以下は、西暦2352年6月2日に行われたプロトコル・ボトルキープ 1の記録抜粋です。
SCP-3001-JP-2 摂取実験ログ抜粋
担当者: テス博士 (通信で指示)
被験者: ダナパラ研究員
[ダナパラ研究員がバーに入店する。店内にはウクレレの演奏が流れているが、曲名は特定されていない]
SCP-3001-JP-1: いらっしゃいませ、お久しぶりでございます。
ダナパラ研究員: こんにちは。今世では初めましてですね、私はダナパラと申します。
テス博士: 既視感はありますか、また体調は大丈夫ですか? 気分の悪くなった例も数件あります。
ダナパラ研究員: 確認ありがとうございます、体調は万全です。既視感は……幾らか感じますね。
テス博士: なるほど、予定通りにお願いします。
ダナパラ研究員: 了解です。
[ダナパラ研究員が着席する]
SCP-3001-JP-1: ダナパラ様、前世でボトルキープなさった品をお出ししてもよろしいでしょうか?
ダナパラ研究員: 前世の私は何を……いえ、更に前の私がキープしたものが残っているのやもしれませんね。興味があります。
SCP-3001-JP-1: [棚の方に向きながら] ここ300年弱というもの、誰もこれを見た者はいません。21世紀の遺産の一つです。
ダナパラ研究員: 21世紀、ですか。中々の年代物ですね。
[SCP-3001-JP-1が、棚から「Aquafina」というラベルのペットボトルを取り出す]
SCP-3001-JP-1: こちらが、前世であなたがボトルキープされたAquafinaの水……つまり、チェイサーになります。
ダナパラ研究員: は?
テス博士: データベースを検索します。Aquafina、Aquafina……
ダナパラ研究員: ええっと、前世の私はお酒でなく、水をキープしたと? 飲んでもいないのにチェイサーとは。
SCP-3001-JP-1: お忘れですか、確かにその通りでございます。
ダナパラ研究員: 仕方ないですね。とりあえず、一杯頂いても構いませんか。
SCP-3001-JP-1: 勿論でございます。[SCP-3001-JP-1が、グラスにSCP-3001-JP-2である水を注ぐ] どうぞ。
テス博士: 今確認が取れました。Aquafinaは300年以上前に、財団職員であるベンジャミン・コンドラキ博士がキープした飲料です。飲んでも構いません。
ダナパラ研究員: なるほど……いただきます。
[ダナパラ研究員が、SCP-3001-JP-2を摂取する]
ダナパラ研究員: うぅ、思い出しました。[軽く頭を抱えながら] しかしこれは、カルマ、そうか。
テス博士: 大丈夫ですか? できれば記録のために話していただきたいのですが。
ダナパラ研究員: ええ、ええ、大丈夫です。話しましょう。[SCP-3001-JP-2を一息に飲み干して、少し焦ったような口ぶりで] ですが先に、もう一杯頂けますか。
SCP-3001-JP-1: かしこまりました。
[SCP-3001-JP-1が、更にAquafinaのペットボトルからSCP-3001-JP-2を注ぐ]
ダナパラ研究員: では……前世で私は正に、財団職員のベンジャミン・コンドラキでした。多くのオブジェクトと、まあ様々な あるいは多少破天荒な 方法で関わる博士。
[ダナパラ研究員がグラスのSCP-3001-JP-2を3分の1ほど飲む。幾らか彼の挙動は不審で、キープされた水を全て飲み干そうとしているように見える]
ダナパラ研究員: ドレイヴンという名前の子供がいて、そして同時にアルト・クレフと交際していました。彼は……いえ、私の口から語るのは少し難しいかもしれません。
テス博士: 無理に語る必要はありません。あなたの説明は、確かに記録中のコンドラキ博士に関するデータと一致しました。プロトコル・ボトルキープの達成には十分でしょう。
ダナパラ研究員: ありがとうございます。その…… [周囲を見渡して] すみません、ええとですね。
SCP-3001-JP-1: どうかなされましたか?
