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生命活動の継続を確認。ファイルを開示します。
アイテム番号: SCP-3000-JP
オブジェクトクラス: Thaumiel
特別収容プロトコル: クリアランス4以上の職員によって、継続的にSCP-3000-JP-3を監視、点検してください。SCP-3000-JP-3に異常が発見された場合、もしくはSCP-3000-JP-1とSCP-3000-JP-2が接触した場合は速やかにO5へ通達され、直ちにSCP-3000-JP-3の再構築を行います。
説明: SCP-3000-JPは、後述するSCP-3000-JP-1,2,3としてそれぞれナンバリングされたオブジェクトの総称です。
SCP-3000-JP-1は財団が存在する宇宙です。
SCP-3000-JP-2はSCP-3000-JP-1との並行宇宙です。SCP-3000-JP-2は極めて高い現実性濃度を有しており、そのヒューム値は2.0×10██Hmです。これによりSCP-3000-JP-2は、全てのSCPオブジェクト並びに要注意団体等の影響を極めて小さいものに抑えることが可能です。
SCP-3000-JP-3はこれらSCP-3000-JP-1とSCP-3000-JP-2を分け隔てる存在です。SCP-3000-JP-3を越えて、SCP-3000-JP-1がSCP-3000-JP-2に干渉することはいかなる場合も阻止されなくてはなりません。また、SCP-3000-JP-3は、SCP-3000-JP-2からSCP-3000-JP-1への現実性の流入をとどめる役割を担っています。SCP-3000-JP-3を意図的に破損させてSCP-3000-JP-1に現実性を流入させる試みは、急激な現実性の上昇による影響が未知数であることから凍結されています。
補遺-01: SCP-3000-JP-1並びにSCP-3000-JP-2は元々同一の宇宙でしたが、19██年7月19日以降、SCP-3000-JP-3によって両宇宙は隔離されました。詳細は以下の手記を参照してください。
1954/6/22: ██美術館に展示されていた彫刻が生命活動を示し、周囲にいた警備員█人を殺害した。偶然居合わせた客が警察に通報し、機動部隊により彫刻の破壊が試みられたが外傷を与えることはできなかった。しかしながら、作戦中は彫刻が一切動かなかったことから、彫刻は機動部隊による監視の下におかれた。周りに人がいるときは不活性化するのだろうか?動きがあればまた追記する。
1954/6/2█: 突如として大量の異常存在が出現した。このうち、攻撃的な百数種類の異常存在により、確認できるだけでも人類を含めた地球上の生命の内8█%が死亡、もしくは[編集済]となった。最悪だ。
195█/█/██: 世界国際連合により、生存している全ての専門家や研究者等を対象とした緊急会議が開かれる。私も参加した。しかし、いくら理論上可能とはいえ、並行宇宙なんてものが創れるのだろうか?
196█/█/█: 5年程前から地上に派遣している軍事部隊によると、█箇所に穴のようなものが出現しているらしい。まず間違いなくこれらも異常存在だろう。これらを解析できれば、並行宇宙の作成に役立つかもしれないいや、間違いなく調査に向かわせた人たちを犠牲にすることになる。[編集済]に無人探査機の製作を掛け合ってみよう。
196█/█/██: 現地で無人探査機が壊され、機動部隊が突入する羽目になった。穴の情報と引き換えに、機動部隊の全員が穴に飲まれ、薄く引き伸ばされて…[編集済]。私がもっと強く引き留めていれば違う。彼らは最期まで、人類を生かすために戦って散った。今私達がすべきことは、彼らの遺した情報を無駄にしないことだ。
1971/10/██: 異常存在の量子力学的及び光学的原理の解析により、並行宇宙の作成に成功。観測上、並行宇宙に人類は存在せず、動植物をはじめとする他生命は仮死状態にある。ここまで1█年かかった。人類が全滅しなかったのは奇跡だ。本当に良くやってくれた。
1971/11/█: 異常存在を今いる宇宙の中に閉じ込めることを目的とし、人類の並行宇宙への移住が開始される。絶対にあちらに異常存在を送り込んではならない。もたもたしていては間に合わないが、奴等が人間に擬態している可能性も考慮して慎重に行わねば。また、穴から検出された[編集済]を使って、いくつかの異常存在を消滅させることができた。これも機動部隊が命を賭して戦ってくれたおかげだ。向こうに送れるだけ送る。移住が終わったら、すぐさま開発中の「壁」で向こうとこちらを隔離する。上手くいくことを祈っている。
