SCP-3000-JP <現実はそう甘くない>
評価: -34+x
blank.png

アイテム番号:SCP-3000-JP

オブジェクトクラス:KeterEuclid

特別収容プロトコル:SCP-3000-JPはその性質から暫定的に収容されていると考えられます。万が一の事態を防ぐため、すべての病院とそれに準ずる建物を監視してください。SCP-3000-JPの発生が財団外で見られた場合、覚醒次第機動部隊 の-3(夢追い人)を派遣しSCP-3000-JP-1を回収した後、必要に応じてSCP-3000-JP-1の周囲の関係者に記憶処理を施してください。

説明:SCP-3000-JPはDクラス職員が経験する異常な夢です。当現象を経験した人物(以下SCP-3000-JP-1)は身体から根が生えて、1ヶ月昏睡状態が続きます。この状態のSCP-3000-JP-1は栄養補給を必要とせず、栄養失調や体重が減少することはありません。これは根から必要な栄養分を確保しているからだと考えられます。これについては実験ログを参照してください。眠っている間、SCP-3000-JP-1は夢の内容を事細かに覚えており、例外なく叶わない理想の夢を見ると報告されています。夢には共通して老人(以下SCP-3000-JP-2)が出現し、夢を見るかどうか質問を投げかけてきます。夢を見ると答えることによって異常性は発現します。SCP-3000-JP-1は目を覚ました後、以前より職務に対する態度が改善し、将来に希望を持ったという旨の発言をするようになります。SCP-3000-JP-1のそれぞれの夢の内容、発言については要約を参照してください。

SCP-3000-JPは20██年██月██日の早朝に、SCP-████-JPの実験目的でD-11627を使用しようとした琴音研究員により発見されました。D-11267が目覚めた後のインタビューでSCP-3000-JPおよびSCP-3000-JP-2の存在が確認され、D-11267はSCP-3000-JP-1に認定されました。以下はD-11267へのインタビューです。

対象:SCP-3000-JP-1 D-11267

インタビュアー:琴音研究員

付記:D-11267は毎月のカウンセリングで軽度な鬱と診断されていた。

〈録音開始〉

琴音研究員:これからインタビューを開始します。ではD-11267、あなたが見た夢というものをまた話していただけますか。

D-11267:あぁ、もちろん。まず、夢に小汚いじいさんが出てきたんだ。そんで、『夢を見ないか。』と尋ねられたんだ。

琴音研究員:その老人について詳しくお願いします。

D-11267:清潔感は感じられなかったな。服装はところどころ敗れてるシャツにジーンズ。靴はサンダルだった。顔は…あれ、思い出せねぇや。人の顔を覚えるのは得意だったはずなんだが。まぁ、見た目はそんな感じだ。

琴音研究員:では、話しかけられた後のことを話していただけますか。

D-11267:『夢を見ないか。』と尋ねられたから俺は聞き返したんだ。どんな夢だって。そしたら、『お前さんの理想の夢だ。』って言われたんだ。俺は夢を見てみようかと思ったんだが、いかんせん胡散臭いから少し世間話をしてみたんだ。なんせここには信じられるもんなんてないからな。

琴音研究員:世間話の内容はどのようなものでしたか。

D-11267:全部は覚えてねぇが、あんたは何なんだって聞いたら、『神みたいなものだ』って。それと、なんでそんな夢を見せてくれるんだって聞いたら、『希望はスパイスになるからな』って言ってた。生きるためには希望があった方がいいってもんなんだろ。

琴音研究員:世間話はそれだけですか。

D-11267:うーん…あ、そうだ。夢を見るのになんか対価とかいるんだろって聞いたら、『希望をもって、その姿を儂に見せてくれたらいいさ。儂は希望が絶望に変わるのと同じぐらい絶望が希望に変わるのが好きだからな。少ししたら、希望を持った姿を儂に見せてくれ。』みたいなことを言ってた。そんぐらいかな、俺が覚えてるのは。

琴音研究員:では、その後見たという夢の内容を教えてください。

D-11267:確かに俺の理想だったよ。あの夢は。親に愛されて生きてる夢だった。親は俺を殴ったりしなくて、貧乏だからと言って盗みをさせてくることはなかった。俺が…もし俺があの人たちに愛されてたらあんな生活だったんだろうなっていう夢だ。

琴音研究員:他に変わったことはありませんでしたか。

D-11267:いや、そんな幸せな夢の中で普通の生活をするかのように暮らして、気付いたら1か月後だったってわけだ。特に変わったことはなかったなぁ。

琴音研究員:そうですか、ではこれでインタビューを終了します。

〈録音終了〉

付記:SCP-3000-JPの他の異常性が発現する恐れがあるので収容施設内で経過を観察してください。1週間がたちましたが、異常性が発現しないこと、および本人の強い志望によりSCP-████-JPの実験への使用が決まりました。

琴音研究員:D-11267の職務に対する態度や物事の考え方が大幅に改善しましたが、D-11267の口調や生活態度には変化がありませんでした。あくまでも変化するのは内面だけのようですね。

補遺:D-11985の自己申告により、SCP-3000-JP-2が夢に出てきたことが判明しました。以下はD-11985へのインタビューです。

D-11985の職務に対する態度は改善されませんでした。

琴音研究員:あくまでも夢を見た場合にのみ、異常性が発現するようですね。しかし、死神…ですか。SCP-3000-JP-1の動向を確認する必要がありますね。

補遺2:

琴音研究員:現時点で同じような症例が世界で見当たらないこと、そしてD-11985のインタビュー内で、SCP-3000-JP-2が『Dクラス職員』に触れていることから、当現象はDクラス職員の間で起こるものと推測されます。よってオブジェクトクラスをEuclidに引き下げることを申請します。

O5-█:申請を承認する。

補遺3
昏睡中のSCP-3000-JP-1-8、夢を見なかったSCP-3000-JP-1-9を除いて全SCP-3000-JP-1の死亡が確認されました。すべて収容違反や不慮の事故などの非異常性の事故でした。
琴音研究員:全員あれほど将来に希望を見出していたのに、残念ですね。

特に指定がない限り、このサイトのすべてのコンテンツはクリエイティブ・コモンズ 表示 - 継承3.0ライセンス の元で利用可能です。