SCP-1534-JP
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アイテム番号: SCP-1534-JP

収容クラス: Eparch

特別定義/Eparch: アイテムはそれ自体異常ではありませんが、異常に関連しています。

特別収容手順: 標準遺体処理手順に基づき、SCP-1534-JPは既に処理されています。SCP-1534-JPの骨格標本は低危険度物品収容ロッカーに保管されます。

説明: SCP-1534-JPはモンゴロイド女性の死体です。検死の結果、死因は溺水であると判断されています。等脚目によるものだと推測される食痕がある一方で、異常性の痕跡は確認されていません。発見日は2020年8月30日、発見場所は千葉県鴨川市に位置する、風俗営業法のもとで運営されている宿泊施設1の客室です。発見後の調査によって、死体の身元は日本国籍保有者・瀬川成深 (Narumi Segawa) であることが判明しています。記録時点で、年齢は21歳です。

SCP-1534-JPの背景情報は、種々の不可解な要素を含んでいます。主な点は以下の通りです。

  • 死体の発見場所が千葉県鴨川市であるのに対し、生前の瀬川の居住地は岩手県花巻市である。両地点間は直線距離で480km以上離れている。
  • 2020年8月23日19時40分頃に花巻市のコンビニエンスストアで目撃されて以降、瀬川は行方不明となっていた。瀬川が常用していた財布や交通系ICカード、スマートフォンは自宅に放置されている。
  • 発見場所の客室には、土佐水紀 (Mizuki Tosa) という人物2が宿泊していた。現在、土佐は行方不明である。
  • 受付係によれば、土佐は客室で待ち合わせをしていたが、その相手は現れなかった。従業員の証言や監視カメラの記録は、土佐の注文の食事を従業員が届けてから、悪臭に気付いた従業員の通報に千葉県警察が対応するまで、客室に出入りした人物がいないことを示している。
  • 花巻市と鴨川市を結ぶ交通経路の周辺で、複数の要注意団体のメンバーが活動していたことを財団職員が報告している。加えて、財団が調査権限の引き継ぎに向けて動いていた際、各要注意団体による妨害工作があったことが確認されている。

以上を含む情報から、瀬川成深の死体はなんらかの異常に関連していると判断され、Eparchクラスアイテムに分類されました。調査の進捗速度、利益、費用などの観点から、SCP-1534-JPの調査体制は既に縮小されていますが、調査自体は現在も継続されています。

以下は、SCP-1534-JP研究班の主任研究員による、現時点までの調査進度に対する評価です。

瀬川成深の死体が密室の中に現れた経緯も、瀬川成深と土佐水紀の関係性も、財団に対する妨害工作が行われた理由も、依然として全てが不明であり、研究班は不可解な情報が錯綜しているという事実以外に有意義な説明をいまだできていない。

補遺: SCP-1534-JPに加え、客室内で2枚の原稿用紙が発見されました。原稿用紙には「夏休みの思い出」と題された文章が記述されています。筆跡から断定された執筆者は、土佐水紀です。

当該文章はSCP-1534-JPに関するなんらかの示唆を含んでいると推定されています。内容は以下の通りです。なお、報告書の標準フォーマットに則って様式が変更されています。

夏の暑さは、外の光を遮断した部屋の中にもよく届く。あるホテルの部屋の中、私は汗でベッドを湿らせながら寝ていた。

目が覚めたとき、青い下着を身に付けた女性が、私の隣に横たわっていた。その女性はどうやら水死体のようだった。亡くなってからある程度の時間が経過しているらしく、何かが顔の肉をかじったような痕が複数あった。

私は初めて人間の死体を見た。厳密に言えば、棺の中で目を閉じている祖母の顔を見たことはあるが、幼い頃の記憶でほとんど色彩は薄れている。そのため、人間の死体をしっかりと脳裏に焼き付けたのは、このときが初めてだと言って差し支えない。

女性は若かった。年齢は10代後半から20代前半くらいであると見られた。肌はふやけ青白くなっていたが、弾力があり私が指で押すと押し返してきた。

女性の表情は穏やかだった。少なくとも私の目は苦しみを読み取れなかった。顔は肉の一部が欠けていたが、唇に微笑が浮かんでいるようにさえ見えた。

彼女の死に方は、私の理想に近いものだ。もしかすると、死ぬ直前までは悲しみや苦しみがあったのかもしれない。しかし、いざ命を手放す段階になると、彼女は穏やかな表情で死んだのだ。若く美しいまま、清らかな気分で、眠るように死ねることは、この上ない幸福だと私は思う。

何か彼女のように死ぬための良い方法はあるのだろうか。崖から海へ飛び込めばよいか。睡眠薬を大量に飲み、波に身を任せればよいか。冷たい川の上に浮かび、少しずつ体温を奪われながら、月を眺めればよいか。

答えは出ない。しかし、ホテルの照明の下で眠る女性の水死体は、鮮やかな夏の記憶となって私の感覚を刺激している。

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