SCP-3000-JP - わたしにふれて ことばをおしえて
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アイテム番号: SCP-3000-JP

オブジェクトクラス: Keter

特別収容プロトコル: SCP-3000-JPの周囲に収容サイト-81ANを建設してください。原則として、SCP-3000-JPへの侵入はDクラス職員のみ許可されます。本報告書の閲覧は必要最低限に留めてください。

[編集済]

説明: SCP-3000-JPは伊吹山[編集済]にある洞穴から繋がる地下空間です。入り口は幅及び高さ75cm程度の狭い穴となっているため、小柄な人間のみ侵入が可能です。洞穴は徐々に地下へと傾斜し、最終的に深さ5000m程度と推測される垂直穴になります。この垂直穴に到達した侵入者は以下の4点の異常性に曝露します(以下、異常性に曝露した侵入者を被験者と表記)。

  • 被験者の視界が暗闇に包まれ、触れた物体と後述の不思議の国の住人の輪郭のみが白い線で見える。
  • 足音など存在するはずの音が消え、被験者の声を含む一部の音のみが聞こえるようになる。被験者は聞こえる全ての音に言語的意味が存在すると認識する。
  • 体が矮小化する。変化率は調査中。
  • SCP-3000-JPの外部から伸ばしたロープなどの物体が消滅する。同時にその物体が反ミーム属性を取得する。

これらの異常性は映像記録には影響がありません。被験者がSCP-3000-JPから脱出する方法は調査中です。

SCP-3000-JPの内部にはヒトを含む動物の死体を混ぜ合わせたような肉塊が存在します。被験者は、これらの肉塊を「不思議の国の住人」と認識します。現在のところ、「触手」と認識される肉塊(以降SCP-3000-JP-Aと表記)、「兎」と認識される肉塊(以降SCP-3000-JP-Bと表記)、「ジャバウォック」と認識される肉塊(以降SCP-3000-JP-Cと表記)、「イモムシ」と認識される肉塊(以降SCP-3000-JP-Dと表記)、「バンダースナッチ」と認識される肉塊(以降SCP-3000-JP-Eと表記)、が確認されています。また肉塊の他に存在する不思議の国の住人として、「鍵穴」(以降SCP-3000-JP-Fと表記)、被験者にのみ見える「笑顔の犬」(以降SCP-3000-JP-Gと表記)、「クイーン」と呼ばれるヒト型実体(以降SCP-3000-JP-Hと表記)が確認されています。不思議の国の住人はそれぞれの意図により行動しますが、脳のような神経系を持たない個体も確認されており、どのような方法で思考、対話を可能としているのかは不明です。

[編集済]

財団記録・情報保安管理局より通達

█████████の可能性に言及するテキストは反ミームに汚染されます。
そのため本報告書では一部のテキストを除外しています。
SCP-3000-JPに関する報告書の全文が必要な職員は、そのまま本報告書を読み進めてください。
自動的に自己収容プログラムが実行されます。

補遺1: 発見

要注意団体GoI-093"アニメキャラクターと結婚するための研究計画局(以下、PAMWAC)"の内部BBSを調査していたbotにより、反ミーム等の異常性を持つ可能性がある「サリバン先生」という人物に関するスレッドを発見しました。サリバン先生に関する他の書き込みは発見されませんでした。以下は発見したスレッドの中で重要と考えられる書き込みを抜粋したアーカイブ記録です。

6年前にこちらで書き込みをしていた「サリバン先生」を探しています
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1 名無しのヲタクさん 20██/██/██ ██:██:██:██ ID:???
どなたか御存知ありませんか?
どんな情報でも構いませんので、教えてください。
お願いします。
11 オーダーメイド◆GJ4BDis6fxNn 20██/██/██ ██:██:██:██ ID:???
サリバン先生なら岐阜県の████病院に勤務してたはずだが、今調べたら情報消えてるわ
匂いは残ってるから辿れるが、結構かかるかも
待ってろ
13 名無しのヲタクさん 20██/██/██ ██:██:██:██ ID:???
サリバン先生ってょうじょ誘拐の看護婦だよな
ケモナーの楽園創る言ってたから俺も気になってたけど、協力しに凸ったやつ全員失踪したんじゃなかった?
6年前ならまだしも、今はトヨホとかあるんだし、今更関わるメリットある?
教えてエロい人
17 エロい人◆d5mUIGxHd. 20██/██/██ ██:██:██:██ ID:???
>>13
やあ、エロい人だよ

