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先日のO5会議においてSCP-001-JPのオブジェクトクラスが決定されなかったため、
O5評議会内における多数決で決定されることになりました。
O5-13である貴方様には投票権があります。
以下の4件のメールに目を通してください。
アイテム番号: SCP-001-JP
オブジェクトクラスおよび特別収容プロトコル: [現在協議中]
簡易的な説明: SCP-001-JPは████枚の付箋紙です。SCP-001-JPの異常性は、表面に人の名前を記入した際に発生します。SCP-001-JPに名前が記入された場合、その人物と同一の記憶を持つ人型実体(以下、SCP-001-JP-A)が出現します。この出現は、元となる人物の生死に関わらず発生し、記入直前、または死亡直前の記憶が引き継がれます。 SCP-001-JP-Aは、元となった人物に関わらず、財団元となる人物が最も忠誠を誓っているものに対して非常に強い忠誠心を持っています。
財団によって生成されたSCP-001-JP-Aは、いまのところ財団の命令に対し背くことはなく、共通して「私は財団のために生まれてきた。どのような任務でも必ず遂行してみせる。」と証言しています。
以下は、財団職員によって作られたSCP-001-JP-A、およびSCP-001-JPの来歴の調査記録です。
以下の資料より、オブジェクトクラスの決定が行われます。
資料:SCP-001-JP-Aについての調査結果-1
SCP-001-JP-Aの任務遂行能力調査の結果、SCP-001-JP-Aにおいて以下の事実が判明しています。
・SCiPの探知/発見/管理能力の異常発達
・安全を重視して行われた収容違反時に対する迅速な対応と再収容
・自身がほぼ死亡すると確定している実験への参加
また、SCP-001-JP-Aの自我においては、以下の事実が判明しています。
・元の人物を基調とし、攻撃性など財団の業務を妨げる性格の飛躍的改善
・元の人物の知識を完全に所有し、それを用いた業務が可能
・元の人物と出会った際、即座の「自分が偽物である」という発言
このため、SCP-001-JP-Aは監視下にある限り十分に安全な存在であると言えます。 - ██博士
資料:SCP-001-JP-Aについての調査結果-2
SCP-001-JPの来歴を調査した結果、日本生類創研とのつながりが見られました。
詳細な調査の結果、以下の事実が判明しました。
・日本生類創研内部でSCP-001-JPを使用していた痕跡
・当該施設は現在廃墟となっており、内部は酷く荒らされた状態である
・日本生類創研はSCP-001-JPの製造に関わっていない
また、SCP-001-JPの詳細な実験の結果、以下の事実が判明しました。
・SCP-001-JP-A同士での会話における未知の言語の使用
・実際の人間との差異が見られず、本人の証言以外での区別が不可能である
・生成時に元の人物が死亡していたSCP-001-JP-Aの攻撃性の増加
このため、SCP-001-JP-Aには潜在的な危険性が存在すると考えられます。 - ███博士
資料:調査結果-1に対しての反駁
SCP-001-JP-Aの詳細な調査の結果、以下の事実が判明しました。
・SCP-001-JP-Aが最も忠誠を誓うのは元となった人物である(命令の優先も同様)
・SCP-001-JPを用いた自己繁殖が可能であり、実験中のSCP-001-JP-Aが自己繁殖に対し喜ぶような様子を見せた
・SCP-001-JP-A同士の殺害およびSCP-001-JPの破棄を拒否
以上の事実より、財団に完全な忠誠を誓っているわけではないと言えます。
また、SCP-001-JP-Aの安全性についてですが、上記にあるようにSCP-001-JP-A同士で会話を行う事より財団に対して集団での裏切り行為を実行する危険性があり、一概に安全であるとは言えません。 - ███博士
資料:調査結果-2に対しての反駁
当該施設周辺の詳細な調査、および調査中に発見した資料より、以下の事実が判明しました。
・当該施設内部および周辺でSCP-001-JP-Aが発見されていない
・SCP-001-JPの使用は週に1回程度であり、重大な事故に至る可能性は極めて低い
・SCP-001-JP-Aの監視記録より、積極的にSCP-001-JP-A同士で会話をする様子が見られない
以上の事実より、当該施設の破壊はSCP-001-JP-Aによるものではないと考えられます。
また、SCP-001-JP-A同士の危険性ですが、2体以上を同時に引き合わせない限り意思疎通は不可能であるため、別々に収容する事で安全性を保てます。
攻撃性の増加についてですが、これは単純に「忠誠を誓うはずである元の人物の存在がない」ためであり、暴走などの危険性を示すものではないでしょう。
以上より、SCP-001-JP-Aに危険性はないと言えます。 - ██博士
記録:以下は、SCP-001-JP-Aに対して行われたインタビューの記録です。
対象: SCP-001-JP-A-1
インタビュアー: ██博士、███博士
付記: SCP-001-JP-A-1は事前にEクラス記憶処理を施したDクラス職員を元にしている。
<録音開始>
██博士: それでは、インタビューを開始します。まずは███博士からですね。
███博士: では、SCP-001-JP-A-1。まず、あなたの来歴について述べてください。
SCP-001-JP-A-1: はい。私はあの付箋紙から生まれました。██ ██様によって捲られたのが先週のことです。
███博士: なるほど。他の付箋紙との関係はあるのですか?
