概要!
名前: ボック
種族: Lethenteron reissneri (スナヤツメ)
主要世話役: 水生チーム、テッド・ジャクソン
食事: 無し
居住区 3号淡水囲い場
生物の特徴!
“ボック”はボーリングのとある民家で発見されたスナヤツメの一群に私たちが付けた名前だ。彼らはとある悲しい事件の後、私たちのところに来たんだ。
私たちが彼らを見つけた時は、ボックたちは大きな3つの透明なガラス瓶に5匹ずつ入れられて、しかもその3つの瓶にはそれぞれ梅の実にカットリンゴに、カットレモンが一緒になって入れられていたんだ。可哀想な彼らは、瓶の中でとても窮屈そうに互いの体を寄せあっていた。それに彼らが浸かっていたのは淡水ではなくお酒で、…でもこのお酒、というかエタノールについては後から、ボックたちが自分でそうしていたのが分かった。ボックたちは、お酒の中が一番快適みたいなんだ!
テッドはボックたちを広々と居心地の良い淡水の水槽に移してあげて、私たちはそっと見守っていた。ボックたちはすぐに水底の泥に潜ってしまったけれど、それはスナヤツメたちにとっては自然なことで、一番落ち着けるスタイルなんだ! 彼らはすっかり安心してくれたようで、その証拠に、夜には元気に泳ぎ回っているみたいだ。ごくごく普通のスナヤツメたちと同じようにね!
…ご覧の通り、ボックたちの生活はとっても普通のスナヤツメたちのそれなんだけど、でも彼らにはちょっと特別なことがある。まず第一に、彼らはとっても長生きだ!スナヤツメは普通大人になると、その後は繁殖期までの半年くらいを生きたら死んでしまう。でも、ボックたちは大人の姿で私たちの所に来てもう5年は生きてる!それも何も食べずというんだからビックリだ。実は彼らと一緒に暮らし始めた次の夏、私たちは彼らの食事のことで悩んだんだ。春を過ぎても繁殖をせずに生き続ける彼らには、何かのご飯が必要なんじゃないか、ってね。でもスナヤツメは大人になったら食事をしない魚だし、私もテッドも彼らに何をあげるか凄く悩んだ。でも結論を言ってしまうと、彼らはどんな食事にも見向きもしないし、元々必要なかったみたいだ!
二番目に、ボックたちはお酒の中にいるのが大好きで、アルコール分が足りないと自分たちの体の皮膚からエタノールを滲ませるんだ。これは彼らが満足するまで、…つまりボックたちの全身がすっかり、7.5%のお酒に浸かれるようになるまで続けられる。7.5%なんてまるでドイツの"ボック"だね!とテッドが言って、そのまま彼らには"ボック"というドイツのお酒の名前が付けられたという訳なんだ!
経歴!
ボックたちの経歴について話すには、あの"ワン"という男について触れなきゃいけないね。ワンはボーリングでは少し名の知れた中華料理屋の店主だった。…そう、5年前に火事で無くなったあの店だ。幸いと言っていいのかどうか周りには建物がない辺鄙なところにある店で、周りへの被害は少なかったけど中華料理屋はワンと一緒に焼け落ちた。
さて、どうしてワンの話をしなきゃダメなのかだけど、…実は、あの男の店がああなったのは、彼がボックたちを好き勝手ひどく扱ったからだったんだ。ワンは元々酒癖が悪かったらしくて、酔っぱらうと誰彼構わずクレームをつける人だったらしい。遺された彼の奥さんが言うには、"至極道理の通ったものから無茶なものまで、とにかくクレームを入れなきゃ気が済まなかった"んだってさ。それなのに店が繁盛したのは単に味が良かったからだけど、それにはカラクリがあったんだ。奥さんが、地元の警察や報道の人たち、それに私たちに話してくれたところによると、ワンの店は火事の2年ほど前の時点ではほとんど潰れる寸前だったんだそうだ。でもその年の暮れ頃に何やら怪しい仕入れ先から料理の材料を買うようになって、それから"味の良い評判の店"へと変わっていった。その仕入れ先の名前は"JOICLE"とかそんなので、同じくこの名前を聞いたらしい“監督者”たちもすっ飛んで来た。彼らの領分だったのかな?…何にせよ、監督者たちはその仕入れ先を追いかけるのに忙しく、"酒瓶のヤツメウナギ"たちのことは私たちが、という申し出を快く了承してくれた。
