第〇八四五番

対支一撃論蒐集物覚書帳目録第〇八四五番

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一九三二年捕捉。蒐集院が認識したのは、中華民国河南省南部に位置していた異常空間内の活火山である。この異常空間への進入は入り口から可能だが、それを視認することはできないとされている。また、異常空間内には内外から相互に干渉可能だとみられる。

この火山は特定の手順をとることで噴火を誘発させることが可能だとされていた。以下はその手順である。

  • 毎日、午後11時に火口にて████を行う。
  • 水銀、牛の頭、虎の尾、██、███を火口に投下する。
  • 秦国の儀式に用いられた詠唱を唱える。
  • 以上の手順を1週間継続して行う。

ただし、当該蒐集物に関する情報は、実際に確認されているわけではないため、不確定要素があるということに留意しなければならない。

以下は1932/10/11に蒐集院が大日本帝国異常事例調査局(以下、IJAMEAと呼称)本部および第四次ハクタク計画1を実行中の同局小部隊宛に通達した文書である。

蒐集院より異常事例調査局への通達


先日、我々は蒐集院に代々伝わる力により新たな蒐集対象の存在を確認した。それは中華民国河南省南部に位置する異常空間内の活火山である。その火山は辺境の土地に広がる異常空間内にあるため、通常、外から認識することはできない。そのためこの火山の存在に気がついているのは我々のみ、あるいはごくわずかな団体のみだと推測される。また、我々が得た情報ではこの火山で特殊な手順をとれば、意図的に噴火させることができるということもわかっている。

さて、対象の概要はここまでにして、恐らく貴殿らが最も疑問に思われているであろう事柄について述べよう。なぜ蒐集院が異常事例調査局にこのような情報を提供しているのかについてである。わざわざ異常事例調査局に通達せずとも、発見者たる蒐集院が蒐集すればよいと思っているであろう。もちろん、蒐集院が対象の蒐集を行うことは可能である。しかし、今回は以下の理由をもって貴殿らに対処を委任したく思う。

まず、異常事例調査局が現在満州国にて第四次ハクタク計画を実行中だということが理由として挙げられる。満州国に派遣されている異常事例調査局の小部隊が対象の蒐集に向かえば、迅速な対応が可能だろう。今回の件は早急に行わなければならないということをおぼえておいてくれ。

次に軍事力が挙げられる。今回の蒐集対象は中華民国河南省南部に位置しており、当然ながら我々が容易に立ち入ることはできない。また、対象は異常空間内に存在するため、少なくとも河南省一体を占領しなければ、安定した蒐集は叶わない。そこで異常事例調査局の軍事力、さらには帝国陸軍の力が必要なのである。もちろん、蒐集院が制圧を行うことも可能だが、先程も述べた通り、速さが大切なのだ。

これらの理由により、異常事例調査局に本件を委任させてもらいたい。さらに詳しい情報については、返事次第とさせていただく。前向きな返事をお待ちする。

崎本蒐集官

(昭和七年)

以上の通達を受けてIJAMEA富士総司令部は、蒐集院の提案を受け入れるかどうか複数回の審議を行った。以下は、反対派のナカヤマ将軍と賛成派のクラタ将軍による主張である。

先日の蒐集院の提案について意見を述べる。私はこの提案を到底受け入れることはできない。IJAMEAが満州国にいることや軍事力があることを提案の理由として挙げているが、これは建前であり、他の意図があるのではないだろうか。そもそも中華民国の異常に対して、なぜ我々が無理に対処を求められているのか。蒐集院は政府や皇室との関係を断ち切ったと聞く。大日本帝国建国以前より久しくこの国で活動してきたのは事実だが、私は蒐集院を信頼することはできない。

また、現在国際連盟により満州事変の調査が行われている。状況を鑑みるに大日本帝国は国際的に不利な状況におかれているだろう。そんななか新たな軍事行動を起こしたとなれば、更なる国際問題に発展しかねない。少なくとも満州事変に関する決議が行われるまではIJAMEAも陸軍も目立ったことをするべきではない。

