SCP-1150-JP
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SCP-1150-JPの広がる湿地

アイテム番号: SCP-1150-JP

オブジェクトクラス: Keter Neutralized

特別収容プロトコル: SCP-1150-JPは防護フェンス沿いに設置されたサイト-81██により監視されます。胞子の放出が確認された場合は直ちに除染を行ってください。SCP-1150-JPを用いた実験は被害の拡大を防ぐため禁止されています。 SCP-1150-JPは無力化されました。事案1150-1はカバーストーリー「山火事」を適用して偽装し、跡地への非財団関係者の立ち入りは植生の完全な回復が認められるまで禁止してください。

説明: SCP-1150-JPは、イングランド・グロスタシャー州のディーンの森(Forest of Dean)内で約█.█km2に亘って分布する非種子維管束植物群1です。SCP-1150-JPは広義のシダ植物の樹木から構成されており、樹高40mに達するヒカゲノカズラ類の大木が森林を形成しています。SCP-1150-JP内部の地表は湿地に変化しており、また周辺大気の酸素濃度は約35%を維持しています。このため、SCP-1150-JPはディーンの森の他の区域とは植生を大きく異とします。

SCP-1150-JPは胞子の散布と地下茎の伸長により分布を拡大します。地下茎は1日あたり平均█.█m伸長し、侵略的外来種に指定されているクズ(Pueraria montana)の地上での成長速度を上回ります。ディーンの森内の周辺植物は地下茎により土壌養分と水分、葉により太陽光の供給を阻害され、生育不能となり枯死しつつあります。成熟したSCP-1150-JPは幹が異常な頑強性を示すリグニン2様物質に保護されており、また葉は未確認のクチクラ層3で被覆されているため、物理的伐採の試みは成功していません。

SCP-1150-JPは未知の手段で周囲の動物を知覚していると推測されます。有羊膜類4がSCP-1150-JPに接近・侵入した場合、SCP-1150-JPは有毒性の胞子を空気中に散布します。胞子を吸入した有羊膜類は咳や嘔吐に代表される症状を示し、一定時間(ヒトと同体重の哺乳類は約10分)が経過した後に死亡します。遺骸の内部では胞子から配偶体5が形成され、配偶体は一般的なシダ植物の生活環に沿って遺骸から栄養分を吸収し成長します。この特性のためSCP-1150-JP内は哺乳類・鳥類・爬虫類が確認されておらず6、ディーンの森における単位面積あたり個体数も減少しています。

SCP-1150-JP内では、地下茎に絡まった状態で土壌に埋没したヒトを含む動物の白骨体が多数確認されています。このことから、SCP-1150-JPは殺害した動物から養分を吸収して生育することが強く示唆されます。以下は白骨体周辺で回収された物品の一覧です。

物品 備考
ピクニック用バスケット 成人2人と幼児2人の骨格付近から回収。
財布 ████・カレッジ在学中の男子学生の学生証が収納されている。
イギリスの野鳥図鑑 末尾にはイングランドへの渡航ガイドが掲載されている。
日本生類創研研究員証 20代女性の身分証。当該人物と他の異常生物との関与は未確認。
携帯用無線機 近隣の地元警察が使用するものと一致。

日本生類創研がSCP-1150-JPの開発に関与した証拠は現時点で発見されていませんが、放棄された施設から言及の見られる文書が回収されています。このため、日本生類創研はSCP-1150-JPを認識し研究対象にしていたことが示唆されます。

収容経緯: 日本生類創研の旧施設から回収された文書を元に調査が行われ、2009年1月2日(GMT)にSCP-1150-JPは発見に至りました。初期調査においてSCP-1150-JPは胞子を散布し、調査中の研究員とスタッフ計██名が死亡しました。これ以降、収容・研究作業に際しガスマスク着用が義務付けられました。

1月4日(GMT)のSCP-1150-JP用収容サイト建設中、SCP-1150-JPが大規模な胞子散布を開始しました。視界不良による作業の困難性、周囲の野生動物への影響およびSCP-1150-JPの拡大の懸念のため工事は中断されました。翌日には光合成を可能とする天窓の備わった鋼鉄製ドームを垂直離陸機により上方から被覆させる収容計画が実行されましたが、地下茎による侵食を受けてドームが倒壊し失敗に終わりました。