ケモと結婚したいからってサリバン先生と接触するのは止めた方が無難
>>13の言う通り、今なら妖怪保護区に遊びに行く方法が確立されてるってのもあるけど、それ以上に制御の難しい現実改変能力者を扱ってるからね
ゾンビ化した上に過去改変で存在した痕跡まで消されるって感じかな
スレ主さんはそれでも行く理由があるみたいだけどね

あとこのスレも過去改変で消えるから、記憶保持したい人は対策してね
21 オーダーメイド◆GJ4BDis6fxNn 20██/██/██ ██:██:██:██ ID:???
サリバン先生の所在だが、今は伊吹山の███にある兎穴に住んでるようだ
もし凸るなら登山口から兎穴まで案内する
その先は自己責任な、危険な匂いがする
37 オーダーメイド◆GJ4BDis6fxNn 20██/██/██ ██:██:██:██ ID:???
>>1の案内が完了
もう戻ってこないだろうな
お前らも兎は追うなよ

補遺2: 第1次内部調査
スレッドで言及されたサリバン先生について調査するため、伊吹山の捜索が行われました。その結果、カント計数機より異常なヒューム値が検出される洞穴を発見しました。内部調査はDクラス職員により行われました。

_第1次内部調査記録_

進行担当: 川上博士

調査員: D-816435


<記録開始>

D-816435: 山の中に来た。それで、何をすれば良いの?

川上博士: そこに小さな穴があるだろう。入ってみろ。君の体格なら問題ないはずだ。

D-816435: 了解。

[D-816435が装備したヘッドカメラが兎穴の内部を映し出す、穴は緩やかに地中へと傾斜している。映像が徐々に暗くなっていく。]

D-816435: どうも暗過ぎるような……うわ!

[D-816435が滑り落ちる音に続き、ノイズが入る。D-816435が暗闇へと真っ逆さまに落下していることがわかる。]

川上博士: 状況を報告しろ。

D-816435: 落ちてる!

川上博士: 落下中か、時間を記録しておこう。

D-816435: ああ、死んだわ。ここが不思議の国に繋がる兎穴なら、話は違うけど。

[ノイズが徐々に小さくなっていく。落下から28秒後に着地する。]

D-816435: 本当に不思議の国?

川上博士: ライトが消えているようだが、もう点かないか?

[D-816435がスイッチを操作し、ライトが点灯する。周囲は書斎のようになっていて、動物の死体と枯れた植物で散らかっている。奥には薬瓶の置かれたテーブルと小さな扉が見える。]

D-816435: 点かないね。

川上博士: 点いてるじゃないか。

D-816435: いや、ついてないでしょ。

川上博士: 見えてないのか? そのまま前に歩け、テーブルがある。

[D-816435が手探りしながら歩く。テーブルに触れる。]

D-816435: 本当だ。触れたものだけは見えるみたい。でも輪郭線だけが白く見えるだけ。どういうこと?

[テーブルの上に手紙が置かれている。「ようこそ、不思議の国へ。目の前に見える扉から入ってください。もし扉が小さいなら、この薬を飲んでください。」と書かれている。]

川上博士: テーブルの上の瓶が見えるか? 飲め。

[D-816435がテーブルの上を手探りする。薬瓶に触れ、中身を飲む。直後に瓶を落とし、倒れ込む。倒れてから84秒後、扉の鍵穴から動物の死体を混ぜ合わせたような触手状の実体が伸びて来てD-816435を捕まえる。D-816435の体が扉の方へと引きずられる。16秒後に通信途絶。]

<記録終了>

第1次内部調査から4時間後、D-816435に関する記録が消失しました。本調査記録は反ミーム対抗措置を施していたため残っています。またD-816435に該当する別のDクラス職員が出現するなどの過去改変が発生しました。第1次内部調査の映像を確認していた川上博士を含む3名の研究員のみが、これらの変化を認識していました。

補遺3-1: 第2次内部調査
調査のためにDクラス職員から小柄な男性2名を選出し、火器を装備させ派遣しました。このDクラス職員には機動部隊メンバーより、アノマリーと交戦するための訓練を施しています。

_第2次内部調査記録_

進行担当: 川上博士

調査員: D-936614,D-817556

付記: 第1次内部調査で到達した扉前までの記録は省略


<記録開始>

川上博士: テーブルの更に先に扉がある。それに触れてみろ。

[D-936614を先頭に2人が扉の方へ歩く。D-936614が扉に触れる。]

D-936614: ああ、確かにあるな。

D-817556: 本当ですか?

