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SCP-001-JP » "て"は「提言」の"て"
財団記録・情報保安管理局より通達
1945/6/23、SCP-001報告書原版の閲覧は無期限に凍結されました。
— RAISA管理官、マリア・ジョーンズ
会議ログSCP-001: LOG01
"会議ログSCP-001: LOG01"の詳細を開示します。SCLを提示してください。
SCLを照合しています……
SCLの照合が完了しました。
提示資格
SSCL-4
────────────
開示制限
有り[議題を除く]
────────────
必要資格
SSCL-5
議題
SCP-001の発見について
キャサリン・メイズ博士の処遇について
聴取ログSCP-001: LOG01
聴取日時: 1945/6/24 13:00
聴取場所: サイト-19 第6聴取室
聴取対象: 奇跡論部門 キャサリン・メイズ 博士(Thaumatology Department Dr. Catherine Mayes)
聴取担当: 奇跡論部門 ジェイムズ・アーヴィング 部門長(Thaumatology Department Dir. James Irving)
同席者: 補佐官1名、監視員2名
[記録開始]
[キャサリン博士、補佐官、及び監視員は既に聴取室内で待機している。13:00、ジェイムズ博士が入室する。]
ジェイムズ: やあケイトCate、調子はどうだい?
キャサリン: 絶好調とは言えないわ。今日中にAnomalousアイテムの調査報告書をあと6枚も書き上げないといけないんだから。昨日いきなり仕事を押し付けてきた貴方なら知ってるでしょ。
ジェイムズ: ああ、もちろん知ってるさ。申し訳ないと思ってる。ただ、その6枚の報告よりもこっちの聴取のほうが重要なんだ。もし君が望むなら他の誰か、例えばベンジャミンなんかに──
キャサリン: [ため息]良いわよ、私がやるから。他の皆にも仕事があるもの。だからさっさとこの聴取を終わらせてちょうだい。
ジェイムズ: 君ならそう言ってくれると思ってたよ、ありがとう。それじゃあお望み通り聴取に移ろう。[咳払い]君が8年前に書いたSCP-001報告書のことは覚えてる?
キャサリン: ええ、当然でしょ。あのときほど忙しくて、でもワクワクした仕事は無いわ。
ジェイムズ: なら、どんな内容だったかも?
キャサリン: もちろん。どんな構成だったかも覚えてる。
ジェイムズ: だったら話が早い。実は先週、その報告書のアノマリー担当に私が就くことが決まってね、そのことで──
キャサリン: ……待って、それって本当なの?
ジェイムズ: 本当さ、いくら私でも冗談で多忙な君をこんなところに呼び出したりしないよ。
キャサリン: でもあれはデコイ、偽物のSCP-001報告書よ?上から頼まれて書いた、あるかも分からない本物のための隠れ蓑の担当になんで貴方が?
ジェイムズ: 君にしては察しが悪いね。やっぱり疲れてるのかな。簡単に言うと、そのアノマリーが見つかったんだよ。いや、正確にはその内の数個体って言ったほうが正しい。
キャサリン: [沈黙]
ジェイムズ: 君はそのアノマリーの一番の関係者だ。聞きたいことがたくさんある。場合によっては研究室じゃなくてこのまま収容室に移動してもらうことになるかもね。
キャサリン: [3秒間の沈黙]ねえ、聴取の前に一つ頼みがあるんだけど良いかしら。
ジェイムズ: なんなりと、私にできることなら。
キャサリン: ベンジャミンに私の仕事を流しておいて。
ジェイムズ: オーケー、ちょっと待ってて。監視員、見張りは頼んだよ。
[約11分間、聴取中断]
ジェイムズ: ただいま。ベンジャミンは"快く"引き受けてくれたよ。
キャサリン: そう、"快く"ね。それは良かったわ。
ジェイムズ: じゃあ聴取に戻ろうか。
キャサリン: その前に、ここでの発言は気を付けたほうが良い?例えば、発言の内容によってアノマリーの異常性や存在性が変容するといった可能性は?
ジェイムズ: その可能性はない。先週からの調査でアノマリー及びその周囲からヒューム値の変動、つまり現実改変や過去改変が起きた痕跡が見つからなかった。タイムパラドックスに代表される時空間断裂の痕跡もね。もし君が報告書を執筆した8年前時点で改変が行われたとしても、異常性や存在性の変容という重大な改変であれば少なからずの痕跡は検知できるはずだ。特に君のSCP-001報告書には日本という国全域に広がっていると記載されているから、その規模に及ぶ改変なら8年前の時点で私たちが検知できている。
キャサリン: なら問題なさそうね。ごめんなさい、何回も中断しちゃって。
ジェイムズ: 問題ない、君の慎重さは誇るべき長所だよ。じゃあ今度こそ聴取を始めよう。とは言っても、事実確認がほとんどになるけどね。まず君は、報告書を書く前からアノマリーの存在を知っていた?
キャサリン: 知らなかったわ。そもそも私は日本に行ったことすらないし。強いて言えば、日本語を少し話せるくらいかしら。
ジェイムズ: そうだね、こっちでも君の経歴を改めて確認してみたけど、君自身と日本との接点はなかった。でも君のお父さんであるウォーレン・メイズ博士は15年ほど前から日本に3度ほど来航したことがあったらしい。彼が担当していたアノマリーの調査でね。当時君は普通の研究員だったし役職も分野も違かったから、何も知らされてなかったようだけど。
キャサリン: ええ、何も聞いてないわ。そういう情報の管理には人一倍厳しい人だったから、色んな国に出向いていたようだけどそういう話どころかお土産すら買ってきたことはなかった。
ジェイムズ: できればウォーレン博士にも話を聞きたかったところだけど、一昨年持病で亡くなってしまったから仕方ないね。じゃあ次の質問。君がアノマリーに日本とか、えーと、これは、タダタカ……?
キャサリン: 伊能忠敬いのうただたかよ。
ジェイムズ: そう、伊能忠敬ね、それらを絡めた理由は?
キャサリン: 仕事柄、お父さんは世界各国の書籍を持ってて、暇があればそれらを読んで知識を深めてた。その中に日本について書かれたものがあってね、それを私は子どもの頃から本に穴が空くほど読んでたのよ。その中に書いてあった伊能忠敬のことがずっと記憶に残っててね、それを元にSCP-001報告書を執筆したの。日本に詳しい友人やお父さんの書籍を参考にしながらね。おかげで、日本語はだいぶ読めるようになったわ。
ジェイムズ: なるほど分かった。一応君の家を捜索しても良いかな?その本も含めて、アノマリーに関連するものが無いか確認するために。
キャサリン: ええ、構わないわ。
ジェイムズ: ありがとう。監視員、捜索許可出しておいて。
[監視員が無線通信によって捜索隊を手配する]
キャサリン: 随分手際が良いわね。数時間後には家はもぬけの殻かしら。
ジェイムズ: 安心して、椅子の一つくらいは残ると思うよ。
キャサリン: だったらティータイムは楽しめそうね、良かった。
ジェイムズ: それじゃあ最後の質問。君がSCP-001報告書を執筆してから現在に至るまで、何か異変や気になるようなことは?