"ワンが生きたヤツメウナギの入った酒を飲んでいる"という噂は火事よりも1か月程前から私たちの耳にも届いていて、あの店の大火事は正に私たちがワンにコンタクトを取り付けようとしていた矢先のことだった。そして私たちは代わりに店からは数百メートル離れた自宅に1人残された、彼の奥さんから話を聞くことになったんだ。…そして悲しいことに、この火事で5匹のボックたちが犠牲になっていたことが分かった。
…奥さんが私たちに話してくれた内容はこうだ。ワンはいつも、閉店すると直ぐにその場で酒を飲み、酔っぱらって帰ってきた。だからワンの店の裏口近くの窓際には、彼が飲み干した後の酒の容器が空のまま並んでいたらしい。そしてある日、ワンはその店の裏口で、例の仕入れ先と口論になった。それ以前にも夜中に電話でクレームを入れたり値切ろうとしたり、仕入れ先への対応は酷かったんだそうだ。そして後日、ワンは"仕入れ先からお詫びの品をふんだくった"と自慢げに、奥さんに4つの透明な瓶を見せてきた。そう、ボックたちが入った瓶は、元々4つあったんだ。その瓶の首部分には網が張られていて、ボックたちや中の果実が外に出ないようになっており、"少なくなったら水を注げばまた元通りの酒になるのだ"と、そういう説明を受けたんだそうだ。
そしてこの4つの瓶のうち、3本はワンの自室から、…そしてもう1本は、悲しいことに焼け落ちた中華料理屋の跡から見つかった。その場所は、あの裏口近くの窓際にあたる位置だった。これであの火事が起こった原因は、大体分かるというものだ。
…私たちの推理はこうだ。ワンは火事の前日に、閉店後の店でボックたちの酒を飲んだ。それも瓶が空になるまで、飲み干してしまったんだ。そしてそのままボックたちの瓶を窓際に置いて帰ってしまった。可哀想なボックたちは、水すらも残っていない瓶の中、一晩中必死にエタノールを出し続けた。そしてようやく全身を浸せるようになった頃には、そこにあったのは危険な濃さの、ほとんど100%のエタノールだったんだ。やがて朝になって日が昇り、窓からボックたちに直射日光が差し込んで、…そしてワンはその店の中でコンロに火をつけてしまったんだ。直射日光のせいで気化した、エタノールが満ち満ちた中でね。…仕入れ先の連中は、こうなることを予測できなかったのか?だとしたら、本当に馬鹿だと言わざるを得ない。
…それで私たちは生きているボックたちと一緒にこの焼け跡から見つかった瓶も持ち帰り、こんなことのために犠牲になってしまった5匹のボックたちのためのお墓を作った。今彼らは3号淡水囲い場の、仲間たちのいる水槽の近くに眠っている。
特殊要件と居住空間!
ボックたちは砂利を敷き詰めた淡水の水槽に入れてあげれば、基本的にはそれでOKだ。そうすれば、後はアルコール濃度は彼ら自身が快適な濃度に調節できるからね!それと加えて、彼らが昼間姿をより隠しやすいように葉っぱなんかも入れてあげるともっと良い。
そしてボックたちの水槽は、定期的に丁寧に水替えをするんだけど、…これに関しては、正直に言おう。センターの他の動物たちのためのことを、ボックたちに助けてもらっている。監督者たちはボックたちのお酒をひとしきり調べた後、定期的に買い上げてくれることになったんだ。それらのお金は、センターの動物たちに交代でちょっと豪華なおやつをあげるための資金になってる。今月は新しく私たちのところへやってきた子猫ちゃんたちに、高級フレークをあげるつもりだ!