アイテム番号: SCP-3018-JP
オブジェクトクラス: SafePending
特別収容プロトコル: SCP-3018-JPは発見次第標準収容ロッカーに収容してください。いかなる財団職員も、特別の理由なくSCP-3018-JPに物理的に干渉しないでください。また万全を期すためにSCP-3018-JPに対して距離を保ち、万一接触してしまった場合静かに距離をとることが定められています。すでに収容されているSCP-3018-JP-1に関しては順次処分されます。現在、警察及びフロント企業に所属する非財団職員等に、カバーストーリー「危険物の混入」「不良品回収」などを適用してSCP-3018-JP-1の回収及び破壊をさせる試みが提案されています。
説明: SCP-3018-JPは二つの要素から構成されます。SCP-3018-JP-1は以下の異常性を持つ██社の金属製の鍵です。裏側にはそれぞれの登録コード1が記載されておりSCP-3018-JP-1の説明書に記載のパスコードと対応しています。SCP-3018-JP-2はSCP-3018-JP-1の説明書に付属のQRコードから入手可能なスマホ用アプリです。SCP-3018-JP-2の表示画面は右半分に登録コードとパスコード及び現在時刻までの時間(以下入力時刻と表記)2の入力欄、左半分にそれぞれ「角度」「位置」「作用している力」「変形の正確な値」と書かれた出力欄が右上に表示されたマップ型の出力欄を持ち、その時点におけるSCP-3018-JP-1の位置がピンで指し示されます。
SCP-3018-JP-2のそれぞれの入力欄にSCP-3018-JP-1の登録コードとパスコードを入力するとSCP-3018-JP-2は活性化し、入力時刻におけるSCP-3018-JP-1の角度、位置、作用している力、及び変形の正確な値が出力欄に、SCP-3018-JP-1の入力時刻における位置をマップ画面に出力します。 ただし入力時刻に該当のSCP-3018-JP-1が製造されていない、あるいは無力化済みであった場合そのことを示すエラーメッセージが出力されます。この時出力された経路にもSCP-3018-JP-1が実際に移動する経路も基本的に正常な物理学に従い異常性は見られません。
出力された未来の時刻における結果を、改変しようとする試みはその手段のいかんにかかわらずすべて大規模な収容違反、予期せぬ職務及び職員の欠席などのSCP-3018-JPとは無関係の事由で中止及び失敗しました。
発見経緯: SCP-3018-JP-1は20██年ごろから、██社製商品「なくしてもすぐに見つけられる鍵」として一般に知られ、一部の財団職員を含む一般社会の大半の人々が入手及び使用していましたが、GPSによるものと認識されていました。20██/07/14 “神の摂理”魔術クラブ3会員によるによる検証により、SCP-3018-JPが異常存在であることが判明したため財団エージェントが5点(うち3点破壊済み)回収、流通ルートを追跡した結果、流通先からさらに2892点回収されました。
実験記録:
実験記録00004
目的: 異常性の検証
使用者: “神の摂理”魔術クラブ会員
方法: 説明書通り使用。ただしGPSの電波の届かない地下にて実験。
結果: リアルタイムでSCP-3018-JP-1の位置を特定することができた。
分析: 異常性を持つことが判明。財団職員によってSCP-3018-JP-1を回収した。
実験記録0001
目的: 異常性の検証
使用者: 毬藻博士
方法: SCP-3018-JP-1の位置を特定する際に入力可能範囲でない時刻をコマンドで入力した。
結果: 1日前、1日後、1ヵ月前、1ヵ月後の位置を特定することができたが、1年前、1年後の場合、まだ生成されていない、あるいはすでに破壊済みであることを示すエラーメッセージが表示された。
分析: SCP-3018-JP-1は1年以内に作成されたらしい。また、破壊後の位置は特定できないようだ。
(重要度の低い実験を省略)
実験記録0009
目的: 異常空間におけるSCP-3018-JP-1の挙動
使用者: 毬藻博士
方法: SCP-024-JP5の収容室を通過するSCP-XXXX-JP-1の経路を観察する。
結果: SCP-3018-JP-1は、SCP-024-JPを利用するエージェントをの尻ポケットに入り、エージェントとともに脱出までの間座標値は四元数6で表示されたが、実数部分はSCP-024-JPの内部を指し示していた。
分析: 異常空間の探索において、GPSに代わる存在として、有用であると思われる。異常性の根源を解明し、再現できれば、財団にとって極めて有用であるといえる。追加実験を申請する。ー毬藻博士
以下の実験は、異常性解明のみならず、GPSに代わる位置情報システムとしての運用を視野に入れて行われたものです。
実験記録0010
目的: SCP-3018-JPの複製
使用者: 毬藻博士
方法: SCP-███を使用しSCP-3018-JP-1の複製を試みる。
結果: SCP-3018-JP-1は複製され、オリジナルと同じシリアルコードが刻印されていたたものの、SCP-3018-JP-2によって割り出されたルートが追加されることはなかった。しかし、確率論アノーマリーとの干渉を避ける経路をとったため、部分的に異常性を保持していると思われる。
