SCP-1785-JP
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アイテム番号: SCP-1785-JP

オブジェクトクラス: Keter

特別収容プロトコル: SCP-1785-JPを発現した人物(以下"対象"と呼称)を発見した際は速やかに対象全員を終了してください。現状収容状態に置かれている対象は昏睡状態が維持され、継続して監視されます。

説明: SCP-1785-JPは特定の人物に見られる、人物が複製される現象です。

財団職員の旗垣宏樹氏がSCP-1785-JPの異常性を発揮したことで、財団が当現象を認知しました。以下はSCP-1785-JP発現時の旗垣氏に対するインタビューログです。

インタビューログ

日付: 20██/8/21

質問者: 飯塚研究員

対象: 旗垣宏樹 元研究員[異常性により複数名での出席]


[記録開始]

飯塚研究員: では、インタビューを開始します。

オリジナルの旗垣氏: はい。[16名の旗垣氏が同時に返答を返す]

[旗垣氏が32名に増殖する]

飯塚研究員: あー、今起こったような現象はいつから発生し始めたのでしょうか。

オリジナルの旗垣氏: 今朝、SCP-███-JP[複数名の声により判別不能]設で[判別不能]準備を[判別不能]から発[判別不能]た。[32名の旗垣氏が同時に返答を返す]

[64名に増殖する]

飯塚研究員: ちょ、ちょっと待ってください。話すのはオリジナルの旗垣氏のみにしてください! 他の飯塚さんはお静かにお願いします!

オリジナルの旗垣氏: 了解[64名全員が発言する。語尾は「しました」,「した」,「です」など複数であった]

飯塚研究員: わかりました! こちらで受け答えをする飯塚さんを指名しますから! あー、ではあなたでお願いします。

[オリジナルの旗垣氏を指名する]

オリジナルの旗垣氏: 私ですね、了解しました。この異常性ですが、とりあえずSCP-███-JPの研究室でもらってきたものだとは思います。

飯塚研究員: なるほど。SCP-███-JPは確か次元隙の類でしたか。とすると次元異常系を発端とする異常性ですか。

オリジナルの旗垣氏: おそらくそうだと思っています。あとここに至るまでにはそれなりの頻度で増えていたのですが、今は増加は止まってますね。

飯塚研究員: 同じ顔が複数人で走っていったという通報を受けて何事かと思いましたが……この部屋もだいぶ手狭になりつつありますね。この現象は具体的にどのような状況だと思いますか。

オリジナルの旗垣氏: 次元異常にも色々ありますからね……この場合は私が私を認識することで対消滅していないので、この私は本質的には私ではないとは思うのですが、何なのでしょうねこれは。あ、組織検査しますか?

[128名に増殖する]

飯塚研究員: えぇ、今行ってしまいましょうか。というかまた増えましたね……なんで増えるんでしょうね。

[検査員が口腔から組織採取を行う]

オリジナルの旗垣氏: 考えられる例としては、何かの思考や発言を条件にして発現する認識災害か、別時空の私の転移現象か。

[旗垣氏が思案する]
[オリジナルの旗垣氏から1名複製される。合計は65名]

複製された旗垣氏1: いや、複製からその案が出ている時点で認識災害ではないだろう。この場にいる複製体の私全てに自我があると見た方が良いと思うが。

[複数名から増殖する]

複製された旗垣氏2: 待ってくれ、君たちは私をさも複製体のように言うが、私には私を発端に君たちが増えているように見えたのだが……。

[複数名から増殖する]

オリジナルの旗垣氏: つまり君たちは自分がオリジナルであると言い張るわけか? 今生まれたににも関わらずか?

[複数名から増殖する]

複製された旗垣氏3: 私から見れば君がその複製体に当たるわけだが。つまりあれか? ここにいる私たちは全員が本体とでもいうのか?

[複数名から増殖する]

複製された旗垣氏4: ならなぜ我々は生きているんだ? CKクラスにならないのは何故だ?

飯塚研究員: あの、

[複数名から増殖する]
[音声が煩雑かして聞き取りづらくなっている]

複製された旗垣氏5: 組織構成が違うんだろう。みんなが本人に違いなくても、組織構成が少しでも異なっていれば存在できるなんて例はザラにある。

[複数名から増殖する]

飯塚研究員: あの、旗垣研究員の方々、

[複数名から増殖する]

複製された旗垣氏3: 組織の問題だとしてもこの状況の根本的な説明にはなっていないだろう? 今解明すべき問題はこの現象の発現状況だろう。SCP-███-JPは並行世界観測の応用が聞く次元隙だったはずだろう。それに関与していると考えるのが普通ではないか?

複製された旗垣氏2: というかそろそろ狭いのだが。場所を移さないか?

[複数名から増殖する]

複製された旗垣氏6: こうも狭くちゃ聞く話も聞けないだろうしそれには同意だがね。

[複数の旗垣氏から同意の声が上がる]
[複数名から増殖する]

飯塚研究員: そんなこと許されるわけないでしょう。ダメですよ! あ、ちょっと記録班! 退避します。私が退出終わり次第ドアを施錠してください!

