SCP-2969-JP
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アイテム番号: SCP-2696-JP

オブジェクトクラス: Euclid

特別収容プロトコル: サイト-81██の標準人型収容セルにて収容してください。実験に用いられたSCP-2696-JP-Aは、実験終了後すべて処分されます。また、SCP-2696-JP-Bが作成もしくは発見された場合は、即座に処分し、閲覧者がいた場合は Aクラス記憶処理を施してください。

説明: SCP-2696-JPは72歳の日本人男性です。SCP-2696-JPが作った料理(以下SCP-2696-JP-Aとする)を摂食すると、そこに含まれる食材に関する創作を行いたいという欲求が発生します。この影響に強制力はなく、「時間がない」などの理由で創作が行われないこともありますが、摂食した対象のうち7〜8割程度が余暇などを使って何らかの作品を完成させます。作品の種類は小説や絵画、漫画など多岐にわたり、その題材となる食材はランダムに選出されます。完成した作品は非異常性のものであると判明しています。

SCP-2696-JPは飲食店1を営んでいました。その店に、客が作成したと思われる多数の作品が飾られ、またこの店を訪れた人物がインターネット上で「料理を食べると不思議とアイデアが浮かんでくる」「店内には紙やペンが置かれ、すぐに創作に取り組むこともできる」などと投稿していたことから財団の興味を引き、調査が行われたことで、異常性が発覚しました。

実験記録2696-1 - 日付2021/4/23

対象: D-2696-JP-1、D-2696-JP-2、D-2696-JP-3

実施方法: SCP-2696-JPの作った味噌汁を摂食させる。

結果: D-2696-JPは「急に小説のアイデアが思い浮かんだ」と主張し、原稿用紙とペンを与えたところ、大根に関する物語を執筆した。D-2696-JP-2も同様に、味噌に関するエッセイを執筆した。D-2696-JP-3は原稿用紙を折って豆腐のオブジェを作った。

分析: 選び出される食材や作品の形式に規則性は見られません。

実験記録2696-2 - 日付2021/4/24

対象: D-2696-JP-1、D-2696-JP-2、D-2696-JP-3

実施方法: SCP-2696-JPの作ったカレーを摂食させる。

結果: 全員が紙とペンを要求し、「███2家秘伝のレシピ」と称される作品を完成させた。その内容はどれも███家に伝わるとされる唐揚げの作り方を記したものであるが、ところどころ記述が欠落したような箇所がある。

分析: 以前の調査や実験によって、選び出される食材や作品の形式に規則性は見られないことがわかっていることから、発見されていない異常性に関わるものの可能性があります。3人は互いの作品が非常に類似していることや███家についての情報を有さず、レシピについても「たまたま思いついたもの」と認識しています。また、記述には欠落がありますが、何らかの条件でこのレシピを完全な形で復元できる可能性があります。

インタビュー記録2696-1 - 日付2022/4/26

対象: SCP-2696-JP

インタビュアー: 若宮研究員

付記: このインタビューは、先述の実験に関する調査の一環として行われました。

<録音開始>

若宮研究員: 先日の実験でカレーを作っていただいた際、前例のない結果が得られました。これについて、心当たりはありますか?

SCP-2696-JP: 思いつかないなぁ。いつも通り作ったような気がするよ。

若宮研究員: 調理中、何かいつもと違ったことが起きたりしてはいませんでしたか?

SCP-2696-JP: そうだなぁ……(数秒間考え込むような仕草をする) そういえば、野菜を切っている時にうっかり指を切ってしまって……もう、俺も歳だからな。手先が少し震えたんだ。

若宮研究員: そうでしたか……。では、「███家秘伝のレシピ」というものに聞き覚えはありますか?

SCP-2696-JP: あぁ、それうちの先代3が作ったものじゃないかな。俺は見せて貰えなかったけどな。

若宮研究員: なるほど。見せてもらえなかった理由に心当たりは?

SCP-2696-JP: うーん、先代とはあまりソリが合わなくてね。先代は昔懐かしい店を一生懸命守ろうとしてたんだが、それだけでやっていけるわけじゃないからね。俺はヘンテコなアイディアを語るお客が多いことに気がついて、「これは話題になる」と思って、宣伝にも使うことにした。それが気に食わなかったんだろう。結局仲違いして、先代の大切にしていたレシピも、教えられずじまいよ。

若宮研究員: 意見の相違があったと。では、レシピの中身についてはよく知らないんですね?

