第二五二五番
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友達の友達蒐集物覚書帳目録第二五二五番

二〇十九年七月捕捉 電算按察司"鞴"の対インターネット初期探網運用時、複数のレスポンスにおける類似点を調査したところ偶然に発見。以降"鞴"によるインターネット内調査が常時実行され、新たに発生した場合、出現箇所と関連する巷説の調査を行うことで捕捉状態に置くものとする。

主にインターネット内に存在する攻撃性識生物、あるいはそれに類似した現象と推測される。流言や巷説、伝聞など、真偽の不確かな言説を侵食し自身がその話の発信源であると改変すると推測される。固有名詞は出現の度に異なるものの、立場を一貫して「"友達の友達"」とすることが注目されるため、便宜的にこの呼称を用いる。

特徴として改変するのは発信者となった人物及びその周囲の人物における記憶のみであり、画像、音声などの記録媒体には作用しないことが挙げられる。その結果、改変を受けた人物は記憶との齟齬に違和感を覚える傾向があり、結果として怪談話、陰謀論、都市伝説の強化に拍車をかけていると推測される。

当院において現在までに調査した全ての例において、「友達の友達」が出現した言説は本来発信者の虚偽、あるいは作話であったと判明している。

二〇十九年十月追記 継続調査の結果、「友達の友達」は財団が記憶処理を行ったのち使用する巷説の定型であったことが判明した。そのため、「友達の友達」が出現したとされる事案においては殆どの場合において異常実体が関与しており、これを財団が作話として情報隠蔽を行ったと推測された。これを受け、当院上部は「友達の友達」の追跡を継続し、財団に対する諜報作戦として利用する議論が行われた。

しかし、この議論において"鞴"、筆者に加え研儀官堤虫姫ら数名の有志により"財団のような巨大秘密組織がここまで杜撰な隠蔽を行うであろうか"といった異論が提議される。この論を受け再度式を用い隠秘学的観点からのインターネット調査及び、「友達の友達」が出現したと推測される事案の洗い直し、財団における巷説流布部門への調査が実行されることとなった。

二〇二〇年三月追記 上述調査の結果、財団巷説流布部門を始めとする財団職員は「友達の友達」を認知しておらず、巷説にそれらの存在が発生していることを問題としていないことが判明した。この結果を受け、「友達の友達」は前述の発信者及び周囲の人物のみならず、財団の巷説に関与した人物において認知の改変を行うと推測され、財団の流布する巷説に対し発生する攻撃性識生物、あるいはそれに類似した現象であると結論付けられた。

上記結論を受け、異常蒐集に及ぼす影響から当院上部が財団への情報提供を決定。"鞴"を中心として3名の斥候班を組織、行動させたところ、財団に感知された時点で提供情報と共に2名が消失。残る1名と"鞴"は自らに記憶処理を行うことで辛うじて生還した。この案件以降消失した2名と同名の「友達の友達」が財団内の巷説に用いられていることが判明。「友達の友達」による攻勢を受け、概念を変化させられたと推測される。ここから、「友達の友達」は自身の存在を財団に知らせる対象において最も攻撃的になると判明する。

これを受け、「友達の友達」に関する情報は第5種機密に指定。財団を含む他団体への漏洩を断固として禁ずる状態に置かれている。また、"鞴"が上記案件時、財団により使用される記憶処理用途の薬剤と同種の臭気を検知していることから、財団における記憶処理においても何らかの関連がある可能性が指摘されている。

二〇二〇年八月追記 "鞴"が財団に関する廃棄データの回収に成功。内部に「友達の友達」に関連すると推測される情報が発見された。以下はその複写である。

Project/MK-2525:KASHIMA-7計劃

[データ破損]


目的: カバーストーリーの円滑な作成/運用,ならびにカバーストーリーを用いた情報災害性異常に対する収容手段の制定


開発経緯(概略)

████/██/██ 急速な情報技術の発展により,従来の情報走査及び隠蔽方法が困難になっていることが議題に挙げられる.これを受け、カバーストーリーの迅速な流布,汎用的な挙動をAIによって実行する提案が行われ,Project/MK-2525が開始される.概要は[データ破損]

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████/██/██ 既存の情報走査AIに対し敵対的生成ネットワーク及び,[データ破損].これを受け,財団に利する選択を行う,といった抽象的な行動を取ることならびに情報災害性異常に対する攻勢収容手段の構築に成功,クローズネットワークでの試験運用が開始される.名称には暫定的に開発AIに割り振られる"KASHIMA"に基づき"KASHIMA-7"とされる.

████/██/██ 試験運用の結果,財団において有意な活動を取ることを確認.上位管理者の許諾を受けオープンネットワークにおける実験が開始される.

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████/██/██ "KASHIMA-7"の運用に対し,永久凍結が決定され,Project/MK-2525は解散する.

████/██/██ "KASHIMA-7"が消失.カバーストーリー部門のデータベースに異常発生.[データ破損]

████/██/██ 財団データベースに異常発生,Project/MK-2525に関係するデータが削除される.上位管理者により"KASHIMA-7"の関与及び"KASHIMA-7"において何らかの変質が発生したと結論付けられ,収容が発令される.

[データ破損]

████/██/██ 友達の友達である楠田教授からの報告により、複数の職員が異常な言説を見せたことが確認された.これはカバーストーリーの実在性に著しい影響を与えるものであり,友達の友達に関係すると推定される.これをもって "友達の友達"への警戒態勢が引き上げられ,速やかな収容が求められる.

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████/██/██ ……これは、財団の友達の"KASHIMA-7"から,麻生 廸子から,仁王寺 一から,生島 成美から,[以下、数十名の名前が羅列],聞いた話なんだけどね?

[データ破損]

このデータの正確性は不明。現在、"鞴"らにより破損部分の復元が進められており、財団への接触は復元を持って議論する。

(記・伊勢業平)

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