以上が私の意見である。蒐集院の信頼ならぬ提案のために大日本帝国を危険にさらす訳にはいかない。

ナカヤマ将軍

私は蒐集院の提案を受け入れることに賛成する。確かに、蒐集院を完全に信用することはできない。特に政府や皇室との関係を断ち切ったことは我々はもちろん、大日本帝国に資する活動を行うという保証を皆無にしたといえる。だが、それでも、蒐集院が我々にこのような提案を行ってきたことに意味を感じずにはいられない。中華民国の異常物、性急に行わなければならないといった文言も気になるところではある。私にはどうしても蒐集院が悪意をもっているようには思えないのだ。

また、反対派の意見を聞く機会が何度かあったが、決まって満州事変に関する国際連盟の決議を待つべきだと主張している。しかし私はむしろ、国際連盟が決議を出す前に行動を始めるべきだと思う。なぜならば、本件の決議のあとに待つは経済制裁の可能性が高いからだ。そうであるならば、満州事変と蒐集院の提案に基づく軍事行動を同じ問題として扱わせ、経済制裁の影響を最小限にとどめるのが賢明ではなかろうか。

いずれにせよ、件の提案はIJAMEAとして取るべきリスクである。すべては皇国のために。

クラタ将軍

富士総司令部による一連の審議の結果、IJAMEAは蒐集院の提案を受け入れ、中華民国河南省までの軍事行動を決定した。

以下は1932/11/20に蒐集院がIJAMEA本部宛に通達した文書である。

蒐集院より異常事例調査局への通達


蒐集院の提案を受け入れていただいたことに礼を申し上げる。実のところ、今回の提案は受諾される可能性が低いと思われていた。我々としても、この件は機密事項であり、そうやすやすと情報を提供するわけにはいかない。そのため、異常事例調査局が態度を明らかにするまでは、断片的な情報のみを伝える形となった。だが、その後にやはりこのような断片的な情報だけでは受諾は困難だろうとの見解が示され、受諾拒否がされた場合には、さらなる情報提示を行おうとしていたのだ。しかし、何はともあれ、こうして提案は受け入れられた。ここからは蒐集対象の詳細をお伝えしたい。

(中略)

さて、ここからは本件を異常事例調査局にお伝えした目的を述べようと思う。先日、通達した文書に本件委託の理由を載せておいた。様々な憶測を呼んだだろうが、あれらはすべて紛れもない事実だ。そしてなぜ本件を実行しなければならないのか、言い換えるならば、中華民国にある異常な火山をなぜ大日本帝国の手に納めなければならないかについてだが、これは対中華民国政策を促進するためなのである。つまり、件の蒐集対象を大日本帝国が占領し、火山を噴火させることに成功すれば、中華民国には莫大な自然災害の不利益が降りかかるだろう。そうして大陸における中華民国の影響力を削ぐことができれば、蒐集院の活動も促進されるうえ、大日本帝国の繁栄にも繋がる。実のところ、我々がこの異常物を発見したのは極めて偶然のことだった。しかし、発見した以上はその蒐集に努めなくてはならない。往々にして皇国の護持には危険が伴う。それでも、それを成し遂げるのが大日本帝国に資する方法ならば、貴殿らはそれを厭わないだろう。よい知らせをお待ちする。

崎本蒐集官

(昭和七年)

以下は蒐集院の提案を遂行するために異常事例調査局が作成した計画書である。

バンコ計画


目的: 柳条湖事件の発生後、我々異常事例調査局は関東軍ととも戦線を拡大し、満州の大部分を占領した。そしてとうとう建国された満州国のもとで第四次ハクタク計画を実行にまで至った。現段階で国民政府は我々の動きに翻弄されるばかりであり、何ら有効な手だてを講じることはできていない。これも日清戦争以降、欧米列強による中華分割が進み、まだ中華民国に抵抗できるだけの体制がないからであると思われる。これを好機と見た我々は、蒐集院の提案に基づき、バンコ計画を実行することとした。

目標は中華民国河南省南部に位置する異常空間内の活火山である。ここを占領し、特定の手順に従い火山を噴火させることで中華民国に自然災害の打撃を与えることを目的とする。中華民国に有効な損害が見られた場合、これを機に国民政府を殲滅することも視野に入れる。