キャサリン: 無かったわ。あったらなにかしら報告してる。もちろん、これからもね。
ジェイムズ: ありがとう。これで聞きたいことは大体聞けたよ。君自身に異常性が無いことは、このサイトや研究所に取り付けられている異常存在確度探知装置で確認済みだしね。
キャサリン: そう、だったらもう研究室に戻っても良いのかしら。
ジェイムズ: いいや、少なくとも今日一日、もしくか今週いっぱいは職員用収容房で過ごしてもらう。君がいつ今まで通りの職務に戻れるかは、私が他のSCP-001担当者と協議したあとの結論次第だね。
キャサリン: そうなの。まあ妥当よね、仕方ないわ。ベンジャミンに早めに仕事を流しといて良かった。
ジェイムズ: これで聴取は終わりだけど、君の方から質問はあるかい?
キャサリン: そうね……私の執筆したSCP-001報告書はどうなるのかしら?
ジェイムズ: 破棄される可能性が高いだろうね、残念だけど。いくら事実になったっていっても元は偽物の報告書だ。アノマリーは実在しているけれど、報告書に記されている聴取記録や"プロトコル・ボーダーライン"なんて作戦は存在しない。だから、君の報告書は破棄して、新しく報告書を作成する必要がある。その際にも、君の報告書を参考に、とかにはならないだろうね。
キャサリン: ナンバリングは?本物のSCP-001は1つだけ、もしくは存在しないのよ?もし既に本物のSCP-001報告書があったら、本物が2つになっちゃうでしょ?
ジェイムズ: それは、私には答えられない質問だね。私は本物のSCP-001報告書があるか知らないし、知る権限もないし、そしてナンバリングを決める権限もない。当然、君にもね。ただ私の所感としては、空いているナンバーに割り振られることになると思うよ。
キャサリン: ……そう。そうよね。私もそう思うわ。
ジェイムズ: 他に質問は?
キャサリン: 無いわ、とりあえず今は。
ジェイムズ: じゃあこれで聴取は終了だ。さっきも言った通り、君にはこのまま職員用収容房に移ってもらう。構わないね?
キャサリン: 拒否権なんてないんでしょ?構わないわ。ああでも、本を1冊、いや2冊ほど持ち込みたいわ。暇で死んでしまいそうだもの。
ジェイムズ: 良いよ、言ってくれればあとで持っていく。
キャサリン: ありがとう、助かるわ。
[記録終了]
会議ログSCP-001: LOG02
"会議ログSCP-001: LOG02"の詳細を開示します。SCLを提示してください。
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SCLの照合が完了しました。
提示資格
SSCL-4
────────────
開示制限
有り[議題を除く]
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必要資格
SSCL-5
議題
キャサリン・メイズ博士の処遇について
SCP-001原版の破棄及び新規ナンバーについて
会議ログSCP-TBD: LOG03
"会議ログSCP-TBD: LOG03"の詳細を開示します。SCLを提示してください。
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SCLの照合が完了しました。
提示資格
SSCL-4
────────────
開示制限
有り[議題を除く]
────────────
必要資格
SSCL-5
議題
キャサリン・メイズ博士へのセキュリティクリアランスレベル(SCL)付与について
"オペレーション・ダウンフォール"遂行について
特別定義/Skótos: 更新されたファイル - 監督者議事録で締結された内容より、当該アノマリーは正式にSkótosへと特別定義されました。(特殊ステータス-Skótos: アイテムの研究や文書化は進行中であるか、著しく不足しています。)
特別収容プロトコル: SCP-TBDの全貌は1945/6/26時点で判明しておらず、調査を継続しています。また、"オペレーション・ダウンフォール"遂行のため、SCP-TBDの無力化を計画中です。
説明: SCP-TBDは大日本帝国の沿岸部で確認されているレベルⅡ耐破壊性です。SCP-TBDは後述するSCP-TBD-Aを中心として半径500mまで広がっており、自然的要因や空爆に対して微弱な耐性を有しています。またこの耐性は影響範囲上に存在する人工物、植物、生物にも適用されています。
SCP-TBD-Aは海岸線から500m~1km付近に等間隔で埋没している0.1m×1.0mの白布です。SCP-TBD-Aには陰陽寮による陰陽道占術論紋様図形が描かれており、それによりSCP-TBD-A自体がレベルⅣ耐破壊性を有しています。このため、度重なる空爆及びそれに起因する火災に見舞われてもSCP-TBD-Aは残存していましたが、周囲のSCP-TBDの耐性は微弱であるため崩壊し、露出している個体が多く発見されました。
SCP-TBDは1944年6月16日から行われている空爆において、内陸部に比べて沿岸部の国土被害が少ないことから財団に捕捉されました。その後、1945年5月に設立されたSCP財団西日本地域作戦統括臨時施設所属の諜報員によってSCP-TBD-Aの詳細な調査が行われ、結果として日本国の沿岸部でSCP-TBD-Aが発見されました。
また、以下はSCP-TBD-Aについて言及されていると思われるGoI-551"蒐集院"の記録です。これは蒐集院との融和政策の過程で提出された複数の記録のうちSCP-TBD及びTBD-Aに関すると思われるものです。
勘解由梵天蒐集物覚書帳目録第〇〇一四番
文政六年捕捉。研儀官"西大路史櫻"発見。勘解由梵天は寛政一二年から文化一三年にかけ、伊能忠敬により日本国各地に埋没させられた蒐集物である。
寛政一二年、伊能忠敬は当時高橋至時の推薦を受け、奥州街道から蝦夷地にかけて測量を行った。その際、伊能忠敬は天文学の学者である陰陽寮の関係者より"勘解由梵天"を譲渡され、それを持参し各地を測量、それぞれの地点に埋没した。その後も伊能忠敬は種子島や屋久島、伊豆諸島へも測量に赴き、最終的に沖縄県や硫黄島、国後島以外の千島列島など一部を除く大日本沿海輿地全図を完成させた。