SCP-001-JP-A-1: 関係…ですか?生まれる前には意識などはなかったので、他の付箋紙との意思疎通は図れていませんでした。
███博士: そうですか。では、現在他のSCP-001-JP-A個体と何を話しているのかを教えてください。SCP-001-JP-A-1: そ、それは……黙秘、は出来ませんよね。
███博士: 貴方には話す義務があります。
SCP-001-JP-A-1: は、はい。あれは、危険因子の排除のために行なっているのです。私たちの中には稀に危険な思想を持つものが存在するため、早い段階で考え方を修正していくのです。
███博士: ……もし、話し合いができなかった場合は、どうなりますか?
SCP-001-JP-A-1: ………しょ、しょぶ……[嗚咽]
███博士: 分かりました。それでは、続きの質問は██博士が担当します。
██博士: はい。まず、あなた方が財団に忠誠を誓う理由を教えてください。
SCP-001-JP-A-1: は…はい。私たちは、元となった存在が最も忠誠を誓っていたもののために行動します。ですので、会社員であれば会社に、教師であれば学校に、そして財団職員であれば財団に対して忠誠を誓うのです。
██博士: そうですか。では、それに反するような行動は起こさないのですね?
SCP-001-JP-A-1: はい!私共は、たとえ火の中水の中、誠心誠意、財団のために行動することを誓います!
██博士: 良い元気ですね。忠誠心が見られます。では次に、日本生類創研について知っている事を述べてください。
SCP-001-JP-A-1: は、はい……あれは、確か、研究員の一人が、特殊な、ほ、芳香を放つ植物の研究中に、じ、事故が起きて、それで…
██博士: 落ち着いてください。分かりました。それではあれはあなたたちのせいではないということでよろし…
███博士: [遮って]待ってください。なぜ、あなたは日本生類創研について知っているのですか?先ほどの質問で、他の個体と意思疎通は図れていないと述べていたはずですが。
SCP-001-JP-A-1: え、あれ、な、何ででしょう?なんというか、日本生類創研という名前を聞いたら、自然にその事件が思い浮かんできたんです。
███博士: どうにも不自然ですね。追加調査を要求します。
<録音終了>
終了報告書: 追加調査の結果、インタビュー後に生成された個体を含め、全SCP-001-JP-Aが同様の記憶を持つことが判明しました。SCP-001-JP-A個体は、少しのことであれば一般的な情報伝達手段を用いず互いに意思の疎通が可能であるようです。 - ███博士
私は、このSCPを使用するべきであると進言します。
思い出してください。私たち財団が、今まで異常物品の「確保、収容、保護」のために犠牲となった人々の事です。
Safeクラスオブジェクトの異常性の調査のため、何人の命が犠牲となったのでしょうか。
Euclidクラスオブジェクトの回収のため、何組の回収部隊が犠牲となったのでしょうか。
Keterクラスオブジェクトの収容違反のため、いくつのサイトと人命が奪われたのでしょうか。
当然、SCP-001-JP-Aを財団の業務すべてに利用することはできません。しかし、小規模な、例えばインタビューやSCPの観察、Dクラス職員としての使用であれば、財団は危険性を即座に認知し、収容違反を未然に防ぐことが可能です。もしSCP-001-JP-Aが組織的な収容違反を起こし、Kクラスシナリオを引き起こす引き金となる可能性があれば、即座に使用を停止します。SCP-001-JP-Aは支配者にはなれません。
私の同僚であり、親友であった██ █という職員をご存知でしょうか。彼は、ようやく研究員という地位に就き、これからの業務を何よりも楽しみにしていました。世界を救うために活動できることの喜びを噛み締めていたのです。
彼は、亡くなりました。SCP-███-JPとの接触中に発生した収容違反によって。
彼がSCP-███-JPのインタビューをしている最中に、何か事件があったのでしょう。
SCP-███-JPは発狂し、彼を引き裂きながら収容室を出て、警備員2名を殺害し、そのままエージェント・██、█博士など数十名を殺害したのです。彼らの命と引き換えに得られたものは、たった180秒の会話ログです。どう見ても釣り合わないでしょう。
もし、この実験をSCP-001-JP-Aが実行したとしたらどうでしょうか。SCP-001-JP-Aならば、オブジェクトの危険性に素早く気づき、実験の即時中止を要求し、このような事態を避けることができたでしょう。また、たとえ失敗したとしても殺されるのはSCP-001-JP-Aです。私たちのたった一つの命は守られるのです。これは「リスク」ではなく「進歩」なのです。
