最近の空模様など知る由もなかった。
無機質で不愛想なコンクリートの天井を見つめ、久しく外の空気を吸っていないことに気づいた。
現在時刻はまだ21時。寝るには早い時間だ。いつまで続くのかわからないこの時間をいつまで過ごせばいいのだろうかと、そう考えながら外界から完全に遮断されたこのサイトで勤務してきた。
この職員寮に自然光なんてものは存在しない。それがまた、私の気分を陰鬱とさせているのだろう。
私はため息をつくと、視界の端の奇妙な空間に気づく。
円形の窓だった。ガラス張りで、外の景色が映し出された窓。こんな窓はなかったはずだと、その窓をのぞき込む。
その窓の向こうには、閑静な、薄暗い街並みが映し出されていた。私が子供のころ、両親と暮らしていたのもこのようなマンションだった。休日は近くの公園で両親と一緒に遊んでいた。
私は眠ろうとするが、体はその窓をのぞき込んでいた。
起床した。若干の寝不足を抱え、また仕事へ向かう。このサイトはカバーストーリー上は研究所として成立しており、郊外に位置している。
寝ぼけながら、窓を覗く。
丸い窓から見える歩行者の笑顔が、私をまた陰鬱にさせる。
今日の業務はかなり多忙だった。こんな生活を続けていては体はともかく精神は廃れていく一方だろう。
私はまたその奇妙な窓をのぞき込み、外の世界を見てため息をつく。
何故か、その窓の存在に対する疑問は抱いていなかった。
今日の業務も多量だった。
窓をのぞき込むことは、私にとって楽しみの一つになっていた。
私はまた、今日も窓の向こう側を眺めている。
段々と、この窓の向こうに対する欲望が溜まっていった。
私は窓の外を見つめている。
いつかここから抜け出して、外へ行きたい。
今日は珍しく、同僚と会話を交わした。
故郷の話をした。
あの窓の外の景色が見たい。
私は脱出計画を立てていた。
この窓の外への羨望が迸り、私の体を駆け巡っている。
そして、ついに計画を実行するときが来た。
計画は完璧なはずだ。
私はハンマーを手に持ち、窓に対して大きく振りかぶる。
ここから脱出したら、まずは両親に会いたい。
その後は……私の想像はだんだんと膨らんでいった。
外の景色を凝視する。
今まさに、そのガラス窓にハンマーが直撃したとき。
窓は消え去っていた。
私は目を逸らした。
なぜ脱出を試みようとしていたのかさえも分からないまま、そこに立ち尽くしていた。
子供のころ、両親と遊んだ日のことを思い出した。