[D-817556が扉に触れる]

D-817556: 本当だ、暗闇の中に扉の輪郭が見えます。

川上博士: 扉は開けられるか?

D-817556: 開きませんね。鍵穴がありますし、どこかに鍵があるんでしょうか?

[鍵穴が喋るように動く]

鍵穴: 鍵を探してくれるの?助かります。あ、もしかして財の者1ですか?

D-817556: あ、どうも、はじめまして……?

鍵穴: 君、喋る鍵穴とか見るの始めて?じゃあまた捨て駒の者だね。まぁもちつけ2。ここはえっしぴ3よりマターリ4だから。いやそうでもないか。マターリだったんだけど最近オカ連5に目を付けられてね。あいつら酷いのよ、すぐ攻撃してくるし話通じないし。だから財の者キタコレ6みたいな。財の者というかポーンの者って感じだけど。

D-936614: なんだ? 鍵穴がわけわからんこと喋ってるぞ?

鍵穴: サーセン。でも漏れの役割は侵入者がパムワカー7か見分けることだから、しゃーないのよ。先生に逆らうとあぼーん8されるし。

川上博士: D-817556、通信をスピーカーモードに切り替えろ。

[D-817556が通信機器を操作する]

川上博士: 声のみで失礼するよ鍵穴の者。我々は君たちが財の者と呼ぶ団体で間違いないが、君たちは我々財団を歓迎してくれるのか?

鍵穴: ガチ財の者キター! パムワカーはみんなえっしぴに収容されるのに禿同9だよ。もうオカ連とガチバトルするのは嫌なんだお。だからえっしぴに収容されるお! つかさ、この前ここにポーンの者送り込んで、触手にハイエースされた10の確認しながら見捨てたよね。えっしぴ冷酷過ぎさすがにワロエナイ11。このポーンの者達も捨て駒ですか?

川上博士: 今回はその触手に対処するための装備を用意して来ている。しかし君たちが財団の理念に協力してくれるなら、不要な攻撃はしない。ただ、財団としても異常性を確認し、君たちをどう収容すべきか検討する必要がある。協力してくれるか?

鍵穴: わかりみ12。どうぞ、入って確認しなよ。

川上博士: 入るための鍵をなくしたんじゃなかったか?

鍵穴: だから鍵を探して欲しいんだ。

D-817556: 僕たちにはこの辺は暗闇にしか見えませんが、映像から鍵は見付かりそうですか?

川上博士: 難しいな。その辺は、まぁ、なかなか散らかっている。

鍵穴: この辺に鍵はないよ。

D-817556: 心当たりがあるんですか?

鍵穴: 心辺りにあるじゃないか、君たちはもう鍵なんだから。

D-817556: は?

[D-817556とD-817556が矮小化する。鍵穴が2人を吸い込み、扉を抜ける。扉の先は巨大な洞窟になっており、地面は無数の動物の死体で埋め尽くされている。死体の一部は蠢いている。]

鍵穴: それじゃ、ゆっくりしていってね!

川上博士: 2人にこの景色はどう見えている?

D-817556: どうも何も暗闇ですが。いや、兎が見えます。

[蠢く肉塊の一部(SCP-3000-JP-Bに指定される実体。以降の映像記録では「兎」と表記)がこちらに近付いて来る。兎には蓋の付いた腕時計が巻かれている。]

兎: はじめまして。財団の方々ですね? この地下空間が持つ異常性を確認したいとの件、伺っております。それでしたらハートの王女とお会いしていただくのが良いかと思いますが、王女はまだお休みの時間です。ですのでその前に、ぜひとも私たちのお茶会にご参加ください。

川上博士: 時間の余裕があるのか? 不思議の国の兎にしては余裕そうだ。

兎: 私たちは現実的なスケジュールで動くべきです。大人ですから。

[兎が腕時計の蓋を開ける。蓋の中ではアナログ時計の針が剥き出しになっている。]

D-817556: 視覚障碍者用の時計ですね。目が悪いのですか?

兎: いえ、そういうわけではありませんが。まぁ、歩きながら話しましょう。

[兎が死体の上を進み始める。D-936614とD-817556がそれに続く。]

兎: これから会われるハートの王女ですが、実は……?