なお"勘解由梵天"は、代々伊能家が隠居名として用いていた"勘解由"と、測量道具の"梵天"の先端に白布を結び付け測量に赴いたことに由来している。
| 測量 | 和暦 | 旅路内容 |
|---|---|---|
| 第一次 | 寛政一二年 | 奥州街道、蝦夷地太平洋岸 |
| 第二次 | 享和元年 | 三浦半島、伊豆半島、房総半島、東北地方太平洋沿岸、津軽半島、奥州街道 |
| 第三次 | 享和二年 | 奥州街道、山形、秋田、津軽半島、東北日本海沿岸、直江津、長野、中山道 |
| 第四次 | 享和三年 | 東海道、沼津、太平洋沿岸、名古屋、敦賀、北陸沿岸、佐渡、長岡、中山道 |
| 第五次 | 文化二年 | 東海道、紀伊半島、大阪、琵琶湖、瀬戸内海沿岸、下関、山陰沿岸、隠岐、敦賀、琵琶湖 |
| 第六次 | 文化五年 | 東海道、大阪、鳴門、高知、松山、高松、淡路島、大阪、吉野、伊勢 |
| 第七次 | 文化六年 | 中山道、岐阜、大津、山陽道、小倉、九州東海岸、鹿児島、天草、熊本、大分、小倉、萩、中国内陸部、名古屋、甲州街道 |
| 第八次 | 文化八年 | 甲府、小倉、鹿児島、屋久島、種子島、九州内陸部、長崎、壱岐、対馬、五島、中国内陸部、京都、高山、飯山、川越 |
| 第九次 | 文化一二年 | 東海道、三島、下田、八丈島、御蔵島、三宅島、神津島、新島、利島、大島、伊豆半島東岸、八王子、熊谷、江戸 |
| 第一〇次 | 文化一三年 | 江戸府内 |
発見された後、幾度となく蒐集が試みられた。しかし、土壌の発掘が非常に困難であったうえに、露出している勘解由梵天を回収した地点では崩落や土砂崩れ等が多発したため蒐集は中断された。
聴取ログSCP-TBD: LOG02
聴取日時: 1945/6/30 13:00
聴取場所: サイト-19 第2聴取室
聴取対象: 奇跡論部門 キャサリン・メイズ 博士(Thaumatology Department Dr. Catherine Mayes)
聴取担当: 奇跡論部門 ジェイムズ・アーヴィング 部門長(Thaumatology Department Dir. James Irving)
同席者: 無し
[記録開始]
[13:00、キャサリン博士が補佐官に連れられて入室する。ジェイムズ博士の指示で補佐官が退室する。]
キャサリン: 1週間振りくらいかしら、ジムJim。差し入れ助かったわ、ありがとう。おかげで退屈しないで済んだ。
ジェイムズ: それは良かった、忙事の合間を縫って届けた甲斐があるよ。それより、一昨日差し入れしたものは読んでくれたかい?
キャサリン: あの報告書でしょ?SCP-TBDだっけ、あれの内容って本当なの?
ジェイムズ: もちろん、君が8年前に書いたものとは違ってね。
キャサリン: 異常性に物品、それに伊能忠敬に関係していることまで一緒なんてね。本当にびっくりよ。それにしても、あの報告書を私なんかに見せて良かったの?部外者なのよ、私は。
ジェイムズ: 問題ないよ、君に見せられないところはちゃんと省略しているし。それに君には既に、SCP-TBD専用の特殊セキュリティクリアランスレベルSpecial-Security-Clearance-Levelを付与してある。私よりは1つ低いけどね、申請してくれればもう少し詳しい情報も参照できるよ。
キャサリン: どういうこと?
ジェイムズ: 私が他の担当者にかけあったんだよ。奇跡論のことに関しては私よりも君のほうが優秀だし、日本の歴史についても一定の知識がある。それに他の担当部門も、部門長以外の博士職にSSCLを付与して研究を進めているからね。だからSCP-TBDにはぴったりの人選だって説得したんだ。
キャサリン: でも私はこのアノマリーの──
ジェイムズ: 関係者じゃないさ。君とアノマリーとの関連性は無いと証明されたし、君が8年前に書いた報告書は既に破棄された。君はただの"優秀な奇跡論部門の博士"だ。実力も実績も充分だったから、それほど苦労はしなかったよ。というわけで忙しくなると思うけど、よろしく頼むよ。
キャサリン: ……そう、分かったわ。
ジェイムズ: 随分嬉しそうだね。
キャサリン: あら、そう見える?
ジェイムズ: 私が部門長になってから、君のそんなに嬉しそうな顔は初めて見たよ。
キャサリン: だって貴方、つまらない仕事しか寄越さないんだもの。
ジェイムズ: 楽しんでくれる仕事の基準が高すぎるんだよ、君は。というより、つい先月だってKeter級オブジェクトの研究を任せたばかりじゃないか。
キャサリン: あれは新しい知見が得られなかったのよ。ただただ危険で影響範囲も広くて、そして単純でつまらないオブジェクトだった。草木に囲まれた山小屋の中で「自分は人畜無害です」って面して紅茶を嗜んでるSafe級オブジェクトのほうがよっぽど面白みがあるわ。
ジェイムズ: できればそういうのは君より経験が浅い人に任せたいんだけどね。まあ良い、次からは気を付けるよ。
キャサリン: そうしてちょうだい。なんなら、研究は全部私に任せてくれても良いのよ?
ジェイムズ: 冗談言わないでくれ。君のお父さんみたいに仕事に殺されてしまうことになる。それに君、研究ばかりで報告書をまとめるのは二の次じゃないか。それを押し付けられるベンジャミンたちの身にもなってくれよ。
キャサリン: ふふっ、それもそうね。私も気を付けるわ。
ジェイムズ: それにしても、君は本当に新しいものが好きだね。
キャサリン: 当然でしょ。この世界は未知で溢れているんだもの。井戸の中の蛙は大海を知らないけれど、大海の鯨も井戸の中のことなんて分からない。でも世界を飛び回る鳥は、井戸の中を跳ねる蛙のことも海を泳ぐ鯨のことも知ってる。私はそんな鳥になりたいの。
ジェイムズ: 君にしては随分夢のあることを語るね。応援してるよ。──だいぶ話が逸れたね、このアノマリーの話に戻ろうか。君は追加で開示してほしい情報とかあるかい?
キャサリン: そうね……この"オペレーション・ダウンフォール"っていうのが気になるわ、どんな作戦なの?嫌な予感しかしないんだけど。まさか、財団以外の組織が立案した作戦、なんてことは無いわよね?