[複数の旗垣氏から困惑や怒号の声が上がる]
[飯塚研究員が退出し、聴取室が施錠される]
[以降、不規則に旗垣氏が増殖するのを聴取室内に設置された防犯カメラが捉える]
[途中で録音機器が破壊される]
[記録終了]


追記: 聴取室を収容室に変更する案が検討されましたが、旗垣氏の増加速度が極端に速く、聴取室の壁が圧壊したため撤回され、全員終了処分となりました。聴取室は復旧が完了しています。

補遺: 組織サンプル採集の結果、全員のゲノム情報が完全に一致しました。

旗垣氏に対するインタビュー記録から得た所見を踏まえて、2件目の実例発見に伴いインタビューが行われました。

インタビューログ事案2

日付: 20██/8/21

質問者: 飯塚研究員

対象: 畠山 由貴氏[異常性により複数名での出席]


[記録開始]

飯塚研究員: いきなりで申し訳ありませんね。さぞかし驚いたでしょう。

畠山氏: いえ、大丈夫……ではありませんが、今は落ち着いています。

[畠山氏が32名に増殖する]
[畠山氏が横に座る畠山氏の複製の方を少し見てすぐに視線を戻す]

飯塚研究員: 貴方に質問しますね。それ以外の方はお静かに。さてあなたが置かれている状況は少々複雑ですから説明は難しいのですが、とりあえず、私の質問には「はい」か「いいえ」で答えていただけますか?

畠山氏: あ、は、はい。

[畠山氏が33名に増殖する]

飯塚研究員: では、あなたがこの現象にあった場所の確認です。あなたは██県███市██区にて時空間異常に巻き込まれましたか?

畠山氏: はい。

飯塚研究員: その直後から、畠山さんが複数人現れ始めたという認識でよろしいでしょうか。

畠山氏: はい。

飯塚研究員: 現在は増殖が抑えられていますが、これに対して何か心当たりはありますか?

畠山氏: いいえ。

[しばらく確認するも増殖は確認されない]

飯塚研究員: 了解です。では次の質問には自分の言葉で答えてもらって構いません。あなたはこの事件をもって、わたしたちによって制限された環境下にて収容されるか、この場で殺されるか、どちらを選びますか?

畠山氏: 私は……殺される方を望みます。

[畠山氏が34名に増殖する]

飯塚研究員: そうですか。ありがとうございます。今複製されたそちらの畠山さんは、おそらく自分が複製されたとは感じていないでしょうが、先ほどの質問はどちらを選びますか?

複製された畠山氏1: 私は制限されても生きたいです。死ぬのは怖いので。

[畠山氏が35名に増殖する]

飯塚研究員: あぁ、やっぱり。一応聞きますが、今また複製された畠山さんは、おそらく死ぬ方を選ぶんですよね?

複製された畠山氏2: えぇ。その方が迷惑がかからないでしょうし。

[畠山氏が36名に増殖する]

我々の世界におけるオリジナルは貴方ですから、貴方の意見を尊重しましょう。

畠山氏: ……えっと、どういうことでしょうか。

飯塚研究員: こちらで貴方を安楽死させましょう、ということです。心変わりはないですか?

[沈黙]

畠山氏: いえ。ありません。

[畠山氏が37名に増殖する]

飯塚研究員: 了解しました。では、これで記録を終了します。

[オリジナルの畠山氏以外の複製実態は機動隊によって終了された]
[記録終了]


補遺: 畠山由貴氏は現在昏睡状態に置かれています。終了措置は行われません。

付記

この現象は時空間異常であることに間違いはないでしょう。おそらく、SCP-1785-JPの特性を持った人物、以下対象と呼称しますが、対象は別の時空間異常に接触しその影響を受けた、あるいは時空間を捻じ曲げられたことで偶然に発現したものと思われます。

旗垣研究員群に見られた意見の相違から勝手に始めた議論や、複数の畠山氏の要望の違いを踏まえた推測になりますが、SCP-1785-JPは、対象を接点として並行世界が束ねられる現象だと考えています。つまり、対象の周囲には全ての可能性が存在するのです。複数の世界が重なり合っており、全て同時に存在しうるのです。例えば対象が複数の選択肢から一つを選んで行動すると、他の選択肢が選ばれた世界線が分岐します。それらはあり得た可能性として、並行世界として生成されます。そして、それら全ては対象を接点として、全て対象の周囲で発現します。彼らは彼らの生きている世界線上に存在しているために、CKクラス再構築シナリオやパラドックスによる対消滅は発生しません。しかし、彼らは紛れもなくその並行世界における本人なのですから、構成組織を検査しようとも本人という結果しか出ないのです。

我々は生活していく中で、朝起きる決意、朝ごはんのチョイス、通勤する電車、友人との会話、これらの日常動作を常に選択しています。その度に無数の並行世界が発生し、多くは同じ結末に収斂するのでしょう。しかし、すべてが同じ空間に実体化してしまったとしたらもう2度と収斂することはないのです。無数に増えて減らないものは間引かねばなりません。指数関数的に増殖しているのであれば元を断たねばなりません。無意識下の統制が難しいのであれば元を断つ他ありません。この現象の保護のために複数人の対象を収容する必要もありませんから、畠山氏以降に発見された対象は、全て即刻終了されるべきでしょう。  飯塚研究員

倫理委員会通達

協議の結果、新たにSCP-1785-JPの発現が見られた人物の全終了が認可された。複製された人物は紛れもなく人間であることに変わりはないが、我々の基底現実下においては本来であれば消えていた可能性であることも事実であるため、異常現象の有害な副産物としての対処基準を適応することを認める。畠山氏は、SCP-1785-JPの収容のため昏睡状態を維持される。

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