D-936614: あれはなんだ? 笑顔?

兎: 私にもわかりません。ここは不思議の国ですから、大人には理解し難い非現実的な現象が頻発するもので。

[D-936614とD-817556が前方の一点を見つめるが、映像上には何も映っていない。SCP-3000-JP-Gに指定される存在が出現したと考えられる。以降の映像記録では、SCP-3000-JP-Gによると考えられる音声を「笑顔の犬」と表記する。]

笑顔の犬: 待ってたにゃー。

D-817556: 今度はチェシャ猫ですか。

笑顔の犬: にゃぜ俺をチェシャ猫だと思う? 猫はにゃーにゃーとにゃくから? 本当かにゃー?

[3秒間の沈黙]

D-936614: 笑う犬に見えてきたな。

笑顔の犬: にゃぜ俺を犬だと思う? 犬のように見えるからか? 本当かにゃー? 俺はこの不思議の国に取り込まれた、1つの幻想でしかにゃい。そして人の心が美しい幻想を求める限り、幻想は永遠に産まれ続ける。にゃらばお前らは、にゃにを収容するのかにゃ?

D-936614: さっきから現れたり消えたり、なんなんだこいつ。

兎: お客様をからかうのはよしなさい。大人げない。

笑顔の犬: からかってにゃい、触れ合ってるんだにゃ。それで、これからあれに参加すのかにゃ? にゃんだっけ、無垢な茶々会?

D-817556: 無茶な苦茶会13のことかですか?

笑顔の犬: お前らは結婚式に向かうはにゃ嫁じゃにゃいんだ、真っ白な服だけじゃみすぼらしいにゃ。だけど残念、この世界には色がにゃいんだにゃ。色って難しいからにゃ。だから教えて、色ってにゃにかにゃ?

川上博士: さっきから何と話している?

笑顔の犬: 見えにゃいものはわからにゃい。わからにゃいことは知りたくにゃる。だから教えてあげたいんだにゃ。空ってどんにゃ色かにゃ?

D-936614: 空は青だろ。

笑顔の犬: 青ってどんにゃ色?

D-936614: そうだな、寒くて寂しい色って感じじゃないか?

笑顔の犬: それってこれかにゃ?

[6秒間の沈黙]

D-817556: これじゃ緋色の空ですね。

兎: 夕方になってしまいました。これではお茶会に間に合いません。しかしこういう時こそ落ち着いて解決策を探すのが大人というものです。ほら、あそこを飛んでいるのはジャバウォックさんではありませんか。空に色が付いたおかげで見付けやすくなりました。おーい!

[洞窟の上部に巨大な肉塊(SCP-3000-JP-Cに指定される実体。以降の映像記録では「ジャバウォック」と表記)が飛んでいる。巨大な肉塊がこちらに近付いて来る。]

ジャバウォック: 今北産業14

兎: こちらの方々は財の者です。お茶会に案内しようと思うのですが、このまま歩いては間に合いません。もし良ければ背中に乗せてもらえますか?

ジャバウォック: 把握。

[ジャバウォックが身を屈める]

兎: それではお言葉に甘えて。皆さんどうぞこちらへ。

[兎が手招き、アルファたちを巨大なジャバウォックの上に誘導する。]

D-817556: どうも御親切に、ありがとうございます。

[全員がジャバウォックの上に乗ると、ジャバウォックが空中へ浮遊し始める。]

D-817556: ふむ。思ったより、というか全く風圧を感じませんね。

笑顔の犬: ここにはプレッシャーはにゃにもにゃいのさ。羽の音もにゃいんだから。そんにゃことよりこれ、方向が違うんじゃにゃいか?

兎: 本当ですね。ジャバウォックさん、いつもの会場はこちらではありませんが、どこへ向かっているのですか?

ジャバウォック: 花畑。

[進行方向に巨大な花畑が見えて来る。花畑には死体や肉塊が存在しない。ジャバウォックが死体の山と花畑の境目へと降下する。降下した場所で円筒形の肉塊(SCP-3000-JP-Dに指定される実体。以降の映像記録では「イモムシ」と表記)が蠢いている。]

D-936614: なんだありゃ、イモムシの触覚だけ黄色だ。

イモムシ: こんばんはー! 待ってたよー、ポーンの者たち。

兎: これはどうも、こんばんは。

[Dクラス職員達がジャバウォックの背中から降りる。兎とイモムシが花畑の中心に向かって進み始める。Dクラス職員達がそれに付いて行く。]

兎: 今日はお茶会だったのではありませんか?