ジェイムズ: やっぱり君は察しが良いね。よし、じゃあ部門長室に行こうか。そこに"オペレーション・ダウンフォール"に関する書類がある。ここに持ってこれれば良かったんだけど、機密書類扱いだからね。
キャサリン: 分かったわ、行きましょう。全く、だったら最初から部門長室に連れて行ってくれれば良かったのに。
ジェイムズ: しょうがないだろ。身柄解放手続きは部門長室じゃできない、形式上必要なことなんだから。
キャサリン: そうね、形式上ね。私、そういうの嫌いだわ。
ジェイムズ: ふっ、知ってるよ。
[記録終了]
OPERATION DOWNFALL
"OPERATION DOWNFALL"の詳細を開示します。SCLを提示してください。
SCLを照合しています……
SCLの照合が完了しました。
提示資格
SSCL-4
────────────
開示制限
無し
OPERATION DOWNFALL
"オペレーション・ダウンフォールOPERATION DOWNFALL"は、アメリカ統合参謀本部によって1942年8月から協議がなされ1945年5月に正式に認可された日本国本土侵攻作戦である。本作戦は1945年11月1日実施予定の"オペレーション・オリンピックOPERATION OLYMPIC"と1946年3月1日実施予定の"オペレーション・コロネットOPERATION CORONET"にそれぞれ分かれている。
1943年4月、アメリカ統合参謀本部に日本本土侵攻が必要であるとする報告書が作成され、同年10月にはアメリカとイギリスの計画策定チームが1946年夏に北海道に進攻、続いて同年秋には東京を攻略すべきと提言した。同年11月に開催されたカイロ会談でも協議され、アーネスト・キング(合衆国艦隊司令長官)など、日本本土に進攻するのであれば九州を先に攻略した方が合理的であるという意見が主流を占めるようになった。1944年7月、ジョージ・マーシャル(アメリカ陸軍参謀総長)は日本本土侵攻を今後の戦争遂行における作戦の一つとして認可し、同年9月に開催された第2回ケベック会談では、ウィンストン・チャーチル(イギリス首相)が日本本土侵攻作戦を承認した。
1945年2月のヤルタ会談直前に、フランクリン・ルーズベルト(アメリカ大統領)とウィンストン・チャーチルがマルタ島で協議し、同年9月にヨーロッパの連合軍部隊の一部を太平洋に移動させると同時に九州侵攻を開始、1945年12月に本州に侵攻する予定表が提示された。そしてヤルタ会談ではフランクリン・ルーズベルトがヨシフ・スターリン(ソ連書記長)に、日本本土侵攻作戦の陽動としてソ連対日参戦を促して、「極東密約」が交わされた。3月29日には、これまでの連合軍内の一連の合意事項や戦況の推移も含める形で統合参謀長会議が「対日攻撃戦力最終計画」を作成し、日本本土侵攻作戦全体を"オペレーション・ダウンフォール"、九州侵攻作戦を"オペレーション・オリンピック"、関東侵攻作戦を"オペレーション・コロネット"と命名した。
1945年4月12日にフランクリン・ルーズベルトが脳卒中で突然死し、副大統領ハリー・S・トルーマンが大統領に昇格した後は再検討がなされた。1945年8月の実施が計画された、日本を空襲によって屈服させる"オペレーション・ロングトム"も考案されたが、最終的にはダグラス・マッカーサー元帥によって"オペレーション・ロングトム"は廃案、"オペレーション・ダウンフォール"が進められることになった。
オペレーション・オリンピック
OPERATION OLYMPIC
"オペレーション・オリンピック"は九州地方南部への上陸作戦であり、目的は関東上陸作戦である"オペレーション・コロネット"のための飛行場を含む拠点確保である。作戦予定日は「"X" DAY」と呼称され、1945年11月1日実行が予定されている。本作戦で重視すべきものは「航空戦力の撃滅」と「鉄道や道路などの交通インフラの破壊」の2点である。
"オペレーション・オリンピック"の主目的はあくまでも"オペレーション・コロネット"のための拠点確保であり、占領地域は南九州の約3,000平方マイルのみである。しかし、山地が多い南九州には大規模な飛行場を構築したり、大軍が侵攻できる土地は少ないと考えられるため、九州の詳細な地図や航空偵察写真を参照して、アメリカ軍の地理担当官によって条件に適した場所を4ヶ所見出され、その後、これらの候補地が実際に上陸や大軍の進軍地として使用できるのか調査した。
緻密な検討の後、上陸地点は以下の3海岸に決定し、それぞれにアメリカ南方陸軍第6軍の各軍団が上陸することとなった。
1. 吹上浜: 第5海兵上陸軍団98,914人が上陸予定。
2. 志布志湾: 第11軍団112,684人が上陸予定。
3. 宮崎海岸: 第1軍団93,266人が上陸予定。
まず「"X" DAY」の5日前に第40歩兵師団(英語版)が甑島列島に上陸する。これは、沖縄戦で沖縄本島上陸前に慶良間列島を確保したのと同じであり、主要上陸地点の近くにある島嶼を攻略し、そこにレーダーサイトと水上機基地及び損傷艦などが避難する緊急避難用の泊地として利用する。
「"X" DAY」に3か所から上陸する各軍団はまず海岸橋頭保を確保し、その後は第1軍団が内陸に向かって進軍し宮崎県佐土原町-本庄-高岡町-青井岳を結ぶラインを確保、第11軍団は鹿児島県曽於市-岩川町-高隈山地-鹿屋市を結ぶ線を確保、そして両軍は可能な限り早く宮崎県都城市での合流を目指す。第5海兵上陸軍団は鹿児島県に進軍する。そして、海上に待機している予備部隊の第9軍団の3個師団79,155人を、上陸開始後5日目で戦場に投入して日本軍守備隊を追撃させると共に、第11空挺師団が鹿児島県串良町、鹿屋市、笠野原台地の高台一帯に構築してある飛行場付近に空挺降下する。これらの目標地点を全て確保することで西海岸の川内から東海岸の都農を結ぶ線以南の南九州地区を日本本土から分断し、"オペレーション・コロネット"の拠点や日本全土へ侵攻するための航空基地として運用する。
オペレーション・コロネット
OPERATION CORONET
"オペレーション・コロネット"は関東地方への上陸作戦であり、"オペレーション・オリンピック"で得られた九州地方南部の航空基地を利用する。作戦予定日は「"Y" DAY」と呼称され、1946年3月1日実行が予定されている。上陸地点及び軍隊は以下の通りである。
1. 湘南海岸: 第8軍301,104人が上陸予定。
2. 九十九里浜: 第1軍241,326人が上陸予定。
上陸に先立って、180日にも及ぶ艦砲射撃と空爆が海岸の防御陣地に叩き込まれ、森林に潜む陣地は枯葉剤を散布したのちに爆撃を加える。艦砲射撃を加える艦船は、"オペレーション・オリンピック"の艦艇数を更に上回る規模で、空爆はこれまで日本本土爆撃を行ってきた太平洋戦略空軍指揮下の第20空軍「B-29」1,000機以上に加えて、第8空軍も「B-17 フライングフォートレス」を「B-29」に機種転換して加わり、さらに極東空軍の「B-24 リベレーター」と新型機「B-32 ドミネーター」も加わる。他にもアメリカ海軍とイギリス海軍の艦載機に海兵隊の航空隊も加わり、その総数は6,000機以上で、投下される爆弾は1945年9月~12月までが10万トン、1946年1月~2月が17万トン、そして上陸予定の3月には22万トンと1年も経過しない間に、第二次世界大戦中に連合軍がドイツ本土に投下した爆弾の総量を上回る量の爆弾の投下が予定されている。
