りや電報でメッセージを送る。それで十分だろう、これまでずっとそうだった。


序文: 以下の文書はこの文書の原本と共に回収されました。内容に関連性があるため、当ファイルにも収録します。

リチャード・チャペルのデスクより

ヴィンセントへ、

忌々しい事だが、君をここに留めておく危険は冒せない。連邦捜査局は私の背後にしつこく付き纏っている — 背広の捜査官どもが裏路地を這い回っていても私は驚かない。それにまた、君は我々がメッセージを送り、状況を制御する大きな助けになっている。酒取引は手狭になりつつあるし、組織の成長も緩やかになってきた。ボストンとニューヨークはどちらも犯罪の温床だが、我々だけの独占市場ではない。もし用心棒たちが君を煩わせるようであれば知らせてくれ。パラッツィオを送って矯正させる。

チャペル、

あなたのニューヨーク・シティ進出は僕らに負担を掛けている。この小さな前哨基地はいつも脅威にさらされ続けている。イリエルタが通りでマフィアに尾行されているのは間違いないし、つい昨日は血の付いたナイフが玄関前の階段に落ちているのを見つけた。危険どころじゃない、自殺行為だよ。五大ファミリーの一角が僕らを排除しようとするのは時間の問題だ、それを阻止できるか僕には分からない。メイザーズは力を尽くしているけれど、僕ら全員を守ることはできない。こんな無謀な作戦はやめてくれ。

-ヴィンセント。

リチャード・チャペルのデスクより

ヴィンセントへ、

私は君と双子の兄を気に入っている。君たちは忠実であり資産だ。しかし君の教唆を黙って見逃すほど気に入ってはいない。スピリットは拡張している、そして私はキャロルを利益のために使う団体の波の最前線に立つつもりでいる。私に指図する者は9歳の時以来一人もいなかったし、その少年はシカゴ川の底で発見された。この不文律を変える気は無い。君はニューヨークに留まって言われたとおりに働け。忘れるな、結局のところ、君はキャロルであり、契約内容は変わっていない。馬鹿な真似は一切するな、五大ファミリーが君を狙うことは無いだろう。我々が取引を締結するまで動くな。ただ静かに自分の部屋に座って、時々メッセージを吐き出していればいい。難しい仕事ではないだろう、ヴィンセント。

チャペル、

ごめん、でももうこれ以上我慢できない。事情を知らない連中に対してはともかく、僕は他でもないあなたの部下たちには愛情を感じているんだよ、チャペル? あなたは彼らを肉挽き機に投げ込んでいる。分かったうえでそうしている。この作戦が始まってまだ2ヶ月だけれど、僕らはほぼ1ダースの組員を既に失った。銃で全てを解決することなんてできない、普通の人間が扱う範疇を越えた銃でもそれは変わらない。どうかお願いだ、考え直してくれ。

これを書いている今、メイザーズが隣の部屋のベッドに寝ている。彼は瀕死だ、チャペル。ボナンノ一家の手下の弾丸が胃を貫通した。明日まで持つとは思えない。あなたは不必要な利益を追い求めて彼らの命を奪っている。スピリットはもう既に合衆国で最大勢力のギャングになっているじゃないか。僕らと並び立つのは欧州のシンジケートだけだ。人材を無駄遣いする必要は無い、彼らには連邦捜査局の牙城に突入するよりもマシな使い道がある。

-ヴィンセント。

チャペル、

前回の手紙には返事をくれなかったね。僕らがまだここに居る事を考えると、あなたは僕を無視しようと決めたんだろう。でもそれは今回の心配事じゃない。以前、あなたは部下が不親切な真似をしたら伝えろと言ってくれた。意見の相違はあったけれど、この件には寛大に対処してくれることを願う。昨夜、何人かの組員が僕をベッドから引きずり出して、出荷分から盗み出した酒瓶で殴りつけた。これを書いている今も、ガラス片が肌に食い込んでいるのを感じる。あいつらの吐息にはウイスキーの香りがした。必要以上にこの事件について語るのは望んでいないけれど、僕はこんな仕打ちに値する事は一切していないと言えば十分だと思う。どうか行動を起こしてほしい — それが僕に対する最後の恩情になっても構わない。

-ヴィンセント。

リチャード・チャペルのデスクより

ヴィンセントへ、

世間を甘く見るな、少年。部下は私からの許可が無ければ何もしない。これが私の返答だ。願わくは君に教訓を得てもらい、お互い昔のような良き友人付き合いに戻りたいものだ。スピリットは君たち二人を大いに評価している。分かったか?

更新: この最後のメッセージから2日後、ニューヨークの隠れ家とは連絡が付かなくなった。調査のために組員を送ったが、行き来するには暫く時間がかかった。知らせはニューヨークからの電話で入った。家はくまなく漁られて、UIUとスピリットの死体が等しくそこら中に転がっていた。ヴィンセントは消えていた。チャペルは自分で問題解決に乗り出そうと決めて、ヴィンセントを一番良く知るはずの男の家に向かった。ヴィクターは、母親の命に掛けて、ヴィンセントが何処にいるかさっぱり分からないと誓った。あの必死の口ぶりを思うと、嘘を吐いてはいなかったと思う。

だがもうどうでもいい事だ。ヴィクターはチャペルを見上げて、彼の靴の上に火の点いたダイナマイトを吐き出した。チャペルが窓の外に吹っ飛ばされなかったのは全くの奇跡だが、俺は聖霊が何かしてくれた結果だとは思わない。ともかく俺たちは大火傷を負ったチャペルを数日間入院させた。彼はその間に電報を受け取った。ニューヨークに送った組員は、2人のエージェントが例の隠れ家を探っているのを見つけたらしい。勿論それ以上探りを入れられないように対処したが、片方の奴が失血で死ぬ前に尋問をした。そいつが言えたのは「お前らの仲間の一人、アジア人の奴からタレコミがあった」だけだった。

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