分析: SCP-3018-JP-1の異常性は自信と周囲の不確定性原理を無効化するものであり、登録コードやパスコードは、ある時点における位置や角度から割り出されたものである可能性が高い。つまり登録コードやパスコードは個々の鍵の一意性を保障するものではないため万一登録コードやパスコードが悪意のある他者にわたっても、誰が鍵に干渉したかまでは判別できないので、セキュリティ的な危険はそれ単体では極めて小さいと思われる。
実験記録0011
目的: SCP-3018-JP-2の動作原理の解明
使用者: 毬藻博士
方法: SCP-3018-JP-2に現在時刻と、財団が保有していない登録コードとパスコードの組を入力する(500組)
結果: SCP-3018-JP-2は、実在するSCP-3018-JP-1の特定の座標(3組)、実在しないSCP-3018-JP-1の座標(7組)、また作られていないかすでに破壊されている旨を示すエラーメッセージ(39組)、パスコードが正しくないことを示すエラーメッセージ(451組)を出力した。
分析: 登録コードやパスコードを十進数に直したときの値が大きいほど作成した時期が遅くなっていることから、登録コードやパスコードは作成日時から算出されている可能性がある。また、エラーメッセージの出現頻度からパスコードにはチェックディジット7以外、「認証」機能は存在しないと思われる。
実験記録0012
目的: SCP-3018-JP-2の要求スペックの調査
使用者: 毬藻博士
方法: SCP-3018-JP-2をポケットコンピュータ8で動作させ出力の差異を調べる。
結果: ポケットコンピュータで実行すると実行時間が30倍程度に増加し出力に多少の誤差が発生したが、演算を継続しても誤差が拡大しなかった。
分析: おそらく発生した誤差は、決定論的物理シミュレーション機構そのものではなく、座標出力のプロセスにおいてのみ発生すると思われる。すなわち、多少スペックの悪いコンピュータで動作させてもプログラムは破綻しないと思われる。
補遺1: 毬藻博士によって、SCP-3018-JPとインシデント-8131-312及び外部インシデント-674-GOCとの関連が指摘されました。
インシデント-8131-312概略
20██/03/12、SCP-3018-JP-1を保管していたサイト-8131が不明なアノマリーにより襲撃されるインシデントが発生し、多数の収容室のセキュリティが突破されました。結果としてSafeクラスオブジェクトが██種類、Euclidクラスオブジェクトが███種類、Anomalousアイテム█点が盗難の被害を受けました。盗難されたオブジェクトの特徴として、認識災害、及び情報災害性ベクターである非生物という共通点がありました。
ピッキングや暴力的行動の痕跡が一切みられず、アノマリーによる調査も無効な結果に終わったため調査期間満了により、調査は終了しました。
外部インシデント-674-GOC
20██/05/01、SCP-3018-JP-1を多量に破壊していたGOCのサイトが何者かによる襲撃を受けました。詳細は不明。状況証拠から、GOCはこのインシデントについての情報を終了を含む何らかの手段を用いて内外に即座に隠ぺいしたためと推測される。
インシデント-8131-312概略及び外部インシデント-674-GOCに係る毬藻博士の提言
今回の事案において、財団サイトに限らず、SCP-3018-JP-1を多量に破壊していた建造物も被害を受けていた。SCP-3018-JPは、自身の登録コードとパスコードから任意の時点の状態を割り出すことが可能であることから、シリアルコードと、パスコードの組を知っていたと思われる人間、おそらくSCP-3018-JP-1を製造した人間が、「大量の」鍵の流れから財団やGOCの施設を割り出していた可能性がある。そのため、サイト-81██は完全封鎖及び取り壊しを行い、SCP-3018-JPのオブジェクトクラスをArchonへの変更、収容済みSCP-3018-JP-1の全破壊および財団職員によるいかなる干渉の禁止、及びインシデント-8131-312の調査の再開を要請する。ー毬藻博士
以上の提言はおおむね受理されましたが、オブジェクトクラスについてはオブジェクトに干渉しないことが有効かどうか確証がないため、オブジェクトクラスはPendingにされました。
補遺2: 追加調査として██社への詳細なインタビューの結果、
- ██社の元社員の中に、当オブジェクトの作成にかかわっていたにもかかわらず、一切の情報を想起することができないメンバーが存在する。
- インタビューした██社のメンバーの全員が当オブジェクトを異常存在でないと認識していた。
ということが判明しました。
補遺3: インシデント-8131-312発生時の入退室管理システムの記録を確認したところ、「宮樹博士」が財団所属ミーム部門職員区分で記録されていました。このことから、「宮樹博士」とSCP-3018-JPと何らかの関係があるとみなされていますが、「宮樹博士」にかかわる有意な情報は財団の人事ファイル及びアーカイブ版などからも現在得られていません。
補遺4: インシデント-8131-312の追加調査、及び、SCP-3018-JP-2の追加研究として汎用コンピュータでコンピュータでSCP-3018-JP-2を実行した出力を処理することによって、微小な圧力の変化から接触した指紋をきわめて鮮明に復元できることが判明しました。このことから、現在指紋認証セキュリティの廃止、及び関係者の化学薬品による指紋の変更が進められています。
現在、SCP-3018-JPの作成者に関する調査が継続中です。