SCP-2696-JP: ああ、申し訳ないが。

若宮研究員: いえ、ご協力ありがとうございました。

<録音終了>

終了報告書: インタビューに基づき、カレーの成分を検査したところ、非常に微量ながら人間の血液が検出されました。ほかの成分は非異常性のカレーと同様です。

実験記録2696-3 - 日付2021/4/27

対象: D-2696-JP-1、D-2696-JP-2

実施方法: SCP-2696-JPにD-2696-JP-3の血液を3ml混入させたオムライスを作らせ、D-2696-JP-1に摂食させる。同様に、SCP-2696-JPの血液を3ml混入させたオムライスを作らせ、D-2696-JP-2に摂食させる。

結果: D-2696-JP-1は「卵の写真集を作りたい」と主張した4。D-2696-JP-2は「███家秘伝のレシピ〜昔を思い出す味〜」を完成させた。前回の実験同様のレシピであるが、欠落箇所は補完されているようである。

分析: SCP-2696-JPの血液が混入した場合のみ、必ず「███家秘伝のレシピ」を作成するようです。また、十分な量を摂取しなければ、完全な状態で作られることはないようです。

補遺: このレシピについて後に調査が行われ、記述通りに作った唐揚げに異常性が発生することが判明したため、このレシピはSCP-2696-JP-Bに指定されました。SCP-2696-JP-Bには、摂食した対象が重要であると認識していたのにも関わらず忘れていた記憶を甦らせる微弱な作用があります。

インタビュー記録2696-2 - 日付2022/4/26

対象: SCP-2696-JP

インタビュアー: 若宮研究員

付記: このインタビューは、SCP-2696-JP-Bに関するさらなる調査のために実施されました。

<録音開始>

若宮研究員: 先日の実験で、あなたの血液が料理に混入したことがSCP-2696-JP-Bが作成される原因であることがわかりました。それについて、何か心当たりは?

SCP-2696-JP: いやぁ、初耳だよ。お客がそんなものを作ったこともなかったからよ。

若宮研究員: そうですか……では、SCP-2696-JP-Bに基づいて調理された唐揚げの、記憶を思い出させる作用について、何か知っていることはありませんか。

SCP-2696-JP: それも、お前さんたちの言う「異常性」ってほどのこととは思えないがねぇ……先代は昔を思い出すような味、を大切にしていたからな。もしかしたら、関係あるかもしれない。

若宮研究員: なるほど……あとは、例えば実際に誰かがその唐揚げを食べたのを目撃したことはありませんか?

SCP-2696-JP: ああ、そりゃもちろん。唐揚げ定食はうちの看板メニューだった。先代が逝ってしまってからは、振る舞えなくなったがな。

若宮研究員: 食べた人たちは、どんな反応を?

SCP-2696-JP: 思い出話に花を咲かせてたよ、楽しそうに。先代はそれを喜んでた……きっと、それが受け継がれて欲しかったんだろう。

若宮研究員: わかりました。ちなみに、あなたの料理の異常性を、███氏5は知っていたんですか?

SCP-2696-JP: 「異常性」とは思ってなかったろうが、知ってはいただろう。お客が変わったものを作るのを、俺が面白がっているのが気に食わなかったようだ。

若宮研究員: そうでしたか。

SCP-2696-JP: なあ、頼みがあるんだが……そのレシピを見せてもらうことはできないのかい?

若宮研究員: ……厳しいでしょうが、確認はしてみましょう。

<録音終了>

実験記録2696-4 - 日付2021/4/30

対象: D-2696-JP-1

実施方法: SCP-2696-JPに、SCP-2696-JP-Bに基づき唐揚げを作らせ、D-2696-JP-1に摂食させる。

結果: D-2696-JP-1は紙とペンを要求し、鶏のキャラクターが人々を救う内容の絵本を描いた。その中に、SCP-2696-JPと███氏に酷似した人物が描かれた場面があり、███氏に酷似した老人が、若年の頃のSCP-2696-JPに酷似した中年男性に暴言を吐かれているという描写がされていた。D-2696-JP-1はこの作品について単なる自身の思いつきであると語り、「思い出した」ものではないと主張しました。

分析: SCP-2696-JPの有する記憶が作品の内容に何らかの影響を与えたと考えられます。また、SCP-2696-JPが調理したことによってSCP-2696-JP-Bの作用が起こらなくなっていることがわかりました。

付記: その後、調査によって、1970年代ごろからSCP-2696-JPが███氏に日常的に暴言を吐く、行動を制限するなどの虐待を行っていたことが分かりました。

また、これまでの実験といくつかの新たな実験から、SCP-2696-JP-Aを摂食したことのある人物は、SCP-2696-JP-Bに基づき作成された唐揚げを食べた際、思い出される記憶が改変されることが示唆されています。この影響は、SCP-2696-JP-Aを摂食した回数が多いほど顕著であることが分かっています。

その後のインタビューで、SCP-2696-JPは「先代は思い出話に満足していたが、店を繁盛させ、金を稼ぐにはそれだけでは足りなかった。宣伝になるような面白い話が出ないかと思っていたところに、SCP-2696-JP-Aの異常性を発見したので都合が良いと思った。しかし、自分が料理を振る舞うには先代を立ち退かせなくてはいけなかった」という旨を話しています。

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