イモムシ: あれは何でもない日を祝うパーティだからねー。でも今日はお客さんがいるから何でもなくない日だ!

兎: そうだったのですか。毎日開催されるものかと思ってました。

イモムシ: 毎日開催するよー。ここには何でもない日しかないからねー。

兎: そういえば、オカ連という組織が攻めてきた日は開催されませんでしたね。

イモムシ: そうなんだ!だから財の者は歓迎するよー。ほら、「敵と味方は見方」ってやつ!

兎: それを言うなら「敵の敵は味方」では……? いえ、敵が二人いるなら、比較的良く見える方を味方にするべきということですね。実に現実的な言葉です。

笑顔の犬: にゃあ、イモムシさんよ。このお客さんにその色を分けてくれにゃいか? せっかく来てくれたお客さんの色を奪っちゃ失礼だにゃ。

蝶: たしかにねー。それじゃーどうぞ、遠慮なく受け取ってよ!

[イモムシの先端から伸びた細長い肉触手が、Dクラス職員達の頭部に触れる。]

D-936614: 俺達の髪は黒だったんだが?

ジャバウォック: 金髪は良いぞ。

イモムシ: ツインテールならなおさら良い!

D-817556: はぁ、どうも。

イモムシ: どうせなら服もおしゃれな色にしよう! 不思議の国に迷い込んだ女の子と言えば、やっぱり青だよねー。

[イモムシの肉触手が、Dクラス職員達の体に纏わりつく。]

D-936614: だからこれは赤だろ。

D-817556: それと僕たちは女の子でもありません。

笑顔の犬: 赤? 赤ってどんな色かにゃ? 説明して欲しいにゃ。

D-817556: えーと、情熱的で、エネルギーに満ちていて、みたいな感じですか?

笑顔の犬: それって、ほら、あの色ことじゃにゃいか?

[目の前の地面から触手状の肉塊(SCP-3000-JP-Aに指定される実体。以降の映像記録では「触手」と表記)が生えて来る]

イモムシ: 先生だ!

D-936614: こりゃ紫だな。

触手: なんで財の者と戯れてんの……?

イモムシ: それはー、ほらー、最近はオカ連がここを潰しに来るし、正直しんどいじゃないですか? だったらえっしぴと手を組んだ方が。

ジャバウォック: もうだめぽ15

触手: 財の者は正常性がどうとか言って私達の理想を邪魔する敵じゃん。

イモムシ: そうは言っても、死にたくないですし。

触手: もういい、ひとりでやる。

[周囲の花畑から無数の触手が飛び出す]

イモムシ: ひえー!

ジャバウォック: マンドクセ16

笑顔の犬: 応援してるにゃー。

[イモムシが逃げ、ジャバウォックが飛び去る。]

D-936614: なんだこの化け物、やる気か?

川上博士: 発砲を許可する。その触手が攻撃対象だ。訓練の成果を見せろ。

[Dクラス職員達が触手への発砲を開始する。銃声は響かない。銃弾を受けた触手は動きを止めるが、またすぐに別の触手が出現する。]

D-936614: キリがねぇ。

[D-817556の足元から触手が出現する。]

D-817556: ひっ!

[D-817556はその触手を銃撃しようと構えるが、間に合わず、腕を触手に絡めとられる。そのまま体を持ち上げられ、地面に叩き付けられる。D-817556の服が血に染まり、動かなくなる。]

D-936614: マジかよ……

触手: 私はこの不思議の国を創るために、多くの犠牲を払ってきた。多くのものを奪ってきた。今更えっしぴが邪魔しようと、引き返せないのよ。

[兎が動かなくなったD-817556に近付き、ライフルを拾い上げ触手の壁に向かい発砲する。]

兎: あの頭が付いた触手を狙ってください! それを破壊すれば殺せます!

[兎の銃撃する触手の壁の向こう側に、モンゴロイド系の女性の頭部が付いた触手が見える。その女性の頭部は忌々し気に兎を見ている。]

D-936614: なんだお前、逃げたんじゃないのか。

兎: ええ、あの触手こそが私の敵でして。

D-936614: そうか、だったらお前はあの生首に集中しろ。こっちに来た触手は俺がやる。

兎: 頼みますよ!