上陸部隊は、東京湾を真ん中に挟んで東の九十九里浜と西の相模湾から東京を目指して進撃、相模湾から上陸した部隊の一部がそのまま北上し、日本軍の増援を食い止めている間に東西から東京へ侵攻する。
会議ログSCP-TBD: LOG04
"会議ログSCP-TBD: LOG04"の詳細を開示します。SCLを提示してください。
SCLを照合しています……
SCLの照合が完了しました。
提示資格
SSCL-4
────────────
開示制限
無し
会議日時: 1945/7/2 15:00
聴取場所: サイト-2 第1会議室
会議参加者:
- プロジェクト管理官 リビングストン・シックネス 管理官(Dir. Livingstone Thicknesse)
- 奇跡論部門 キャサリン・メイズ 博士(Thaumatology Department Dr. Catherine Mayes)
- 解体部門 マリアン・パスコー 博士(Decommissioning Department Dr. Marianne Pascoe)
- 工学部門 トビー・マーウィン 博士(Engineering Department Dr. Toby Merwin)
- アメリカ統合参謀本部 バイロン・シャノン 議長補佐(Joint Chiefs of Staff Byron Shannon Deputy Chairman)
[記録開始]
リビングストン: 皆さん、本日はお集まりいただきありがとうございます。早速ですが議題に移るとしましょう。"オペレーション・ダウンフォール"の資料には目を通してきたことと思います。今回の議題はこの"オペレーション・ダウンフォール"を遂行するにあたって障壁となるSCP-TBDの対処についてです。
バイロン: 現状、島国である日本を陥落するには沿岸から侵攻する他ありません。空路から侵攻するには充分な戦力を投入することはできませんし、空爆を続けるだけでは恐らく日本が降伏することはないでしょう。しかしSCP-TBDがある限り、沿岸部での戦闘において日本軍は鉄壁と言えるほどの防衛力を保持しています。"オペレーション・オリンピック"を成功させることができれば九州地方に"オペレーション・コロネット"のための拠点や航空基地を設立することができるため、皆さんには最低でも九州地方のSCP-TBDを対処していただきたいのです。
リビングストン: ええ、ではまず奇跡論部門のキャサリン博士から意見を述べていただきたいと思います。
キャサリン: SCP-TBD-Aに描かれている奇跡論文様図形は、今まで私たち奇跡論部門でも扱ったことのない種類のもので、日本国内で独自に伝わっているものであると推察できます。しかも複数の紋様図形が組み合わされているためすぐに解析することは困難。時間をいただければこれを解析、無力化することは可能でしょうけど、"オペレーション・オリンピック"実行に間に合わせることは難しいです。しかもこれは西日本地域作戦統括臨時施設から送られてきた情報のみから導いた結論で、解析した結果を100%活かせる保証もありません。
リビングストン: ありがとうございました。次に解体部門のマリアン博士、お願いします。
マリアン: はい。SCP-TBDとそれ以外の地域の空爆による被害を比較し、更にSCP-TBD-Aの耐破壊性に関する情報を総合し議論しましたが、空爆によりSCP-TBD-A全個体を地表に露出させ無力化するには膨大な費用と労力がかかるため難しく、SCP-TBD-A自体を完全に解体することは不可能に近いです。また、周囲の土壌はSCP-TBD-Aよりも耐破壊性が脆弱ですので、少しでも調整を間違えれば日本国土そのものを破壊しかねません。奇跡論部門と協力すれば調整しつつ解体することも可能でしょうが、やはり時間がかかります。
リビングストン: 協力すればどのくらいの期間で無力化できますか。
キャサリン: 奇跡論部門のみであれば解析が終わるまで1年以上、協力しても半年はかかるかと。
マリアン: 解析が終わってもその後解体するための作戦を立案し実行するための期間が必要ですから、今年中は難しいでしょうね。
リビングストン: そうですか、分かりました。両部門は引き続き解析をよろしくお願いします。次に工学部門のトビー博士、SCP‐TBDを無力化するための兵器を開発することはできますか。
トビー: 無理です。理由は主に2つ。1つ目は資金不足です。現在、戦争のために国に対する補助金の申請が許諾されにくくなっています。アメリカ統合参謀本部の方が直接出向いてくるほど重要な作戦ですからいくらかは補助金をいただけるかもしれませんが、それもごく一部でしょう。兵站など疎かにできないものが多いですから。そして2つ目はヴェール崩壊の危険性です。先ほどマリアン博士が述べた通り、日本国土への影響は計り知れないものになる可能性が高く、恐らく財団の事後処理では覆い隠せないほどの被害が出ます。しかもそれが世界各国に知れ渡れば今以上の戦争に繋がる可能性すらある。IK-クラスやLV-クラスの世界終焉シナリオを我々が起こすことになってしまいます。開発するとしても超常技術を用いるべきではないでしょう。
リビングストン: 工学部門も厳しいですか……
マリアン: やはり、空路もしくは空襲によって内部から侵攻するのが最善かと思います。
バイロン: 確かに、費用、被害規模、そしてアメリカ軍犠牲者の予想を考えても、沿岸からの侵攻より悪くないのは間違いありません。しかしそれは、先ほども申し上げた通り──
キャサリン: それは理解していますが、沿岸よりも内陸の方が侵攻しやすいのは事実です。というのもSCP-TBD-Aを埋没した伊能忠敬は、河川の形状を測量した以外は内陸の測量をほとんど行っていません。これは即ち、SCP-TBD-Aを内陸に埋没していないことを示しています。沿岸から侵攻するよりもはるかに容易でしょう。
トビー: そもそもの話ですが、私たち工学部門はSCP-TBD-Aを無力化することには反対です。財団の理念「確保、収容、保護」に反するということもありますが、なにより無力化したあとの影響が未知数です。日本の超常管理機関である蒐集院の資料には「"勘解由梵天"を回収した地点で土砂崩れ等が多発した」とあります。これが事実であれば、SCP-TBDの無力化によって九州地方全域が崩壊する危険性があります。そうなれば"オペレーション・ダウンフォール"の実行は中止、私たちの努力が水の泡になりかねません。もし自然現象で崩壊することはなくとも、私たちが開発した兵器そして戦争の余波によって崩壊に繋がるでしょう。
バイロン: となると方法は2つ。1つは皆さんのおっしゃる通り、空路や空爆で内陸から侵攻する。そしてもう1つは、無理矢理強行突破する。
リビングストン: それは日本の戦い方でしょう。賢明な判断とは言えません。それに、ほぼ確実に押し負けます。
バイロン: でしょうな、それはもちろん分かっています。[溜息]しかし、オペレーション・アイスバーグのように順調に事が進むと思っていたのに、まさかこんな面倒なことになるとは……