資産: 本計画は陸軍が構想している熱河作戦に組み込まれる形で実行される。そのため、我々IJAMEA特殊部隊は関東軍とともに熱河省へ侵攻し、その後河南省を目指す予定である。IJAMEA特殊部隊と陸軍の連携が必要となる本計画には実力と人望を兼ね備えた指導者が必要である。そこで、IJAMEA特殊部隊のバンコ計画担当司令官は東園利平将軍が、陸軍の同計画担当司令官は真崎甚三郎参謀次長が就任することとする。

IJAMEA特殊部隊は二万の軍と妖怪大隊2から比較的統率のとれた百十三体を参戦させる。一方で陸軍からは九万二千もの日満連合軍が参戦する。加えて、満州国異常弁公室に以下の蒐集物の提供要請を行い、すべて承認された。

  • 奇跡冶金用異常炭・・・当該作戦を遂行中、満興採石場産の異常炭を断続的に戦場および本土に供給することで合意した。暖房等の燃料や軍需産業の振興に使用するものとする。
  • 満州神楽鈴・・・異常実態の指揮に一定程度の効果をもたらすとされる神楽鈴である。IJAMEA特殊部隊の妖怪大隊を指揮する際に使用するものとする。

満州国、東園将軍の机にて書す。

(昭和八年)

以下は1933/05/31までのバンコ計画のタイムログである。

以下は東園将軍の日記から関連箇所を抜粋した文書である。

塘沽停戦協定が結ばれたことで関東軍の柳条湖事件から始まる一連の軍事行動に終止符が打たれた。だが、それは同時に我々のバンコ計画が遂行不可能になったことを意味しているのだ。IJAMEA特殊部隊としても陸軍の協力なくしては容易く軍事行動をとることはできない。中華民国に与する異常存在も確認されたことから、なおさら我々のみでの行動は無謀であると言わざるを得ない。

これと言うのも、すべては昭和帝のご意向だという。我々は停戦協定などに応じる義理は一切ない。だが、国際協調、殊に親英米を掲げ、事態の拡大を懸念した帝が中華民国の申し出を受け入れてはどうかとおっしゃったのだ。まったく、本計画の代償として国際連盟から脱退したというのに、今さら国際社会における体裁を気にして何とするか。後は真崎参謀次長も困った存在である。一夕会の中でも皇道精神を重んずることで名高かったという彼も昭和帝の意向を汲むという意味で厄介なものである。

(中略)

だが、我々としてはバンコ計画を失敗に終わらせるつもりなどない。塘沽停戦協定は結ばれたが、その内容に干渉することですでに次の布石4は打ってある。私は体勢を整え次第、すぐにでも出撃の号令を出すつもりだ。我々から陸軍に働きかけ、なんとしてもバンコ計画を達成するのだ。

1935/05/02に天津日本租界事件が起こり、これを契機としてIJAMEA特殊部隊はバンコ計画に沿った行動を開始した。これは中華民国軍掃討を目論む陸軍とともに華北分離工作という形で遂行された。以下はそのタイムログである。

1936年ごろより、IJAMEA内にてバンコ計画に対して疑念を抱く者が現れたことが複数の資料により確認されている。以下はミタカ将軍によってかかれた手記の抜粋である。

(省略)

特にバンコ計画に至っては愚の骨頂と言わざるを得ない。計画は当初の想定よりもはるかに長期的なものとなり、私が構想していた他の計画も立ち消えとなってしまった。確かにバンコ計画が成功すれば、それは大日本帝国にとって大きな進歩となるだろう。だが、そろそろバンコ計画の利益とそれによる損害が割りに合わなく頃だ。そもそもこんな得たいの知れない火山に頼る計画など本当に多大な資源を注ぎ込む価値があるのだろうか。

さらに本日、総司令部で議題に上がったのは大陸に進出している各機関についてだ。九十九機関理外学研究所は満州における異常を求め、活動を行っているそうだ。蒐集院と陸軍の共同組織である葦舟機関に至っては首魁の葦舟龍臣が蒐集院を離脱したことで、彼を中心に大日本陸軍特別医療部隊として再組織されたという。これも大陸において台頭を狙っているそうだ。このように様々な組織が大陸に進出しており、我々と衝突する可能性も考えられる。