これらを受け、森山博士はディーンの森の一部区画を立ち入り禁止区域に指定しました。重厚な収容施設はSCP-1150-JPを刺激して破壊されるおそれがあるため、SCP-1150-JPを包囲するように防護フェンスが設置され、現在の暫定的特別収容プロトコルが策定されました。また、同時に抑制ないし無力化試験の実施が提案されました。以下は各種試験記録の一覧です。

試験記録:

抑制試験1

対象: SCP-1150-JP

実施方法: チェーンソーおよび芝刈り機による伐採。

結果: 厚い樹皮およびクチクラ層に遮られ失敗。

抑制試験2

対象: SCP-1150-JP

実施方法: 濃縮した市販除草剤の地面への注入。

結果: SCP-1150-JPは除草剤の影響を受けなかった。またSCP-1150-JPにより高濃度の除草剤を含む土壌水が排出され、周辺の木々に影響を及ぼしたため、試験は即時中断された。

無力化試験1

対象: SCP-1150-JP

実施方法: 火炎放射器による焼却。

結果: 初期段階においてSCP-1150-JPは一時的に燃焼したものの、約2分後に鎮火した。鎮火後のSCP-1150-JPは未知の高分子化合物で構成された粘膜と、その直下の耐熱性ケイ酸塩7層で新たに被覆されており、これにより燃焼が妨げられたと推測される。燃焼し炭化した部位は崩壊したが、地下茎から新たに茎が伸長して再生した。

なお焼却に際して火炎による上昇気流を利用した胞子の放散が確認されたため、鎮火直後に大気の除染が行われた。

無力化試験2

対象: SCP-1150-JP

実施方法: 上空からTNT爆薬1t相当の爆弾を投下。

結果: 胞子の拡散を懸念して中止。

度重なる試験の失敗と状況の悪化の懸念のため、SCP-1150-JPを無力化する試みは停止されました。確実性の高い代案を得られるまで現状の暫定的収容が継続されます。



事案1150-1: 2009年8月27日午後5時5分(GMT)、武装した複数名の地元住民がミニバスで防護フェンスを突破して内部に侵入しました。SCP-1150-JPは直後に胞子の散布を開始しましたが、侵入者は全員防塵マスクを着用していたため直接的な被害を受けませんでした。地元住民が直後に粉末状の物質を散布するとSCP-1150-JPはその近傍から倒壊を始めました。侵入者は直ちにセキュリティ担当者により確保されましたが、SCP-1150-JPは倒壊を続け、2時間10分後に無力化されました。

残骸の調査の結果、無力化後のSCP-1150-JPから未知の菌類の繁殖が確認されました。菌は侵入者から押収された粉末と一致し、侵入者が当該の菌を散布したことが判明しました。取り調べによると、侵入者は20代前後の日本人男性に接触され、侵略的外来植物の拡大防止のため森への立ち入りが制限されていると説明された上で、粉末の譲渡を受けたことが判明しました。当該の菌はSCP-1150-JPのリグニンを選択的に分解する特性を持つことが判明し、SCP-████-JPに分類され現在研究中です。SCP-████-JP-EXに指定されました。

補遺: 2010年4月4日(JST)、SCP-1150-JPの収容に関して、担当者であった森山博士の過失が財団内で指摘されました。森山博士はSCP-1150-JPの能動的な妨害・破壊行為を根拠に当時の収容体制が最善策であったと主張し、指摘を退けました。

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回復した針葉樹林

追記: 204█年█月現在、SCP-1150-JP跡地は遷移が進行して完全な陸地が形成されています。非異常の陸上植生は回復し、常緑・落葉広葉樹や針葉樹の若木が大規模なギャップを埋めています。マダラヒタキ(Ficedula hypoleuca)やコアカゲラ(Dendrocopos minor)などの野鳥の繁殖が確認され、最高次消費者であるオオタカ(Accipiter gentilis)も見られています。

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