キャサリン: 伊能忠敬は沖縄の測量を行っておらず、SCP-TBDが埋没していないためオペレーション・アイスバーグは成功したのでしょう。同じようにSCP-TBDが埋没していない地点を見つければそこから攻め入ることは可能かもしれませんが、それを確認するためには沿岸部全域を空爆してみる必要があります。費用に見合った恩恵は見込めないかと。
バイロン: なるほど。いずれにせよ、この作戦を成功させるにはある程度腹を括る必要がありそうですね。一旦、今回出た意見を本部に持ち帰ってよろしいですか?こちらの決定は、また後日ということで。
リビングストン: ええ、構いません。この件は慎重に決めていかなければなりませんからね。それでは、本日の会議はこれで終了とします。皆さん、お疲れ様でした。
[記録終了]
会議ログSCP-TBD: LOG05~08
"会議ログSCP-TBD: LOG05~08"の詳細を開示します。SCLを提示してください。
SCLを照合しています……
SCLの照合が完了しました。
提示資格
SSCL-4
────────────
開示制限
有り[議題を除く]
────────────
必要資格
SSCL-5
議題
"オペレーション・ダウンフォール"遂行について
会議ログSCP-TBD: LOG09
"会議ログSCP-TBD: LOG09"の詳細を開示します。SCLを提示してください。
SCLを照合しています……
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提示資格
SSCL-4
────────────
開示制限
有り[議題を除く]
────────────
必要資格
SSCL-5
議題
"マンハッタン・プロジェクトMANHATTAN PROJECT"及びトリニティ・テストTRINITY TEST"実施による影響について
会議ログSCP-TBD: LOG10
"会議ログSCP-TBD: LOG10"の詳細を開示します。SCLを提示してください。
SCLを照合しています……
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提示資格
SSCL-4
────────────
開示制限
有り[議題を除く]
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必要資格
SSCL-5
議題
原子力爆弾の使用について
オペレーション・ポツダムOPERATION POTSDAMの実行について
SCP-TBDのナンバリングについて
OPERATION POTSDAM
"OPERATION POTSDAM"の詳細を開示します。SCLを提示してください。
SCLを照合しています……
SCLの照合が完了しました。
提示資格
SSCL-4
────────────
開示制限
無し
オペレーション・ポツダムOPERATION POTSDAMは、SCP-TBDの解析及び収容、第二次世界大戦の終戦、そして財団日本支部の設立を目的として立案、認可された日本国本土侵攻作戦である。本作戦は"オペレーション・ダウンフォール"に加えて原子爆弾を投下し、その間にSCP-TBDを解析することを目標としている。なお、日本が降伏した時点で本作戦は終了とする。
- 一度目の原子爆弾投下。 1945/8/6、実行。
- 二度目の原子爆弾投下。 1945/8/9、実行。
- 三度目の原子爆弾投下。 1945/8/13、実行。
- 四度目以降の原子爆弾投下。
- SCP-TBD及びSCP-TBD-Aの解析及び無効化。
- "オペレーション・オリンピック"の実行。
- "オペレーション・コロネット"の実行。
- 日本の降伏。 1945/8/14、ポツダム宣言受諾。1945/9/2、降伏文書調印・即時発効をもって第二次世界大戦終結。
- 財団日本支部の設立。 1945/12/31、財団81管区設立宣言。
原子爆弾投下
原子力爆弾投下地点については1945年4月27日の第1回目標選定委員会から議論されており、その際には主に以下の地点が候補地として選出されていた。
TRINITY TEST
- 東京都内
- 神奈川県横浜市
- 新潟県新潟市
- 愛知県名古屋市
- 大阪府大阪市
- 京都府京都市
- 京都府八幡市
- 兵庫県神戸市
- 福岡県小倉市
その後5月10日、11日の第2回目標選定委員会、5月28日の第3回目標選定委員会を経て、京都市、広島市、新潟市に投下することが決定され、原爆の効果を正確に測定するためこれらの目標地点には空爆を行うことが禁止された。6月14日には終戦後の日本との交流への影響を危惧し京都市が除外され目標が新潟市、広島市、小倉市に変更されるも、7月3日には再び京都市が候補地に選出された。
原子力爆弾の投下は当初オペレーション・オリンピックに含まれていなかったが、7月16日、トリニティ・テストが秘密裏に実施され成功したため、これを含めてオペレーション・ポツダムが考案された。7月24日には上記の目標地点に長崎市が追加された。
会議ログSCP-TBD: LOG11
"会議ログSCP-TBD: LOG11"の詳細を開示します。SCLを提示してください。
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提示資格
SSCL-4
────────────
開示制限
無し
会議日時: 1945/8/12 15:00
聴取場所: サイト-2 第1会議室
会議参加者:
- プロジェクト管理官 リビングストン・シックネス 管理官(Dir. Livingstone Thicknesse)
- 奇跡論部門 ジェイムズ・アーヴィング 部門長(Thaumatology Department Dir. James Irving)
- 奇跡論部門 キャサリン・メイズ 博士(Thaumatology Department Dr. Catherine Mayes)
- 解体部門 ジーニー・ファーナビー 部門長(Decommissioning Department Dir. Jeannie Farnaby)
- 解体部門 マリアン・パスコー 博士(Decommissioning Department Dr. Marianne Pascoe)
[記録開始]
リビングストン: 皆さん、本日はお集まりいただきありがとうございます。今回の議題は、SCP-TBDの解析の経過確認です。解析は、奇跡論部門と解体部門に4回目の会議でお願いしていましたね。その後どうですか。
ジーニー: 現状手元にある資料のうち4割程度、といったところでしょうか。これでも想定より早い進捗だと思いますが、やはり時間がかかりますね。実物があればより解析が早く進むと思いますが……
ジェイムズ: 日本への影響がある可能性を考えると、あまり自国に持ち込みたくはないですね。地道に進めていくしかありません。
リビングストン: 無力化の手がかりについては見つかりましたか。
キャサリン: 全く。むしろ悪い報せがあります。組み込まれた奇跡論的紋様図形の中に、SCP-TBD-Aによって囲まれた範囲内に耐破壊性を付与する効果のある図形がありました。
リビングストン: その図形は日本国内で独自に伝わっているものなのでしょう。そう断定できる理由は?