様々な問題を挙げてきたが、すべては計画の遅れが要因であろう。計画は進んでいると主張する者もいるが、遅すぎるのだ。これ以上このような状況が続くのであれば、計画を根本から見直す必要があるだろう。

1937/07/07に盧溝橋事件を契機として日中戦争が勃発した。これを受けてIJAMEAは後バンコ計画を策定した。

後バンコ計画


目的: 我々IJAMEA特殊部隊はバンコ計画に基づき、河南省南部の占領に邁進してきた。そしてそれは冀東防共自治政府による河北省の自治にまで至った。そんななか、支那事変の勃発により陸軍と中華民国軍の戦闘が激化している。我々としてはこれを機に河南省まで侵攻し、異常空間内の火山を噴火させることとした。バンコ計画で想定していた状況と現状が大きく異なることから、これを新たに後バンコ計画として定め、遂行する。

目標はバンコ計画と同様に河南省南部を占領し、異常空間内の火山を噴火させることで中華民国に一撃を加えることである。殊に現在の状況を鑑みれば、中華民国への一撃は単なる一撃ではなく、確実に致命的なものとなるだろう。こうなれば大日本帝国に有利な内容で早急な講和を実現できる。

資産: 本計画は支那事変と並行して陸軍とともに行われる。IJAMEA特殊部隊の後バンコ計画担当司令官はバンコ計画に引き続き、東園利平将軍が、陸軍の同計画担当司令官は二・二六事件により失脚した真崎甚三郎殿に代わって寺内寿一 教育総監が就任することとする。

IJAMEA特殊部隊からは四万もの軍に加え、百十三体からなる妖怪大隊を参戦させる。また、妖怪大隊とは別に、生物兵器の使用も検討している。

満州国異常弁公室からはバンコ計画と同様の物品を提供してもらった。

河北前哨地、東園将軍の机にて書す。

(昭和十二年)

以下は後バンコ計画のタイムログである。

以下は東園将軍が黄河決壊事件を受けて記した日記の抜粋である。

黄河の決壊は国民政府が引き起こしたとの報告があがっている。ことここに至って、いよいよ国民政府も手段を選ばぬようになったか。自国の民の犠牲も厭わぬとは愚かしいことと言わざるを得ない。

だがその分、これはは我々にとって大きな障害となった。瞬く間に河南省一帯が水没し、侵攻することが困難な状況となってしまったのだ。しかも、陸軍は他の経路でもって黄河決壊の影響を受けてない地へと侵攻するという。何度も説得を試みたが堤防修復まで待ての一点張りであり、河南省に残された陸軍は堤防を復旧する部隊のみとなった。迅速さが求められる本計画においてそのような巧遅は認められぬし、何よりも目標の地が目と鼻の先にあるというのにこのまま棒立ちを決め込むことなどどうしてできようか。殊に私が司令官を務める本計画においては悔いなど残すつもりはない。

ゆえに我々IJAMEA特殊部隊はこのような状況におかれても目標への侵攻を継続する。中央執行委員会調査統計局九科という異常存在を扱う敵対組織も確認されているのだ。黄河決壊が致命傷なのではない。ここで歩みを止めることが致命傷となるのだ。

1938/06/15、IJAMEA特殊部隊はSCP-XXX-JP付近にて中華民国軍および中央執行委員会調査統計局九科の奇襲を受け、散佚状態となった。以下は東園将軍とIJAMEA本部との通話記録である。

東園将軍: 誰かおらんのか!?一刻を争うのだぞ!

本部応答: はい、大日本異常じれ——

東園将軍: こちら特殊部隊の東園利平将軍だ。早急に援軍をよこしてくれ!

本部応答: こ、これは将軍、一体どうなされたのですか?

東園将軍: 特殊部隊は危機的状態にある。中華民国軍と中央執行委員会調査統計局九科の奇襲を受けたのだ!

本部応答: き、奇襲!?

