ハーマン・フラー主催: 惑乱の笛吹き ピーター!(記録用:www.scp-wiki.net/peter-the-perplexing-piper)

以下の文書は、放浪者の図書館の定期走査中に発見されて以来、現在進行中のAK-クラス(“社会的狂気”)シナリオの起源を探るために、収容主任/████によって徴発されています。

これらの調査結果はL-2クリアランスで閲覧可能です。



rating: +10+x


惑乱の笛吹き ピーター!

彼は世界の

終わりから

遠路遥々

やって来た

— 心を魅了

する音楽を

携えて!



インクレディブル・

スピヴァクとの

風変わりな

コンビ芸を

ご覧あれ!

今週限り!

君は抗えるだろうか?

ハーマン・フラー及び不気味サーカスは、如何なる持続性の精神的トラウマが観客の皆様に及ぼうとも責任を負いません。お客様は“惑乱の笛吹き ピーター!”のチケットを購入することによって、ご自分の記憶が貴重品ではなく、損失した場合でも不気味サーカスには弁済義務が無いことに同意するものとします。


以下は、"サーカスの誕生: ハーマン・フラーの酔狂な動物園"と題された出版物のページです。 発行者と著者の身元は確定されておらず、散逸したページが世界中の図書館にあるサーカスをテーマにした書籍に挿入されています。 この伝播活動の背後にいる人物は未確認です。

くぐもった爆発と共に

To the Circus Born

はまだそれを把握しているんだと見せつけたがっていた — “それ”が何を意味するか、フラー自身にももう分からなくなっていた時期さえも。

スピヴァクの一風変わった解雇処分は、オンタリオ州での銃撃戦が俺たちの比喩的な棺桶に最後の釘を打つまでの数週間にサーカスで起きていた物事の完璧な一例だった。フラーの用心棒だったスピヴァクは、かえって自分のためにならないぐらい頭が切れて、フリークの間では少し厄介者扱いされていた。スピヴァクが売り上げの残りからくすねている現場を押さえた時、フラーはマジ切れした。

ここでピーターが登場する。あいつはフラーの最後の用心棒だったが、その自覚さえ無かったに違いない。サーカスに拾われた時、ピーターはもう既に人間じゃなかった。マントの中に押し込まれた考えと思い出の塊だ。精神をコントロールするのが特技で、フラーはそれをポスターの真正面に書き出していた。この宣伝文句は、まだ俺たちの公演を見に来ていた数少ない観客に向けたのと同じくらい、団員たちに対しても多くの意味が込められていた。

実際のところ、ピーターの“能力”は便利な罰にはならなかったし、処刑はもうサーカスの力ではできなくなっていた。まだ居残っていた団員たちは全員フラーを恐れていて、命令に逆らえなかった。スピヴァクは別だが、奴はいつも肝っ玉があり過ぎて持て余している感があった。

多分、昔のフラーだったら、カネが消えたのに気付いたその時その場でスピヴァクをぶっ殺していただろう。だが当時は藁にでもすがりたい時期で、フラーはもう一度サーカスを活気づけるための手段をそこに見出した。夜明け前までにスピヴァクはまたナイフで切り貼り手術を受け、古き良き時代のピエロのような見た目にされた。翌晩のショーの幕が上がった時、俺たちはほんの少ししか残っていない演目を全身全霊で演じた。フラーはできる限り手伝いをするようピーターに頼んだのだと思う。後日になってサーカスのマーケティング戦略にはあいつが組み込まれたんだから。

突然、照明が消えた。スポットライトがゆっくり、ピーターとスピヴァクに向けられる。異色のコンビだ — 朧げな猫背の死神と、ド派手な水玉模様のピエロ。だがその時、例のおどろおどろしい単調音の横笛がピーターのフードの中から出てきて、スピヴァクは踊り始めた。テンポの速いタンゴに合わせた、昔の体操選手のような空中タップダンス。観客たちは、大テントの周りで風のように飛び回り、上空のサルサへと誘うピエロの姿に魅了されていた。

演目が半ばに差し掛かった頃、俺はフラーが何を企んでいたかを悟った。観客たちが踊り始めたんだ。一人残らず、一斉に。ピーターが演奏を続けるにつれて、笑顔はますます大きくなった。忘れられないメロディがキャンプ場にくまなく響き渡り、やがて静まり返った。もしあの演目を見てなければ、ダンスもそれで終わったと思うだろう。そうじゃない。観客たちは全員、指を弾いたり、そよ風に乗って身体を揺らしたりし続けていた。それがピーターのやった事だ。踊り始めたら倒れるまで止まらない。

そして、そいつはとんでもなく壮大なショーになった。

俺たちはスピヴァクを次の公演会場から数マイル離れたガソリンスタンドで捨てた。郡の周りでは幾つもの新聞が俺たちの名を叫んでいた。幻想的なダンサーたちが職場で、家で、学校でスウィングを踊り出す。あれはフラーが仕組んだ中でも最高のゲリラマーケティングだった。ハーマン・フラーの素晴らしい空飛ぶピエロ、スピヴァクの名前が国中に広まった。ピーターはサーカスにとって最高の授かり物だった。カネも名声もうなぎ上りになった。

だが、ピーターはあの後長続きしなかった。あいつはフラーの好みに照らしても情緒が不安定すぎた。一日中、あの身の毛もよだつ横笛を吹いてばかりだった。ピエロたちが踊り始めた後、俺たちはますます大勢のピエロを捨てなきゃならなかった。結局のところ、それがピーターにできた事だった。踊り始めたら倒れるまで止まらない。あのクソ忌々しい曲がYouTubeに投稿された後の騒動を聞いた今、俺にはエッシーの民俗魔術を潰す才能がまだ鈍ってないのを願うことしかできない。

それでも、遂にピーターを見捨てた日まで、俺たちは公演を少しでも長く続けようとしか考えていなかった。

まぁそれはそれとして、黙示録を引き起こしたのは、フラーと俺がしでかした史上最悪の所業ではないという確信はある。

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