五芒星
キャサリン: 図形には五芒星が用いられていますが、これの起源はメソポタミアの書物だとされています。五芒星は西洋魔術や錬金術へ用いられていくことになりますが、その過程で中国にも流通し陰陽五行説へと進化、その後日本にも伝わり陰陽道へ発展していくことになります。その観点から他の奇跡論関連アノマリーの研究結果も合わせて検証を行った結果、多少変容はしているものの他の奇跡論に共通点が見られたのです。そのため、この解析結果はほぼ間違いないと断言できます。
ジェイムズ: 図形の検証実験も行いましたが、解析結果と相違ない結果が得られました。詳細は配布した資料の32ページに記載しています。
リビングストン: なるほど。耐破壊性の程度はどれほどでしょうか。
ジーニー: 最低でもレベルⅡ、つまりSCP-TBDと同程度と推測できますが、他にも耐破壊性強度を高める図形も確認されていますから、レベルⅢ以上の可能性があります。これは空爆程度の火力には耐性があるものの、原子力爆弾で破壊できるレベルの耐破壊性です。
マリアン: オペレーション・ポツダムの遂行自体には影響はないでしょうが、最大の懸念点は原子力爆弾投下によって日本が降伏せず、オペレーション・ダウンフォールを実行する必要性が出てきた場合です。もし九州地方や関東地方にレベルⅢ耐破壊性が付与されていたら、計画の実行に支障が出ます。
リビングストン: しかし、空襲の効果が薄い地域は現在まで確認されていないはずです。
キャサリン: ええ、伊能忠敬はSCP-TBD-Aを日本全体が囲まれるように埋没したと記録にありますが、レベルⅢ耐破壊性地域は確認されていません。これは仮説ですが、埋没していない箇所があるか、もしくは図形に何かしらの不備があり異常性が発現していないのだと思います。この2つのうち、私たちは前者であると推察しています。異常性の再現には成功していますから、不備があるとは考えにくいです。埋没できていない箇所があるか、地表に露出したことでSCP-TBD-A同士の距離に間隔が空き異常性が発揮されていない可能性が高いです。
リビングストン: しかし、その空きを見つけるには莫大な労力が必要となりますね。
キャサリン: そうですね。それにまだ半分以上も解析が進んでいません。自国への持ち込みもできない以上、やはり現地での研究が必要です。現状では厳しいですが。
リビングストン: そうとも言い切れません。10日、日本からポツダム宣言を受諾するという旨の電文を受け取りました。しかしこれは条件付きのものであったため、アメリカ政府が11日にその回答を打電し、現在は日本側からの回答待ちです。もしこのまま上手く行けば、オペレーション・ダウンフォールを実行することなく終戦し、財団日本支部の設立もできます。そうなれば、SCP-TBDについて現地で解析を進めることが可能になるでしょう。
マリアン: 終戦したのなら、SCP-TBDの解析を急ぐ必要はないのでは?
リビングストン: ええ、勿論。しかし、解析するなら早いほうが良い。終戦した後も何が起こるかは予想できませんから。
マリアン: なるほど。
ジェイムズ: リビングストン管理官、担当者についてはどうしますか。
リビングストン: そうですね、それも今話し合いましょうか。先日、財団日本支部の設立が実現した際には日本に関連するいくつかのアノマリーの研究を分譲することが評議会で正式に決定されました。その際、担当者も日本支部に異動してもらうことになるのですが、このSCP-TBDの担当者をキャサリン博士とマリアン博士に担っていただきたいのです。部門長の2人を異動させるわけにはいきませんから。
マリアン: 私たち2人だけですか?例えば、前の会議で出席していた工学部門のトビー博士は?
リビングストン: 工学部門については、部門長から辞退の申請がありました。そもそも工学部門はSCP-TBDの無力化だけを目的としていましたから、研究の継続に助力できることはない、とのことです。ただ代わりに、地質学部門や歴史学部門など他の部門からも担当者を選出するので安心してください。
キャサリン: その話、喜んでお受けいたします。良いわよね、ジム?
ジェイムズ: もちろん。君みたいな優秀な人員を手放すのは惜しいけど、1人抜けたくらいで機能しなくなるほど脆弱な部門でもないからね。
ジーニー: 貴女も行って良いのよ、ドクター・マリアン。解体が目的ではなくなったけど、解析の手助けにはなるでしょう。
マリアン: では、私も。終戦したとしてもまだ情勢は不安定ですから、解体を要する事態になるかもしれませんし。
リビングストン: 決まりですね。それでは、キャサリン博士をマリアン博士を担当者及び研究最高責任者として、SSCL-5を付与する手続きを進めます。また、お二方の代わりにSSCL-4を付与する研究員を後ほどで良いので推薦していただけるようお願いします。
マリアン: 分かりました。そう言えば、アイテム番号はどうなるのでしょうか。SCP-TBDのままというわけではないでしょう?