東園将軍: やつらは我々の目標である異常空間付近にて待ち伏せをしていたのだ。まるで我々が来るのをわかっていたようにな!四面楚歌となった我々は、そのまま……私は腹心たちと命からがら逃げ出し、野営を設置して——

[銃声が3発聞こえる。]

本部応答: だ、大丈夫でしょうか?

東園将軍: くそっ! もうここまで来たというのか……、とにかく、各機関に連絡の上、至急応援をよこしてくれ!はやく!

[銃声が8発聞こえる。]

本部応答: ただいま各機関への電報を作成しています。持ちこたえられそうでしょうか?

東園将軍: かなりまずい状況だ。くそっ!一体どうなっているんだ!奇襲さえ受けなければあのような下手を打つことはなかった!何たるくつ——

[何かが爆発する。]

東園将軍: なっ……!?

[数名の叫び声が聞こえる。すべて中国語であると思われる。]

東園将軍: おのれっ!かかってこい、若造どもが!

[通信が途切れる。]

この通話の約1時間後、陸軍の小部隊が現場に駆けつけ、東園将軍およびその側近4名の死亡が確認された。この事件を受けて、IJAMEAはバンコ計画および後バンコ計画の失敗を正式に宣言した。

以下は大日本帝国陸軍特別医療部隊基地跡から回収された文書である。その内容から葦舟龍臣が記したものだと見られている。

先日、異常事例調査局特殊部隊の司令官とその側近が殺されたという知らせを受け取った。今でこそ蒐集院を離れ、負号部隊を率いる私だが、あの火山の対処を異常事例調査局に委任することを提案した身としてはこの上ない悲しみだ。私が異常事例調査局の者と話すとき、必ずと言っていいほどこの言葉を聞いてきた。

我々は皇国のために命を賭する覚悟がある、と。

実に素晴らしい心構えである。このようなことはなかなか言えるものではない。だからこそ、そんな彼らが道半ばで死に絶えてしまったことに最大の哀悼を、最後まで大日本帝国のために戦ったことに最高の敬意を示そう。

さて、彼らは目的地周辺にて敵の奇襲を受けたという。この事について私はひとつの結論をもっている。それは異常事例調査局の作戦を中華民国側に密告した裏切り者がいたのだ。これは勇猛に、敢然と戦わんとする異常事例調査局特殊部隊への冒涜に他ならないだろう。許されざることである。
とまあ、ここまでつらつらと書き綴ってきたが、もっとも、その裏切りの張本人が言えた台詞ではないか、これは失敬。私も鬼や悪魔ではない。彼らに手向けの言葉を残そうとしただけだ。死んだ彼らも喜んでいるだろうよ。

改めて、私が異常事例調査局のことを国民政府に密告した。なぜそんなことをしたかと言えば、初めからそういう算段だったからだ。異常事例調査局にあの火山の対処を求める。やつらは国への忠誠心だけでなりたっている組織ゆえ、蒐集院の提案には食いつくという自信があった。蒐集院の顔としてそこそこ認知されていたわが派閥の崎本蒐集官を起用したことも効果的だったであろう。そしてその後、異常事例調査局と中華民国を戦わせ、両者を疲弊させる。最後に異常事例調査局特殊部隊の親玉を排除するという流れだ。確かに火山を噴火させられれば、中華民国に打撃を与えられるかもしれない。だが、それは不可能である。なぜならば、あの火山は意図的に噴火などさせられない無害なものであるからだ。異常事例調査局は初めから達成不可能な計画を必死に遂行していたのだよ。やつらが何かしらの計画を達成してしまっては大陸におけるやつらの権威が高まってしまうからな。例の異常空間は事に気がついた中央執行委員会調査統計局九科が封印しまったようだ。もう用済みゆえ、どうでもいいことだがな。 また、本件で大きな一撃を受けたIJAMEA特殊部隊にはすでに私の息のかかった部隊と将校を送り込んである。あの烏合の衆はもはや私の傀儡も同然なのだ。

こうして大陸において覇権を握る者はいなくなった。我々負号部隊が台頭する格好の舞台が整ったというわけだ。来たるべき戦いに向けて我々の計画は進行している。もうすぐ死すらも恐るるに足らぬ時がやってくるのだ。

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