今日の話をしよう。後悔と懐旧の昨日ではなく。
今日の話をしよう。憂慮と嘱望の明日ではなく。
ただ、今、君と、今日の話をしよう。
— 名もなき職員
概要
最初に: SCP-2000が世界を再構築し、SCP-444-JPが認識の中から実世界へ舞い戻り、SCP-910-JPがオブジェクトを際限なく出現させ、外宇宙からSCP-1690-JPが迫る。強力なオブジェクトは非常に魅力的ですが、ではこれらが同時に存在する世界で、一体財団は何をどのように対処すれば良いのか?世界を終わらせるファクターが幾つもある世界で、人は本当に組織の為に忠誠を尽くすことが出来るのか?
このカノンにおいては、世界が終わるような事件やオブジェクトは数える程しか存在せず、そしてその全てを財団は上手く切り抜けて来ました。職員の死亡率は一般的なカノンと比べて非常に低く、そして高い給料と福利厚生の為、財団職員は望んでこの組織で働いています。ベールは決して捲られず、相当突発的な事件が無い限り十分世界を異常から守ったままに出来る、持続可能な世界がカノンの舞台となります。異常の規模が小さく、それ故に財団職員の希望が大きくなった世界がこのカノンなのです。
基本設定: このカノンは、財団職員の生活や仕事等の日常を描くミクロな物語群です。「確保・収容・保護」の言葉は今日まで正確に守られ、またそれを侵すようなオブジェクトも財団は上手く収容しきりました。世界の運命を左右するような大きな話もたまにはありますが、その傍らで財団職員は生活し、少し秘密の多い仕事をし、飲みに行ったり、子供の誕生日を祝ったり、上司の愚痴を言ったりしています。また、財団を支える多くの凡人が希望を持って財団で働けるようにするため、比較的安全な世界で、ホワイトな財団組織が平和裏に運営されています。Dクラスですら大切に扱われ、任期満了後も財団の安全な職種で働く道が開かれています。
職員達は概ね幸せに生き、幸せに退職していきます。しかしそれでも、年次報告書の訃報欄がゼロになることは稀でしょう。
出来事: 嘆きの水曜日事件を除いて、大きな事件は起こりませんでした。しかしその悲劇は多くの職員の胸に傷跡を残しているでしょう。
財団組織
職場環境と採用状況: 多数の異常に対応するため、財団は多数の人員を必要としました。一握りの使命感を持ったエリートではなく、お金と人生、やりがいと人間関係を重視する一般人を多く採用する必要がありました。彼らは概ね幸福か、幸福になるため、自分のために働いています。この世界の財団は、秘密厳守の特殊な仕事内容であっても彼らが幸せに暮らせるよう、給料や福利厚生、その他のサポートに気を使っており、非常にホワイトな職場を提供しています。
組織形態: 各地で見つかるオブジェクトに備え、財団は日本において主要な地方に収容棟を備えたサイトを作成し維持しています。サイト内や周辺の広範囲にエージェントの業務を補佐するサテライトオフィスが存在し、更にその周囲にエージェントの勤務先となるエリアオフィスが存在します。異常の研究は基本的に各サイトで行っており、サイト管理官がその地方の財団の長となります。
施設: 嘆きの水曜日事件で大きな被害を受けたサイト-81KA、そしてその併設施設である千葉国際科学大学が存在しています。その他の施設も上記の設定を無理なくクリアできるならこのカノンでも存在しているでしょう。
周辺組織: 財団業務を遂行するにあたって必要な「異常に関わらない業務」について、財団はフロント企業にその業務を任せています。サイトの掃除や食堂の運営、事務机の搬入等は、フロント企業の一部チームが専門で対応しています。彼らは財団職員の家族や関係者であることが多く、秘密厳守と引き換えに単純作業であっても良い給料をもらっています。更生の見込みがあるDクラスは、任期満了後にフロント企業等で働ける道が開かれています。
財団の仕事: この世界で見つかるオブジェクトは大半がAnomalousアイテムです。Keterクラスオブジェクトはほとんど発見されず、Euclid以上のオブジェクトに触れずに退職するエージェントも少なくありません。Safeクラスオブジェクトに1人で対応出来れば一人前と言えるでしょう。一般的なカノンで知られているKeterクラスオブジェクトがこの世界でどうなっているのかは、異常存在の項目をご確認下さい。
異常存在
Keterクラスの扱い: 明日にも滅ぶ世界では、財団職員は通常の精神状態で生活出来ません。このカノンではKeterクラスのオブジェクトはほとんど存在しておらず、世界は切羽詰まった状況ではありません。それ単体で世界を終わらせられるオブジェクト(例えばSCP-2700やSCP-2935)や規模の大きいオブジェクト(宇宙や時間を巻き込むようなオブジェクト)、ましてやApollyonやAinのようなオブジェクトクラスのオブジェクトは、この世界に存在しません。ただし、対応困難なオブジェクト(SCP-682やSCP-076等)はそのスペックを若干落とした上で、未だに数少ないKeterとして存在し続けているでしょう。そして幾つかの他のカノンでKeterクラスのオブジェクトは弱体化され、Euclid以下のオブジェクトとして存在しているかもしれません。(SCP-910-JP等)