―追記、民間人の混乱を抑えるために開発されていた、記憶を処理する薬が完成した(副作用が強いのが難点だが)。実物、あるいは調製の方法だけでも向こうに送る。
19██/7/19: 一部の研究者を残し、全人類の並行宇宙への移住が完了。「壁」が作成され、両宇宙は完全に断絶された。私はこちらへ残った。異常存在を野放しにしていては、いずれ「壁」が破られるかもしれない。それに、異常存在には人類を攻撃しないものも多い。もしかすればその中から、攻撃的な奴等を閉じ込めるための存在や、あの穴のようにこちらに残った人類の助けになる存在が見つかるかもしれない。
私達はこれから、協力して異常存在の確保と収容を始めようと思う。収容した奴等は平和のために即刻破壊…といきたいところだが、攻撃して一層危険性が増したものもある上、何より前述したように異常存在自体が他の収容に役立つ可能性もある。なので当分は「保護」の方針で進めよう。組織の名前は…単語の頭文字から取って…
"Secure","Contain","Protect" ―SCP。うん、悪くない響きだ。
補遺-02: SCP-3000-JP-1及びSCP-3000-JP-2について、記憶処理剤の大量散布による、SCP財団並びにSCPオブジェクトの隠蔽を行いました。
補遺-03: SCP-3000-JP-2の作成に伴い、SCP-3000-JP-1の現実性が低下したとの推測が立てられています。またこれにより、SCP-3000-JP-1内で大規模な過去改変が█回起こっている可能性が示唆されましたが、詳細は調査中です。
補遺-04: SCP-3000-JP-3の作成より██年後、大規模な収容違反が発生し、SCP-████によりSCP-3000-JP-3のごく一部が破損しました。直後、[データ破損]のため、収容違反を起こした全てのSCPオブジェクトが再び収容下に置かれました。
補遺-04: 以下は、補遺-01の記録を作成したと推測される人物(以降SCP-3000-JP-α)と、SCP-3000-JP-2に移住する人物の一人(以降SCP-3000-JP-β)との音声記録です。
<記録開始, 19██/7/18>
SCP-3000-JP-α: いよいよ明日だな。異常存在の記録は?
SCP-3000-JP-β: 大丈夫です。一つもあっちには行ってません。
SCP-3000-JP-α: 良かった。まぁ気は抜けないがな。
SCP-3000-JP-β: …あの、本当にやるんですか。記憶を消すってやつ。
SCP-3000-JP-α: ああ。私達の役目は、異常存在と戦い、奴らを封じ込め、人々から遠ざけることになるんだと思う。もちろん、こちらの世界だけじゃなく、向こうの世界の人々からも。だから、私達は忘れられなければならない。
SCP-3000-JP-β: 僕は忘れたくありません。世界を救ってくれたあなた達を。
SCP-3000-JP-α: 「あなた達」…「僕達」の間違いではないのか?君があの時[編集済]の提案をしていなかったら、並行宇宙なんてものは未だに存在していないし、人類はとっくに滅んでいるだろう。まぁそれはともかく、人々の生活に平穏を取り戻すためには、私達の存在を隠蔽するしかない。
SCP-3000-JP-β: …わかりました。じゃあ、せめて「架空の存在」としてみんなに知ってもらうことにします。実在しない危機から、実在しない世界を救った実在しない人達として。
SCP-3000-JP-α: いや、しかし…
SCP-3000-JP-β: これだけみんなを守るために努力して、途中で何十人も死んで、でも誰もあなた達のことを覚えていないなんて、…そんなのあんまりじゃないですか!だからお願いです、せめて僕達が作り出した幻想としてでも、あなた達を存在させてください!
[約3秒間の沈黙]
SCP-3000-JP-α: …わかった。
<記録終了>
補遺-04:
この文書を読んでいるのは、適切なクリアランスを得た職員か、SCP-3000-JP-2の住人だろう。我々は人類を救うため、人々をSCP-3000-JP-2に送った。そして多数のSCPオブジェクトとともにSCP-3000-JP-1を、世界を、我々とともに封じ込めた。彼等を保護するために。
彼等にとって我々財団はただの想像の産物であり、誰も実在しているなど思っていない。実際、彼等の世界に財団はおろか、SCPオブジェクトも存在しない。だが、我々がどんな事象に遭遇しようとも、彼らは覚えている。どんな死に方をしようと、例えこの世界が丸ごと消えて無くなろうと、我々は忘れ去られない。
そして同時に、だからこそ、我々は彼等の世界で存在してはいけない。我々がフィクションである限り、我々が彼等の単なる幻想である限り、彼等の世界は守られるのだから。