箱の中の猫
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アランはよろめき躓きながら戸口をくぐり、側面からロビーに倒れ込んだ。

「くそっ! 背中が!」

背後でドアが閉まり、覗いていた暗い光は何であれたちまち消えた。アランの乱れた呼吸は、肺が家屋の中の息苦しい塵を吸い込んだことで妨げられた。すべてのものは、半インチもある柔らかな灰色の埃に覆われていた。灰ほど粗くなく小麦粉ほど細かくなく、その中間のどこかだ。おまけに空気は古いタッパー容器のような臭いがした。

「なんだこの場所は?」アランは痛む左の脇腹をさすりつつ、コート掛けを掴んで立ちあがった。最初に試したのは壁の明かりのスイッチだったが、もちろん点かなかった。アランにとっては全く驚きではなかった。しかし、頭の奥の方でなにかがやかましく騒いでいた。「ちょっと待て」

«D-3454、聞こえるか?»

今度は飛びあがらなかった。彼はこれを知っていた。戻ってきたのだ、今度は記憶しているという点を除けば。彼は雑音混じりの声に返答した。

「アラン?」

«……» 長い、考え込んだ休止のあと、ついにもう1人のアランから返答があった。«誰だお前は?»

「俺だよ。ただ今回は……覚えてる。全部覚えてる」アランは己の腕を見下ろし、カシオ風の非常に地味な、ボタンのない腕時計に気付いた。それは時刻を示す代わりに、ストップウォッチモードで作動していた。ここまでのところ22秒しか記録されていない。丁度前と同じだった。

«どういう意味だよ?»

アランは無線機の横に取り付けられた、小ぶりなキーチェーンサイズの懐中電灯を手で探った。かちりという音とともに、明るいLEDライトがロビビーとその先の短い廊下を照らし出した。あたかもそこに置かれたばかりのように、小さなエンドテーブルに積もった埃の層の上に、ハンドガンが無為に横たわっているのが見えた。

«もしもし?»

「ああ、まだ聞いてるぜ。全部説明できんが、分かったと思う」

«計画はどうするんだ?»

アランは銃の方へ歩いた。「計画なんてねえよ」

銃を取る。 (1.1)




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