異常な職員: この世界では、異常過ぎる職員は存在し辛いです。一般人が多く働くこの世界の財団において、異形の存在はとても目立つでしょうし、異常な能力を持った職員はオブジェクトとして収容されている事が多いでしょう。ただし、秘匿可能な異常性であり、外見に影響が無い職員についてはその限りではありません。この世界の財団組織においては、異常性を持つ職員は異常の性質によって、以下のように分類され、管理されています。
- 危険・制御不可能
危険性がありコントロール不可能な異常性を保持する職員が該当します。このタイプの職員はほとんどが収容されています。忠誠度テストで問題無いと判断された場合、通常の人型オブジェクトと同様の収容状態を維持しながら限定的な職務に就くことが可能です。
- 危険・制御可能
危険性があるがコントロール可能な異常性を保持する職員が該当します。このタイプの職員は収容されますが、忠誠度テストで問題無いと判断された場合、かつ高い能力を持っている場合に、一般から隔離された施設内での自由行動、労働が認められます。
- 安全・制御不可能(秘匿不可能)
コントロール不可能なAnomalousクラスレベルの異常性を保持する職員、または外見上に秘匿不可能な大きな異常が存在する職員が該当します。このタイプの職員は一般から隔離された施設内での自由行動・労働が認められています。
- 安全・制御可能(秘匿可能)
コントロール可能でAnomalousクラスレベルの異常性を保持する職員、または外見上に秘匿可能な小さな異常が存在する職員が該当します。このタイプの職員は一般から隔離された施設内での自由行動・労働が認められています。忠誠度テストで問題無いと判断された場合は、財団組織での労働を条件に、一般社会での生活・労働が認められます。
- 番外(カノン不一致)
本項の「Keterクラスの扱い」において存在できないレベルの異常性を保持する職員は、このカノンでは存在していない物として扱います(例えば、申し訳ありません。濃霧院博士等はこのカノンに登場するのは限りなく難しくなるでしょう)。ただし異常性の弱体化が可能であれば、その限りではありません。
要注意団体: 要注意団体も他のオブジェクトと同様に、大きすぎる力は持たずに多くは弱体化しているでしょう。ただし石榴倶楽部や如月工務店等、世界に関わる大きな異常を生み出さないような要注意団体はこのカノンでも活発に活動している可能性があります。財団は主要な要注意団体、GOCのような目的の近い団体と外交チャネルを維持しており、他のカノンに比べて協力体制を取りやすい状態にあるでしょう。
人々
人事採用: 財団は業務を半永久的に持続させる為、多数の人員を必要としています。一握りのエリートだけを採用する訳にはいかず、財団は常に人手不足です。このカノンでは財団職員個人にスポットライトを当てるため、彼らがどのようにして採用されるのかを以下のように大まかに設定しています。経歴を考える際にお役立て下さい。
- 財団職員の家族、親族
最も多くの職員は、自身の家族や親族の一人が財団に就職した際に財団からの説明を受け、一緒に財団組織で働くことを決めています。家族ぐるみで財団職員という事例はなんら珍しい事ではありません。何故なら財団フロント企業の職務内容は多岐に渡り、秘密厳守さえ出来るのならば、同業種であれば確実にフロント企業の方が待遇が良いからです。また、一部の志望者や能力が認められた人達は家族からの紹介を受けて異常に直接関わる業務に就いたりもしています。家族が財団組織への就職、所属を拒否した場合は記憶処理を受け、職員は家族へも業務内容の秘匿義務を負うことになります。
- 財団フロント企業や大学からの採用
次に多い事例がフロント企業やフロント大学を通した採用です。フロント企業に知らずに就職した成績の良い一般人や、フロント大学に進学した一般人から、適性のあると思われた人物に人事部がコンタクトを取り、財団への就職を案内します。このケースの採用者は多くが異常に関わる業務に就きます。就職、所属を拒否した場合は記憶処理を受けます。
- 異常事件に巻き込まれた一般人
異常な事件に巻き込まれ、財団がその身分を明かしてインタビュー、事情聴取を行った一般人は、記憶処理を実施して一般社会に戻る前に財団での就職を希望するかを確認されます。彼らは異常現象について身をもって知っている為、財団の業務内容にある程度理解を示すと考えられるからです。異常事件の死者の遺族等もこれに該当します。拒否した場合は通常通り記憶処理を受けて彼らは一般社会に戻ります。
- 異常事件によって孤児になった子供達
異常な事件に親が巻き込まれる等の理由により財団が身柄を預かった孤児達は、財団が秘密裏に運営する孤児院及び学校組織で集団生活を行います。彼らは財団で就職しないことを決めたタイミングで記憶処理を受けますが、それまでは異常について理解のある子供や大人の中で生活します。この為、ほとんどの孤児達は身近な大人たちと同様に財団で働くことを選択します。
Dクラス: この世界では、死刑囚のDクラスは数える程しかいません。異常に直接かかわる危険な業務に従事させるには、死刑囚の数は根本的に少なく、また入荷も不安定である為です。この世界のDクラスは借金返済のため、または軽・重犯罪歴をチャラにしてまとまった金を得るために志願してやってきた者がほとんどです。彼らは指定された期間が過ぎれば解放され、記憶処理を受けて人生をやり直すか、フロント企業等に就職して財団に貢献し続けます。この為、Dクラスは基本的に大事に扱われます。