[D-936614と兎の足元に出現する触手を、D-936614が的確に銃撃し破壊する。その間に兎は頭付きの触手へフルオート射撃を続ける。頭付きの触手を守るように他の触手が出現するが、徐々にその壁は崩れていく。]

触手: やるね。

[頭付きの触手が地面に潜り始める。D-936614が頭付きの触手が潜っていった穴に走り寄り、その穴の中に手榴弾を投げ込む。衝撃で地面が揺れるが、爆発音は響かない。周囲の触手の動きが一斉に止まったことから、本体を撃破したことが分かる。]

兎: お見事です、財団の方。

[D-936614が動かなくなったD-817556に近付く。首と手足の骨折が確認される。]

D-936614: こりゃ死んでるな。この紫色は血の色か。で、あの触手がハートの王女か?

兎: いいえ、あれはハートの王女を惑わし支配してきた「先生」と呼ばれる化け物です。ハートの王女はこの花畑の中心にいます。

[兎が先導し花畑の中心へと向かう。カメラの片隅で触手の一部が千切れ、浮遊している様子が映る。]

<記録終了>

警告: 以降の記録は反ミームを含むレベル4機密情報です。


記録へのアクセスはセキュリティクリアランスレベル4または管理官の承認のもと、必要最低回数のみ許可されます。上記に違反した場合は即時懲戒処分の対象となります。

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    補遺3-2: 第二次内部調査時における[編集済]との接触

    _第2次内部調査記録-2_


    <記録開始>

    [花で編まれたベッドの上に7歳程度の少女が寝ている。]

    兎: あの子が「ハートの王女」です。彼女は生まれてつき寝たきりでして、一度も目を開けたことがありません。耳も聞こえないそうです。ですがこの時間は目を覚ましているようでして、触れると反応するんです。今では触覚を通して言葉を伝えることもできます。感触と言葉が、あの子にとって世界の全てです。

    [兎が少女の手を取り、手の平にひらがなをなぞる。少女の隣に咲くバラが、少女の手の平になぞられたひらがなを読み上げる。]

    バラ: おはよう。私が誰かわかるかな?

    オニユリ: ごめんなさい、わからないわ。

    パンジー: この感触は兎さんね! はじめまして!

    [マイクは周囲の花たちから声を拾うが、花たちに発声器官等は見当たらない。]

    兎: この花たちは、この子の心と繋がっているようです。私に非現実的なことはわかりませんが。

    バラ: 今は兎だが、本当は違う。私はお前のパパだ。私とお前は、血の繋がった家族なんだ。

    パンジー: 家族?

    オニユリ: ヘレンの家族はサリバン先生、でしょう?

    バラ: あいつは自分の夢を叶えるために、お前を利用していたんだ。お前を騙し、お前の力で現実を塗り潰し、不思議の国を創ろうとしていた。しかしお前は現実を知り、現実の中で生きるべきだ。

    オニユリ: 何を言ってるの?

    パンジー: きっと夢と現実がごっちゃになっているのね。

    オニユリ: 先生はいないのかしら?

    バラ: あいつはもういない。私たちがやっつけたよ。

    オニユリ: やっつけたって?

    バラ: 死んだってことだ

    パンジー: 死んだって何?

    オニユリ: まだ教わってないわ。

    パンジー: なら教わらないと。

    オニユリ: でも先生はいないって!

    バラ: あいつの事を考えるのは、もう止めなさい。あいつがお前に教えてきた事は嘘ばかりなんだ。現実の動物や植物は喋らないし、空を飛ぶトカゲも……

    パンジー: ねえ、死んだって何?

    バラ: 死んだって言うのは、もう会えないってことだ。

    [7秒間の沈黙]

    パンジー: どういうこと?

    オニユリ: 分かるでしょ? もう会えないっていうのは、もうこれから先は先生と会うことができないってことだわ。

    パンジー: そんな、嘘、でしょ?

    [少女が兎の手を払いのけ、拒絶の意志を示すように拳を握る。]

    パンジー: こんなの、きっと酷い夢だわ。

    オニユリ: 酷い現実かもよ?

    パンジー: どっちでもいい! こんな酷いこと、知りたくなかった!

    オニユリ: それなら忘れてしまえばいいじゃない。

    パンジー: 忘れたくても、頭から消えてくれない。

    オニユリ: それなら、


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