リビングストン: それに関しては次回の会議で正式に決定されることではありますが、SCP-001-JPにナンバリングされる予定です。以前から日本で存在が確認されていたオブジェクトはいくつかありますが、SCP-TBDは日本支部設立の議論に最初から紐づけられている唯一のオブジェクトです。また、日本支部の維持に必要な日本国土を安定化させるために欠かせないオブジェクトでもある。逆に、もし仮に日本国土を維持させることに不都合があれば、オブジェクトを無力化すれば良いですし。
キャサリン: ずいぶん恐ろしいことをおっしゃるんですね。
リビングストン: 仮の話ですよ。ともかく、現段階でSCP-001-JP報告書として相応しいオブジェクトは他にありません。前回の会議で代案も反対意見も出なかったので、ほぼ決まりだと考えていただいて構いません。
マリアン: 分かりました、ありがとうございます。
リビングストン: 他に質問は?それでは、本日の会議を終わります。皆さん、お疲れ様でした。
[記録終了]
会議ログSCP-TBD: LOG12
"会議ログSCP-TBD: LOG12"の詳細を開示します。SCLを提示してください。
SCLを照合しています……
SCLの照合が完了しました。
提示資格
SSCL-4
────────────
開示制限
有り[議題を除く]
────────────
必要資格
SSCL-5
議題
SCP-TBDのナンバリング及び担当者の整理について
財団記録・情報保安管理局より通達
1945/12/31、SCP-TBDはSCP-001-JPにナンバリングされました。
— RAISA管理官、マリア・ジョーンズ
SCP-001-JP影響範囲
(青: レベルⅡ耐破壊性 黄: レベルⅢ耐破壊性 橙: SCP-001-JP-A)
特別収容プロトコル: SCP-001-JPの異常性及び"プロトコル・バビロン"の維持は、全ての財団日本支部で分割して行われています。SCP-001-JPが地表に露出した場合はただちに埋没し、消失や無力化した場合は奇跡論部門に申請し新たなSCP-001-JP-αを埋没してください。
"プロトコル・アトランティス"の実行が指示された場合、SCP-001-JP-βを保持しているサイトは直ちにそれを始動してください。
説明: SCP-001-JPは海岸線から500m~1km付近に等間隔で埋没している0.1m×1.0mの白布です。SCP-001-JPには陰陽寮による陰陽道占術論紋様図形が描かれており、それによりSCP-001-JP自体がレベルⅣ耐破壊性を有しています。このため、度重なる空爆及びそれに起因する火災に見舞われてもSCP-001-JPは残存していましたが、周囲のSCP-001-JPの耐性は微弱であるため崩壊し、露出している個体が多く発見されました。
SCP-001-JPが埋没している場合、そこを中心として半径500mまでレベルⅡ耐破壊性が付与されます。レベルⅡ耐破壊性地域は自然的要因や空爆に対して微弱な耐性を有しています。この耐性は影響範囲上に存在する人工物、植物、生物にも適用されています。
また、SCP-001-JPによって囲まれた地域にはレベルⅢ耐破壊性が付与されます。レベルⅢ耐破壊性地域は自然的要因や空爆に対して完全な耐性を有していますが、原子力爆弾などの高威力の兵器等には耐性を持ちません。なお、現在までレベルⅢ耐破壊性地域は確認されていないため、SCP-001-JPが埋没していない地点があると推測できますが、その捜索は難航しています。
SCP-001-JPは1944年6月16日から行われている空爆において、内陸部に比べて沿岸部の国土被害が少ないことから財団に捕捉されました。その後、1945年5月に設立されたSCP財団西日本地域作戦統括臨時施設所属の諜報員によってレベルⅡ耐破壊性地域の詳細な調査が行われ、結果として日本国の沿岸部でSCP-001-JPが発見されました。
1945年12月31日、財団日本支部及び81管区が設立されたことにより、奇跡論部門、解体部門、地質学部門によりSCP-001-JP-Aの解析・研究が進められました。結果として蒐集院の情報通り、SCP-001-JP-Aを回収した地点は耐破壊性が極端に低くなることにより容易に崩壊することが判明しました。これにより、既にSCP-001-JPが露出・消失している地点から日本国土が崩壊する危険性がありました。しかし、奇跡論部門がSCP-001-JP-Aに刻まれた奇跡論紋様図形の解析・複製に成功したことにより、これをSCP-001-JPの効力を失っている地点に埋没することで日本国土の維持を継続しています。この複製品は現在SCP-001-JP-αに分類されています。
また奇跡論部門のキャサリン・メイズ博士、解体部門のマリアン・パスコー博士両名により、"プロトコル・バビロン"及び"プロトコル・アトランティス"が提言されました。
プロトコル・バビロン: "プロトコル・バビロン"は主に奇跡論部門が主導となって行われる日本国土維持規定で、セキュリティ施設の敷地及び周囲にSCP-001-JP-αを埋没することで施設の崩壊を防ぎます。この提言はSCP-001-JP-αの大量複製が難しく全施設に埋没するために資金・時間ともに膨大なものになるものと思われるため一部保留されていますが、特に危険なオブジェクトの収容や重要な研究を行っている8つの施設に限り試験的にSCP-001-JP-αが埋没されています。
プロトコル・アトランティス: "プロトコル・アトランティス"は主に解体部門が主導となって行われる日本国土解体規定で、セキュリティ施設にSCP-001-JP-βを配置し、これを起動させることでSCP-001-JP及びSCP-001-JP-αを無力化もしくは相殺します。"プロトコル・アトランティス"は日本国土を維持することで不利益が生じる場合でのみ始動が命じられます。SCP-001-JP-βは奇跡論部門、解体部門の両部門によって開発中で、1948年4月に完成予定です。完成していない現時点では、日本政府に対する抑止力としてのみ機能しています。
SCP-001-JP報告書の閲覧を終了しますか?
| YES | NO |
閲覧を終了します……
SCiPNET接続を切断しています……
脳波: 正常
脈拍: 正常
精神状態: 正常
SSCL-4
切断許可: 承認
お疲れ様でした、ベンジャミン・ケラー上級研究員
キャサリン: 報告書読み終わった?
ベンジャミン: ええ。まさかあの時Anomalousアイテムの報告書を書かされまくったのにはこんな理由があったなんて。
キャサリン: 最初の感想がそれ?呆れた……でも、そういうところが貴方を担当者の一人に推薦した理由なんだけど。
ベンジャミン: どういう意味ですか。
キャサリン: 私と同じ人種だったら推薦しなかったってことよ。
ベンジャミン: ああ、なるほど。それで、僕の業務はなんですか?埋没申請の認可を出すのはキャサリン博士ですよね。
キャサリン: ええ、だから貴方には、私の指示で埋没許可証明書を発行して、それを管理してほしいの。申請認可と報告書の管理とSCP-001-JPの研究は主に私がするわ。
ベンジャミン: 報告書の管理も?博士にできるんですか?
キャサリン: したくないけど仕方ないでしょ?貴方じゃSSCLが足りない箇所が多いんだもの。私の処遇を決める会議ログも管理しなきゃならないんだからね、こっちは。
ベンジャミン: それは……ご愁傷様ですね。
キャサリン: それも、このSCP-001-JP報告書が本物だったら、の話だけどね。偽者ならクソみたいな会議ログも魅力的なオブジェクトも全部嘘ってことになるわね。
ベンジャミン: ちょっと待ってください、だとしたらあのAnomalousアイテムの報告書は──
キャサリン: あら、通信だわ。ちょっと待ってね。
ベンジャミン: はあ、全く……
キャサリン: はい、キャサリン・メイズです。……はい……分かりました、座標は東経138.631777、北緯35.465860ですね、直ちに研究に移ります。では、失礼します。
ベンジャミン: 新しいアノマリーですか?
キャサリン: そうよ。「富士山の麓、青木ヶ原樹海にある小屋の中で奇跡論的紋様図形を描きながら点茶する蛙顔の人型オブジェクト」ですって。ふふっ、蛙顔、ね。
ベンジャミン: 点茶……ってなんですか?
キャサリン: 勉強不足ねベンジャミン。まあ良いわ、道すがら教えるから。さあ、そうと決まればさっさと出発準備をしましょう。ベンジャミンは車を出してきて。
ベンジャミン: 分かりました。──なんだか楽しそうですね、博士。
キャサリン: ええ楽しいわ。だってこの世界には、小説よりも奇妙なもので溢れているんだから。