ダナパラ研究員: その……気分が。ええ、気分が優れなくなってきているような。きっと危険な実験の記憶を思い出したからでしょう、それで、少し軽い吐き気のような気分がしまして……お手洗いをお借りしても?
テス博士: 無理はしないでくださいね。
SCP-3001-JP-1: はい、お手洗いはあちら側になります。お付き添いしましょう。
[SCP-3001-JP-1がカウンターを離れ、ダナパラ研究員を先導する]
ダナパラ研究員: ありがとうございます…… [Aquafinaのペットボトルを指さして] 一応、そのお水を持って行っても? その、吐き気がするので。
SCP-3001-JP-1: なるほど、こちらですね。どうぞ。
[ダナパラ研究員がペットボトルを受け取る]
ダナパラ研究員: 助かります。少々失礼しますね。
[ダナパラ研究員がSCP-3001-JP内の個室トイレに入り、マイクがミュートにされる。15分の間、彼は出てこない]
テス博士: ダナパラ研究員、ミュートを解除できる状態にありますか? 吐き気などがひどいのでしたら呼んでください。医薬品・医療従事者がともに十分な、財団の船に戻って頂くことも検討していますが。
[ダナパラ研究員がトイレ内でミュートを解除する]
ダナパラ研究員: すみません……その、吐き気がひどいんです。ええ。何度か嘔吐をしているんですが収まらず。
テス博士: 船酔いでしょうか……そういった症状は最近あなたにはありませんでしたが、起こりうるものです。
ダナパラ研究員: ええ、きっとその通りです。もうしばらく…… うぅ、すみません、またミュートにします。
テス博士: お大事に。
[更に15分が経過する。ダナパラ研究員はトイレから出てこない。以降のプロトコル・ボトルキープのスケジュールに差し障るため、テス博士がダナパラ研究員を連れ戻すためバーに入店する2]
テス博士: 申し訳ありません、バーテンダー。ダナパラ研究員が非常に苦しそうなので、連れて帰るために来ました。
SCP-3001-JP-1: なるほど、ありがとうございます。人手が必要でしたら、私もお手伝いいたしましょうか。
テス博士: 助かります。[トイレのドアをノックして] 大丈夫ですか? 歩けますか?
ダナパラ研究員: あぁ、いえ、大丈夫です、ただもう少しだけ [何かをぶつけたような音] あぐうっ!
テス博士: なっ……入っても良いですね? まずい状態ではないと思いますが。
ダナパラ研究員: そ、その……待って! 待ってください!
テス博士: 分かりました、そんなに言うなら
SCP-3001-JP-1: いえ、恐らくそういった問題ではないでしょう。
[SCP-3001-JP-1がトイレのドアを開ける]
ダナパラ研究員: ああっ!
[Aquafinaのペットボトルに自身の陰茎を詰まらせた状態のダナパラ研究員が、テス博士と直接対面する]
ダナパラ研究員: [テス博士に背中を向け、衣服などでできる限り股間を隠しながら] これは幻想です! これは幻想です! 見間違いです、なんでもありません!
SCP-3001-JP-1: やはり、この方も駄目だったか。
テス博士: ああっと……とりあえず歩けそうですね、船の医療班のところまで行きましょう。
ダナパラ研究員: なぜ……なぜこんなことに……
テス博士: こちらが聞きたいですよ。羽織るものは要りますか? その、隠すために。
ダナパラ研究員: [錯乱したように] 違う! いや、違うんです! [頭を抱えて] これは私のせいじゃない! 問題なく抜けるはずだったのに! 失敗は……そうだ、私が失敗したのは滅茶苦茶なカルマのせいだ! 運命は、輪廻転生は都合のいいように事象を解釈しすぎている3! O5は何か隠しているんじゃないか4!? 奴がボトルにペニスを突っ込んだのは深遠な計画の一部5だったのに!
〈後略〉
付記: 実験後、テス博士とダナパラ研究員は本人の希望で記憶処理を受けた。