即刻、SCP-001-JPの業務上使用許可を申請します。 - ██博士
私は、このSCPを使用するべきでないと進言します。
SCP-001-JP-Aの危険性は未知数であり、全員が同時に反乱を起こしても不思議ではありません。「SCP-001-JP-A」と「元となった人物」の判別法は存在せず、何らかの理由で入れ替わる危険性があります。さらに、SCP-001-JP-AがSCP-001-JPの異常性を認知していることより、自己増殖によるSK-クラス:支配シフトシナリオの危険性が存在します。探検など限定的な場合のみ使用するとしても、そのリスクは見過ごせるものではありません。
よく考えてください。我々は世界のために異常物質を確保し、収容し、保護しているのです。
決して、個人の命が軽いと言っているわけではありません。しかし、世界の価値と比べれば、数十人、数百人の命のためにそのリスクを受け入れるのはあまりにも非合理的です。
我々は、個人の命よりも、何よりも、世界の安全のために活動しているのです。
リスクを受け入れる必要はありません。これだけで十分な理由たり得ます。
即刻SCP-001-JP-A個体を処分し、Safeクラスオブジェクトとして収容するべきです。 - ███博士
SCP-001-JPのオブジェクトクラスを決定した場合、
このメールに対し「Safe」または「Thaumiel」のいずれかで返信してください。
オブジェクトクラスが「Safe」となった場合、SCP-001-JPは利用されません。SCP-001-JPはサイト-8181の金庫内で保存されます。
オブジェクトクラスが「Thaumiel」となった場合、SCP-001-JPは利用されます。一定の試用期間を通して、十分に利用できると認められた場合本格的な使用が行われます。財団内部の人物あるいはDクラス職員などの複製などが予定されています。
なお、情報処理上の観点より、以上のメールは投票の確認とともに自動削除されます。
通信が完了しました。
通信が完了しました。
O5評議会内の投票により、SCP-001-JPはSafeに決定されました。(Safe7票、Thaumiel6票)
今後は決定されたオブジェクトクラスに基づいた特別収容プロトコルが構築されます。
SCP-001-JP-A個体の処分については次回の会議で検討されます。
ご協力ありがとうございました。
O5-1からのコメント
結果として、SCP-001-JPはSafeクラスに割り当てられることになった。
これは当然のことであると言わせてもらおう。
財団とは、確保、収容、保護の根底の上に成り立っている。
たとえ我が身を犠牲にしても、我々には世界を守るという大事な使命がある。
このSCPに頼る必要はない。我々は、我々の力で業務を遂行するのみだ。
私からは以上だ。
O5-2からのコメント
私は、Thaumiel側に投票しました。
全体の意向ではSafeと相成りましたが、それは当然の結果であるとは思っています。
我々は文字通り「命」を賭けています。時には失ってしまうこともあるでしょう。
失ったらもう戻ってはきません。悲しいですが、それも運命なのです。
しかし、その「命」で、他の「命」がいくつも救えると考えれば、決して無駄ではないと、私は思います。
そう思うからこそ、我々は世界の平和のために戦い続けるのです。その最期の時まで。
O5評議会内の投票により、SCP-001-JPはThaumielに決定されました。(Safe6票、Thaumiel7票)
今後は決定されたオブジェクトクラスに基づいた特別収容プロトコルが構築されます。
SCP-001-JP-Aの詳細な使用方法は次回の会議で検討されます。
ご協力ありがとうございました。
O5-1からのコメント
率直に言おう。私は、この結果に驚いている。
SCP-001-JPを使うなど、今までの私には考えられなかった。
世界滅亡のリスクを背負わなくともやっていける。当然Safeになるだろうと思っていたのだ。
結果は違った。我々のうち7人が、「命」を選んだ。
財団のためなら命を投げ捨てるというのは、私の思い過ごしだったのだろうか。
あるいは…私が「高みの見物」をしていただけなのだろうか。
O5-2からのコメント
正直、Thaumielに投票したのは私だけだと思っていました。
世界にたった1つしかない大切な命を守ろうとする。
そんな姿勢は、この財団内にはもうなくなっているのではないかと。
だからこそ、私はささやかな反抗としてThaumielに投票したのです。
しかし、今考えてみれば、その理由はよくわかりました。
1つの命には、1つの世界がある。それだけのことだったのですね。